空き家が社会問題化していることを耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。実家を相続したものの、使い途がないといった理由で田舎を中心に空き家が増えています。今後、少子高齢化が進むことが予想される中、この問題はさらに拡大していくはずです。

一方、これら空き家を活用する空き家再生ビジネスに注目が集まっています。空き家再生ビジネスとは一体どのような仕組みで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

社会問題化する空き家を活用した投資とは?

まずは空き家問題がどのような状態にあるのかデータを参照しながら見ていきましょう。

急増する空き家問題

総務省による2018年10月時点の住宅・統計調査によると、国内住宅総数(6,242万戸)に占める空き家の割合は13.6%(846万戸)となっています。住宅総数、空き家率ともに右肩上がりの上昇が続いており、同データによると以下のように推移しています。

2018年の空き家戸数の内訳を見てみると、賃貸住宅の空室(431万戸)や売却に出されている空き家(29万戸)、別荘(38万戸)もありますが、それ以外に長期にわたって不在となっている住宅が347万戸となっています。

なお、空き家率の上昇が顕著なのは地方の方で、空き家率が最も高かった都道府県は山梨県(21.3%)、次いで和歌山県(20.3%)、長野県(19.5%)、徳島県(19.4%)と続きます。

【出典】総務省:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_youyaku.pdf

政府による空き家対策

空き家率の増加の主な理由は人口減少によるもので、すでに日本の人口は2008年の1億2,808万人 をピークに減少に転じていますが、それにも関わらず住宅総数は増えている状況です。

【出典】国土交通白書:https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h24/hakusho/h25/html/n1111000.html

つまり、空き家は利用されず、解体もされないまま新しい建物が建てられているということです。今後もこの状態は続くことが予想され、政府は対策を行っています。

例えば、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」では、空き家の固定資産税に関する問題の解決を図っています。

土地は建物が建っていると、課税標準が最大で6分の1になる特例の適用を受けることができます。この特例は建物を解体すると適用されなくなるため、固定資産税の負担額が最大で6倍になってしまうのです。このため、使われない空き家でも解体されることなく残す人が多く、問題となっていました。

空き家対策特別措置法では、空き家について自治体が特定の状態に当てはまると判断された空き家(特定空き家)は、建物が建っていたとしても固定資産税軽減の特例が受けられなくなるようになりました。

空き家再生ビジネス

政府も対策を打っている空き家問題ですが、成果が出ているとはいいづらい状況です。一方、個人でも空き家を活用したビジネスに取り組むことができます。空き家活用ビジネスには、さまざまなものがありますが、社会問題解決のためが主目的ではなく、しっかりと利益を上げられるものもあります。その一つが、空き家再生ビジネスと呼ばれるものです。

空き家再生ビジネスの仕組み

空き家再生ビジネスとは、簡単に言うと空き家を借りて(もしくは購入し)、リフォームを施して賃貸に出すことで利益を上げるビジネスです。空き家を購入する場合、購入資金が必要になりますが、一方で毎月の賃料を支払う必要はなくなります。

一方、空き家を借りる場合は、初期投資費用が不要になる代わりに、毎月の賃料を支払う必要があり、オーナーへの賃料と入居者から受け取る家賃との差額が利益となります。

空き家再生ビジネスの流れ

ここでは、オーナーから賃貸する場合の空き家再生ビジネスの流れについて解説していきます。

・空き家を探す
・オーナーと交渉する
・空き家をリフォームする
・入居者を募集する
・入居者から家賃を受け取りオーナーに家賃を支払う

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

空き家を探す

まずは空き家を探しましょう。歩き回って探すか、近所の方に聞くなどすれば見つかるはずです。もちろん、自治体の空き家バンクなどを活用してもよいでしょう。

オーナーと交渉する

空き家が見つかったら、オーナーと交渉します。オーナーの居所については近所の方からの聞き込みで聞ければよいですが、分からない場合には法務局で登記簿謄本を取得すれば、住所と名前が判明するため、該当の住所に訪問してみるとよいでしょう。

空き家オーナーはほとんどの場合、空き家をどうにかしたいけどどうにもできないという状況のことが多いです。空き家を活用できていないのに、固定資産税は支払わなければなりません。賃料を支払うことを伝えれば興味を持ってくれるはずです。

空き家を購入する場合の注意点

なお、購入するパターンで考えるのであれば、不動産会社に間に入ってもらうほうがよいでしょう。物件取得後、購入した物件に瑕疵(簡単に言えば欠陥)があった時の取り扱いなど、プロからアドバイスを受けた方がよいからです。

不動産の売買において不動産会社に仲介に入ってもらうためには、仲介手数料「物件価格×3%+6万円+消費税」を支払う必要があります。例えば物件価格が1,000万円であれば38.88万円支払う必要がありますが、それでも仲介に入ってもらうことをおすすめします。

空き家をリフォームする

空き家を借りられることが決まったら、リフォームを実施します。リフォームの内容については建物の状況に応じて検討しますが、あまり大がかりなリフォームはしないほうがよいでしょう。

入居者を募集する

リフォームが終わったらチラシを作って空き家の周辺で配布します。基本的には、周辺相場より目に見えて割安な価格に設定することで競争力をつけることができます。

入居者から家賃を受け取りオーナーに家賃を支払う

入居者が見つかったら、入居者から家賃を受け取って、その分のいくらかをオーナーに支払います。空き家再生ビジネスのポイントは、オーナーも活用したいものの活用できていないという点です。オーナーとしては誰かに住んでもらった方が管理の手間が省け、また少しでも収入になるのであればよいと考えやすいのです。

ビジネスに取り組む側としては、入居者から家賃が入った時に初めて、その半額をオーナーに支払うという契約内容にすることで、ノーリスクのビジネスとなります。

ちなみに、空き家を購入して再生するパターンであれば、空き家を取得するための費用を先に支払うためリスクが生まれるものの、オーナーに賃料を支払う必要がないことから将来的な利益を大きくできます。

空き家再生ビジネスのメリット・デメリット

空き家再生ビジネスは他の投資と比較してどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリット1:初期投資額が小さい

空き家再生ビジネスのメリットは、初期投資額が小さいということです。空き家を購入する場合でも、投資利回りのことを考えて1,000万円程度以下の物件取得を目指すのが一般的ですし、賃貸する場合だと負担するのはリフォーム費用のみです。

メリット2:まだ新しいビジネスである

空き家再生ビジネスはまだ取り組んでいる人が少なく、競合の少ない中でビジネスを始めることができます。

メリット3:不動産投資の中では高利回りが狙える

空き家再生ビジネスは投資額が小さいことから、平均8%以上という、不動産投資の中では高い利回りを実現できます。

例えば、1,000万円で購入した空き家に200万円分のリフォームを施し、月8万円の家賃を受け取るのであれば

【収入】 8万円 × 12カ月 = 96万円/年
【利回り】 96万円/年 ÷ 1,200万円 = 8% となります。

なお、賃貸の場合でリフォームに100万円かけ、月8万円の家賃を受け取るのであれば、オーナーと折半した場合、月4万円、年間で48万円の収入ですから、利回りは48万円/年 ÷ 100万 = 48%にもなります。

デメリット1:物件の見極めの難度が高い

空き家再生ビジネスのデメリットとしては、入居者のつく空き家を見極めなければならず、その難度が比較的高いということが挙げられます。この辺りのことについては、まだやり方が定まっていないこともあり、実際にやりながら学んでいくことも大切です。

デメリット2:リフォーム費用が高くなることもある

また、空き家の状況によってはリフォーム費用が高額になることもある点に注意が必要です。リフォーム費用が高くなれば、それだけ利回りは小さくなってしまいます。購入にせよ、賃貸にせよ、契約前にどの程度のリフォーム費用がかかり、最終的な利回りはどのくらいになるかを想定しながら進める必要があると言えるでしょう。

空き家再生専門会社の利用も検討しよう

空き家再生ビジネスはまだ広く普及していないことから先行者利益を得られやすい状況にあります。ただし、広く普及していないが故に手探りで進めなければならない側面もあります。

自分で一から始めるのが大変な場合には、空き家再生専門会社を利用してみることも検討してみてはいかがでしょうか?
空き家再生ビジネスを手掛けるFANTAS reproでは空き家の活用について幅広く相談できます。

気になる方は相談してみるとよいでしょう。

将来性の高い空き家再生ビジネス

空き家の現況と空き家再生ビジネスについてお話しました。空き家再生ビジネスは今後加速する空き家問題の解決に役立てられるのに加え、高い利回りを実現しやすいという特徴を持ちます。気になる方は空き家再生専門会社への相談から始めてみるとよいでしょう。

【記事筆者】

逆瀬川勇造
逆瀬川勇造
明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。
【保有資格】:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士