初めまして、逆瀬川 勇造と申します。
地方で年間100棟以上の自社開発不動産を販売しているオーナー会社社長の息子(営業部長)として、不動産に関するいろいろなことを学んできました。

そうした経験から、記事をご覧いただいている方に少しでも有用な情報を伝えていけたらと思っています。宜しくお願いいたします。

早速ですが、不動産投資に取り組むにあたって「売り時」「買い時」を判断することは非常に重要ですが、その判断材料として国土交通省の発表する公示地価や都道府県の発表する基準地価をチェックしておくことは大切なことです。

本記事では、公示地価や基準地価に触れながら、2019年以降の不動産市況について考えていきたいと思います。

不動産市況の4つの大きなトレンド

不動産の価格はさまざまなことを要因として変動しますが、ここでは最初に不動産市況に影響を与えている4つの大きなトレンドについて見ていきたいと思います。

(1)人口減少

日本の人口は戦後増加を続けていましたが、すでに2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じています。
2019年3月1日時点の人口は1億2,622万人と減少しており、さらに国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2048年には1億人を割り込むことが予想されています。

現段階では不動産市況にはっきりとした兆候が表れているわけではありませんが、今後人口が減少していけば、不動産市況には明確にマイナスとなるでしょう。

(2)インバウンド増加

一方、アベノミクスによる円安効果もあり、訪日外国人の数が増えています。
2012年には800万人/年程度だった訪日外国人数は、2015年には約2,000万人/年に増え、2018年には3,000万人/年を超えています。訪日外国人が増えることで商業施設の地価は上昇傾向になりますし、移住者が増えれば居住地域の地価にプラスの影響があるでしょう。

【出典】JTB総合研究所(https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/

(3)アベノミクス

アベノミクスにより為替が円安に進み、訪日外国人の数が増えていることをお伝えしましたが、もう一つアベノミクスが不動産市況に影響を与える大きなポイントとして、金融緩和による低金利があります。

不動産投資は、他の投資と比べて、取得対象の物件を担保に融資を受けられる点が大きな特徴だと言えますが、低い金利で融資を受けられることで大きな恩恵を受けることができます。

(4)不正融資問題

2018年に女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが不正融資を行っていたことが指摘され、経営破綻し大きなニュースとなりましたが、そうした流れの中で、金融機関の融資引き締めが行われています。

2018年11月15日の日経新聞の記事によると、全地銀105行を対象に2018年10月に行われた調査で、不動産投資に対し今後積極的に融資すると回答した地銀はゼロ。また、4割強は今後融資の審査を厳しくすると回答しています。

融資が厳しくなれば、新しく不動産を取得できる投資家が減り、結果としてすでに物件を所有している方は売却が難しくなります。この状態が続くと不動産の取引量は減り、不動産市況にマイナスとなる可能性があります。

公示地価・基準地価とは

不動産市況に影響を与えるトレンドについてお伝えしましたが、現在の不動産市況はどうなっているのでしょうか。不動産市況を調べる一つの方法として、国土交通省の調査する公示地価や都道府県の調査する基準地価を参考にする方法があります。

なお、公示地価は毎年1月1日を基準に3月頃、基準地価は毎年7月1日頃を基準に9月頃発表されるもので、調査主体や発表時期は異なるものの、双方とも土地取引の目安として活用されます。

以下で、直近の公示地価と基準地価の調査結果概要を見てみたいと思います。

2019年公示地価

2019年3月に発表された公示地価によると、公示地価の全国平均は「住宅地」、「商業地」、「工業地」全用途平均で4年連続の上昇、上昇幅も3年連続で拡大しています。
具体的には、2018年が対前年度0.7%の上昇だったのに対し、2019年は1.2%の上昇となっています。

用途別では住宅地で2018年が対前年度比0.3%だったのが2019年は0.6%に、商業地は2018年が対前年度比1.9%だったのが2.8%に上昇しています。
住宅地の公示地価上昇要因としては、雇用や所得環境の改善や低金利の長期化等を要因とし、交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調だったことが挙げられています。

また、商業地の公示地価上昇要因としては、訪日外国人増加やオリンピック等を要因としたインフラ整備・再開発事業が理由として挙げられています。
【参考】国土交通省:平成31年地価公示結果の概要

2018年基準地価

2018年9月に発表された基準地価によると、基準地価の全国平均は「住宅地」、「商業地」の全用途で対前年比0.1%となり、バブル崩壊以降、27年ぶりのプラス成長となっています。

用途別にみると、インバウンド効果やインフラ整備等を要因として商業地が対前年度比1.1%上昇しているものの、住宅地は対前年度比▲0.3%となりました。
住宅地についてはプラスに転じることができなかったものの、2017年が対前年度比▲0.6%だったことからすると、マイナス幅は縮小しています。

公示地価、基準地価のいずれを見てみても、2019年現在、地価は上昇傾向にあり、その要因は「低金利の長期化」や「訪日外国人増加」、「インフラ整備」であることが分かります。

【参考】日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35455320Y8A910C1SHA000/

今後不動産市況に大きな影響を及ぼすことが予想されるもの

公示地価や基準地価を見てみると地価は上昇傾向にありますが、2020年の東京オリンピックを契機に地価がピークアウトすることも予測されています。しかし、2025年に開催予定の大阪万博や2027年に稼働予定のリニア中央新幹線など、地価にプラスの影響を及ぼすことが予想されるイベントも控えています。

ここでは、これらのイベントが今後の不動産市況に与える影響について見ていきたいと思います。

2020年東京オリンピック

2019年現在地価が上昇傾向にある理由の一つとして、訪日外国人の増加があります。
これは、円安等を要因としていますが、2020年に開催される東京オリンピックの影響もあるでしょう。

また、東京オリンピック開催のためのインフラ整備等も地価のプラス要因となっています。こうしたことから、東京オリンピック後は地価が下がることが想定されています。

実際のところ、2020年の東京オリンピック後は一時的にせよ、地価は下がる可能性が高いでしょう。
しかし、その後地価にプラス要因となるイベントもあります。

2025年大阪万博

その1つが2025年の開催が決定した大阪万博です。
大阪万博の開催により、大阪でのインフラ整備や訪日外国人の増加も見込めるでしょう。

開催決定後、すでに地価への影響は見られており、例えば2019年の公示地価における大阪圏の商業地は、2018年が対前年度比4.7%だったのに対し、2019年には対前年度比6.4%となっています。

2027年リニア中央新幹線

オリンピック後、注目のイベントの2つ目が2027年に東京~名古屋間が開通予定のリニア中央新幹線です。リニア中央新幹線では、東京都の品川駅や神奈川県の橋本駅、愛知県名古屋駅など、停車駅周辺を中心に地価の上昇が見込まれます。

また、実際にリニア中央新幹線が開通した後は、周辺商業施設の来場者数増加等による景気上昇効果も期待できます。

こうしたイベントのタイミングや、それが地価に与える影響を想定しながら物件取得を検討していくことが大切です。

まとめ

不動産市況について、現在のトレンドや公示地価や基準地価のデータの他、東京オリンピックや大阪万博など、不動産市況に影響を与えることが予想されるイベントについて解説しました。

不動産市況を掴むには、大きなトレンドを掴むとともに、公示地価や基準地価など実際のデータを参照するのが効果的です。今後の予測も行いながら、今後発表される最新の公示地価や基準地価も随時確認していくようにしましょう。

【記事筆者】

逆瀬川勇造
逆瀬川勇造
明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。
【保有資格】:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士