こんにちは。
東京都内でワンルームマンション投資をしている、
個人投資家兼ファイナンシャルプランナーの川井えりかです。

今回は、税金対策が難しいといわれる会社員が可能な節税のご紹介です。

会社員が毎月天引きされる所得税は概算の金額であり、毎年12月に「年末調整」により、既に徴収した概算の所得税と、その年1年分の実際の給与収入に対して支払うべき所得税の差額が追徴(または還付)されます。

「源泉徴収」「年末調整」のセットで、
お勤め先が本人に代わって所得税を納めているのが会社員・公務員の納税のしくみです。

会社員・公務員以外の人は「源泉徴収」+「年末調整」の代わりに、
「確定申告」という方法で自ら税務署に納税をします。

確定申告の内容を知っていると、
会社員でもできる節税をたくさん発見することができます!
ポイントは、【所得】【控除】の関係です。

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・所得とは、収入-経費
・税金がかかるのは、所得-控除をした額
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税金の計算は「年収」ではなく「所得」が重要

所得=収入-経費

収入は、会社員の場合には「年収」と表現するものです。
税金や社会保険料等が引かれる前の、給与の総支給額です。

自営業やフリーランスの場合、収入は、「売上」にあたります。

実は、税金の計算に収入は直接関係ありません。
たくさん稼いでいる人(=収入の多い人)がたくさん税金を納めているとは限らないのです。

この「年収」「売上」から、経費を引いた【所得】がいくらになるかが重要です。
会社員や公務員は経費が使えないといいますが、給与収入と、給与所得の額は異なり、必ず給与所得の方が少なくなります。

誰でも、仕事のために必要な支出があると思います。
一例をあげると以下の通りです。

・スーツ・ネクタイを買う
・革靴を買う
・パンプス・ストッキングを買う
・腕時計を買う
・名刺入れを買う
・情報収集のために本を買う

これらに使うお金は、お勤めしていなければかからないものも多く、「仕事がなければ、駅から遠くて家賃の安いマンションに住むから住居費が削れるのに」なんてこともありませんか?

実際にこれらの支出を計算して経費として申告する代わりに、給与所得控除という会社員の経費枠のようなものがあります。

会社員の「経費」は「給与所得控除」

実際にいくら経費をかけているかに関わらず、
控除額は年収を元に決められています。

たとえば、
年収500万円の方は、
154万円の給与所得控除があるため、

収入500万円-経費154万円=給与所得346万円
となります。

給与所得の額は、お勤め先からもらう源泉徴収票に記載されています。
源泉徴収票が手元になくても、年収がわかる方は以下の計算式で算出することができます。

【出典】国税庁ホームページ
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

会社員の給与は、このように所得を求めますが、これでは年収によって所得が決まってしまうので節税のしようがありません。

所得が少なくなれば、結果税金も減らせることになります。工夫次第で会社員でも節税できるポイントをご紹介します。
1つ目は、【所得を小さく】する方法です。

給与所得以外に会社員が目をつけるべき所得は2つ!損益通算を活用しよう!

会社員が納税している所得税は、「給与所得」という名前の所得から発生しています。
所得には全部で10種類あり、給与所得はその中の一つです。

その中でも会社員の節税に貢献してくれるのが、
以下の4つの所得です。

・不動産所得
・事業所得
・譲渡所得(土地建物や株式等に係るものを除く)
・山林所得

この4つの所得は、赤字になった場合に他の黒字の所得と相殺することが可能です。
「損益通算」といいます。

4つの中でも、会社員の節税で現実的なものが、

・不動産所得
・事業所得

の2つです。
具体的な数字で見てみましょう。

赤字の不動産所得がある年収500万円の会社員Aさんの場合

先ほど、年収500万円の会社員の給与所得は346万円とお伝えしました。

年収500万円のAさんは、資産運用と、節税(所得を小さく見せる)を兼ねて、投資用の不動産を購入したとします。
居住用ではなく投資用の不動産を保有している場合、【家賃】という収入が発生します。

所得=収入-経費

ですから、Aさんはこのような計算式で不動産所得を求めます。

不動産所得=収入(家賃)-経費(購入時の諸費用+減価償却費+ローンの利息+賃貸管理費等)

不動産の場合、特に購入した年は収入にくらべ経費が多くなります。
購入時の諸費用が高額になるからです。

マイホームをお持ちの方はイメージしやすいかもしれません。

・ローンの融資手数料
・登記費用
・契約書の印紙代
・火災保険料

など、まとまった経費が発生します。

仮に、2018年7月に投資用の不動産を購入したとします。
家賃は月10万円の物件です。

2018年の家賃収入は、7月~12月の6か月分で、
10万円×6ヵ月=60万円です。

一方で経費は、

・購入時の諸費用100万円
・減価償却費(6か月分)70万円
・ローンの利息(6か月分)25万円
・賃貸管理費(6か月分)3万円

合計で198万円です。
※経費は、家賃10万円の物件をフルローンで購入した場合の概算です

この場合の不動産所得は、
収入60万円-経費198万円=△138万円

138万円の赤字になります。

不動産所得で赤字が出た場合は、他の黒字の所得と相殺できるので、
Aさんの給与所得346万円-不動産所得の赤字138万円=208万円

投資用の不動産を購入したことにより、
Aさんの所得は346万円から208万円に下がります。

この後ご紹介する、ポイント2つ目の控除をどれだけ大きくするかで最終的な納税額が決まりますが、Aさんの場合はこの時点で、不動産の購入により納税額を半分以下に節税することが可能です。

赤字の事業所得がある年収500万円の会社員Bさんの場合

もう一つ、
所得を小さくするのに利用できる事業所得の例です。

年収500万円の会社員の給与所得は346万円です。
年収500万円のBさんは、趣味と週末起業を兼ねて、おしゃれな雑貨やインテリアを仕入れてamazonやメルカリで一般個人に販売することにしました。
商品が売れた場合、【売上】という収入が発生します。

所得=収入-経費

ですから、Bさんはこのような計算式で事業所得を求めます。(※)
(※事業所得にするためには、税務署に開業届を提出し、承認を受ける必要があります。承認されない場合は雑所得扱いになります)

事業所得=収入(売上)-経費(商品の原価+仕入れのための交通費・宿泊費+インターネットサービス利用料+広告宣伝費その他雑費等)

軌道に乗るまでは、収入よりも経費の方が多く掛かることも考えられます。
特に、始めのうちは、新たにパソコンを購入したり、在庫を保管するために事務所やトランクルームを借りたり、初期投資の方が大きくなりがちです。

仮に、1年間の収入(売上)が30万円、
青色申告特別控除が10万円(※複式帳簿による記帳の場合には65万円)
経費が90万円とすると、

この場合の事業所得は、
収入30万円-青色申告特別控除10万円-経費90万円=△70万円

70万円の赤字になります。

事業所得で赤字が出た場合は、他の黒字の所得と相殺できるので、
Bさんの給与所得346万円-事業所得の赤字70万円=276万円

事業をはじめたことにより、
Bさんの所得は346万円から276万円に下がります。

 

*注意点*

不動産所得も事業所得も、
給与以外の所得があると言う意味で【副業】にあたります。
副業については、お勤め先の就業規則に違反しないか、事前によくお確かめください。

知人で、誰もが知っている大手の上場企業にお勤めの会社員で、
不動産投資と飲食店経営をしている男性がいます。

その方はお勤め先に内緒にすることなく堂々と副業をしていたのですが、会社の就業規則にこう書いてあったそうです。

「社外で雇用されて労働することにより、収入を得ることは禁止する」

ポイントは【雇用】です。
つまり誰かに雇われてアルバイト等をすることは禁止されており、不動産投資や飲食店経営など、自らがオーナーとなって収入を得ることは禁止されていなかったそうです。

最近は副業や兼業を認める会社も増えてきています。
お勤め先で許容されている範囲で是非活用したいですね。

不動産所得、事業所得を利用して所得を小さくできる方も、
それが難しい方も、もうひとつ節税できるポイントがあります。

会社員の節税に使いやすい控除は3つ

税金がかかるのは、所得から控除を引いた額です。
差し引く額、つまり控除の額が大きいと、同じ所得の人と比べて納税額は少なくなります。

簡単に使える控除は3つあります。

・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除

これ以外にも所得から差し引ける控除の種類はあります。

ですが、給与や家族構成によりその額が決まっていたり、災害に遭ったときや病院を受診した場合などに適用できるものなので、節税のために使うのは難しいです。

では、3つの控除をどのように活用するかご紹介します。

小規模企業共済等掛金控除

これは、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金に適用される控除です。証券会社や銀行で積立の投資信託をしている人は、一部を、iDeCoを使った積立の投資信託に切り替えるのもおすすめです。
積立額の上限は月23,000円(職業やお勤め先の企業年金制度により異なります)
年額276,000円までを所得から差し引くことができます。

【参考】iDeCoナビ:https://www.dcnenkin.jp/about/

生命保険料控除

生命保険会社へ支払う掛金(保険料)に適用される控除です。

生命保険・年金保険・医療介護保険の3種類、
それぞれ掛金の上限は年額8万円まで、
そのうち年額4万円(3種類すべて使うと12万円までを所得から差し引くことができます。

【参考】国税庁:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm

地震保険料控除

持ち家、賃貸を問わず、お住まいの住宅で地震保険に加入している場合、損害保険会社へ支払う掛金(保険料)に適用される控除です。
1年間で支払う掛金のうち、上限は年額5万円までを所得から差し引くことができます。

【参考】国税庁:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm

3つの控除を加味して考える

3つの控除を上限まで使うと、
所得から差し引ける控除の合計は44.6万円です。

これ以外に、誰でも受けられる基礎控除38万円と、
給与天引きされている社会保険料を合わせて約100万円が控除されます。

44.6万円+100万円=144.6万円

では、全ての控除を加味して比較してみましょう。

一般的な年収500万円の会社員の所得税は、103,900円
不動産投資と控除を活用した年収500万円の会社員Aさんは、31,700円
事業所得と控除を活用した年収500万円のお会社員Bさんは、65,700円

AさんとBさんは、
一般的な年収500万円の会社員の所得税との差額を確定申告をして還付を受けることが可能です。

「住宅ローン減税」は、その名のとおり税金が減ります!しかも大幅に!

マイホームをローンで購入した人が受けられる「住宅ローン減税」は、所得税を大幅に(人によってはゼロに!)することが可能です。

住宅により条件がありますが、4,000万円以上のローン残高がある人は、最大40万円の所得税を減額することができます。
※認定住宅の場合には、5,000万円、最大50万円となります。

【参考】住宅金融支援機構:住宅ローン控除制度
https://www.jhf.go.jp/loan/hensai/syokai_yoken.html

「ふるさと納税」は、その名のとおり【納税】です。【節税】ではありません!

年末になると、「ふるさと納税して節税しなきゃ」と急ぐ人がいますが、ふるさと納税は節税にはなりません。

ふるさと納税とは、
すでに自分が支払った住民税を別の市町村に移す行為です。

たとえば、東京都に住んでいるCさんが、東京都に10万円の住民税を納めています。
Cさんがふるさと納税で、北海道八雲町に5万円納税したとします。

本来、Cさんは10万円納税すればよいものを、東京都に10万円、北海道八雲町に5万円の計15万円納税しているため、東京都から5万円分の還付が受けられます。
(実際には控除されるものがあるので5万円未満の還付になります)
結局10万円の住民税を納税していることになるので、節税ではないのです。

会社員の節税のポイント、是非参考にしてみてください!

記事・監修 川井えりか(ファイナンシャルプランナー)

【記事筆者】

川井 えりか
川井 えりか
ファイナンシャルプランナー、マネーセミナー講師。
「10年後にお金を2倍にするマネープランニング」
「給料+10万円の副収入を作る」をコンセプトに、お金、投資のご相談を受ける。首都圏と札幌を中心に活動。
我慢を伴う「節約」は苦手。「お得にお金を使う」ことでお金の管理を楽しく簡単にします。