不動産投資を行うためには、年度ごとに不動産価格の推移を把握することが重要になってきます。マンションや土地などの不動産物件の価格の動きを知ることで、物件を売却するための適切なタイミングなどを把握する力がついてきます。

ここでは、2018年の不動産価格の推移についてまとめていきます。また、2018年以降の不動産の動向については、2020年に開催予定の東京オリンピックの影響も気になるところです。以下で2018年度の不動産価格の推移と今後の予測について、詳しく見ていきましょう。

現在の不動産市場の状況はどうなっているの?

不動産市場の状況を探るための手がかりとして、国土交通省による、「不動産市場動向マンスリーレポート」があります。これは、不動産に関する市場の動向を把握するための各種データが収集・整理され、レポートとして公表されたものです。

グラフで見る!中古マンションの売買の推移

不動産取引の代表的な物件として、中古マンションがあります。中古マンションは不動産の中でも流動性が高いため、不動産市場の動向を探るために適した物件です。不動産市場動向マンスリーレポートの平成303月分のデータに基づいて、中古マンション市場の動向を探っていきます。

【出典】国土交通省:不動産市場動向マンスリーレポート
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000114.html

首都圏

首都圏における中古マンションの売買の動向について見ていきます。

<首都圏の20183月の中古マンションの売買の動向>
新規登録件数
:合計18,325件で、前年の同月と比較すると8.9%増加。7ヶ月連続で前年の同月よりも増加しました。

成約件数
:合計3,819件で、前年同月比で2.7%増加。2ヶ月ぶりに前年の同月を上回りました。

<東京都の20183月の中古マンションの売買の動向>
新規登録件数
:合計10,598件で、前年同月比で8.6%増加。5ヶ月連続で前年同月よりも増加しました。

成約件数
:合計1,984件で、前年同月比で1.8%増加。2ヶ月ぶりに前年同月を上回りました。

<総評>新規登録件数と成約件数がともに前年同月を上回っていることから、首都圏では東京都を中心に、中古マンションの売買が盛んになってきているといえます。

近畿圏

次に、近畿圏における中古マンションの売買の動向について見ていきます。

<近畿圏の20183月の中古マンションの売買の動向>
新規登録件数
:合計5,885件で、前年の同月と比較すると17.4%増加。14ヶ月連続で前年の同月よりも増加しました。

成約件数
:合計1,740件で、前年同月比で1.4%減少。4ヶ月ぶりで前年の同月を下回りました。

<大阪府の20183月の中古マンションの売買の動向>
新規登録件数
:合計3,185件で、前年同月比で19.6%増加。31ヶ月連続で前年同月よりも増加しました。

成約件数
:合計876件で、前年同月比で2.2%増加。2ヶ月連続で前年同月を上回りました。

<総評>
近畿圏における成約件数がやや減少しているものの、前年同月を下回ったのは4ヶ月ぶりとなっています。それ以外の項目は全て増加していることから、全体として上昇傾向にあるといえます。

地価の上昇はどのくらい続くの?

中古マンションなどの建物以外の不動産としては、土地があります。日本の土地の価格を示すデータとして、地価公示があります。これは、地価公示法という法律に基づいて、国土交通省の委員会が毎年11日を基準時として、全国の土地の価格を判定するものです。地価公示は昭和45年から毎年実施されており、平成30年の地価は同年327日に公示されました。

【出典】:国土交通省:地価公示http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html

全国の地価推移

全国の地価の推移については、住宅地の地価が0.3%のプラスで、10年ぶりの上昇となりました。商業地は1.9%プラスで、これは3年連続で上昇しました。

住宅地の地価の上昇については、雇用や所得などの労働環境の改善と、低金利による需要の下支えが要因と見られます。商業地の上昇については、外国人観光客の増加や都市部の再開発の進展などによって、不動産物件の需要が続いていることが要因と見られてます。

東京都内の地価推移

東京都内の地価の推移については、住宅地が3.9%プラス、商業地が6.4%プラスで、どちらも5年連続で上昇しています。

住宅地については、都心部の堅いマンション需要、雇用情勢の改善、低金利環境の継続、などがプラスの要因と見られます。商業地については、店舗を中心とした都心の高度商業地については、都心部の再開発による活性化、商業集積度の向上、などがプラスの要因と見られます。

今不動産の価格は上がっている?

中古マンション市場と土地の価格の推移について見てきましたが、不動産投資用の物件としては、新築のマンションの価格の動向も気になるところです。

新築のマンション価格の推移

新築マンションの価格の推移を探る場合にも、先にご紹介しました、「不動産市場動向マンスリーレポート」が役立ちます。
以下、マンスリーレポートの平成303月分のデータに基づいて、新築マンションの動向を見ていきます。

首都圏

首都圏における新築マンションの価格の推移を見ていきます。

<首都圏の20183月の新築マンションの価格の推移>
平均価格
:平均6,220万円で、前年の同月と比較して11.3%増加しました。

㎡単価
1㎡あたり90.7万円で、前年同月比で14.8%増加しました。

<東京都の20183月の新築マンションの価格の推移>
平均価格
:平均7,094万円で、前年同月と比較して7.0%増加しました。

㎡単価
1㎡あたり110.3万円で、前年同月比で13.9%増加しました。

<総評>
平均価格と㎡単価がともに増加していることから、首都圏の新築マンションの価格は、東京都を中心に上昇しているといえます。

近畿圏

次に、近畿圏における新築マンションの価格の推移を見ていきます。

<近畿圏の20183月の新築マンションの価格の推移>
平均価格
:平均3,695万円で、前年の同月と比較して7.3%減少しました。

㎡単価
1㎡あたり65.2万円で、前年同月比で4.8%増加しました。

<大阪府の20183月の新築マンションの価格の推移>
平均価格
:平均3,307万円で、前年同月と比較して19.1%減少しました。

㎡単価
1㎡あたり73万円で、前年同月比で3.4%増加しました。

<総評>㎡単価は増加しているものの、近畿圏全体と大阪府の両方で平均価格が減少しました。特に、大阪府における減少は2桁に達しました。近畿圏においては、新築マンションの価格は下落傾向にあるようです。

中古マンション価格の推移

首都圏

首都圏における中古マンション価格の推移について見ていきます。

<首都圏の20183月の中古マンション価格の推移>
成約平均価格
:平均3,369万円で、前年の同月と比較して7.1%増加しました。63ヶ月連続で前年同月を上回っています。

成約㎡単価
1㎡あたり52.11万円で、前年同月比で5.7%増加しました。61ヶ月連続で前年同月を上回っています。

<東京都の20183月の中古マンション価格の推移>
成約平均価格
:平均4,225万円で、前年同月と比較して9.6%増加しました。44ヶ月連続で前年同月を上回っています。

成約㎡単価
1㎡あたり70.21万円で、前年同月比で8.1%増加しました。63ヶ月連続で前年同月を上回っています。

<総評>成約平均価格と成約㎡単価がともに増加しており、どの項目も数年以上連続して前年同月を上回っていることから、東京都を中心に首都圏の中古マンションの価格の上昇が続いているといえます。

近畿圏

次に、近畿圏における中古マンション価格の推移について見ていきます。

<近畿圏の20183月の中古マンション価格の推移>
成約平均価格
:平均2,188万円で、前年の同月と比較して3.6%増加しました。4ヶ月連続で前年同月を上回っています。

成約㎡単価
1㎡あたり31.8万円で、前年同月比で4.3%増加しました。39ヶ月連続で前年同月を上回っています。

<大阪府の20183月の中古マンション価格の推移>
成約平均価格
:平均2,254万円で、前年同月と比較して1.3%減少しました。4ヶ月ぶりに前年同月を下回りました。

成約㎡単価
1㎡あたり33.3万円で、前年同月比で0.3%増加しました。39ヶ月連続で前年同月を上回っています。

<総評>
大阪府における価格がやや減少しているものの、前年同月を下回ったのは4ヶ月ぶりであり、他の項目は全て増加していることから、近畿圏全体としては中古マンションの価格は上昇傾向にあるといえます。

今後の不動産の価格推移はどうなる?

ここまでで、2018年における不動産の動向は把握できたと思います。建物としてのマンションと土地の両方について、全体として上昇傾向にあることが伺えます。次に気になってくるのは、2018年以降の不動産価格の推移についてです。このまま上昇傾向が続くのか、それとも下がってしまうのでしょうか?

以下、解説していきます。

東京オリンピックに向けて不動産価格は上がる?

今後の不動産価格の推移を探る上で、重要なポイントが1つあります。それは、2020年に開催される東京オリンピックです。日本では実に56年ぶりの開催となりますが、オリンピックの開催はその国の経済に大きな影響を与えるため、不動産についてはどうなるのか気になってきます。東京オリンピックの開催に向けて、中央区の晴海エリアなどを中心に、都内では選手などが居住するための物件が多数建設されています。

また、オリンピックによる価格の上昇を期待して、中国を中心とした海外の投資家によって、都心部のマンションなどの不動産物件の購入が増加しています。こうした動向からは、少なくとも東京オリンピック開催までは、不動産物件の価格は上昇していく見込みが高くなっています。

東京オリンピック後はどうなる?

東京オリンピックの開催後に不動産価格がどうなるのかについては、参考になる過去の事例があります。それは、2012年に英国で開催されたロンドンオリンピックです。

ロンドンオリンピックの終了後に英国政府が実施した調査では、オリンピックの開催と不動産価格の変化には関連性がなかった、という結論が出されています。

投資家たちもこの結論を把握していると思われるので、現在投資が行われている物件については、価格が下がらないうちに売り抜ける可能性があります。売り抜けが多くなれば、不動産の価格が現時点で上昇していても、オリンピック開催後の時点では大きく下落することが予想されます。

また、オリンピックの開催決定などを原因として、東京に多くの人口が流入していますが、人口流入は2020年にピークに達した後、徐々に減少していくという予想があります。人口の減少が始まれば、オリンピック開催を見込んで建設された物件が余ってしまい、供給過多によって価値が下がることになります。

こうした状況をまとめると、東京オリンピック開催後に不動産価格が下落する可能性についてはゼロではないといえるでしょう。

価格が落ちにくいエリアは?

東京オリンピックの開催後に不動産価格が下落してしまう可能性がある中では、価格が下がりにくいエリアを知りたくなりますね。東京オリンピックによる影響に関係なく、価格が下がりにくいエリアは2つあります。

1:利便性の高いエリア

2:従来から人気のある高級エリア

利便性の高いエリアとは、交通の便が良い、住環境が良い、安全性が高い、などの条件を満たす地域です。東京オリンピックが開催される都内でこれに該当するエリアは、山手線の主要駅に徒歩10分以内で行ける地域です。

従来から人気のある高級エリアは、そこに住むこと自体がブランド化しているため、価格が下落しにくいのが特徴です。都内でこれに該当する地域としては、港区、千代田区、品川区、渋谷区などの人気エリアが該当します。

最後に

2018年度の不動産価格の推移と今後の予測について見てきました。2018年の不動産の価格の動向については、中古マンション、新築マンション、土地の3つについて、いずれも全体として上昇傾向にあることがわかりました。2018年以降の予測については、2020年に東京オリンピックが開催されることもあって、開催地である東京を中心に、不動産の建設や購入が活発になっています。

一方で、オリンピック後に予想される不動産の供給過多や人口の減少によって、不動産の価格が下落する可能性もあります。今後の不動産の動向については、下落の兆候に注意しながら、価格が上がりきるタイミングを見逃さないようにすることが重要です。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)