今までの不動産競売は、不法占有や立ち退き交渉などによるトラブルも少なくはなく、一般個人の方の入札参加はほとんどありませんでした。しかし、競売のトラブルに対する法整備も進み、不動産を格安で購入できる可能性に大きな注目も集まっていることから、近年では一般個人の方の入札件数が増加しています。

不動産競売では入札のための検討期間が限られており、出来る限り情報を早く手に入れることが大切ですが、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。

競売物件の情報を早く手に入れる方法

競売物件は物件検討の期間が限られていますので、物件の情報を早く手に入れることが重要です。

不動産競売情報はBITに掲載される

不動産競売情報はBITという不動産物件情報サイトに掲載されます。

BITでは、入札期日などのスケジュールが確認できるほか、公告日又は公告日の翌日には、3点セットと呼ばれる「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の閲覧が可能となります。この3点セットによって競売の対象となる物件及び権利、売却基準価額の根拠などを確認することができます。

公告日から入札終了日までは1カ月前後であることが多く、その間に物件の確認、入札額の検討を行わなければならないため情報を早く入手することが大切なのです。
・不動産競売物件情報サイト:http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/

BITとは裁判所が運営する競売物件情報サイト

BITとは「Broadcast Information of Tri-set system」の頭文字が由来となっており、最高裁判所から委託を受けた企業が管理運営を行っています。閲覧可能な3点セットは競売を実施する裁判所から提供されていますので、従来は裁判所でなければ閲覧できなかったものがBITで確認できるようになりました。

競売物件情報以外にも競売に関する知識を学べる

BITには競売物件の情報以外にも競売に関する用語集などが掲載されています。

不動産の競売では、様々な不動産用語、法律用語が使用されます。競売情報を正しく理解するためには、これらの用語の理解が不可欠です。不明な用語が出てきた場合にはBITで調べることができます。

また、気に入った競売物件に入札を行うためには、必要書類や一定の保証金などを不備が無いように準備をして手続きを行う必要があります。不動産執行手続、売却手続、入札等の手続、引渡命令手続について、その流れや手続きの方法についての説明もBITには掲載されています。

このように競売物件情報以外にも競売に関する知識を学ぶことができるサイトになっているのです。

基本的には競売物件は全てこのサイトに掲載される

一部を除き、基本的にはほとんどの競売物件がBITのサイトに掲載されます。

したがって、競売によって売却の対象となる宅地・戸建住宅・マンション・農地など、実に様々な不動産の情報がBITに公開されることとなります。また、BITでは日本全国の裁判所で取り扱う競売物件の情報が公開されます。

地域別の検索も可能

BITでは複数の条件から競売物件の情報を検索することが可能です。

裁判所や事件番号から検索することも可能ですが、もし競売物件を購入したいエリアが決まっているのであれば、地域別の検索がお勧めです。地域別の検索では、市区町村レベルまで検索対象地域を絞り込むことができます。

また、地域よりも通勤などの交通利便性を重視するということであれば、JR、私鉄など沿線ごとに競売物件を検索することができます。

これらの検索の際に、「土地」「戸建て」「マンション」「その他」の不動産の種別から検索できるほか、売却基準価額の範囲を設定して検索を行うこともできるようになっています。

売却基準価額とは、裁判所から選任された評価人による評価額に基づいて定められた競売不動産の価額のことを指します。通常は売却基準価額の8割の価額が買受可能価額となり、競売物件の買受を申し出るに際して最低限必要な金額となるため、売却基準価額で検索することによって予算に合わせた物件検索が可能になります。

過去の売買事例も検索可能

競売物件は格安で購入することができると言われますが、買受可能価額で入札すれば落札ができるという訳ではありません。競争入札の制度なので、最も高い金額を入札した人が購入する権利を獲得するというシステムになっています。このため人気の高い物件の落札金額が売却基準価額を遥かに上回る金額になることも珍しいことではありません。

競売物件の入札に当たっては、対象となる物件の情報を集めて、調査・検討することが大切ですが、類似の物件がどれくらいの金額で落札されているのかを知ることも大変重要です。高額な金額で入札をすれば落札できる可能性は高くなりますが、高すぎる金額での落札は競売物件を格安で購入するというメリットを失うことになります。

BITのサイトでは競売物件の開札結果だけでなく、最大で過去3年分の売却データを照会することができます。これらのデータも入札金額の検討に役立ちます。

BITに載る前の競売情報を手に入れるには

競売物件の情報をBITに掲載される前から手に入れることができれば、有利な立場となる可能性が高くなります。

不動産競売物件を扱う不動産会社に相談する

BITに掲載される前に競売物件の情報を入手する方法として1番おすすめなのは、不動産競売物件を扱う不動産会社に相談することです。

不動産会社にもさまざまな特色があり、賃貸の仲介だけという会社やマンションの売買に特化しているという会社などもあります。不動産競売物件は、広く取り扱われている訳ではありませんが、競売物件を中心に取り扱っている不動産会社も少なからず存在します。

BITに競売物件が掲載されるまでタイムラグが有る

競売物件を取り扱う不動産会社がBITに情報が掲載される前に情報を入手することができるのには理由があります。

BITに競売不動産の情報が閲覧可能となる日は、通常、公告日又は公告日の翌日となっていますが、不動産競売開始決定の日には競売に出される不動産が決まっています。BITでの閲覧可能日までに裁判所は、競売物件及び関係者の調査を行い、売却基準価額を決定する3点セットを用意するため、BITに競売物件が掲載されるまでにタイムラグが発生するのです。

BIT掲載前に、競売ではなく任意売却での購入が可能

競売物件は裁判所で行われる入札において、最も高い金額で落札する方法だけが購入の方法ではありません。上記のように開札が行われるまでに、債権者の承諾を得て競売物件の所有者に物件を売却してもらう方法があります。これを任意売却といいます。

任意売却は一般の不動産の売買と異なり、売主と買主との合意だけでなく、債権者の承諾が必要です。債権者は物件の売却金額から債権の回収を図るために競売の申立てを行っているため、任意売却によって競売で見込まれる金額よりも安く売却が行われてしまうと債権回収の目的が果たせなくなってしまいます。ですので、債権者から任意売却の承諾を得られなければ、差押えが解除されず、抵当権などの担保権も消すことができません。

競売物件を専門に扱う不動産会社に相談する

任意売却で競売物件を購入するためには、競売開始の決定から開札までの短い期間で売買を成立させる必要があります。このためには競売物件の所有者である債務者だけでなく、債権者から任意売却の同意を得るための交渉が必要となり、競売と不動産売買の両方の専門的な知識が不可欠です。

また、競売による物件取得も一般の売買と異なり、物件を内覧することが難しかったり、競売物件の調査や確認を行うための期間が短く、入札額を決めることが難しかったりするなどの問題があります。

このため、一般個人の方が競売物件を任意売却で取得したり、競売で落札したりすることは容易ではないことから、競売物件を取得したい場合には競売物件を専門に扱っている不動産会社に相談されることをおすすめします。

競売物件を専門に扱う不動産会社は、競売の手続きや不動産の調査方法について熟知しており、裁判所が競売の申立が行われた際は、「配当要求終期(競売申立債権者以外にも債権がある債権者に対し、執行裁判所に債権を有する旨を 申し出てもらう)」の公告をする必要があり、それによって公開される物件目録から、BITに競売物件の情報が公開される前に物件情報を把握しているケースも多くあります。

981.jpでは競売物件を扱う会社に相談できる

一般社団法人不動産競売流通協会が運営する「981.jp」というサイトを利用すると、競売物件の購入についてサポートを受けることができます。

具体的には、一般社団法人不動産競売流通協会に所属する競売物件を扱っている会社から、競売に関する疑問点に対する回答を受けることができます。このような質疑応答を通じて信頼に足る会社だと思われたら、個別に依頼をすることで競売物件取得に向けた手厚いサポートを受けることも可能です。

まずは無料会員登録をして、競売による物件取得についての不安や疑問などの問い合わせをされてみてはいかがでしょうか。
・一般社団法人不動産競売流通協会:http://981.jp/

最後に

競売物件を手に入れるためには情報収集が大切ですが、それらの情報を検討した上で適切な判断を下すためには経験や知識も必要になります。この判断に際して専門的なサポートが受けられれば競売物件の取得も有利になりますので、競売物件を扱う不動産会社への相談を検討してみてください。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)