ここ数年、買うなら戸建て住宅物件=新築住宅という日本独特の図式が変わろうとしています。国の政策による後押しもありますが、中古住宅をリノベーションによって再生し、販売する動きが活発になってきています。動き始めたばかりの日本のリノベーション市場はどのようなものなのでしょうか。

リノベーション済み戸建て物件とは

中古住宅を業者がリノベーションして販売している物件

リノベーション済み戸建て物件とは、住宅メーカーや建築業者などによってリノベーションされて市場に出回っている戸建て住宅のことを言います。間取りや内外装などに手が入れられて美しく再生された住宅は、新築住宅の利便性と中古住宅ならではの魅力を併せ持ち、価格面からも人気となっています。

内装がきれいで新築のような魅力がある

リノベーション物件の魅力の一つは、新たに施された内装によって生み出される新しい空間です。間取りや壁面が再生されて息を吹き込まれた空間は新築住宅同様に真新しくきれいでありながら、どこかこなれていて落ち着いた空気感を併せ持ちます。

新築住宅よりもお得に購入できる

新築住宅同様に仕上げられたリノベーション物件ですが、ベースは中古住宅ですから新築住宅よりも費用が抑えられている分、よりお得感のある物件の価格設定が可能となっています。マイホームは欲しいけど新築は高くて手が出ない、キッチン周りや書斎スペースにこだわりたい、子供たちが独立したので夫婦二人の生活を大切にしたいという場合など、リノベーション物件は有効な選択肢と言えるでしょう。

最新の設備で居住性もより高く

リノベーション物件はほとんどの場合、水回りなどの住宅設備は最新の物に更新されますから、この面でも新築住宅と変わるところはありません。日本家屋が持つどこか懐かしい雰囲気を味わいながらも、日々の生活は技術の進化に裏打ちされた快適さと利便性を享受することが可能であること。リノベーション物件の魅力は、こんなところにもあります。

自分でカスタマイズできる住宅もある

また事前に希望や要望を伝えることにより、自分好みにカスタマイズできる物件もあります。こんな家に住むのが夢だった、マイホームを持つならここだけは妥協したくない。このような夢は誰しも持ったことがあるでしょうが、新築で一から造っていくよりは安価に夢を現実のものにできるチャンスでもあるのです。

リノベーション済み戸建てに住む方法は

それではリノベーション済み戸建て住宅はどのように探せばいいのでしょうか。

リノベーション済み物件を扱うサイトで探す

まずはリノベーション済み物件を取り扱うサイトで探すこと。筆者がランダムに探したサイトで確認したところ、1都6県で195,000件超の物件が提示されました。

中古住宅情報サイトで条件設定をして探す

中古住宅住宅情報サイトでリノベーション済み物件を探してみたところ、東京都で1000件超がヒットします。それぞれ希望エリアで絞り込むことが可能ですから、リノベーション物件を探す際にはチェックしておきたいところです。

リノベーションを手がける工務店や会社に問い合わせる

リノベーションを手掛ける会社も増えていることから、工務店やリノベーション会社に問い合わせるのも良いでしょう。テイストが自分に見合うリノベーション会社、得意分野がはっきりしている会社なら、物件の紹介や申し込みを依頼しておくことも一つの方法です。

仲介会社経由で探してもらう

リノベーション会社に中古物件を紹介する不動産会社がある場合も多く、また業界内部で情報が流れることもあるので、仲介会社に物件探しを依頼するのも効果的です。その際、予算や希望エリアなどの条件を伝えておくと良いでしょう。

中古住宅を探して自分でリノベーションしても良い

リノベーション済み物件の市場が拡大しているとはいえ、中古住宅市場に比べると規模はまだまだこれからといったところです。ならば気に入ったエリアの中古住宅から予算、希望に合う物件を自分で探し、自分でリノベーションしてしまうという選択もあります。

自分で中古戸建て住宅をリノベーションする方法

そんな経験はないし、失敗したらどうしよう?と思いますよね。では、自分で中古住宅をリノベーションするにはどうすればいいのでしょうか。

間取りや設備にこだわることも可能

自分でリノベーションすることの利点に、自分好みにアレンジできるという点があげられます。たとえば間取りや設備にこだわりや思い入れがある場合、思う存分その箇所へのこだわりを追求することも可能です。新築の場合には予算や家族全体のことを考えてこだわりきれないポイントがあったとしても、もう少し自由に自分の思いを表現できる。リノベーションの良さは、そんなところにもあります。

再建築不可物件でもリフォームやリノベーションならば可能

通常では住居としてあまり価値がないように思われる物件でも、リノベーションすることによって再び輝きを取り戻すこともあります。例えば、現在建っている家屋を取り壊して再建築することができない、いわゆる「再建築不可物件」もそれに当たるのではないでしょうか。家を建てるには建築基準法でいう4m以上の道路に間口が2m以上接している必要があるという基本的な規制があるのですが、その規制が制定される以前に建てられていた家屋には、この規制の要件を満たしていない物件が存在します。こうした物件は再建築ができないので価格が安く、その代わりに購入費用をリノベーション費用に充てることが可能となるのです。

リノベーションを手がける工務店や会社に相談する

自分でリノベーションする場合に最も近道なのは、リノベーションを手がける会社に相談することでしょう。その際、自分の希望や要望を具体的に伝えることが重要です。漠然とした話だけでは施工する方も困ってしまいます。工務店やリノベーション会社はその道のプロですから、要望に応じてさまざまなアイデアを提案してくれるはずです。

自分で中古戸建て住宅をリノベーションする時の注意

自分好みにアレンジしたり利便性を高めることもでき、また、価格面でもメリットがあるリノベーションですが、もちろんデメリットもあります。

古すぎると耐震性や断熱性に問題があることも

現在の耐震基準が適用されていなかった時代の建物(1981年以前に建てられた家屋)は耐震性能に問題がある場合があり、補強工事が必要になる可能性がありますし、古い建物は断熱の仕様が施されていないこともあります。安心安全かつ快適な生活を送るためには、共に手を入れる必要があります。

瑕疵担保責任が認められない場合もある

古い建物の問題点として、購入時には発見できなかった不具合が見つかった場合、その損害賠償を求めるにあたって責任の所在を特定しにくいということがあります。新築住宅については建物の基本的な構造部分や雨漏りに関して、住宅を供給した事業者に10年間の瑕疵担保責任が義務付けられていますが、中古住宅では不動産会社(宅地建物取引業者)から購入した場合でも瑕疵担保責任は2年間、売買の仲介では数か月という場合もあるということを頭に入れておく必要があります。

ローン融資が下りないこともある

また金融機関から融資を受ける場合、中古住宅だと難しいことがあります。通常の住宅ローンでは認められずに金利が高いリフォームローンを利用することになるか、融資が受けられないことがあることも想定して資金調達を考えておくことが重要です。

建物の構造次第で不可能なリノベーションも

さらに建物の構造的な問題によって、希望とおりのリノベーションができない場合もあります。柱や梁で建物を支える日本家屋はリノベーションしやすいと言われていますが、それでも触れられない柱、壁があります。壁や床で家を支える2×4の住宅でも同様です。それを踏まえた上でどうリノベーションしていくのか、専門家などとよく相談していくと良いでしょう。

狭い場所にある場合は工事が行いにくく、工事費が掛かる

実際にリノベーションするに際しては、工場車両や職人さんの出入りがしやすいかどうかも影響してきます。車両が入れない細い道路や路地などの場合には、その分費用がかさむことも想定しておく必要があります。

必ずホームインスペクションをする

中古住宅を購入した後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、購入前に最低限の家屋調査は行いたいものです。そんな場合に利用したいのがホームインスペクションで、建物の内外、屋根・外壁や床下を目視で調査してくれるものです。目視とはいえ第三者の視点で建物の異常や不具合をチェックしてもらえますから、近年利用者が増えています。

最後に

日本は中古住宅市場が未成熟だとよく言われます。住宅と言えば新築という昔からの考え方を捉えてのものでしょうが、近年のリノベーション人気を見ると日本の住宅事情も変化しつつあるのかもしれません。同じ費用をかけて無理に新築住宅を建てるより、なるべく安価に物件を手に入れて、その余剰金で自分だけのオンリーワンな価値ある空間を手に入れたい、生活そのものを楽しみたいという思いの表れなのでしょうか。もしかしたら、リノベーションが日本の住宅事情を変えることになるかもしれませんね。