5年に1度行われる総務省の「平成25年住宅・土地統計調査(※)」によりますと、日本の空き家はナント820万戸に昇るとされています。空き家が増えることにより、治安や安全面・景観・衛生面などに悪影響を与えさまざまな問題が発生します。この記事では、空き家が増加している理由とそれに対する自治体の取り組みや解決策などについて解説をいたします。空き家をお持ちの方は、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
※出典:http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_1.html

空き家が増加することによりどんな問題が生じているの?


まず空き家が増えることにより生じる問題点につきまして解説をいたします。

治安悪化の問題

長い期間、人が住んでいない家には、住所不定の人が住み着く恐れがあります。家の中で何が行われているかわからず、犯罪の温床になることもあります。また近年は空き家への放火も多く、朽ち果てた木造住宅は燃えやすいため、火がつけば「あっ」という間に燃え広がってしまいます。空き家があると治安が悪化し、周辺に住んでいる人は安心して生活することができなくなります。

管理されない住宅の増加で崩壊事故増加の恐れ

空き家になると、日頃の掃除や補修が行われず空気の流れも悪くなりますので、建物の老朽化が早まります。また道路に面した外塀や外壁が崩れると、通行人に被害を及ぼす危険があります。とくに近年は豪雨・台風や地震などが頻発していますので、崩壊事故の恐れもあります。

新築住宅用地が生じにくい問題も

空き家を取り壊すには解体費がかかり、さらに更地にしてしまうと固定資産税が高くなってしまいます。それゆえ空き家の所有者は建物を放置したままにしてしまうことが多いのでしょう。

しかし、売却せずに放置をしていると、その土地を購入し家を建てたいと思っている人がいても購入が不可能で、新築住宅用の土地が生まれにくくなります。またその地域に空き家が何件もできるようになると、その建物だけの問題ではなく周辺地域の価値の低下や街の荒廃を引き起こすことにもなってしまいます。

景観の悪化や衛生面の問題も

今にも壊れそうな空き家があったのでは景観は悪くなり、気に入った地域であってもその近隣に住もうという人は少なくなります。人が住んでいないと野良猫のたまり場になり、ネズミやゴキブリなどの温床となり、挙げ句の果てにはごみが不法投棄されるようなことになってしまいます。衛生面でも大変に問題となり、近隣の人たちに多大な迷惑をかけることになります。

空き家が増加している理由は?


以前の日本では人口が増加し、住宅が不足していた時がありました。今でも各地で住宅が建設され続けてています。ここで空き家が増えている原因を確認します。

人口は減少しているのに住宅は増え続けている

2011年より日本の人口は減少してきています。しかし、大都市でも地方都市でも住宅の建設は行われています。各自治体は人口を増やしたいとの目的で、建築規制を緩和して住宅の増加を推進してきました。そのため、特に郊外の住宅地では、販売価格を値下げしても売れずに残る住宅が増え続けています。

建築基準法施行以前に建てられた「再建築不可」物件は建て替えができないため

建築基準法が施工される以前に建てられた再建築不可物件は、その住宅を取り壊してその土地に新たに家を建てることはできません。例えば建築基準法には「前面の道路幅が4m以上なければならない」とか、「道路に2m以上接していない土地には住宅を建てることができない」などの規制があります。これらの事項に該当する土地には住宅を建設することはできず、放置されたままになっている古家が散見されます。

地方出身者が都心に上京して地元に戻らない

地方出身者は一度東京に出てくると、地元には帰らない方が多い傾向があります。地元に戻っても働くところがないとか、大都会の方が楽しいなどさまざまな理由があります。その様な場合、親が亡くなると誰も家を継ぐ人がいなくなり、必然的に親が住んでいた住宅は空き家になってしまいます。

空き家解体には費用がかかる

空き家を取り壊す費用は、一般的に150万円~200万円程度かかります。それゆえ解体費用がないという理由で、取り壊すことができない空き家もあります。また相続した住宅では、相続人のうち誰が取り壊し費用を払うのかといった問題が発生することもあります。

空き家を更地にすると、固定資産税が増える

土地を所有すると、固定資産税を支払わなければなりません。しかし200㎡以下の敷地に住宅が建っている場合には、固定資産税が1/6になるという軽減措置があります。また200㎡を越える敷地の場合には、住宅の床面積の10倍までは固定資産税が1/3なります。更地にすると軽減措置がなくなり、税金が高くなりますので、住宅が老朽化しても解体をしない場合が多々あります。

日本の中古住宅市場は海外ほど売買が盛んではない

日本の中古住宅の売買は、欧米に比べてあまり活発におこなわれていません。建築してから22年を越す住宅の税制上の資産価値はほぼなくなり、市場価値も下落しますので、売れ残ることが多く、必然的に空き家が増えることとなります。

空き家増加に対する国や自治体の取り組み


増加する空き家に対して、国や各自治体はどのような取り組み行っているのでしょうか。

解体費用に対する補助金の支給

老朽化した住宅の解体費用を助成する自治体もあります。例えば倒壊の恐れのある住宅や崖に建てられた危険な建物、そして1年以上居住の実績がない家など、自治体によって助成する条件は様々です。また助成金の額も20万円程度~100万円程度までと自治体によって異なります。

空き家バンクを創設

「空き家バンク」とは、若者や子育て世帯・農業に従事する人の定住化を目的として、自治体が空き家を紹介する制度です。自治体のホームページや広報誌などで希望者を募集し、補助金の助成や各種の情報提供がおこなわれています。観光分野や福祉用途などに対し、取り組みを行っている自治体もあります。

空き家管理サービスを提供する会社の登場

空き家は放置して置くとどんどん劣化しますが、遠隔地にある場合や、所有者が高齢の場合には管理が難しくなります。そこで生まれたのが空き家管理サービス会社で、管理をおこなうことによりきれいな住宅のまま維持することができます。おもな業務内容は室内の換気や郵便物の整理・庭木の剪定・住宅内部及び外部の状況確認などがあります。費用は月に数回巡回して4,000円から10,000円程度となっています。

空き家管理を行う民間団体もある

空き家管理をおこなう自治体もありますが、民間団体やNPOなどにより運営をされている場合もあります。これらは比較的狭い地域で活動していることが多く、規模はさほど大きくはない傾向があります。業務内容は空き家及び空き地の管理・空き家についての相談などが主となっています。

空き家対策特別措置法の施行

「空き家対策特別措置法(※)」は2015年に施行された法案で、空き家問題による地域への危険性や衛生面などの問題に対処するために作られました。空き家の中で危険性のあるものを「特定空家等」と定義し、所有者が積極的に改善をしないと、行政からの強制処置を求められることとなります。強制的に建物を解体され、固資産税の特例措置を受けることができなくなります。その場合でも解体に要した費用は所有者が負担しなければならず、費用を負担できない場合には財産の差し押さえもおこなわれます。
※出典:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

空き家問題を解決する手段はあるの?


さまざまな問題を引き起こす空き家ですが、それではどのようにして解決したらよいのでしょうか。

空き家バンクで貸出しを検討する

空き家バンクは、空き家を活用したいと思う所有者と空き家を探している人のマッチングサービスです。お互いにメリットがありますので、空き家バンクの利用を検討してみることが有効です。。

管理できないときは売却も検討する

空き家では掃除や通風などの管理やメンテナンスが大変ですし、費用もかかります。また更地と比べれば減税措置があるとはいえ、固定資産税や都市計画税を払わなければならず、税金も負担となります。管理が難しいならば、売却を検討してみましょう。

リノベーションして賃貸物件として活用する

空き家をリノベーションし賃貸物件とすることは、費用が掛かりますのでまだあまりおこなわれていません、しかしリノベーションをすることにより、建物は再生し資産価値がアップしますので検討する価値があります。

補助金を利用して取り壊し、更地にして売却する

老朽化した空き家を売りに出しても、なかなか買主は現れずさまざまな問題が起こる可能性があります。そのような場合には、自治体による補助金を利用して取り壊し、更地にして売却するのも一つの方法です。補助の内容は各自治体により異なりますので、各市町村のホームページで確認し、または直接問い合わせをしてみると良いでしょう。

最後に


いかがでしたか?

少子高齢化社会となり、新しい住宅の建築が進む中、空き家問題が街全体の大きな課題となっていますす。空き家を放置したままにしておくと、いままで述べてきましたようにさまざまな問題を引き起こす恐れがあります。解決する手段もいくつかご提案しましたので、検討していただき、早急に解決することが大事です。

監修:大長 伸吉(不動産コンサルタント)