賃貸住宅に住むと、壁や床などを傷つけないようにとても気を使うものです。退去する時に高額な修理費用を請求される可能性があるし、入居時に預けた敷金が戻ってこないなんていうことも。特に壁は物を掛けたり貼ったりと利用しますし、壁紙を全部貼り替えるとなると高額になる部分でもあるので、補修の範囲をよくチェックしておきましょう。

国土交通省による原状回復のガイドライン

そもそも原状回復とは何を指すのか、どの程度までを修復すべきなのか。曖昧だったこの部分を明確に示したのが、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)です。賃貸住宅の退去時の補修費用や敷金の精算に関するトラブルが後を絶たないことから、裁判事例も含めて提示されました。

【出典】原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html

大家さん負担の原状回復

壁や天井部分に関しての負担は、以下のようになっています。

電気焼け(冷蔵庫やテレビなど)

冷蔵庫や大型テレビなどを動かすと、すすけたような跡が壁紙に付いていることがあります。これらは普通に使用していても出るものですから、通常は貸し主の負担で修復するものです。

壁に貼ったポスターなどの跡

長年貼ったままだったポスターなどを剥がすと跡になっていることがありますが、通常使用の範囲であれば貸し主負担となります。

エアコン設置による壁の穴、跡

エアコンは貸し主が設置している場合もありますが、借り主が設置する場合でも貸し主負担です。

クロスの変色(通常の日照)

あくまでも普通に使用していての日焼けは貸し主負担となります。

画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えが不要なもの)

壁紙の下には石膏ボードなどが張ってありますが、この張り替えが必要ないくらいの小さな穴は貸し主負担です。

借主負担の現状回復

では、借り主の負担となるのはどのような場合でしょうか。

台所の油汚れ(掃除不十分)

手入れや掃除不足などによる油汚れは借り主の負担です。

結露放置のカビ

建物の構造上起こる結露は貸し主に報告して修理してもらうなどできるはずですが、報告せずに放置しておいた結果広がったカビは借り主の負担となります。

タバコのヤニ、におい

これらは問答無用で借り主負担です。

落書きの汚れ破損

子供の落書きや破れなどは借り主負担となります。

釘穴、ねじ穴(下地ボードの張替えが必要なもの)

先に下地の張り替えが必要ない程度のピン穴は貸し主負担と記載しましたが、クロスのみならず下地の張り替えが必要となる程度の穴は借り主負担となります。

このように普通に掃除しながら使用していた場合の経年劣化は貸し主の負担ですが、掃除や手入れを怠ったことによる傷や劣化は明確に借り主の負担とされています。

注意しておきたいのは、退去時の壁紙の補修に際して減価償却という概念が適用されることです。壁紙の耐用年数は6年とされており、6年以上住んだ賃貸住宅の壁紙の補修費用を負担する必要があるのかという問題が提起されることがあります。個々の状況によって判例は出されるのでしょうが、あくまでも借りて住んでいるという事実を忘れてはなりませんね。

退去時の負担なく、壁掛け家具を設置する方法 4選

借りているから壁を傷めたくない、でも多少は部屋を飾りたい。賃貸とはいえマイルーム、自分の空間なんだもの。こんな時にお役立ちの優れものをご紹介しましょう。

超強力石こう画びょう「ハイパーフックかけまくり」

たいていの壁は石膏ボードの上に壁紙が貼られていることが多いものですが、この石膏ボードは衝撃に弱く負荷をかけるための固定ができないという難点があります。そんな石膏ボードの弱点を克服してくれるのがハイパーフックかけまくりです。

ハイパーフックかけまくりは、二つのピンを持っています。この小さなピンが石膏ボードの中で広がって強力に固定させる力となります。かけまくりの最大荷重はおよそ8kg、ピン穴が小さいので安心して使用できます。まさに石膏ボードを活かすための強力アイテムと言えます。
ハイパーフックかけまくり:https://www.amazon.co.jp/-HHT21M-S2/dp/B003I4RYEK

取り外し簡単「壁美人」

こちらも石膏ボード専用のツールです。使用するのは何とホチキスで、専用の金具やフィルム(ポリカーボネート)が必要です。ホチキスと言っても棚やラックなどが設置できる本格的なツールの壁美人、これ一つあればひと通りの壁利用は可能なのではないでしょうか。耐震性能はどうなのと思うでしょうが、震度6でも大丈夫とのことですよ。

壁美人:https://www.amazon.co.jp/dp/B01BGE1C2I/

粘着剤「ひっつき虫」

ひっつき虫は貼って剥がせるソフトな接着剤です。ポスターや掲示物を壁に貼ったり、置いた物を固定したい時に便利なアイテムです。ラックなどに置いたフィギュアや小物をディスプレイとして演出したい時、壁に穴を開けたくない時にお役立ちです。

ひっつき虫:https://www.amazon.co.jp/dp/B0012R4RPY/

無印良品の「壁に付けられる家具シリーズ

こちらも石膏ボード専用の家具です。専用のピンとフックだけで、本格的な家具が設置できます。設置できると言うよりも、見せるディスプレイが可能な家具と言うべきかもしれません。その家具も木材を使用したしっかりとしたもので、デッドスペースができがちな壁面をおしゃれに演出できそうな家具が並びます。一度試してみたいと思わせられるマストアイテムですね。

どうしても小さな穴、傷が付いてしまったら

どれだけ気を付けていても傷が付いたり、穴が気になることはあるものです。ちょっとした傷なら修復可能なので、こちらもチェックしておきましょう。

壁に穴を開けてしまった

穴の周囲の壁紙を四角に切り取ります。石膏ボードに開いた穴を接着剤や補修剤などで固めてパテで埋め戻し、下地を整えたら先ほど剥がした壁紙を貼り直します。その際、ローラーやヘラなどで押さえて馴染ませるときれいに仕上がります。

壁紙を貼り直したい

ごく小さな壁紙の破れや傷は、壁紙を貼り直すことで修復できます。ホームセンターなどでは補修用の小さな壁紙を販売しているので、DIYで修復可能です。その際、色のチェックは忘れずにしておきましょう。

小さな穴を補修したい

これもパテなどで修復可能です。壁や壁紙の色に合わせて一つ常備しておくと、いざという時に助かりますね。ホームセンターなどでパテを買ってきましょう。

最後に

住宅に使用されることが多い石膏ボードの壁は、物を固定できないことが難点です。しかも賃貸住宅の場合だとなるべく傷を付けたくないために、利用したくても利用できないデッドスペースとなることがほとんどでした。しかしそんな石膏ボードの特性を活かして収納スペースを創り上げ、それを上手に見せてしまおうという優れたツールが人気となっています。

壁に傷をつけないようにすれば家の中を自分の好きなデザインに変えて、より楽しい賃貸ライフを満喫できます。これらの便利なアイテムを利用して、賃貸ライフを快適なものとしていきたいですね。