住宅ローンを借りる仕組みは、複雑で十分に理解できているという方は少ないのではないでしょうか。まずは、住宅ローンを借りる際に問題となる債務の負担の仕方についてみていきます。そして、連帯保証人・連帯債務者が問題となる場面としては、どのようなケースがあるのかご紹介します。後半では、連帯保証人にトラブルがあった際の対応方法並びに連帯保証人を解除する可能性について探っていきますので、是非最後までお読み下さい。

「保証人」「連帯保証人」「連帯債務者」のちがい

「保証人」、「連帯保証人」、「連帯債務者」は債務の負担の場面で問題となる言葉ですが、それぞれの性質の意味をよく理解しないまま債務を引き受けてしまうと、後々面倒な法的トラブルに巻き込まれてしまう可能性がありますので十分注意しなければいけません。

保証人

保証人は、債権者からの不当な請求を避けるために、以下のような権利・制度が用意されています。

催告の抗弁権

債権者が、債務者(「主たる債務者」のこと。以下同様)に請求することなく、保証人に対して返済の請求をしてきた場合に、先に債務者に対して請求を行うように主張することができる権利です。

検索の抗弁権

債権者が、債務者に請求することなく、保証人に対して返済の請求をしてきた場合に、先に債務者の財産から差し押さえるように主張することができる権利です。

分別の利益

保証人が複数名いる場合に、各保証人が返済責任を負う負担額は、返済額を保証人の頭数で割ったものに限られます。

連帯保証人

連帯保証人は、単なる保証人とは異なり、以下のような特徴があります。

・債務者本人の返済が滞ってから請求を受ける
連帯保証人は、単なる保証人とは異なり、上記の「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」がありません。よって、債権者から突然返済を迫られた場合でも応じなければいけないことになります。しかしながら、債務者が返済を滞納していないにもかかわらず、返済しなければいけないわけではありません。

・持分に応じて住宅ローン控除の適用を受けることができない
住宅ローンの控除は、債務者のみを対象としています。したがって、債務者ではない連帯保証人は住宅ローンの控除の適用を受けることができないことになります。

連帯債務者

連帯債務者は、保証人・連帯保証人とよく比較されますが、以下のような特徴があります。

・「債務者」そのもの
連帯債務者は、債権者と直接的に契約をして義務を負担する「主たる債務者」と法的地位及び同じ責任を負担することになります。すなわち、契約を締結した債務者と同様に捉えられることになります。

・金融機関からの請求をいつでも受ける可能性がある
連帯債務者は、債務者の法的地位と同じですので、保証人が有するはずの「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」がありません。したがって、直ちに債権者から返済の請求をされたとしても拒むことができません。

・持分に応じて住宅ローン控除の適用を受けることができる
住宅ローンの控除は、債務者を対象としています。連帯債務者の場合、債務を各債務者が負担する持ち分が決められていますので、この持ち分に応じて住宅ローン控除の適用を受けることができます。

住宅ローンを借りるときに保証人は必要?

住宅ローンを借りる際に、必ずしも保証人を立てなければいけないという常識は、もはや昔の考えになりつつあります。現在では、どのような保証制度の仕組みになっているのかみていきましょう。

住宅ローンを組むときには原則保証会社を利用

かつては、住宅ローンを組む際には保証人を用意することが必要でしたが、保証人を引き受けて頂ける人を探すことは、なかなかうまくいかないものです。そこで現在は、保証会社を立てることで、保証人を用意しなくても済むようになっています。

保証料として初期費用でまとめて払う

保証会社を利用する多くの場合では、住宅ローンを組む際に初期費用として、保証料をまとめて支払うことになります。

金利に上乗せして払う

最近では、保証人を付けないケースも増えてきたため、保証会社を利用しやすくなるよう対応も変わってきました。メガバンクや地方銀行では、金利に保証料を上乗せして支払うことで、保証会社の利用による住宅ローンを組めるようにしています。

保証料が不要な金融機関もある

フラット35やネット銀行等の一部の金融機関では、保証人をつける必要はなく、かつ、保証料もかからないことになっています。一方その代わりに、高額の事務手数料を負担しなければいけないのが一般的です。

どんなときに連帯保証人が必要?

連帯保証人の性質については見てきましたが、それでは連帯保証人は具体的にどのような場面で問題となるのでしょうか。実際のケースで検討しながら、みていきましょう。

夫婦や親子で“ペアローン”を組む場合

夫婦や親子が別々に債務者となって、住宅ローンを組む場合には、お互いが連帯保証人の役割を果たすことになります。

収入を合算して1本のローンを組む場合

先程のペアローンとは異なり、夫婦や親子等の収入額を合算して債務者を一人とすることもできます。この場合、金融機関によっては、その債務者のために連帯保証人を立てることになります。

土地や建物の名義が共有の場合

これは、先ほどのペアローンのケースと同様に、共有者それぞれが連帯保証人となることになります。

親名義の土地に子どもが家を建てる場合

この場合、金融機関の多くは親名義の不動産の担保提供をするのみでは納得せず、連帯保証人となるように求めます。

どんなときに連帯債務者が必要?

先程の連帯保証人が問題となる場面があるように、連帯債務者にも問題となる典型的な事例があります。実際にどのようなケースで問題となるのか確認してみましょう。

”フラット35”の収入合算者

フラット35は、住宅ローン契約を締結した主たる債務者以外の債務者は、連帯債務者となる典型的なケースといわれています。

親子リレーローン

親子リレーローンの場合、子供は親と共に連帯債務を負うことになり、また、完済まで新規の住宅ローンを組むことが難しくなってしまいます。

連帯保証人に関するトラブル

連帯保証人は多大な責任を負うことになりますので、トラブルが付きものです。万が一、債務者が返済できなくなった場合にはどのような結果となるのか、そして、離婚・相続の場合に連帯保証人から外れることができるのかどうかみていきます。

住宅ローンが返済できなくなった場合

住宅ローンを返済することができなくなると、通常、以下の通りの「売却」並びに「任意売却」の手続きが取られることになります。それぞれの内容と注意点について押さえておきましょう。

売却

住宅ローン返済ができなくなった場合には、競売による売却が考えられます。競売とは、住宅ローン等の返済ができなくなった場合に、裁判所の手続きにより売却を行い、その代金を返済に充てる手続きのことです。ただし、市場の相場で売れないことも少なくなく、ローンの多くの残債が残ってしまいます。また、競売の手続きを進める中で、債務者のプライバシーが近隣の方に知られてしまう可能性があります。

任意売却

任意売却とは、住宅ローン等の借り入れを返済できなくなった場合に、裁判所による競売の手続きを経ずに、金融機関の合意を得て、市場にて不動産の売却を行うことです。ただし、不動産の売却価格がローンの残高よりも低くなってしまう場合には、住宅ローンの債務者の生活に悪影響を及ぼしてしまいかねませんので、気を付けなければいけません。

離婚しても連帯保証人は外れない

連帯保証契約は、夫婦間の取り決めではなく、あくまで債権者との関係で問題となってきますので、夫婦の関係が悪化して離婚してしまったとしても、連帯保証人を外すことは極めて難しく、通常、残債を支払わなければいけないことになります。

相続でも連帯保証人の支払い義務は消えない

相続をするということは、亡くなった方の法律上の地位を受け継ぐことになりますので、相続人は連帯保証人としての支払い義務は消えないことになります。

連帯保証人を解除する方法

連帯保証人を一度引き受けてしまった以上、契約を解除することは並大抵のことではありません。しかしながら、以下で挙げる方法を実行することができれば、可能性が残されているといえます。

ローンの一括返済

ローンを一括で返済することで、元々の債務がなくなるわけですから、連帯保証人を解除することができるようになります。

住宅ローンの借り換え

住宅ローンを設定した金融機関を換えることで、連帯保証人を解除することが出できます。ただし、その分借り換え先の金融機関では、担保が減るわけですから、主債務者の収入などの資力が問われることになります。

代わりの連帯保証人を連れてくる

金融機関としては、万が一の場合の代わりの支払者がいれば良いのですから、他に適格な人がいれば、金融機関と交渉して連帯保証人を代わってもらうことが出来ます。ただし、よほど親しい関係になければ、連帯保証人を引き受けて頂けることはありませんので、適任者を探すのに苦労することが予想されます。

まとめ


住宅ローンを借りる際には、どのようなリスクがあるのかご理解頂けましたでしょうか。法律用語も多く含まれているため、簡単には想像がつきにくいかもしれませんが、債務の負担の仕方を何も知らずに借りてしまうと、後で取り返しのつかないことになってしまいかねませんので、十分に気を付けて下さい。

監修:高橋 政実(ファイナンシャルプランナー)