資産運用って結構難しいと思われている方も多いのではないかと思いますが、資産運用において大事なことはトレンドをきっちり把握することです。その長期的なトレンドというのは、言い換えると、景気のサイクル上、今どの位置にいるのか?を考える必要があるということになります。

もちろん数ヶ月単位での運用であったとしても景気のサイクルを理解するというのは重要であり、このサイクルの理解は不動産投資、株、FX、債券等全ての投資商品に通ずるものなので、是非これを機会に景気サイクルの理解を深めて頂ければと思います。

特に現在はリーマンショックから10年以上が経過しており、その間に起きていることは、金融緩和や緩和的な財政政策の両面から行なった結果から出来上がっている状態であり、ある意味一部の景気は作為的な相場と考えることもできます。

しかし人間がどれだけ頑張って景気を下支えしたとしても、景気の大きな資金の動きを簡単に止められる訳ではなく、「景気は繰り返す」と言われる通り、なかなか難しいことを理解しておきましょう。

景気サイクルの種類は?

景気の波というのは大きく4種類あると経済学では言われています。

1つ1つに決まった周期があり、またそれぞれ波の特徴があるため、それぞれの特徴や期間を覚えておくといいでしょう。景気のサイクルは昔から繰り返し起こっているものであり、人間がどれだけ無理やり調整しようとしても、一カ国が努力して変えられるようなものではないため、繰り返し起きているのかもしれません。

キチンの波

まずは「キチンの波」というものがあります。この期間は1年〜2年と言われています。

この変動要因の大きな点は「企業の在庫や経済活動による変化」です。2年の間であれば経済指標から少しファンダメンタルズが弱含んでいる点が確認出来るため、必ず微妙な変化というものは短期的な期間でも現れるものです。

そのため、一旦2年程度トレンドが続いたら止まる可能性がある事を視野に入れる投資家も多いと言われています。

ジュグラーの波

次に長い期間である「ジュグラーの波」というものをご紹介します。

このサイクルの要因は企業による設備投資の変化によって起きる景気循環であり、期間は大体10年前後と言われています。

これが10年程度と言われている理由は、企業が設備投資した時の償却期間が10年くらいというところからきているとも言われており、個人的には資産運用ではこのサイクルが一番重要ではないかと考えています。

このサイクルは別名「設備循環」とも言われています。

このサイクルはリーマンショックから11年目となっている今で考えると、大事なサイクル期間のピークに入っていると考えていいのではないかと思っています。

クズネッツの波

次に長い波は「クズネッツの波」です。これは設備ではなく、更に長い建設投資関連を要因として起きる景気循環とされています。期間は20年程度を1つの周期として考えられています。

この名前がついた由来は、経済学者のクズネッツが20年程度のサイクルで建設する建物の需要が上下を繰り返しているということを発見したところから定義づけされました。

この20年というのは人口動態のサイクルとも一致しており、人口の変動要因としても注目すべきサイクルとして捉えられています。

コンドラチェフの波

最後に一番長い波は「コンドラチェフの波」です。これは人間の進化の過程で必ずイノベーションが起きる期間が大体50年程度で変化することから定義されています。

これを投資に活かすのは難しいですが、知識としてこんなものがあったなという感じで覚えておくといいでしょう。

景気サイクルを投資に活かすには?

次に景気サイクルの種類を理解したところで、どのようにこのサイクルを投資に活かすかをご説明していきます。

それぞれ投資における期間は人それぞれ違うため、意識するサイクルも違うのではないかと思います。

このような景気のサイクルを投資に活かす方法は、現状がどのサイクルのどの位置にいるのかをまず判断することが重要です。

極端な例ですが、もしも政策金利を引き上げてきている国があった場合に、その国の景気サイクルの位置というのを景気の波で考えると天井をつけて景気を引き締めにかかっていることは容易に想像が出来るかと思います。

2019年の今現在は、景気サイクルのどの位置にいるのか

では実際に現状が景気サイクルのどの位置にいるのかを想像してみましょう。

冒頭でお話ししましたが、現在はリーマンショックから11年目に突入しており、アメリカでは米株も調子がよく、FRB(中央連邦制度理事会)も景気が良好な状態が続いていることから、政策金利を引き上げる動きをとっています。

この場合、中央銀行が政策金利を引き上げているということは、波でいうと景気拡大後期に突入しており、後起きることは、徐々に景気後退が近づき、金融引き締めから金融緩和へ舵を切るということになります。

つまり現在は「景気サイクルのピークは過ぎている」と判断できと思います。

好景気はいつまでも続かないと認識して行動すべきタイミングと言えるかもしれません。

だからこそ現在のマーケット環境で、まだ株の上昇は続くと考えている投資家に警鐘を鳴らしているアナリストが増えているのかもしれませんし、経済指標に落ち込む兆しが出ていることも景気のサイクルから考えたら当然のことと捉える投資家もいます。

では現在の状況を理解した上で、どのように投資に活かすべきかをご説明します。

次に訪れる景気サイクルが期間は分からないものの、景気の引き締めから起きる現象は、

1. 株の調整(下落)
2. 金利上昇ストップ or 金利低下(政策金利を上げる見通しが消えるため)
3. 金価格の上昇(株の下落や金利低下という景気後退局面における動きが発生した場合 、需要が高まるため)

ということが思いつくことになります。

もしも資産運用で世界の株のインデックスを保有していたり、日本株や米株の割合がポートフォリオ内で多く占めていたり、また不動産を実際に保有しているとなった場合には、このリスク資産と呼ばれる景気後退期には大きく影響を受けやすいアセットクラスの割合を低下させるという防衛策を取ることが出来ます。

またその割合を低下させるため、株を売却した場合にどの資産に残ったお金を回すべきかというと、債券や金というアセットクラスが選択されるという動きが世界で起きることになります。このような資金フローの転換を把握することが大切です。

もちろん今日明日にという話ではなく、長めのサイクルを見ながらの調整作業なので、焦って大きく割合を落とす必要はありません。

しかし実際に現在のマーケットに黄色信号が点灯しており、景気サイクルの局面を考えるとこのような防衛策を取ることは理に適っていると言えるでしょう。

景気サイクルを把握することで資産防衛を

上記で説明した景気のサイクルを理解することは、安定した資産運用の武器の1つになることはご理解頂けたでしょうか??

このサイクルを理解する意味は、長期的に次どのようなフェーズが到来し、そのフェーズにおける各商品の値動きを予想し対応することが出来るということに繋がるため、景気サイクルは覚えておくべきものと言えるでしょう。

「投資は難しい」と言われますが、「投資」ではなく「投機」が難しいだけであり、「投資」は大きなトレンドを把握することさえできれば、特に心理的負担なく、むしろ将来の大きな味方となります。

是非みなさん少しずつでも勉強し、資産運用の必要性を認識してもらえれば幸甚です。

【記事筆者】

中島翔
中島翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行に入行し、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト