REITとは、不動産の投資信託です。実物不動産よりも少ない金額で投資でき、4%前後の高利回りが期待できます。ただし、多くの銘柄があるので、「REITで個別銘柄を選ぶのは大変」、「もっと少額から不動産投資を始めたい」という投資家の方は、「東証REIT指数」を取引することをおすすめします。

今回は、東証REIT指数の詳しい仕組みと分析方法、そして実際に取引できる銘柄をご紹介していきます。まずは、東証REIT指数の定義から見ていきましょう。

東証REIT指数とは

東証REIT指数は、上場REITの値動き全体を表す指標です。上場REITは2019年1月現在、61銘柄が東京証券取引所に上場しています。東証REIT指数は、上場するREIT全銘柄を対象とした時価総額加重型の指数です。

時価総額加重型とは、算出対象銘柄ごとの現在価格に上場口数を掛けて全銘柄の時価総額を求め、基準日である2003年3月31日の時価総額を1,000(基準値)として、現在の時価総額がどの程度かを示したものです。

日本では、2001年にREIT市場が誕生しました。現在の時価総額は12兆円まで成長しています。一方、REIT先進国であるアメリカでは226銘柄が上場していて、時価総額は約112兆円となっています。日本の約10倍です。

株式時価総額では、米国市場が日本市場の5倍、GDPは4倍程度なので、日本のREIT市場はまだまだ小さいといえます。REIT市場は世界的に拡大しており、日本のREIT市場もさらなる拡大が期待されています。

東証REIT指数の推移

それでは、過去のREIT指数の推移をTOPIX(東証株価指数)と比較して見てみましょう。青のラインが東証REIT指数、赤のラインがTOPIXです。

出典:不動産証券化協会

2018年の日本のREIT市場(Jリート)は、長期金利が低水準で推移する中、好調な不動産市況によって+10.1%と堅調でした。株価指数であるTOPIXは-17.80%の下落となったので、対照的な値動きとなりました。

一口にREITといっても、対象は様々です。オフィス系に特化したREITもあれば、住宅や商業施設に特化したREITもあります。東証REIT指数は、それらの全銘柄を組み入れていますから、個別銘柄の動きに左右されず、市場の動きを的確に反映しています。

近年のREIT指数は、株価指数と対照的な動きをしており、分散投資の対象として地銀を中心とした機関投資家からの人気も高まっているのが、東証REIT指数の堅調な値動きの背景として考えられます。それでは、東証REIT指数の今後の値動きを分析するポイントを見ていきましょう。

東証REIT指数の先行きを分析するポイント

REIT指数はインフレになると上昇する

インフレとは、モノの値段が上がり、お金の価値が下がることです。インフレに強いといわれる資産の代表が不動産です。一般に好景気で物価が上昇すると、不動産の価格や賃料も上昇するからです。

東証REIT指数もインフレ率が上昇する局面で上昇するので、日本のインフレ率を見ておく必要があります。また、物価は原油価格にも影響を受けます。原油価格が上昇すればインフレ期待からREIT指数が上昇します。

予想分配金利回り

しかし、現在の日本はデフレです。デフレとは、インフレの逆で、モノの値段が下がり、お金の価値が上昇することです。デフレ経済の下でも、昨年のREIT指数は堅調な値動きとなりました。

その理由は、魅力的な分配金利回りです。下の図をご覧ください。

出典:不動産証券化協会

青のラインがJ-REIT(東証REIT指数)の分配金利回りとなっていて、現在は4%前後となっています。東証REIT指数の予想分配金利回りと、長期金利(赤のライン)との利回り差(スプレッド)が相場全体の過熱感や割安感を見る重要なポイントとなります。スプレッドは、概ね3%を基準に考えます。この差が大きく広がるとREITは売られすぎで、縮まると買われすぎと判断します。

REITがどんどん買われて分配金利回りが低下しても、量的緩和で長期金利が一段と低下してスプレッドがあまり変わらなければ過熱感は生じません。一方、長期金利が上昇しても、地価や賃料の上昇によって分配金利回りが増えればスプレッドは変わらないので、REITに割高感は生じません。

現在の長期金利はほぼゼロなので、REIT指数の分配金利回りが注目されることになります。現在の4%は、標準の3%を上回っているので魅力的な水準です。

NAV倍率に注目

東証REIT指数のバリュエーション(価値)を測る指標として、NAV倍率があります。NAVはREITが持っている時価ベースでの純資産で、REITを解体して保有不動産をすべて売却、負債返済後の金額となります。計算式は以下のようになります。

● NAV = REITの保有不動産の時価 ― 借入金などの負債
● 1口当たりNAV = NAV ÷ 投資証券発行口数
● NAV倍率 = 投資口価格(株価)÷ 1口当たりNAV

NAV倍率は、株式投資ではPBR(株価純資産倍率)に該当し、1倍割れ=解散価値割れとなり割安と判断します。それでは、NAV倍率の推移を見てみましょう(下図)。青のラインがNAV倍率、赤のラインがNAV倍率の10年平均となっています。

出典:不動産証券化協会

現在のNAV倍率は、割安と判断される1倍近辺にあります。また、過去10年間の平均並みの水準となっており、依然として割安な水準にあるといえます。

投資部門別売買動向

REITに参加するプレーヤーにも注目です。株式市場の売買では、外国人投資家がトップで6~7割を占めます。REITも株式と同じで外国人投資家のシェアが5~6割を占めてトップです。個人投資家は2割程度で、残りは地銀を中心とした金融機関です。

外国人投資家というと、株式市場ではマーケットを大きく動かすヘッジファンドなど短期筋のイメージが強いですが、REITでは、分配金を重視する中長期投資家がメインです。

ですから、短期的な投機売買は目立ちません。REITは株ほどには価格が大きく動かずに、比較的値動きが安定しています。そして、高い分配金利回りが期待できるので、「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品だといえるでしょう。それでは、東証REIT指数を取引するにはどうしたらいいのでしょうか。

東証REIT指数を取引するには

東証REIT指数を取引する金融商品として、REITーETFがおすすめです。ETFは、東京証券取引所で取引される投資信託です。主なメリットは次の3つです。

分散投資ができる

REITーETFを購入すれば、値動きが東証REIT指数に連動します。国内すべてのREITに分散投資しているのと同じ効果があります。

少額から投資でき売買しやすい

ETFは取引所に上場しているので、株式と同じように立会時間中はリアルタイムで取引することができます。証券会社を通じて、あらかじめ決めた価格で売買する指値注文が使えるなど、自由度が高い金融商品です。

また、個別のREITだと数十万円の資金が必要な銘柄もありますが、REITーETFなら約2万円から投資することができます。

保有コストが安い

ETFの信託報酬は0.4%程度。信託報酬とは、投資信託を管理・運用するためのコストで、保有している間支払い続ける費用です。ETFの信託報酬は、通常の投資信託より安く抑えられており、分配金や値上がり益を享受することができます。

ただし、REITーETFは金融商品なので元本保証ではありません。リスク商品であるということを理解し、資産運用の一部として活用するようにしましょう。

REIT – ETFおすすめ銘柄

それでは、代表的なREITーETFを3つご紹介します(2019年2月時点)。

1343 NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信

● 売買単位 10口
● 最低買付金額 19,530円
● 純資産総額 3201.8億円
● 分配金利回り 3.31%
● 分配金支払い月 2・5・8・11月(年4回)
● 信託報酬 0.3456%
● 管理会社 野村アセットマネジメント

REIT―ETFで最大の純資産総額を誇る代表的な銘柄です。2008年に上場しているので、10年以上の実績があり、流動性も問題ありません。

1345 上場インデックスファンドJリート

● 売買単位 100口
● 最低買付金額 185,800円
● 純資産総額 2286.2億円
● 分配金利回り 3.44%(税込)
● 分配金支払い月 1・3・5・7・9・11月(年6回)
● 信託報酬 0.324%(税込)
● 管理会社 日興アセットマネジメント

売買単位が100口なので、最低買付金額が185,800円とやや高くなっています。しかし、年6回分配金があるので、より配当をもらう回数を増やしたい投資家の方にとっては魅力あるETFです。特に年金受給者にとっては、年金支払月は2・4・6・8・10・12月なので、このREITーETFを組み合わせると、毎月お金が振り込まれることになるので、うれしい設計となっています。

1597 MAXIS Jリート上場投信

● 売買単位 10口
● 最低買付金額 18,800円
● 純資産総額 1364.5億円
● 分配金利回り 3.31%(税込)
● 分配金支払い月 3・6・9・12月(年4回)
● 信託報酬 0.27%(税込)
● 管理会社 三菱UFJ国際投信

信託報酬が0.27%と安いのが魅力のETFです。よりコストを抑えたい投資家の方におすすめです。

まとめ

東証REIT指数を分析するポイントは以下の4つになります。

1.インフレ率
2.予想分配金利回り
3.NAV倍率
4.投資部門別売買動向

そして、実際に東証REIT指数を売買できるREITーETFを3銘柄ご紹介しました。

東証REIT指数は、株式市場と異なる値動きをすることも多いので分散効果があります。そして、高い利回りと値動きの安定さから「ミドルリスク・ミドルリターン」を狙うことができます。2万円から不動産に投資することができる「東証REIT指数連動型ETF」で、資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。

【記事筆者】

山下耕太郎
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業。証券会社でアナリスト、ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。
保有資格:証券外務員1種