不動産投資にチャレンジする場合、数百万円から数千万円の資金が必要になります。これだけの資金を用意するのは難しい方も多いでしょう。しかし、J -REITや不動産型のソーシャルレンディングを利用すれば、数万円から不動産投資を始めることができます。
今回は、 J-REITと不動産型ソーシャルレンディングの特徴と違いについて、詳しく解説していきます。
J-REITは「不動産版の投資信託」でソーシャルレンディングは「融資」
● J-REIT : 不動産版投資信託
● ソーシャルレンディング : 金利収入を目的とした融資
J-REITとは、大勢の投資家から集めた資金で複数の不動産を取得し、そこから生じる賃料や売却益などを投資家に分配する「不動産版の投資信託」のことです。J-REIT を利用すれば、少額から手軽に不動産への投資が可能になります。
一方、ソーシャルレンディングとはお金を借りたい会社(借り手)とお金を運用して増やしたい投資家(貸し手)をマッチングするサービスです。ソーシャルレンディングはファンドに出資するという形ではあるものの、最終的な資金は企業に貸し付けられます。
投資家が受け取るのは金利のみで、株式のような株主としての権利はありません。ソーシャルレンディングは「金利収入を目的とした融資」なのです。
不動産型のソーシャルレンディングは、お金を貸した事業者が不動産投資をし、その収益を投資家が得られる仕組みです。不動産に特化している事業者や不動産以外も扱っている事業者などさまざまな種類があります。
最低投資金額の違い
● J-REIT : 数万~数十万円
● ソーシャルレンディング : 1万円~
J-REITは、数多くの投資家から資金を集めて不動産を購入しているため、数万円と少額から投資できます。ただし、高い銘柄では数十万円の資金が必要です。
一方、ソーシャルレンディングは最低投資金額が1万円からというファンドが多くなっています。より少額から不動産投資を始めたい方 には、ソーシャルレンディングをオススメします。
予備知識・運用の手間
● J-REIT : 注文方法などある程度の知識が必要
● ソーシャルレンディング : 一度申し込めば何もする必要がない
J-REITを取引するには、証券取引所での売買になるので、注文を出す必要があります。自分の決めた値段で売買できるという利点がありますが、指値注文や成行注文など自分で売買方法を選ぶ必要があります。
一方、ソーシャルレンディングは、 J-REIT に比べて予備知識は必要ありません。日々価格が変動することもないので、値段を気にすることも ありません。一度投資を始めたら、運用期間が終了するのを待つだけです。
日中忙しくて値段をチェックすることが難しいサラリーマンや主婦の方、そして投資経験が少ない初心者には、ソーシャルレンディングの方が向いています。
途中換金の有無
● J-REIT : いつでも売買可能
● ソーシャルレンディング : 途中で換金できない
J-REITは東京証券取引所に上場しているので、取引時間中ならいつでも売買して換金できます。 ただし価格が日々変動するので、想定利回りも値動き次第で変わってきます。
一方、ソーシャルレンディングは途中で換金できません。期限が到来して資金が返済されるまで、月々入金される利息を確認するだけです。価格変動が気になる投資家はソーシャルレンディング、いつでも換金できるという利便性を重視するならJ-REITの方が有利です。
利回りの違い
● J-REIT : 4%程度(2019年6月現在)
● ソーシャルレンディング : 3~10%程度(2019年6月現在)
J -REITは東京証券取引所に約60銘柄が上場しています。分配金の平均利回りは約4%です。通常の株式の場合、会社があげた利益に対して法人税がかかります。しかし、J-REIT の場合は収益の90%超を分配すれば法人税がかかりません。そのため、株式(配当利回り約2%)に比べるとJ-REIT の方が高い利回りを確保できます。
一方、ソーシャルレンディングでは3~10%とJ-REITよりも高い利回りが期待できます。ただし、ソーシャルレンディングの利益は金利収入のみですが、J-REITには値上がり益を狙うことも可能です。
分配金の回数
● J-REIT : 年2回(※銘柄により異なる)
● ソーシャルレンディング : 毎月(※ファンドにより異なる)
J-REITの多くは年2回の決算です。運用が順調であれば年に2回、分配金を 受け取ることができます。ただし、年1回決算のJ-REITもあります。
ソーシャルレンディングは 毎月分配金を受け取ることができるファンドが多くあります。定期的に金利収入を得たいという投資家は、ソーシャルレンディングを利用するようにしましょう。
運用期間の違い
● J-REIT : 無期限
● ソーシャルレンディング : 3カ月~1年
J-REITの運用期間は決まっていません。もちろん運用がうまくいかずに上場廃止になるリスクもありますが、基本的に無期限で投資を行うことができます。ですから、長期で運用を行いたい場合は J-REIT の方が有利です。
一方、ソーシャルレンディングの返済期間は3カ月から1年程度がほとんどです。短期で運用を行いたい方は、ソーシャルレンディング利用しましょう。
破綻リスク
● J-REIT : 破綻リスクはあるものの換金できる可能性は高い
● ソーシャルレンディング : 破綻したら換金不能
J-REIT にも破綻リスクはあります。市場創設時では予想していなかった事態ですが、2008年のリーマンショック前後にはJ-REIT の破綻が実際に起きました。利回り目的でJ-REIT を保有していても、破綻してしまうと大きな損失が出てしまいます。
ただし、証券取引所で取引されているので、業績の悪化や破綻が決まっても途中で売却できる可能性があります。損失を抑えるためには、早めの損切りが必要です。
一方、ソーシャルレンディングの場合、融資先が倒産したら資金が全額回収できない可能性もあります。どんなに案件を選んでも将来のことは誰にもわからない以上、このリスクは回避できません。
しかし、不動産型のソーシャルレンディングには不動産担保が設定されている場合があります。この場合はある程度資金が返ってくる可能性があるので、リスクを抑えるには不動産担保が設定されているソーシャルレンディングを選ぶのも手です。
ただし、担保付きのファンドは利回りが5%程度と、不動産型ソーシャルレンディングの中では低めの利回りとなります。
まとめ
今回は、J-REITとソーシャルレンディングの8つの違いについて見てきました。比較表は以下の通りです。
どちらを選ぶか一番のポイントは、値動きを許容できるかどうかです。J-REIT は株式のように日々の価格が動くので、値動きが気になって仕方がないというタイプの方は、価格変動がないソーシャルレンディングの方が良いでしょう。
一方、J-REITは値上がり益も狙うことが可能です。さらにいつでも換金できるので、お金が急に必要になった時でも対応することができます。 J-REITがいいのかソーシャルレンディングがいいのかということは投資家によって異なります。自分に合った投資対象を選ぶようにしましょう。
【記事筆者】
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一橋大学経済学部卒業。証券会社でアナリスト、ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。
保有資格:証券外務員1種
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