少額の資金で不動産投資を始められるJ-REITの人気が高まっています。2018年は株式市場が軟調な中、東証REIT指数は6.68%上昇。株との分散効果も期待できます。今回はJ-REITの中でもオフィス特化型と商業施設特化型に焦点をしぼり、それぞれの特徴と代表的な銘柄を紹介していきます。

J-REITとは

J-REITは投資家から集めた資金で複数の不動産を取得し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に分配する不動産の投資信託です。

「少額から不動産投資が可能」「安定的な分配金を期待できる」「市場でいつでも売買できる」などといったことから、個人投資家だけでなく、地方銀行を中心とした機関投資家にも人気が高まっています。

現在のJ-REIT上場銘柄数は61銘柄時価総額は12兆9,703億円(2018年12月時点)になっています。全体の予想配当利回りは4.163%です。

 

J-REITの種類

J-REITは単一用途に特化して投資する「単一用途特化型」と、複数の用途に分散して投資する「複数用途型」に分けることができます。

単一用途特化型は次の6つに分類します。

1.オフィス特化型
2.住居特化型
3.ヘルスケア施設特化型
4.商業施設特化型
5.物流施設特化型
6.ホテル特化型

今回は、オフィス特化型と商業施設特化型REITに焦点を当てて解説します。

オフィス特化型REITの特徴

J-REIT市場は、オフィスビル特化型からスタートしました。J-REITが始まる前から証券化の実績があったことや、賃料や空室率など投資するためのデータも整備されていたからです。ただし、オフィスビルの賃貸借契約の期間は短いのが一般的で、景気変動受けやすいという特徴があります。

オフィスREITの選び方

オフィスREIT選びでチェックしておきたいのは、「平均賃料」「平均空室率」です。

オフィス仲介の三鬼商事が発表した、2019年1月時点での東京ビジネス地区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)のオフィス平均賃料は、3.3平方メートルあたり21,020円。平均賃料は61ヶ月連続で上昇し、2009年3月以来、9年10ヶ月ぶりに2万1千円台となりました。

平均空室率は1.82%、前月比0.06ポイント下げました。東京ビジネス地区の平均空室率は6ヶ月連続で低下しました。

オフィス賃料には、実質賃料と相場賃料があります。実質賃料とは、賃貸人と賃借人が実際に契約している賃料で、通常2~3年は変わりません。一方、相場賃料は、不動産マーケットの時価です。

一般に、J-REITが保有している物件は2~3年契約がほとんどで、現在は実質賃料より相場賃料の方が高い状況なので、改定時に賃料が上がります。

都心オフィスの平均賃料は2008年のリーマンショックで下落し、2014年ごろを底に回復してきています。2010年以降に入居したテナントの賃料は、現在の相場より安いので引き上げやすく、仮に退去した場合でも新しいテナントが入れば、現在の賃料水準のほうが高いため収入は増えやすいのです。

仮に平均賃料が伸び悩んでも、現在の賃料水準を維持していればオフィスREITの収益は増えやすい状況です。平均賃料や空室率でみると現在のオフィス市況は好調で、オフィスREITに特化した指数である「東証REITオフィス指数」の値動きは2019年に入っても堅調に推移しています。以下のチャートは2018年11月からのチャートです。

出典:日本取引所グループ

オフィス型はREIT全体の50%以上を占めているうえに、時価総額の大きい銘柄が多いので、REIT市場全体に与える影響は大きくなります。REIT市場全体の動向を把握するためにも、空室率などをチェックするようにしましょう。

それでは、代表的なオフィスREITを見ていきましょう(2019年2月時点)。

【8951 日本ビルファンド投資法人】

● 投資口価格(株価)717,000円
● 時価総額 1兆124億円
● 分配金利回り 2.94%

三井不動産をスポンサーとするオフィス特化型REITです。2001年に上場したJ-REIT最古参の銘柄で、資産規模1兆円を超えた最初の銘柄です。時価総額はJ-REIT市場最大を誇ります。

地域別取得額比率では東京主要5区で51%と過半数を占め、保有物件は71物件、取得価格は累計で1兆1,289億円です。2011年からの値動きは以下のようになります。

出典:ヤフーファインス

【8952  ジャパンリアルエステイト投資法人】

● 投資口価格(株価)640,000円
● 時価総額 8,865億円
● 分配金利回り 3.00%

三菱地所を主要スポンサーとして、東京都心の大型物件を主な投資対象とするオフィス型REIT。2001年に上場したJ-REIT最古参の銘柄で、時価総額も最大規模を誇ります。

出典:ヤフーファイナンス

商業施設型REITの特徴

全国の総合スーパーやショッピングモール、アウトレットなど小売り全般の商業施設を投資対象としているREITです。商業用施設のテナントは長期固定契約が多いので、仮に商業施設の売上や客数が落ちても、安定した収益が得られるのがメリットです。

ただし、契約期間に中途解約条項があるかどうかと、賃料の更新頻度を確認する必要があります。長期の賃貸契約でも、中途解約条項があると契約満了せずに解約されてしまう恐れがあるからです。

したがって、中途解約条項なしで賃貸契約10~15年」というのが商業施設の理想的な条件になります。また、商業施設型REITの中には、売上に応じてテナント料が変動する歩合料を採用しているケースもあります。全体に占める固定賃料の割合もチェックするようにしましょう。

商業施設のリスクは、インターネット通販による路面店舗の衰退です。米国など海外ではアマゾンなどのEコマースに押され、ショッピングセンターの閉鎖が続いています。このため、商業施設型REITは外国人投資家に敬遠される状況が続いています。

国内でも、店舗数を縮小するショッピングモールや百貨店も珍しくありません。交通アクセスの良さや魅力的なテナントを誘致しているなど、特徴を持った商業施設でないと生き残りは難しくなっています。平均分配金利回りは高いものの、選別が難しく中上級者向きのREITといえるでしょう。

それでは、商業施設REITの銘柄を見ていきましょう(2019年2月時点)。

【3292 イオンリート投資法人】

● 投資口価格(株価)129,500円
● 時価総額 2,300億円
● 分配金利回り 4.61%

「地域社会の生活インフラ資産」であるイオングループの大規模商業施設を主な投資対象とする商業施設型REITです。ただ、ポートフォリオの10%以内で物流施設への投資も可能としており、現状では7.3%が物流施設になっています。

2014年にはJ-REIT史上初の海外不動産となる海外物件(マレーシア商業施設)を取得しました。

出典:ヤフーファイナンス

【8964 フロンティア不動産投資法人】

● 投資口価格(株価)461,000円
● 時価総額 2,286億円
● 分配金利回り 4.55%

スポンサーである三井不動産のノウハウを活かしたポートフォリオで、長期安定した収益の確保を目指します。当初のスポンサーはJTでしたが、2008年2月から三井不動産に変わりました。競争力を持つ「地域一番店」への投資を謳っており、約4割をリージョナル・ショッピングセンター(広域からの集客を念頭に置いた大型商業施設)が占めています。

出典:ヤフーファイナンス

まとめ

今回は、オフィス特化型REITと商業施設特化型REITの特徴と銘柄を紹介しました。好調なオフィス環境が続く中で、オフィス特化型REITの投資口価格(株価)は堅調に推移しています。ただし、景気の変動に影響を受けやすいので注意が必要です。

商業施設特化型は、アマゾンなどEコマースに押され、売上が全体的に落ちています。その分、物件の目利きが必要になります。ただし、分配金利回りは高めの傾向があるので、きちんとした付加価値を提供できる商業施設は、今後も投資対象として有望視されるでしょう。

【記事筆者】

山下耕太郎
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業。証券会社でアナリスト、ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。
保有資格:証券外務員1種