アパート経営を行う場合には、債務の保証人や連帯保証人について正しく理解しておく必要があります。そこで、保証人と連帯保証人の違いや、連帯保証人の適切な審査を行うためのポイント、さらには家賃保証会社の活用方法などについてご紹介します。

☆「借金の連帯保証人になったことはありますか?」のアンケート結果

「借金の連帯保証人になったことはありますか?」についてのアンケートは、借金の連帯保証人になった経験がある人は9%で、残りの91%の人は連帯保証人になったことがないという結果になりました。連帯保証人になった経験があれば、連帯保証人とはどういった責任があるのかについてある程度勉強したことがある可能性が高いでしょう。さらに実際に連帯保証人になって苦労した経験がある人であればより詳しい知識を持っていることが多いかもしれません。一方、連帯保証人になったことがないほとんどの人は、連帯保証人という言葉は聞いたことがあったとしても、借金の連帯保証人とはどういった存在でどんな権利や義務があるのかについて十分な知識を有している人はすくないでしょう。賃貸アパート経営においては、家賃回収を確実に行うことが重要です。そのため、入居者の親族など保証能力がある連帯保証人を立ててもらったうえで賃貸契約を行うケースが多いです。入居者や連帯保証人になる人は権利義務に関して十分な知識がないことも想定されます。家賃回収でトラブルが発生することがないよう、アパートオーナーとしても連帯保証人などについて知っておく必要があるといえます。

☆アパート経営にかかわる連帯保証人の位置づけ


アパート経営を行う場合は、資金がショートしないように経営していくことが大切です。キャッシュフローの流れは、家賃などの収入から修繕費や管理会社への管理料の支払いを行い、さらに借入金がある場合はその返済を行うことになります。それでも残金がある場合はキャッシュフローがプラスだったということになります。キャッシュフローがマイナスになると借入金の返済ができなくなり、物件を売却せざるを得ない事態になりかねません。修繕費支出などについては時期をずらすなどの対応をとることもできますが限界があります。そのため、アパート経営においては、支払いに必要な家賃を確実に回収することが重要になるのです。連帯保証人は、この家賃回収を確実に行うための仕組みだと理解するとよいでしょう。家賃は、基本的には契約者である入居者から回収することになりますが、資金的な問題などから入居者が家賃支払い能力を失う場合もあります。そのような場合でも、入居者本人に代わって支払いをしてくれる人がいれば問題なく家賃回収ができます。それが連帯保証人です。連帯保証人を明確にして入居契約をすることによって、アパートオーナーは入居者にも連帯保証人にも家賃を請求できる権利を確保できます。結果として、家賃収入を確実に回収できる体制を整えることにつながるでしょう。連帯保証人に請求したら支払い能力がなかったということにならないよう、どんな人を連帯保証人として認めるかについてもしっかり審査することが大切です。

☆「保証人」と「連帯保証人」には違いがある?

賃貸アパート契約においては、保証人ではなく連帯保証人を立てることを求められるのが一般的です。単なる保証人と連帯保証人では何が違うのでしょう?保証人というのは、契約者である入居者本人が家賃を支払えない場合に、その入居者に代わって家賃を支払う義務がある人のことをいいます。そのため、入居者本人が家賃の支払いができる状態にある限り、保証人は家賃を肩代わりして支払う必要はありません。単に入居者と連絡がとれないという理由で代わりに保証人に対して支払いを求めても、保証人は「まず入居者本人に請求してください」と拒否することができます。一方、連帯保証人というは、契約者である入居者本人と同等の支払い義務がある人のことをいいます。家賃請求は入居者に対して行うのが一般的ですが、直接連帯保証人に対して支払いを求めることもできることになっています。連帯保証人は「まず入居者に対して請求してください」ということはできず、拒否できません。つまり、アパートオーナーからすると連帯保証人を立ててもらった方が、より確実に家賃回収できるということになります。連帯保証人が入居者本人に代わって家賃支払いをした場合は、連帯保証人は肩代わりした支払い額を入居者本人に請求することができます。これを求償といいます。アパート経営における家賃回収の重要性を理解していれば、入居条件として連帯保証人を立ててもらうことがいかに重要なことかがわかるでしょう。

☆連帯保証人の審査を適切に行うためのポイントとは?

契約者に連帯保証人を求める場合、ある程度候補となる人の条件を伝えておくことがポイントです。例えば、現役世代で安定した収入がある親がいる場合はその親を優先して連帯保証人にしてもらうなどです。連帯保証人を立てる目的は家賃回収を確実に行うことですので、安定した収入があることはもちろん重要ですが、契約者との人間関係も重要な要素となります。一般的には、近親者であれ契約者の支払いの肩代わりを問題なく引き受けてくれる可能性が高いため、近親者を優先して連帯保証人としてもらう方がよいでしょう。また、近親者でない場合は、社会的な地位などを考慮して審査することも大切です。連帯保証人の審査においてはもう1つ重要なポイントがあります。それは連帯保証人の本人確認と収入証明などの確認です。連帯保証人が遠方にいる場合などは直接会えないケースもあります。そのため、連帯保証人になったことを承諾していることをしっかり確認する必要があります。また、契約者の自己申告だけで連帯保証人の収入金額を把握するだけでは問題があります。そのため、まず連帯保証人の住民票の提出や住民税の課税証明書、所得税の確定申告書などの書類を入手して確認することが大切です。住民票はマイナンバーが記載されているものを取得することは認められていませんので、マイナンバーの記入がないものを取得しましょう。

☆連帯保証人ではなく家賃保証会社を利用する方法もある

契約者である入居者の中には、親族がいないもしくは親族がいても収入がないケースもあります。高齢の入居者や外国人入居者の場合にはよくある事例です。連帯保証人が立てられなければ契約できないとするやり方もありますが、連帯保証人がなくても借りられる仕組みを用意する方法があります。それは、家賃保証会社を利用する方法です。利用する方法は、まず家賃保証会社と家賃保証契約を結びます。アパートオーナーはその契約に基づき家賃未回収リスクに見合った保証料を家賃保証会社に支払います。そして、その保証料を家賃に上乗せして入居者に負担してもらう形をとります。入居者は、連帯保証人を立てた場合の家賃相場よりも保証料の分だけ高い家賃を負担することになりますが、連帯保証人が立てられないためどこにも入居できないという事態を避けられますので、入居者にとっても価値がある仕組みだといえるでしょう。入居者が家賃を支払えなくなった場合は、家賃保証会社は家賃保証契約に基づきアパートオーナーに家賃を支払います。入居者は家賃支払いを免れるわけでなく、家賃保証会社から未払家賃の請求を受けることになります。家賃保証制度とは、第三者が連帯保証人になる仕組みだと理解するとよいでしょう。