不動産投資をするうえでは特に必要な資格はありません。ただ不動産に関する知識がほとんどない場合、あるいは自分で不動産管理を行いたいなどの場合は、ある程度の専門知識や技術があった方が安心です。さらに資格を持っていると不動産の専門家であるというアピールにもなるので、有用な資格を取得していると不動産投資業務の大きな助けとなるはずです。今回はそんな不動産投資に関わる資格をいくつか紹介していきます。皆さんの参考なれば幸いです。

☆ 投資不動産取引士

居住用の不動産の売買や賃貸を行う場合、自分の不動産を賃貸する場合を除くと宅地建物取引士の設置が義務付けられています。したがって本格的に不動産投資業をする方のなかには宅建士資格を取得される方も多いかと思います。ただ投資物件としての不動産売買に関する知識は宅建士試験によっては得られません。そこで「一般社団法人投資不動産流通協会」という団体が主催して「投資不動産取引士」という資格を新設しました。この投資不動産取引士の認定資格を取得することで、投資不動産の取引実務に必要な専門知識を身に付けることができ、特に不動産の投資コンサルタントなどの業務を行いたい場合はお客さんの信頼を得ることができるようになるでしょう。
受験料は税込みで23,760円、その他に登録講習料(テキスト代込)が8,640 円(税込み)、登録料が4,320円(税込み)かかります。申し込むと公式テキストが送られてきて試験日程などのスケジュールが伝えられます。まだメジャーな資格ではないので、受験者がある程度集まって試験日程を決定しているようで、試験は東京で開催、2016年度は160人ほどの合格者が出ています。テキストや講習をしっかり受講すれば試験に合格することはできるようです。

☆ 不動産実務検定2級

不動産投資業のなかでもメジャーな賃貸業を営む人向けに、賃貸ノウハウを効果的に学べる資格として実施されている検定です。不動産実務検定2級では、不動産経営に求められる全般的な知識や、不動産経営に関するリスクや手続きといった知識を網羅的に学ぶことができます。投資実務としての不動産知識を身に付けることができる資格で、不動産投資に興味がある方で実務的な知識に不安のある方ならば取得しておきたい資格です。 この資格は不動産投資初心者を対象としているので、継続的な勉強は必要ではあるものの、それほど難易度は高くありません。合格率は2級では約70%以上ですからしっかり準備すれば合格は容易でしょう。
代表的な勉強方法は、この試験の主催団体であるJ-RECという団体が主催しているオンデマンドセミナーや公開講座に参加し、そこで講座と配布されるテキストを利用して勉強するのが効率的。試験は口座を収容する方法と1発勝負の試験を受験する方法があります。試験は全国のパソコン教室のコンピューター上でいつでも受験可能です。費用は2級で7,560円(税込み)です。

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☆ 管理業務主任者

マンション投資やマンション管理業務をするうえで不可欠な国家資格です。マンション経営やマンション賃貸などのマンション管理業務を行いたい場合には、マンション管理業者は、30管理組合につき1人以上の割合で、専任の管理業務主任者を設置する法的な義務が発生します。そのため成長の見込まれるマンション投資業務の世界では管理業務主任者はなくてはならない人材です。管理業務主任者はマンション管理業務において主に次のような業務を行います。
1.重要事項の説明
2.重要事項説明書の記名押印
3.契約成立時の書面への記名押印
4.管理事務の定期報告
5.管理事務報告書の交付
これらは法で定められた業務ですから資格取得者は不動産業界で安定して需要がありますし、自ら不動産投資業務を行う方にとっては業務上便利な資格です。
管理業務主任者試験は四肢択一のマークシート形式で、総問題数は50問で、全体の7割程度正解できれば合格できます。合格率はおおむね20%台で推移しており、国家試験のなかでは高いほうですが、受験者の多くは受験範囲の重なる宅建やマンション管理士の資格保有者も多いので、全くの初心者の方はある程度の勉強時間(個人差もありますがだいたい400時間)が必要でしょう。試験は12月上旬に行われる年1回で、受験料は8,900円です。

☆ 第二種電気工事士

電気工事士とは自家用電気工作物または一般用電気工作物の工事を行える国家資格のことです。電気工作物とは一般家庭や商業施設、工業施設などの電気を使う施設で使われている電気設備のことで、これらの配線工事などを行うには電気工事士の資格が必要です。幅広い業界で需要のある資格ですが、不動産業界で活躍するのはマンション管理や施設管理などの不動産管理部門。特に規模の小さな賃貸物件のオーナーさんなどで第二種電気工事士を持っていると、不動産管理のコストを抑えることができて便利です。第二種電気工事士は一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事に従事できますから、大規模不動産以外の物件の保守管理ならばたいていカバーできます。
試験は現在年2回、3月と6月に実施されていますが、同一年度で受けられる試験は1回だけなので注意です。難易度は第二種が55%前後、第一種が60%前後になっています。筆記試験と実技試験があることがポイント。実技試験では工具を持参して与えられた時間以内に電気回路を施工します。受験料は9,600円です。

☆ 不動産鑑定士

不動産鑑定士とは、公認会計士試験、司法試験と並んで3大国家試験の一つとされている国家資格で非常に難関です。不動産鑑定士は、不動産に対して相続税路線価評価、固定資産税評価、公示価格、基準地価格の評価などを行う業務を行います。その他に個人や法人が不動産を売買、賃貸借等をする場合やその適正な価格が知りたい場合、あるいは不動産取引に関するコンサルティングをしてほしい場合に、これらを鑑定したりアドバイスしたりする業務なども行ないます。不動産コンサルタントとして活動したい場合に有用な国家資格だと言えるでしょう。
毎年5月に短答式試験、7月下旬から8月上旬にかけて論文式試験があり、短答式試験に合格すると論文式試験に進めます。年合格率は、短答式は32.5%、論文式は14.5%ほどと難関。初心者からチャレンジする場合はおよそ1,500時間以上の勉強時間が必要と言われており、受験指導校の講座等を利用して受験する方が大多数です。受験料は13,000円です。全国の不動産鑑定士の数は約9,000人と少なく、不動産の取引が活発な大都市圏などでは活躍の機会は多いでしょう。

☆ 不動産コンサルティングマスター

不動産の有効活用や投資などについて、不動産投資のコンサルティングを行う方のための資格です。「公益財団法人 不動産流通推進センター」が行う知識及び技能に関する試験に合格して登録要件を満たすと、「公認 不動産コンサルティングマスター」として登録できます。不動産コンサルティングに特化した資格として不動産業で働く方に人気の資格ですが、毎年の受験者数は1,200人ほどで、合格率は50%超と高いです。一見すると簡単な資格のようですが、受験資格に制限があって
1宅地建物取引士資格登録者で、現に宅地建物取引業に従事している人、または今後従事しようとする人
2不動産鑑定士で、現に不動産鑑定業に従事している人、または今後従事しようとする人