日本のリートはJリートと呼ばれます。Jリートの市場は、上場銘柄2銘柄の小規模でスタートしましたが、2016年には上場銘柄も増加し時価総額は12兆円に迫る状況となっています。マイナス金利政策の影響などによりリートの人気が高まるにつれ、リートへの投資に関心をもつ人も増えてきています。そこで、Jリートの時価総額の推移や世界の中の位置づけ、マイナス金利政策の影響や価格と利回りの関係などについてお伝えします。

☆2001年~2016年までのJ-REITの時価総額推移を確認

Jリートは、2001年に2銘柄、時価総額は約2千億円でスタートしました。その後は、上場する銘柄の増加とともに順調に時価総額は増加し、2007年5月には6.8兆円まで右肩上がりで成長を続けました。しかし、ここで一旦右肩上がりの時価総額の増加が止まり、急激な減少に反転します。原因はリーマンショックに端を発する世界経済の低迷です。日本もその影響を受けることになり、順調に成長していたリート市場の時価総額は、2008年11月には2.8兆円まで減少してしまいました。

しかし、その後、小規模な下落局面はありましたが、再度右肩上がりで時価総額は増加します。特に、異次元緩和と呼ばれる日本銀行の量的・質的金融緩和が始まったころから時価総額の増加率が大きくなり、ついに2016年には約12兆円に迫る勢いで時価総額が増えてきています。

☆マイナス金利がリート人気を後押し!

日本銀行が行っているマイナス金利政策は、民間金融機関が日本銀行に預けている預金の一部についてマイナス金利を適用するというものです。すべての預金がマイナス金利になるというわけではありませんが、日本銀行にこれ以上預金するとマイナス金利が適用されることになるため、金融機関は手持ちの資金を貸し出す必要に迫られています。

金利は資金の需要と供給で決まりますので、借りる人が少ない状態で貸す人が多くなると、金利は下がります。マイナス金利政策の導入によってそういった状態が発生し、短期金利も長期金利も下がっています。リートは、投資家から集めた資金だけではなく借入金で賃貸物件を取得していますので、金利が下がると支払利息の負担が減少し、利益が増加します。利益の増加が予想されるため、リートの人気は上がっているのです。マイナス金利政策はリート人気を後押ししているといえるでしょう。

☆世界のリート市場に比べるとまだまだ小さい時価総額

日本のリート市場の時価総額は11兆円を超えるところまで成長してきましたが、世界のリート市場を見ると、さらに大きな規模を誇る市場があります。それはアメリカのリート市場です。適用する為替レートにもよりますが、ざっと日本の10倍の規模だと考えるとよいでしょう。アメリカのリート市場の規模と比較すると日本のリートの時価総額はまだまだ小さいといえます。

しかし、日本のリートは時価総額世界2位にまで成長してきています。オーストラリアやイギリス、フランスなどとの2位争いで頭1つ抜けている状況です。また、2位争いをしている国以外では、カナダやシンガポール、香港などのリート市場が比較的有名です。

☆リート相場の上昇は利回り低下の懸念も

リートの人気が上がると、リートの各銘柄の投資口価格は上昇します。一方、分配金の水準はそれほど大きく変化することはないと考えられます。リートの利益の源泉は、取得した物件からの賃貸収入です。賃貸収入は景気の変動に伴って変化しますが、その変動幅はそれほど大きくありません。家賃が短期間で倍になったり半額になったりはしないからです。

リートの人気が上がり価格が上昇する一方で分配金が変わらないと、リートの利回りは下がることになります。利回りは分配金を価格で割って計算します。価格が上昇すると分母が大きくなり分子はほとんど変わりませんので、利回りは下がることになるでしょう。リートへの投資をする場合は、マイナス金利政策の動向利回りの動向に注意をして慎重に投資銘柄を選ぶことをおすすめします。