リートに投資をする場合は、安く買って高く売る売却益狙いのスタイルの人もいますが、分配金を受け取りながらある程度長い期間をかけて投資額を回収したいと考える人もいます。分配金狙いの人にとっては、中期的なリート市場の動向が気になるでしょう。分配金を受け取れるとしてもリートの価格が中期的に上がるのか下がるのかによって、投資時期や投資金額は変わってきます。そこで、リート市場の今後について、中期的な動きを予想します。

☆2020年までは堅調に伸びる可能性

リート市場の動向に大きな影響を与える要素としては、地価の動向と大規模プロジェクトの存在があげられます。公示価格や路線価の動向を見ていると、ようやく地価が下げ止まりプラスに転じてきている状況がわかります。地価の上昇はリート資産の増加につながりますのでリート市場にとってはプラスの面が大きいといえるでしょう。また、金融緩和政策はまだしばらくは継続されると考えられますので、低金利状態が続くと予想されます。低金利はリートの資金調達にプラスになります。

さらに、2020年の東京オリンピックに向けて大規模な開発プロジェクトが進むことで景気にもプラスの影響があり、不動産価格の上昇、そしてリート市場の拡大は2020年までは続くと予想されます。リート市場の拡大を妨げる世界的な金融不安につながる事件などが発生しない限り、リート市場の拡大は続くと考えられます。

☆マイナス金利がリート市場の追い風になる可能性

日本銀行が行っているマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の影響で、短期金利のみならず長期金利にも大きな下げ圧力がかかっています。マイナス金利が適用されるのは、民間金融機関が日本銀行に預ける預金のほんの一部ですが、民間金融機関がマイナス金利適用を避け、日本銀行に預けられず持て余している預金を低利であっても運用する必要に迫られているため、リートへの融資も積極的に行うようになってきています。その結果、リートの借入金の利率は下がり、支払利息の負担が減少する傾向にあります。

支払利息負担の減少によってリートの利益は増えますので、マイナス金利政策はリート市場にとってプラスだといえるでしょう。また、日本銀行が金融緩和政策の一環として直接リートを買っていることも、リート市場にとっては追い風となっています。

☆世界経済の動向にリート指数は左右される

東京証券取引所には多くのJリート銘柄が上場されていますが、そのリート全体の動きを表すものが東証リート指数です。リート市場はたった2銘柄でスタートしましたが、しばらくして上場銘柄が増加し、市場全体を表わす指数が必要になってきたため設定されました。

過去の指数の動きをみると、国内の景気動向などによって指数は左右されますが、最も大きな影響を受けたのは世界経済の動向でした。リーマンショックの前後で、東証リート指数は約3分の1程度に急激に値下がりしてしまったのです。そのため、リートの投資をする場合は、中長期的な経済的な予測に基づいて投資を継続しながらも、突発的な世界経済の変調によって大きな影響を受ける可能性があることをよく理解しておく必要があるでしょう。

☆分野別の上昇と下落に注意しよう

リート市場には数多くの投資法人が上場されていますが、各投資法人はそれぞれ違った投資分野に投資をしています。居住用賃貸マンションを中心に投資をする銘柄もあれば、賃貸オフィスが中心の物件もあります。また、ショッピングセンターに投資をする銘柄、ホテルや倉庫に投資をする銘柄も存在します。

例えば、居住用賃貸マンションの賃料は景気変動の影響を受けにくくオフィス賃料は受けやすいなど、賃貸物件の種類によって景気変動に対する賃料の動向は違ってきます。投資しようとしているリートの賃貸物件の種類と景気変動との関係をしっかり理解しておくことが重要です。リート市場はまだ拡大の余地があると考えられますが、リスクがないわけではありませんので、景気変動に対する影響などを考慮して慎重に投資銘柄を決めるとよいでしょう。