不動産投資というと、一昔前まではサラリーマンなどの個人が行うことが難しい投資でした。

しかし、融資金利の低下やメディアによる紹介などにより随分身近なものになってきています。不動産投資を紹介する際に「不動産投資を行えば節税対策になる」と言われますが、具体的に「どの税金を、どれぐらい節税する」ことができるのでしょうか?

☆節税できる税金の種類とは

不動産投資を行うと、どの種類の税金を節税できるのでしょう?税金には非常にたくさんの種類があり、不動産投資に関係がありそうなものだけでも所得税、固定資産税、相続税、印紙税、登録免許税など複数あります。この中で節税効果が期待できるものは、所得税と相続税の2つです。
一口に所得税といっても所得税には給与所得、不動産所得、事業所得、退職所得など全部で10種類に分類されています。所得税の節税は基本的には不動産投資をすることによって得られる不動産所得と、サラリーマンなどの給与所得と損益通算することにより、節税に繋げるというものです。また相続税については、不動産投資を行った際の借入金(マイナスの資産)を利用して、プラスの資産(預貯金や土地など)と相殺することにより節税に繋げます。どちらの場合にも共通して言えることは、不動産投資により帳簿上のマイナス資産を作り、節税を行うということです。

☆不動産所得に対する課税の仕組みとは

「マイナス資産を作る」というと、不安になる方もおられるかもしれません。ただし、不動産投資を行う際にはこの「マイナスの資産」の仕組みについて正しく理解しておくことが重要になります。
不動産所得とは、賃貸アパートやマンションなどの貸付によって得られる所得のことです。家賃収入だけでなく、駐車場礼金更新料なども含まれます。5棟10室以上の不動産を取得している場合は基本的に個人事業主とみなされますが、その場合に勘違いしがちなのは、事業所得に計上されると思うことです。しかし、不動産で得られる収入は例え事業的な規模であろうとなかろうと、全て不動産所得に計上されますので、注意しましょう。
一方で必要経費として認められるものには、固定資産税などの租税公課減価償却費修繕費などがあります。この中で最も理解しておきたいものが減価償却費です。減価償却費とは「建物などの固定資産は、時の経過とともに資産価値が低下していく」という考えに基づいて、建物を購入した年に購入金額の全額を経費とするわけではなく、法律で決められた年数に応じて徐々に経費としていく計上方法です。

減価償却には毎年一定額を費用とする定額法と、建物の価格に一定割合を掛けた金額を費用とする定率法があります。例えば、法定耐用年数30年の物件を3,000万円で購入し、定額償却を選んだ場合は毎年100万円が減価償却費の費用となります。これはローンを組んだ場合における返済金支払いの有無に関わらず経費となりますので、実際には支払いがないにも関わらず毎年100万円を経費とすることが可能になるわけです。例えば、ある年度の収支が500万円の黒字であった場合、減価償却の100万円は実際には支払っていないので、手元資金は600万円が残っていることになります。減価償却費の金額が多ければ、多いほど手元に残る資金は増えているのです。

また、不動産所得における大きなメリットとしては、給与所得など他の所得との損益通算が可能である点が挙げられます。サラリーマンの給料は給与所得として分類されており、その給与所得と損益通算を行うことができる所得は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つしかありません。サラリーマンに対して「節税になるから」と不動産投資を紹介する記事をよくみかけますが、節税になるのは不動産所得が赤字になった場合のみですので、基本的にはお薦めできません。

ただし不動産の取得初年度に関しては例外です。なぜなら、不動産を取得する年度で経費として計上できるものには、不動産取得税や不動産会社に払う仲介料など取得初年度しか必要でない、比較的高額な経費があるからです。例えば、取得した年は経費が高額になり、不動産所得が300万円の赤字になったような場合は、確定申告を行うことによって給与所得から300万円を引くことができ、納めすぎた税金部分の還付を受けることができます。先ほど述べたように、不動産の取得初年度に関しては必要経費が多額になるため、損益通算を行うことはよくあります。

しかし、2年目以降は帳簿上だけの費用である減価償却費を計上しているとはいっても、毎年損益通算を行うようでは不動産の収支自体に問題がある可能性がありますので、注意してください。

☆ 住民税の算出方法とは

相続税の算出方法は基本的に現金土地建物などのプラスの資産から、ローンや負債などのマイナスの財産を引いた遺産総額が基礎控除額を超えた場合に支払う必要があります。基礎控除額の算出方法は、3,000万円×(法定相続人の数×600万円)となっており、例えば自分の妻と子供2人の合計3人が相続人である場合は4,800万円が基礎控除額となります。
また、相続税の税率も所得税同様に累進課税制度となっており、相続人が相続する遺産額が多くなればなるほど税率は高くなります。ここで勘違いしやすいのは、相続税は課税遺産額に税率を掛けるわけではなく、相続人の取り分に応じた税率を掛けて、最後に合計するということです。
例えば、先ほどの例のとおり3人の法定相続人で課税遺産総額1億円(マイナスの資産や各種控除額を引いた遺産額)の遺産を分割する場合、妻の法定相続分は全体の1/2の5,000万円、子供2人はそのまた半分の2,500万円ずつとなります。この取り分に応じて税率を掛けますので、妻の相続税は5,000万円×20%―200万円(控除額)=800万円、子供の相続税はそれぞれ、2,500万円×15%―50万円=325万円となり、相続税の合計は800万円+325万円×2人=1,450万円となります。

☆ ワンルームにして資産を分割する相続税対策とは

相続税の計算方法については基本的には上記の通りですが、

相続税対策で行う不動産投資にはどのようなものがあるでしょうか?
不動産投資を行う際に、現金一括払いで購入する人はまずいません。ほぼ全ての人は金融機関からの融資、つまりマイナスの資産を活用して購入するはずです。マイナスの資産が多ければ多いほど相続税の節税に繋がるということは先ほどの相続税の算出でおわかりいただけたかと思います。
また1棟全てではなく、あえてワンルームタイプの賃貸住宅を購入して相続税対策をする方もいます。ワンルームタイプに投資するメリットとしては、相続税の総資産額を算出する際に、述べ面積が200平米以下の住宅に適用される「小規模宅地等の特例」が適用されやすいため、総資産額を少なく評価することができるといった点や、複数のワンルームタイプの物件を所有しておくことで、遺産分割をスムーズに行えるなどといった点が挙げられます。
さらに、相続税は基本的に一括払いですので、納税資金が足りないといった場合には物件を売却して納税資金にするといった対策も取りやすいということもメリットの一つといえます。

☆中古を選ぶ相続税対策とは

テレビなどで盛んにコマーシャルを流しているせいか不動産投資を活用した相続税対策と聞くと、どうしても新築物件をイメージしてしまう方もおられるかもしれません。しかし、物件の立地や価格によっては新築物件よりも中古物件の方が優れている場合もあります。
マンションなどの新築物件の購入価格はどうしても広告費用などがかさむため、実際の建築費より高く設定されています。そのため購入後すぐに価格が下落してしまうというリスクを抱えているのです。中古物件については経過年数によって価格が下落しているうえ、新築時のような広告費用はかかっていませんので、その分お得に購入することができるのです。
お得に購入することができるといっても、ローンを組めば新築時と同じような相続税の節税効果を期待できますし、余分な費用がかからないだけ利回りが良くなるといったメリットがあります。