資産を持っている人が、相続税をできるだけ節約したいと考えるのは当然です。本人が努力をして築いた資産をどう使うかは本人の自由ですが、税金に関しては強制的に徴収されてしまい、そこには自由がありません。1億円の資産を持っているなら、なんと30%もの税率がかかってしまいます。相続税を減らすための対策はいくつかありますが、この記事では、相続税対策としてのマンション経営について紹介します。

☆相続税が現金と不動産で約3割変わる仕組みとは?

1億円の現金を子供1人が相続するケースでシミュレーションをしてみます。平成27年1月1日以後の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算されます。子供1人の場合には、3,600万円です。1億円から3,600万円が控除された金額の、6,400万円に対して30%の税率をかけると、1,920万円となります。ここからさらに控除額の700万円を引いた、1,220万円が相続税の金額になります。
ここでは1億円がすべて現金であるケースで計算をしましたが、1億円の資産の中にマイホームなどが含まれている場合には、特例が利用できるので、金額が変わってくることには注意が必要です。
次に、1億円で投資用マンションを購入したケースで考えてみます。一般的に、マンションは5割~6割で評価されます。さらに、投資用不動産では第三者に貸すことになるので、評価額がさらに30%控除されます。その結果、現金に比べて3割程度の評価額になります。投資用マンションの評価額が3,000万円となれば、基礎控除の3,600万円を下回っているので、相続税はゼロになります。
このように、1億円の現金は評価額も1億円になるのに対して、投資用不動産にすると評価額が3割程度まで落ちるので、相続税の金額も大きく減ることになります。

☆マンション経営を相続税対策として行うメリット

相続税対策としてマンション経営を行うメリットは、現金で建物を購入した場合、評価額を3割程度まで落とせるというだけではありません。土地の評価額も落とすことができます。
土地の評価額は、一般的には路線価の80%程度になります。建物に比べると評価額は高めです。ところが、土地の上に投資用マンションを建築する場合には、土地の評価額がおよそ2割減額されます。その理由は、借地権割合の分が引かれるからです。

また、小規模宅地の特例が適用されれば、事業用の土地として200平方メートルで50%減額される可能性があります。マンション経営に利用している土地は事業用の土地なので、小規模宅地の特例を満たす可能性があります。

☆マンション経営を相続税対策として行うデメリット

マンション経営を相続税対策として行うことには、デメリットもあります。それは、アパートの管理に手間がかかること、修繕費がそれなりに高額になること、支払う所得税・住民税が高額になる可能性があることの3つです。例えば、年収1,800万円を超える場合の所得税・住民税の合算税率は50%です。すでに年収が1,800万円を超えているなら、家賃収入の50%が税金としてかかってくることになります。
現金だけでは足りず、ローンを組んでマンションを購入した場合には、ローンの返済もあります。ローンの返済にあてられるのは、「家賃収入-税金-必要経費」となりますので、高額な税金がかかってくるためにローンの返済ができないということになる可能性もあります。
さらに、マンション経営には一定のノウハウが必要になるので、経営がうまくいかずに空き室だらけになってしまう可能性もあります。

☆相続税対策だけに注視するのはNG!収益性が肝心!

相続税対策のためにマンション経営をすることには、メリットとデメリットがあります。収益性の低いマンションなら、購入しないほうがよいでしょう。逆に、収益性の高いマンションなら、相続税対策になるだけでなく、さらなる利益が見込める可能性もあります。この判断は素人では難しいので、税理士や不動産屋などと相談をした上で、購入を検討するのがよいでしょう。

デメリットもあるものの相続税の減額という効果は確実に見込めますので、デメリットをうまく克服できるなら投資用のマンションの購入はおすすめができます。