土地や建物にかかる固定資産税は、毎年納付する必要があり、金額も小さくないため、現在マイホームをお持ちの方はもちろん、これから購入予定の方にとっても、把握しておきたい税金の一つです。固定資産税の納税額は、地方自治体より送付される納税通知書に記載されていますが、その算出過程は分かりづらく、時にはその納税額が間違って記載されていることもあります。今回は、この固定資産税の計算方法を詳しく解説していきます。

固定資産税って?固定資産税の基礎知識

ここでは、固定資産税や、関連する用語について説明していきます。

固定資産税とは?

固定資産税とは、土地や建物、償却資産などの固定資産に対して、市町村(一部は都道府県)が課税する税金で、1月1日時点の所有者に課税されます。

固定資産税の計算方法は、下記のようになります。

固定資産税(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) × 税率

ここで課税標準額という用語が出てきましたので、少し詳しく説明いたします。

課税標準額とは

まず、総務大臣の定める「固定資産評価基準」に従って各自治体により、固定資産の評価額が決められます。これが固定資産税評価額です。

納税通知書のつづりでは、課税明細書のページに評価額や当該年度価格といった項目で、個々の固定資産の評価額が記載されています。

つづいて、この固定資産税評価額を、納税の負担を軽減するために、後ほどご紹介する「小規模住宅用地の特例」や「新築の建物の軽減」をもとに減額補正します。

この補正後の固定資産税評価額のことを、課税標準額といいます。納税通知書の最初の方に、納税額とともに記載されています。また、課税明細のページには固定資産税評価額と並んで、当該年度課税標準額といった項目で記載されていることが多いです。

この課税標準額と税率をもとに、固定資産税額は決定されます。

固定資産の種類

課税される固定資産としては以下のようなものがあります(※1)。

〔土地〕田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)
〔家屋〕住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物
〔償却資産〕構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税、軽自動車税の課税対象となるものは除く。

〔償却資産〕の固定資産税は、事業用資産に対するもので、一般の方には通常関係ありません。

※1 東京主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)(http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html

固定資産税の支払い時期と納税通知書

固定資産税の納税額の記載された納税通知書は、各市町村から発送されます。東京都23区は若干異なり、都が固定資産税を徴収します。

支払時期

〔地方自治体(東京都23区以外)〕

  • 第1期分……2018年4月頃
  • 第2期分……2018年7月頃
  • 第3期分……2018年12月頃
  • 第4期分……2019年2月頃

地方税法(第362条)に、“固定資産税の納期は、四月、七月、十二月及び二月中において、当該市町村の条例で定める。”との定めがあり、概ねそれに沿った時期となっています(※2)。ただし、鹿児島県鹿児島市や北海道札幌市では第3期、第4期の納期が上記より数ヶ月早いなど、各自治体によって納期には若干の違いがあります。

〔東京都23区〕

  • 第1期分……2018年6月末頃
  • 第2期分……2018年9月末頃
  • 第3期分……2018年12月下旬頃
  • 第4期分……2019年2月末日頃

東京都の23区は都が固定資産税を徴収するためか、第1期、第2期の納期が他の自治体に比べて遅いようです。

納税通知書

納税通知書には、固定資産税額だけでなく、課税額の計算の基礎となる固定資産税評価額などが記載されています。納税通知書の送付期限は地方税法(第364条9項)に、以下のように定められています(※2)。

“第二項若しくは第七項の納税通知書又は第三項の課税明細書は、遅くとも、納期限前十日までに納税者に交付しなければならない。”

そのため、初回納付月の初旬までには発送されることが多いです。

※2 出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp

固定資産税と都市計画税の違い

固定資産税と都市計画税はともに土地や家屋などの固定資産に課される税金であり、併せて納税しますが、下記のように若干違いがあります。

固定資産税

原則として、すべての固定資産に対して課税されます。税率は、総務省が標準税率と定める1.4%の自治体が多いですが、制限税率はないため、一部の自治体では1.5%のところもあるなど、自治体によって若干異なります(※3)。

都市計画税

原則として、市街化区域内の土地や家屋に対して課税されます。すなわち、市街化区域外の土地・建物や償却資産は課税対象外となります。税率は、地方税法(第702条の4)にて制限税率が0.3%と定められているため、0.2~0.3%の範囲で設定している自治体が多いようです(※2)。

※3 出典:総務省 固定資産税の概要(http://www.soumu.go.jp/main_content/000493600.pdf)

知らなきゃ損する!固定資産税の軽減措置

税負担軽減のため、住宅用の固定資産には様々な軽減措置が取られています。

住宅用土地の減税で固定資産税が1/6に!!

住宅用土地の減税には、「小規模住宅用地の特例」と「一般住宅用地の特例」の2種類があります。

「小規模住宅用地の特例」は、住宅の敷地となる土地200㎡以内について、固定資産税が1/6となります。例えば、更地の時の固定資産税が18万円だった場合、住宅を建てて土地を敷地とすると、土地の固定資産税額は、3万円となります。

「一般住宅用地の特例」は、住宅の敷地のうち200㎡を超える部分で、かつ住宅の床面積の10倍までの住宅用地について、固定資産税が1/3となります。

建物部分は固定資産税が最長5年間1/2に!!

新築の建物については、「新築の建物の軽減」の適用があり、床面積120㎡までの部分は固定資産税が1/2となります。

減額期間は構造によって異なり、3階建以上の準耐火構造及び耐火構造住宅(マンション等)については、新築後5年間、減額が適用されます。それ以外の住宅については、減額期間は新築後3年間となります。

更地よりも優遇される住宅の固定資産税

住宅用地には上記のように様々な特例がありますが、更地の場合は特例の適用はありません。そのため、建物を解体して更地にすると、土地の固定資産税額は一気に増額します。

近年問題化している老朽化した建物の放置は、こういった税制も関係しています。

これで納得!固定資産税の計算方法解説

ここまで、固定資産税の基本的な計算方法や様々な特例を紹介してきました。ここからは、実際の例をもとに理解を深めていきます。

新築一戸建ての購入前に自分で計算する

すでに所有している土地や建物については、固定資産税を把握できますが、これから一戸建てを購入する場合、初めて納税通知書が届くまでその税額は不明です。

納税通知書が届いてから慌てるよりも、事前に試算をしておき、おおよその目途を立てておくと安心です。

固定資産税を試算する際は、土地や建物の固定資産税評価額が必要となります。土地の固定資産税評価額については、「全国地価マップ」に載っている固定資産税路線価と、購入予定地の面積を乗じて求めると良いです(※4)。この固定資産税路線価は、各自治体も固定資産税の計算をする際に使用しており、ある程度精度のある固定資産税評価額が試算できます。

建物には土地のように固定資産税路線価といった目安がありませんが、一般的に建物の固定資産税評価額は、建築費の5割~7割と言われています。なので、建築費や戸建て販売価格をもとに固定資産税評価額を推測し、それをもとに固定資産税を試算してみるとよいでしょう。

地価マップの見方はこちらから
⇒地価マップ使い倒し!路線価、地価公示、地価調査の調べ方、路線価の計算方法(https://assema.tokyo/?p=4173

※4 出典:全国地価マップ(https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal

土地の固定資産税はいくら?

土地価格6万円/㎡として、更地と住宅用地であった場合を比較しながら固定資産税を計算してみましょう。税率は1.4%とします。

小規模住宅用地の特例について

小規模住宅用地は200㎡までの面積について適用されるので、土地面積を200㎡として、比較してみます。

〔更地〕
課税標準額 = 6万円/㎡ × 200㎡ = 1200万円
固定資産税額 = 1200万円 × 1.4% = 16.8万円

〔住宅用地〕
課税標準額 = 6万円/㎡ × 200㎡ × 1/6 = 200万円
固定資産税額 = 200万円 × 1.4% = 2.8万円

一般住宅用地の特例について

つづいて、土地面積が200㎡を超える場合に適用される一般住宅用地の特例について、計算してみます。土地面積を300㎡とすると、固定資産税は下記のようになります。

〔更地〕
課税標準額 = 6万円/㎡ × 300㎡ = 1800万円
固定資産税額 = 1800万円 × 1.4% = 25.2万円

〔住宅用地〕
課税標準額 = 6万円/㎡ × 200㎡ × 1/6 + 6万円/㎡ × 100㎡ × 1/3= 400万円
固定資産税額 = 400万円 × 1.4% = 5.6万円

以上のように、住宅用地と更地では、支払う固定資産税にかなりの差が出ることが分かります。

建物の固定資産税はいくら?

ここでは建物の固定資産税の試算を行います。固定資産税評価額を2000万円、税率を1.4%として試算してみます。

新築の建物の軽減

新築の建物は、先に述べたように、床面積120㎡までの部分は固定資産税が1/2となります。これをもとに計算すると、下記のようになります。

固定資産税額 = 2000万円 × 1.4% × 1/2 = 14万円

こちらの建物の固定資産税額に、土地の固定資産税額を足したものが、おおよその納税額となります。

なお、実際の納税額は、自治体ごとに他の軽減措置があるほか、都市計画税も加算されますので、ご注意ください。

認定長期優良住宅の建物の軽減

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、一定の要件を満たす住宅は所管の行政庁に申請することで、「長期優良住宅」に認定されます。

この「長期優良住宅」に認定され、さらに所定の要件を満たすと、住宅ローン控除や所得税額控除などの様々な優遇措置を受けることができます。その中には、新築建物の固定資産税の減額措置(固定資産税を1/2に減額)の適用期間延長も含まれています(※5)。

この減額措置の適用期間延長が認められると、戸建ては3年から5年に、マンション等は5年から7年に延び、より長期間減額措置の恩恵を受けることができるようになります。

なお、この減額措置の延長の適用要件としては、長期優良住宅への認定のほか、床面積が50㎡以上280㎡以下である必要があります。

※5 出典:国土交通省 長期優良住宅に対する税の特例(http://www.mlit.go.jp/common/001231003.pdf

取得時期によって変わる!固定資産税発生時期まとめ

固定資産を取得した時期によって、固定資産税の発生時期は変わってきます。

新築戸建て:土地の取得日と建物の新築日が同じ年の場合

土地と建物を同時に取得しますので、翌年から固定資産税を納税することとなります。また、土地は住宅用地であり、建物は新築のため、ともに固定資産税の軽減措置を受けることが可能です。なお、年の途中で土地や建物を売買した場合、1月1日現在の所有者に対し固定資産税がかかってくるため、通常は売主との間で日割り等により、売主が年額で支払う固定資産税の清算をすることとなります。これは以降のケースで、一年の途中に土地やマンションを取得した場合も同様です。

新築戸建て:土地を取得した翌年に建物を新築した場合

土地を取得した年を1年目とすると、1年目の1月1日時点で固定資産を所有していないため、固定資産税の支払いはありません。2年目の1月1日時点については、まだ建物を建てておらず、更地のみの状態となります。そのため、2年目の固定資産税は、土地については固定資産税の軽減措置を受けることができず、満額納税することとなります。その後、2年目に建物を新築したとすると、3年目の1月1日時点では、住宅用地と新築建物を所有している状態となります。よって、3年目は土地と建物について固定資産税の支払いが発生します。ただし、土地は住宅用地であり、建物も新築のため、ともに固定資産税の軽減措置を受けることが可能です。

マンションを購入した場合の発生時期は?

マンションを購入した場合は、購入の翌年から固定資産税を納税することとなります。また、戸建てと同じように、土地と建物それぞれに条件を満たせば、固定資産税の軽減を受けることができます。なお、マンションの敷地については、①持分で所有、②敷地一部を単独名義で所有、③借地権の3つのパターンがあります。①、②に関しては、その固定資産税評価額に応じて固定資産税の支払いが必要となります。③の場合、土地については固定資産税がかかりません。

固定資産税のトラブル!過払いから身を守るためには?

ここまで、固定資産税の計算方法を解説してきましたが、多くの方は納税通知書の税額を自ら検算することなく、請求されるままに支払っているのが現実だと思います。ですが、自治体からの過徴収など、固定資産税に関するトラブルは意外に多いのです。

各地の市町村で過払いが頻発している!!

総務省が2012年に発表した固定資産税の税額修正に関する調査結果によると、2009~2011年度の間に税額の修正を行った市町村は、全体の97.0%に上るということです(※6)。

さらに、そのうち税金を多く取り過ぎていたものは、家屋では約6割、土地では約7割が過払いだったようです。有名なところでは、埼玉県新座市にて2014年に発覚した過払い案件があります。60代夫婦は、自宅敷地について本来小規模住宅用地の特例の適用があるにもかかわらず、それが反映されておらず、過大な固定資産税を約27年間にわたり納付し続けていたというものです。結局、同市では他にも小規模住宅用地の特例が適用されていない土地が見つかり、大規模な過払い案件となりました。

また、2018年でも長崎市や横浜市、東京都日野市など、日本全国の自治体で過払い案件が発生しており、注意が必要です。

※6 出典:総務省 固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu05_02000010.html

自治体から届く納税通知書を必ず確認する!!

過払いを防ぐためには、まずは自治体から届く納税通知書を確認することが必要です。土地や建物の面積、固定資産税評価額、課税標準額などに異常な数字がないか確認してみましょう。つづいては、小規模住宅用地などの特例がきちんと適用されているかの確認をします。納税通知書の中にある課税明細書には、適用されている特例の記載があります。また、固定資産税評価額と課税標準額を見比べることでも、特例適用の有無がわかります。特に小規模住宅用地の特例は、適用の有無で、納税額が大きく変わってきますので、確認は必須です。

過払いが発覚したら即不服申立て!!

固定資産税の過払いがあった場合、①固定資産課税台帳に登録された価格に対する審査の申出と、②市町村税にかかる不服申立てにより、還付を受けることができます。

2つの不服申立て

①は、固定資産評価審査委員会に対して、固定資産課税台帳に記載された価格の審査を申し出るものです。審査の結果、価格が過大であったと認められた場合、価格および税額の修正が行われます(※7)。

②は、①以外の、税額や課税標準額などに課税処分全般に対して、各自治体に不服申し立てをするものです。自治体の審査の結果、税額に誤りがあるという裁決が出た場合は、税額の修正が行われます。

なお、どちらの手続きも審査結果に異議がある場合、取消しの訴えを提起することができます。

以上、2つの手続きですが、期間が3ヶ月と決められていますので、納税通知書が届いたら早めに内容を確認しましょぅ。

※7 出典:大阪市 不服申し立て(審査請求)・審査の申し出(http://www.city.osaka.lg.jp/kurashi/category/3009-7-0-0-0-0-0-0-0-0.html

国家賠償法による損害賠償請求

不服申立て以外に、国家賠償法に基づき、過払い金相当額の賠償金を自治体に請求する方法があります。国家賠償法では、公務員の故意又は過失によって違法に損害を与えた時は、国又は公共団体(自治体など)がこれを賠償する責任があると定めています(※2)。

判例としては、名古屋市で起こった固定資産税の過払いに対する損害賠償請求訴訟(最高裁、事件番号:平成21(受)1338)が有名です。同訴訟において、2010年に最高裁判所は、①、②の手続きを経ることなく、国家賠償法に基づく損害賠償請求が可能である旨を示しました(※8)。

ただし、公務員の故意又は過失、違法性について、納税者側に立証責任があるため、不服申立てに比べてかなりハードルは高くなります。

※8 出典:裁判所(http://www.courts.go.jp/

売主から公課証明書をもらって正確な固定資産税を事前に把握する

購入予定の土地や建物の固定資産税について、正確な固定資産税評価額や、課税標準額、税額を知りたい場合、売主に自治体から公課証明書を取得してもらい、確認するとよいでしょう。なお、納税通知書の課税明細書にも同様のことが記載されているのですが、そちらは売買にかかる不動産以外の不動産も記載されているため、売主によっては提示を拒む場合があります。その点、公課証明書の場合、特定の不動産のみ記載することが可能です。

まとめ

以上、固定資産税の計算方法と、試算例、不服申立ての方法などをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。固定資産税の課税誤りは、毎年、かなりの件数が発生しており、特に小規模住宅の特例の適用ミスは長期間に渡ると、その過払い金額はかなりの額に上ります。過払い確認のため、一度納税通知書をお手元に、固定資産税の確認をしてみてはいかがでしょうか?

監修:添田裕美(税理士)