住宅ローンを借り換えることで、数十万円以上もの利息を節約できることもあります。しかし、住宅ローンを借り換えさえすれば、必ず節約ができるというわけではありません。お得に住宅ローンを借り換えるために知っておくべきことをまとめましたので、住宅ローンの借り換えを検討している方、そして、住宅ローンの負担を少しでも軽減したい方はぜひ参考にしてください。

新しいローンにかかる費用

住宅ローンを借り換えるということは、現在の住宅ローンを解約し、新たなローンを組むということになります。新規にローンを組みますので、新たに手数料や保証料などの費用も発生します。

事務手数料

新しく融資を受けた金融機関に、“事務手数料”を支払います。事務手数料を計算する方法は2通りあり、借入額に関わらず一定の事務手数料が請求される場合と、借入額に一定の割合をかけて請求される場合があります。

なお、事務手数料は一旦ローンが成立すると戻って来ることはありません。そのため、新しく住宅ローンを借り換える度に事務手数料が発生します。

保証料

住宅ローンを組むときは、万が一、住宅ローンを支払えなくなった時のために、保証会社に保証料を支払います。保証料の計算方法も2通りあり、借入金額に対して一定割合を支払う場合と、金利に年0.1~0.2%ほど上乗せする形で支払う場合があります。

団体信用生命保険料

ローン返済中に契約者が死亡または高度障害状態になって、支払い不能になる可能性があります。しかし、“団体信用生命保険”に加入しておくと、万が一、契約者が死亡または高度障害状態になったとしても、残債はすべて免除され、住宅の権利は契約者のものになるのです。団体信用生命保険料は、住宅ローンの金利に年0.1~0.2%ほど上乗せする形で支払うことが一般的です。

なお、団体信用生命保険料は、フラット35では基本的に契約者自身が負担します。銀行や信用金庫の住宅ローンでも契約者自身が負担することが一般的ですが、近年、団体信用生命保険料を金融機関側が負担してくれるタイプの住宅ローンも増えてきました。団体信用生命保険料は決して安い負担ではありませんので、住宅ローンを選ぶ際に「どちらが団体信用生命保険料を負担するのか」についてもチェックするようにしましょう。

印紙税

売買契約やローン契約をする際には、“印紙税”を国に対して支払わなくてはなりません。印紙税は契約する金額によって、200円~60万円(軽減措置が適用される場合は200~48万円)の範囲で請求されます。

【出典】国税庁:不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

抵当権設定の登録免許税

住宅ローンを組むときは、万が一、契約者が返済できなかったときに備えて、住宅に抵当権を設定します。抵当権を設定するときには“登録免許税”として借入金額の0.1~0.4%を国に支払います。

【出典】国税庁:登録免許税の税額表

司法書士への報酬

抵当権設定登記の手続きは、司法書士に依頼することが一般的です。そのため、住宅ローンを新規に組むときは、銀行等の金融機関側が指定した司法書士に対して報酬を支払わなくてはなりません。司法書士への報酬については特に決まりはありませんが、5~10万円程度になることが一般的です。

物件検査手数料

フラット35で融資を受けるときは、融資対象の物件が技術基準に適合しているかどうかを調べる“物件検査”を、ローン申込者の負担で実施します。検査機関によって手数料は異なりますが、10~15万円程度になることが一般的です。

既存ローンの解約にかかる費用

住宅ローンを借り換えるときは、新たに申し込むローンだけでなく、既存ローンの解約にも費用がかかります。既存ローンにかかる費用が多すぎるときは、借り換えのメリットが少なくなってしまうことや、反対に、借り換えによって損をしてしまうこともあります。

抵当権抹消の登録免許税

既存ローンの抵当権を抹消し、新たな借入先で抵当権を設定します。抵当権は設定するときだけでなく抹消するときにも“登録免許税”がかかりますが、抹消するときの登録免許税は物件の価格や借入額に関わらず、1不動産につき1,000円と定額です。なお、戸建て住宅については、建物と土地に対して別個で登録免許税が発生しますので、2,000円を支払います。

全額繰り上げ返済手数料

住宅ローンを借り換えるということは、新たな金融機関から借り入れて、既存のローンを一括で返済するということになります。手数料無料で繰り上げ返済ができる金融機関も多いのですが、金融機関によっては“全額繰り上げ返済手数料(一括返済手数料)”が請求されることもありますのでご注意ください。

借り換えの具体例

では、実際に住宅ローンの借り換えを行うと、毎月の支払い額や総返済額がどう変わるのか見ていきましょう。現在のローン残高が2,500万円、残りの返済期間が20年0ヶ月、現在の借入金利が年1.5%の固定金利のケース(ボーナス返済なし)でシミュレーションします。

毎月の支払額の比較

住宅ローンではもっとも一般的な“元利均等返済方式”で返済する場合、毎月の返済額は120,636円となります。利息合計は3,952,725円、総返済額は28,952,725円です。しかし、年0.8%の固定金利に乗り換えるとどうなるでしょうか。返済金額を変えない場合と返済期間を変えない場合でシミュレーションしてみましょう。

総返済額を減らしたいなら返済期間を短く!

毎月、指定された返済額をきちんと返済できていた方なら、住宅ローン借り換え後も、今までと同じ返済額を毎月支払う方が良いでしょう。月々の返済額が変わらない分、返済期間が短くなり、総返済額も大きく下がります。今回の例でも、返済期間は1年4ヶ月も短縮され、総返済額は200万円以上も下がっています。

毎月の返済額が負担だった方は返済期間はそのままで

毎月の返済額が家計に大きな負担を与えていた方は、返済期間はそのままで毎月の返済額だけを下げるようにしましょう。今回の例でも、返済期間を変えないでシミュレーションすると、月々の返済額を約7,900円下げることができ、毎月の負担は少々軽減されます。

また、総返済額も借り換え前と比べると190万円ほど下がります。返済期間を短縮するより節約効果は劣るものの、それでも多額のお金をセーブすることができるのです。

借り換えにかかる諸経費

現在のローンよりも金利が低いローンに借り換えれば、総返済額が少なくなるのは当然です。しかし、実際には、借り換えの際には諸経費がかかりますので、低金利が適用されて利息が下がった分がまるまる節約できるというわけではありません。

例えば、以下のように諸費用がかかると仮定した場合、諸費用合計は約72万円かかるため、総返済額が72万円以上減らないときは、住宅ローンを借り換えてもお得になりません。

  • 事務手数料約3万円
  • 保証料約50万円
  • 抵当権設定登記費用・司法書士報酬15万円
  • 印紙代約2万円
  • 抵当権抹消費用約2万円

(諸費用合計)約72万円

借り換えの結果

では、2,500万円の住宅ローンを、固定金利年1.5%のローンから固定金利年0.8%のローンに乗り換えるのはお得なのか調べていきましょう。

月返済額を変えない場合も返済期間を変えない場合も、いずれも借り換えの際の諸費用を支払っても110万円以上の節約ができることが分かります。このようなときは、積極的に借り換えを実施して、少しでもお得になるようにしましょう。なお、お得な金利プランがあるときは、なるべく早期に借り換えをすることがおすすめです。借り換え時期が早ければ早いほど、低金利が適用される期間が長くなり、節約できるお金も増えます。

諸費用を自己資金で捻出できない場合には・・・

低金利によって節約できる金額から諸費用を差し引いた金額がプラスのときは、住宅ローンの借り換えを実施して、利息を賢く節約しましょう。

しかし、借り換えの際には、1つ克服すべき問題があります。それは、“諸費用の支払い”です。一般的に諸費用は分割で支払うのではなく、借り換え手続きの際に一括で支払います。借り換えすればお得になることが分かっていても、諸費用を一括で支払うことが難しいために借り換えできないという方もいるのではないでしょうか。どうしても諸費用を自己資金で捻出できないときは、次の方法を検討してみて下さい。

保証料を金利に上乗せにする

諸費用の中でも最も高額になることが多いのは“保証料”です。一括で支払うことが難しいときは、金利を年0.2%ほど上乗せするという形で支払えることもあります。金融機関の融資担当者に相談してみて下さい。

保証料なしの住宅ローンを利用する

住宅ローンの中には、保証料不要のものもあります。現在利用している住宅ローンよりも低金利で、なおかつ保証料不要の住宅ローンを紹介してもらえるときは、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

諸費用分も借り入れる

諸費用を借りるという方法もあります。諸費用を住宅ローンに上乗せする形で支払うこともできますし、フリーローンなどを利用して支払うことも可能です。ただし、諸費用分の利息が発生しますので、トータルで見て節約できているのかをしっかりと吟味してから借り換えを実施してください。

最後に

住宅ローンは借入額が大きいため、少しでも金利が低くなれば利息を大きく減らすことができます。ただし、諸費用がかかりますので、必ずトータルでどれだけお得になるのかを計算してから借り換えるようにしましょう。