居住用や投資のために土地や建物などの不動産物件を購入した場合、所有者として固定資産税を納付することになります。その際に、本来納めるべき額以上を納付して過払いなどのトラブルに巻き込まれないように、固定資産税の支払い時期、納税義務者、固定資産税の納付額の計算方法などをご紹介します。

固定資産税とは?知っておくべきことのまとめ

固定資産税について知っておくべき事柄として、支払いの時期、納税義務者、滞納した場合の措置などを見ていきます。

固定資産税はいつ誰が支払うのか?

固定資産税は税金なので、納付する義務があります。納付にあたっては、いつ誰が支払うのか、固定資産税の支払い時期と納付義務者を確定することが重要になります。

支払い時期

固定資産税の支払い時期は、年4期に分けられています。納税時期は各自治体によって異なり、5月・7月・12月・2月とする自治体もあれば、7月・10月・12月・2月とする自治体もあります。

固定資産税の納税時期は「納税通知書」に記載されており、年4回に分けて納付するほか、一括して納付することが可能な自治体もあります。固定資産税の正確な支払い時期については、各自治体の窓口に尋ねるか、ホームページを参照すると安心です。

納税義務者

税金を納付する義務が法的に課せられている人を、納税義務者といいます。固定資産税の納税義務者は、簡潔にまとめると、毎年1月1日の時点で、物件の所有者として登記簿に登録されている方になります。

1月1日時点での登記簿上の所有者に対して、4月1日から翌年の3月31日までの固定資産税が課税される仕組みです。1月1日以降に物件を取得した場合は、翌年から課税されることになります。

固定資産税の課税標準とは

固定資産税を課税するためには、課税の対象となる資産の範囲と、課税する税額を定めるための基準である、課税標準を明らかにする必要があります。以下、対象資産と課税標準について見ていきます。

対象資産

固定資産税が課税される対象となる資産は、土地と建物です。土地と建物それぞれについて、税額が算出されて税金が課されることになります。

課税標準

課税標準とは、税金の額を算出するための基準のことです。課税標準は、多くの場合は金額で表され、金額で表される課税標準は課税標準額ともいいます。

固定資産税の課税標準額は、物件である土地や建物の評価額を基準にするのが原則です。物件の評価額が高いほど、それに対して課される税額も高くなるのが一般的です。

住宅用地については、土地の評価額をそのまま課税標準額にするのではなく、特例措置や調整によって、実際の評価額よりも低い価格に基づいて課税されるケースが多くなっています。

固定資産税とセットで課税される都市計画税

固定資産税とセットで課税される税金として、都市計画税があります。都市計画税は、毎年1月1日の時点で都市計画区域内にある土地や建物の所有者に対して、自治体が課税する税金です。都市計画税は、固定資産税と一括して納付する仕組みになっています。

都市計画税は、道路事業、土地区画整理、下水道の整備、市街地の再開発などに用いられます。

都市計画税のおおまかな計算式は、

課税標準額(物件の評価額が原則) × 税率(最高0.3%以内で税率は各自治体による)

です。

都市計画税の額については、住宅用地の特例により軽減される場合があります。

固定資産税を滞納?猶予や減免の救済制度について

固定資産税を滞納し続けると、督促状が数回届く→最終通知として催告状が届く→口座の差押えや不動産に対する強制執行などの処分が実施される、という流れになるのが一般的です。納付期限を過ぎると延滞金も発生します。

滞納による不利益を受けないためには、期限までにきちんと納付することが大切ですが、様々な事情によって、固定資産税を納めることが難しい場合もあります。そのような場合は、固定資産税の支払いを一定期間猶予する制度や、本来収めるべき金額の一部を免除する減免制度などを利用する方法があります。

こうした救済制度が利用できる事情の例としては、地震や火災などの災害で物件が被害を受けた場合、生活保護を受けている場合、住宅を建替え中の場合、などです。救済制度の正確な内容や条件については、各自治体に問い合わせると安心です。

固定資産税の計算方法

固定資産税の納付額を知るためには、税額の計算方法を知っておくと便利です。以下、固定資産税の計算方法の原則や、減額の特例について見ていきます。

固定資産税の計算式

固定資産税の計算式は、

課税標準額 × 税率

が原則になります。以下、詳しく見ていきます。

土地の計算方法

固定資産税の計算式における、課税標準額と税率について見ていきます。

課税標準額は、各自治体が備える固定資産課税台帳に記載されている不動産固定資産評価額が基準になります。固定資産税の対象となる物件の所在地の市区町村役場で閲覧が可能です。税率は自治体ごとに設定することが可能ですが、多くの自治体では標準税率である1.4%で算出しています。

土地については、 住宅用地の場合など固定資産税が特例によって減税される場合があります。特例を考慮しない場合の土地の計算方法の例としては、課税標準額が300万円の土地で税率が1.4%の場合、課される固定資産税の額は4万2,000円になります。

建物の計算方法

建物に課される固定資産税の計算方法は、基本的に土地の場合と同様です。建物については、新築住宅などの特例によって減税される場合があります。

特例を考慮しない場合の建物の計算方法の例としては、課税標準額が600万円の建物で税率が1.4%の場合は、課される固定資産税の額は8万4,000円になります。

固定資産税の減税に関する特例

固定資産税については、課される税金が減税される特例があります。以下、各特例について見ていきます。

小規模住宅用地の減額の特例

小規模住宅用地については、固定資産税の課税標準額が軽減される特例措置があります。小規模住宅用地とは、住宅用の土地のうち、住戸一戸あたりで200平方メートル以下の部分をいいます。軽減される割合としては、住宅用の土地のうち200平方メートル以下の部分については、課税標準の6分の1に軽減されます。

一般住宅用地の減額の特例

住宅用の土地については、小規模住宅用地である200平方メートルを越える部分についても、一般住宅用地として課税標準額が軽減される特例措置があります。軽減される割合としては、住宅用の土地のうち200平方メートルを超える部分については、課税標準の3分の1に軽減されます。

例としては、課税標準額が540万円の300平方メートルの土地の場合、特例によって課税標準額が120万円となります。課される固定資産税は、税率が1.4%の場合、本来の7万5,600円から減額されて1万6,800円になります。

新築住宅の建物について減額の特例

一定の要件を満たす新築住宅については、新築後の一定期間において、固定資産税額が減額される特例があります。
 
減額の期間としては、3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅は新築後5年間で、一般の住宅(上記以外)は新築後3年間減額の対象になります。減額の内容は、居住部分の延床面積が120平方メートル以下の部分について、固定資産税額が2分の1になります。

新築住宅の特例の要件、減額期間、減額内容などは規定が非常に細かいため、自治体などにきちんと確認しておくと安心です。

固定資産税の具体的な計算事例

固定資産税の具体的な計算事例について説明します。課税標準額が540万円の300平方メートルの土地の上に、築2年で居住部分の延床面積が100平方メートルの課税標準額1,000万円家屋が建っており、税率が1.4%の場合を考えてみます。

土地については先述の事例と同様に住宅用地の特例が適用され、固定資産税が本来の7万5,600円から減額されて、1万6,800円になります。

建物については新築住宅の特例が適用され、固定資産税が本来の14万円から減税されて、7万円になります。

最終的な固定資産税は、本来の合計が21万5,600円のところ、特例によって8万6,800円になります。

軽減措置が適用されているか納税通知書でチェック

住宅用地や新築住宅などの特例措置が適用されているかをチェックするには、行政から届けられる納付通知書を確認する方法が便利です。

細かい書式は自治体ごとに違いがありますが、基本的な書式としては、まず特例なしの本来の税額が記載された後、特例による軽減額が差し引かれて、実際に課される税額が表示されているケースが多くなっています。

なぜ固定資産税は自分で計算すべきなのか?

固定資産税を納付する前に自分で金額を計算しておくと、納付をめぐるトラブルを防止することにつながります。

行政による課税額の計算ミスがないか確認

行政から納税通知書が届いた際にすぐに納付するのではなく、記載された金額が正しいかどうか、自分でも計算してみることが大切です。

固定資産税は払い過ぎても返金されない

固定資産税の払い過ぎに気付いた場合でも、固定資産税を管轄している部署がすぐに直接返金してくれるわけではありません。過去にさかのぼって還付を受けるためには、間違えて課税されていた事実を証明する必要があります。税理士などの専門家に還付請求を依頼するなど、手間や費用が発生する可能性もあります。そうしたことを防ぐためにも、固定資産税を納付する前に、事前に自分で計算しておくことが重要な作業になります。

まとめ

固定資産税の仕組みについてご紹介しました。固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物の名義人になっている方に対し、年4回に分けて税金が課される制度です。

固定資産税の基本的な計算方法は、不動産の評価額を基準とする課税標準額に、標準税率である1.4%を掛けるのが一般的ですが、住宅用地や新築住宅などの特例によって、減税される場合もあります。固定資産税の仕組みや計算方法を知ることで、過払いなどのトラブルの防止に役立てていただけましたら幸いです。

監修:添田裕美(税理士)