不動産投資における主要な経費の一つに固定資産税があります。固定資産税は市町村(東京23区は都)(以下、市区町村等といいます)が課税を行う税金で、役所から通知された税額を納めることとなります。固定資産税の計算は複雑ですが、その仕組を理解することは他の不動産に関する税金の理解に繋がります。ここでは計算の基礎となる固定資産税評価額の調べ方、固定資産税の計算方法などを分かりやすく解説いたしますので、しっかり理解して不動産投資に役立ててください。

固定資産税について

固定資産税の仕組みを理解するためには、税額計算の基礎となる固定資産税評価額、税率などについての知識が不可欠です。まずは概要から見ていきます。

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる評価額のことをいいます。固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有する方に対して当該固定資産が所在する市町村等が課する税金です。市町村等は土地や建物について、総務大臣が定める固定資産評価基準によって評価を行い、固定資産税評価額を決定します。土地や建物の固定資産税評価額が具体的にどのように決定されるかについては、下記【固定資産税の計算方法とは】で解説いたします。

固定資産税の税率は?

固定資産税は課税標準額に税率を乗じて求めます。

課税標準額と固定資産税評価額

課税標準額は固定資産税評価額であることが原則ですが、土地の利用形態による特例の適用などによって軽減されることがあります。

税率

課税標準額に乗ずる税率は、地方税法によって1.4%が標準税率として定められています。市町村等は税率を変更することができますが、ほとんどの市町村等は標準税率の1.4%で課税を行っています。税率は固定資産税が所在する市町村等のホームページや役所に問い合わせることで確認できます。

固定資産税の課税はいつ決定するのか?

毎年1月1日時点において、所有者として土地や家屋の登記簿に登記されている、又は補充課税台帳に登録されている方に対して課税されます。

市町村等は、固定資産税評価額に基づき固定資産税額を算定し、その年の4月1日から1年間の固定資産税の納税通知書を納税義務者に送付します。したがって1月1日時点で所有者でないにも関わらず納税通知書が送付されてきた場合には、手続きの不備などの可能性がありますので、納税する前に役所に確認した方が良いでしょう。

固定資産税評価額から各種税金の計算が出来る

不動産投資では、固定資産税だけでなく不動産に関する各種税金の納税義務が生じます。例えば都市計画税、不動産取得税、登録免許税などですが、これらの税金は固定資産税評価額から計算が出来ますので、固定資産税評価額と計算方法を知ることで各種税金額を見積もることが可能となります。

実勢価格、相続税評価額、固定資産税評価額の関係性

固定資産のうち土地の価格については、固定資産税評価額だけでなく公示価格、相続税評価額が公表されるほか、実勢価格といって実際の売買で成立する価格があります。これらの価格は使用目的が異なり価格も異なることから、一物四価と揶揄されることもありますが、一定の関係性が認められます。

公示価格は公共事業における用地買収のための規準とすべき価格であり、民間における土地の売買においても指標とすべき価格であると定められています。このため実勢価格と公示価格をほぼ同水準とした場合に、実勢価格を100%とすると、相続税評価額はおよそ80%、固定資産税評価額はおよそ70%の水準で設定されているのです。例えば相続税評価額が100であれば、固定資産税評価額は100÷80×70でおよそ87.5となります。

以上の関係性から、相続税評価額や固定資産税評価額が確認できれば他の評価額のおよその価格を計算できることが分かります。なお、実勢価格は需要と供給のバランスによって価格が形成されるために、上記の関係性から乖離した価格となることがあります。

固定資産税評価額のチェック方法とは

固定資産税評価額をチェックする方法はいくつかありますが、代表的な方法を下記に紹介いたします。

役所から届く固定資産税課税明細書でチェックする

毎年4月頃になると固定資産が所在する市町村等から当該固定資産の所有者である納税義務者に固定資産税納税通知書が送付されます。この納税通知書には納めるべき固定資産税と都市計画税の税額が記載されていますが、一緒に固定資産税課税明細書が同封されています。この明細書には、課税の対象となっている土地や家屋などの所在地、地番、家屋番号などのほかに、固定資産税評価額が記載されています。固定資産税課税明細書には課税標準額も記載されていますが、課税標準額と固定資産税評価額は別々に記載され、金額も異なっているケースがありますので注意してチェックしましょう。

役所で固定資産評価証明書を取得もしくは取り寄せる

固定資産評価証明書を役所で取得する、又は役所から郵送で取り寄せることで固定資産課税評価額をチェックできます。

役所の窓口で、必要事項を記載した所定の申請書を提出し、本人を証明するための身分証明書の提示と発行手数料を支払うことで証明書を取得することができます。また、本人以外であっても相続人、同居の親族であれば取得が認められます。なお、本人以外の代理人によって証明書を取得する場合には委任状と代理人の身分証明書が必要となります。

郵送による取得は、必要事項を記載した所定の申請書又は書類、代理人であれば委任状、身分証明書の写しなどの取得に必要な書類、郵便切手を貼付した返信用封筒と一緒に発行手数料に相当する定額小為替を同封又は現金書留などで役所の担当部署に送付することで取得が可能となります。

必要書類などは役所によって異なるケースがありますので、事前に確認されることをお勧めします。不動産投資においては不動産売買などの場面で固定資産評価証明書の取得が必要となるケースもあります。

役所で固定資産課税台帳を閲覧する

固定資産税の課税対象となる固定資産の状況と固定資産評価額を記録した固定資産課税台帳の備え付けが役所には義務付けられています。固定資産課税台帳は総称であり、台帳には土地課税台帳、家屋課税台帳など種類があります。納税義務者本人が申請をすることで、ご自身の固定資産について課税台帳の記録を閲覧することができ、固定資産税評価額をチェックすることが出来ます。なお、閲覧で写しが交付されますが、各種証明を目的とする場合には証明書の取得が必要となります。

固定資産税の計算方法とは

ここまで固定資産税評価額や税率についての定義、固定資産税評価額のチェック方法について解説してきましたが、ここからは評価額や固定資産税の具体的な計算方法などについて解説を行っていきます。

土地の評価額はどのように決まる?

固定資産税の基準となる土地の評価額は、国が定める「固定資産評価基準」に則って決定されます。不動産投資の対象となる土地は市街地に存在し、宅地利用されていることが一般的であることから、市街地宅地評価法による土地の評価額の決定について解説いたします。

宅地については、宅地に接面する道路に付設された「路線価」に当該宅地の形状や奥行などの特徴に応じた補正率を乗じて土地の評価額を決定します。この「路線価」は固定資産税のための路線価であり、相続税や贈与税の計算に用いられる「相続税路線価」とは異なるものです。固定資産税のための路線価は、当該路線において標準的な規模、形状等をした宅地を前提とした価格であるため、標準と異なる土地の評価額を求める場合には補正率を乗じる必要が生じます。

この路線価は標準宅地の適正な時価が基準となります。宅地の用途によって区分された地区(用途地区といいます。)を街路の状況などによって更に細区分(状況類似地区といいます。)し、その細区分した地区ごとに標準的な街路(主要街路といいます。)を選び、当該主要街路に接面する規模、形状等が標準的な宅地を標準宅地として選定します。

標準宅地の適正な時価を不動産鑑定士の鑑定評価によって求め、当該評価額の70%を主要街路の路線価と状況類似地区内のその他の街路と比較して得られた格差を反映させて、その他の街路の路線価を設定していきます。

このようにして定められた固定資産税の路線価や標準宅地の価格はインターネットでも公開されていますので確認してみてください。なお、固定資産税評価額は3年に1回のペースで評価替えが行われます。

建物の評価額はどのように決まる?

建物の評価額も土地と同様に「固定資産評価基準」に則って決定されます。建物のことを固定資産評価基準では家屋と表現しており、家屋の評価について「木造家屋及び木造家屋以外の家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点一点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法による」としています。

これは家屋の評価額は再建築価格方式で行うということを表しており、評価の対象となる家屋と同じ家屋を評価時点で新しく建築することなった場合の建築費(再建築価格)を基準としています。これに当該建築費の経年による減価、損耗の程度による減価を反映して評価額を決定するということを言っています。この再建築価格は建物の市場価格の50~60%程度になると言われています。また、経年による減価については経年減点補正率が定められており、最も低い値は0.2ですので、建物の評価額はどれだけ年数が経過しても再建築価格の20%が下限となることが分かります。

マンションはどのように評価される?

不動産投資では投資用の分譲マンションを取得するケースがありますが、分譲マンションは専有部分と共用部分があり、固定資産税の評価がどのように行われるのか気になることだと思います。分譲タイプのマンションでは、まず一棟の敷地全体である土地と一棟の建物のそれぞれについて評価を行います。土地については設定された敷地権割合を一棟全体の土地の評価額に乗じた金額が税金の評価額となります。建物については、所有する専有部分の床面積と専有面積割合で按分された共用部分との合計面積に対して課税されます。この合計面積に対する割合を一棟の建物の評価額に乗じた金額が税金の評価額となります。

建物の固定資産税の計算方法は

建物の固定資産税の計算は課税標準額に税率を乗じて行います。建物の場合は固定資産税評価額と課税標準額が一致するのが一般的であるため、固定資産税評価額が分かれば固定資産税を容易に求めることができます。ただし、新築の建物で一定の要件を満たす場合には特例の適用によって固定資産税の減額措置を受けられるケースがありますので次に詳しく解説いたします。

新築時の減税措置とは?

新築時の減額措置とは、一定の要件を満たす新築住宅について固定資産税額を一定の期間減額することをいいます。

減額対象となる建物の要件

一戸建の住宅、分譲マンションなどの区分所有建物の場合、居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であることが要件となります。なお、分譲マンションやアパートなどを貸家として利用する場合には独立的に区画された居住部分ごとの床面積が40㎡以上280㎡以下であることが要件となります。

分譲マンションの床面積は専有部分の床面積に専有部分の床面積の割合で按分された共用部分の床面積を合計した面積で要件の判定を行い、アパートなど一棟全体を貸家として利用する場合にも独立的に区画された居住部分ごとに分譲マンションの計算方法に準じて求めた床面積で要件の判定を行います。

減額の内容

居住部分の床面積120㎡以下の部分について固定資産税額が2分の1となります。例えば一戸60㎡の建物の固定資産税額が100,000円だとすると、特例適用によって50,000円が減額となりますが、一戸150㎡の建物の固定資産税額が200,000円だとすると、200,000円×120㎡÷150㎡÷2=80,000円が特例適用による減額となります。

減額の期間

原則として、新築建物の固定資産税が新たに課税される年度から3年度分が減額の期間となります。3階建以上で耐火・準耐火の建物である場合には5年度分が減額の期間となります。

土地の固定資産税の計算方法は

土地の固定資産税の計算も建物同様に課税標準額に税率を乗じて行うことになりますが、建物と異なり固定資産税評価額と課税標準額が一致しないのが通常です。特に住宅用地として利用している土地の固定資産税評価額と課税標準額では大きな乖離が見られます。これは住宅用地の特例適用による課税標準額の算出が土地の固定資産税を難しくしている要因の一つなのですが、仕組みを理解すれば簡単です。固定資産税の住宅用地の軽減措置について解説します。

小規模住宅用地、一般用住宅用地の軽減措置とは?

1月1日時点において、居住用建物の敷地として利用されている土地については、税負担を軽減させる目的で住宅用地の特例により課税標準額が減額されます。この特例は面積要件によって「小規模住宅用地」、「一般住宅用地」の二つに分けて適用されます。

「小規模住宅用地」の特例では、住宅用地のうち200㎡以下の部分について課税標準額が固定資産税評価額の6分の1で計算が行われます。

「一般住宅用地」の特例では、200㎡を超える住宅用地について課税標準額が固定資産税評価額の3分の1で計算が行われます。

具体例を挙げると300㎡の住宅用地で固定資産税評価額が36,000,000円だとした場合に、小規模住宅用地の特例によって200㎡以下の部分の課税標準額が36,000,000円×200㎡÷300㎡×1/6=4,000,000円、一般住宅用地の特例によって200㎡を超える部分の課税標準額が36,000,000円×100㎡÷300㎡×1/3=4,000,000円となり、課税標準額の合計は8,000,000円となります。

以上から住宅用地の軽減措置によって課税標準額は8,000,000円となり、固定資産税評価額36,000,000円と大きく乖離することになるのです。

なお、マンションやアパート等の場合には、戸数に200㎡を乗じた面積について小規模住宅用地の特例を受けることができます。

まとめ

今回は固定資産税について評価額の調べ方、計算方法などについて具体例も交えて解説をいたしました。固定資産税に対する理解は、不動産の税制、価格に対する理解を深めることとなり不動産投資の様々な場面でお役に立つことと思います。

監修:添田裕美(税理士)