土地は私たちの生活の基盤であり、所有者にとっては貴重な財産でもあります。土地を所有することによって固定資産税が課されますが、税額算出の基本は土地の評価額です。しかし、土地の価格は利用目的によって複数の価格が存在しており、一物四価とも言われています。

土地の個々の固定資産税評価額は公表されていませんが、固定資産税の計算の仕組みと公表されている価格のそれぞれの特徴を理解することで、概ねの固定資産税を把握することが可能となります。

固定資産税について

マイホームなどを所有していると毎年固定資産税の納税を求められますが、固定資産税とは何に課税され、どこに納めているのかを解説します。

固定資産税は土地や家などの資産に課せられる税金

土地や家屋、機械式駐車場などのうち、一定の要件を備える償却資産などを固定資産といいます。地方税法の定めによって、このような固定資産を所有していると固定資産の価値に応じて固定資産税が課されます。

固定資産税の納税義務者

固定資産税は毎年1月1日時点において、土地や家屋などの固定資産を所有している者が納税義務者となります。

毎年1月1日時点で固定資産の状況、所有者を確定して税金を課すことから、この期日のことを賦課期日といいます。賦課期日以降、例えば1月2日に不動産を売却していたとしても、同年1月1日時点での所有者であった者に税金を納める義務が生じるため、納税通知書は従前の所有者に送付されます。

具体的に所有者とは、土地や家屋については登記簿に所有者として登記されている者、または補充課税台帳に登録されている者のことをいい、償却資産については償却資産課税台帳に所有者として登録されている者のことを呼びます。

固定資産税の課税対象

固定資産とは土地、家屋及び償却資産の総称ですが、地方税法では具体的にそれぞれ下記のように定められています。

土地

田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地

家屋

住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む)、倉庫その他の建物

償却資産

事業に用いられる固定資産のうち、土地や家屋、鉱業権などの無形減価償却資産に該当せず、法人税法や所得税法によって当該固定資産の減価償却費が損金や経費となるもので、門や看板などが該当します。

固定資産税の納付先

課税対象となる固定資産が所在する市町村(東京都23区は東京都)が固定資産税の課税主体となりますので、納付先も当該固定資産が所在する市町村(東京都23区は東京都)となります。例えば、所有者が東京都港区に住所を有する方であっても、固定資産が横浜市に所在する場合には、当該固定資産に係る固定資産税の納付先は横浜市となります。

固定資産税の税率

固定資産税評価額に税率を乗じることで固定資産税は求められ、税率は1.4%が広く使われています。

固定資産税の算出方法について

固定資産税は固定資産の価値に応じて税額が変わってきます。ここでは土地の固定資産税の算出方法について解説していきます。

固定資産の評価額×標準税率(1.4%)

固定資産税は原則として「固定資産の評価額×標準税率(1.4%)」の計算によって算出されます。

しかし、土地については特例などの適用によって減額されることがあり、この減額後の金額を課税標準額といいます。このような場合には、評価額を基準として算定された課税標準額に税率を乗じて固定資産税を算出することになります。

固定資産税の評価額

固定資産税は課税対象となる土地の価値に応じて税額が変わります。これは課税の対象となる個々の土地について、住宅地域、商業地域、工業地域などの地域性に基づく価格水準をベースに、間口の広さ、奥行の長さ、形状などの土地が持つ個別性を反映して評価額を求めているためです。

固定資産税の税額算出の基本となる土地の評価額は、市町村長が総務省で定められた固定資産評価基準によって決定します。固定資産評価基準には、固定資産の評価の基準と評価の実施の方法及び手続が定められています。

標準税率

標準税率とは、地方公共団体が地方税を課す際に、通常採用する税率のことをいいます。地方公共団体の財政上、必要があると認められる場合には、制限税率を上限として標準税率以外の税率を採用することが可能です。固定資産税については、1959年に制限税率が2.1%と定められましたが、2004年に廃止されました。

固定資産税の標準税率は1.4%で、ほとんどの地方公共団体が1.4%を採用していますが、一部では1.4%よりも高い税率を採用しているところもあります。土地の所在する市町村に問い合わせて、採用している税率を確認することができます。

住宅用地には軽減の特例がある

固定資産税は、固定資産の評価額に税率を乗じて算出しますが、住宅用地には税負担を軽減させることを目的とした特例があります。住宅用地とは、土地上の住宅を維持し、その効用を果たすために利用されている土地のことをいい、庭や駐車場などを含みます。住宅用地の特例には小規模住宅用地と一般住宅用地の軽減の特例があります。

小規模住宅用地の軽減

住宅一戸当たりにつき200㎡以下の住宅用地については、小規模住宅用地の軽減が適用され、土地の評価額が6分の1に軽減されます。

一般住宅用地の軽減

住宅一戸当たりにつき、200㎡を超える住宅用地については、一般住宅用地の軽減が適用され、土地の評価額は3分の1に軽減されます。なお、一般住宅用地の軽減は無制限に適用されるという訳ではなく、土地上にある家屋の床面積の10倍までの面積に限られます。

例えば、800㎡の土地の上に50㎡の住宅が存する場合には、土地の評価額が土地面積の200㎡までは6分の1に、200㎡を超えて500㎡までは3分の1に軽減されますが、残りの300㎡の土地については、住宅用地の軽減は受けられません。

軽減の特例は申請不要

住宅用地の軽減の特例の適用を受けるための申請は不要で、課税主体である市町村が特例を適用して固定資産税の算出を行います。

しかし、新築または増築した住宅が未登記である場合や、店舗として利用していた家屋を住宅に変更した場合などでは、市町村が把握できないケースがありますので、住宅用地に関する申告書を提出して、特例の適用を受けられるようにしましょう。

 

土地には4つの評価額がある

固定資産税は固定資産の評価額が課税の基本となりますが、土地については4つの評価額があり、一物四価とも言われています。

実勢価格(取引価格)

実際の売買市場で成立する土地の取引価格のことを実勢価格といいます。

時価や相場とも呼ばれ、随時変動

買い手と売り手の合意によって成立する土地の取引価格は、同じ土地であっても価格が常に一定という訳ではありません。需要と供給のバランスなどによって、随時変動することから時価だといえます。

また、取引価格には「高くても買いたい」、「安くても早く売ってしまいたい」といった売り手や買い手の事情が含まれることがあります。取引における事情の有無及び内容は、取引価格だけでは判断ができないことから、数多くの取引価格を収集した上で、土地価格の相場を把握することになります。

類似物件がない場合は精度が低い

調べたい土地の実勢価格を把握するために、多くの取引価格を集めて比較検討するという方法があります。

このとき、調べたい土地との類似性が高い物件の取引価格があれば、比較も行い易いのですが、類似する物件がない場合には比較が難しく、実勢価格の把握が困難となり、精度が低くなりますので注意が必要です。

地価公示価格

地価公示で公表される価格は正常価格です。正常価格とは合理的な市場において成立する価格のことであり、取引当事者の事情などを含みません。

国または都道府県が公表

公示地価は、地価公示法に基づいて、国土交通省が設置した土地鑑定委員会が、毎年3月下旬頃に公表している標準地の正常価格のことです。地価公示価格は、公表する年の1月1日時点における価格で毎年3月頃に公表しています。、2018年における標準地は、全国で26,000地点となっています。

基準地価は、国土利用計画法施行令9条に基づき、都道府県地価調査では、都道府県が設定した基準地の毎年7月1日時点における正常価格を毎年9月下旬頃に公表しています。2017年における都道府県地価調査の調査地点数は、全国で21,644地点となっています。

市場取引でも参考にされる価格

地価公示価格は、適正な地価形成に寄与することを目的に公表されるもので、公共事業用地の取得に際して、規準とすべき価格であると定められているほか、一般の土地取引においても指標とすべき価格であり、市場取引でも参考にされています。

路線価(相続税評価額)

国税庁は毎年7月頃に同年1月1日時点における路線価を公表しています。

相続税算出のための評価額

国税庁が発表する路線価は、相続税路線価とも呼ばれ、相続税や贈与税を算出するための評価額を求める際に用いられます。

公示地価の約8割

相続税路線価は、公示地価の約8割の価格水準となっています。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、一般には公表されておらず、固定資産の所有者に送付される課税明細書などに記載されています。

固定資産税算出のための評価額

固定資産税は、原則、固定資産税評価額に税率を乗じて求めます。このため課税対象となる土地の評価額に応じた税額となり、固定資産税評価額は間口や形状などの土地の個別性を反映した価格になっています。

公示地価の約7割

固定資産税評価額は、公示地価の約7割の価格水準となっています。

土地の固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額算出の基本となる、固定資産税路線価は公表されています。また、公示価格から固定資産税評価額を概算する方法もあります。

固定資産税課税明細書で確認

固定資産税の納税義務者である土地の所有者には、課税主体である市町村から納税通知書と一緒に課税明細書が送られてきます。
課税明細書には固定資産税評価額が記載されています。

全国地価マップで検索

固定資産税評価額は、路線価に土地の個別性を反映した評点を乗じて求めます。

固定資産税路線価は全国地価マップで検索することが可能です。調べたい土地が面する道路上に記載されている数字が固定資産税路線価で、この価格に固定資産評価基準に掲載されている画地計算法、補正率表などを参考にして補正を行って、概ねの固定資産税評価額を求めることができます。

固定資産税路線価のデータは毎年7月下旬頃に更新されますが、相続税路線価とは異なりますので注意が必要です。

出典:一般財団法人 資産評価システム研究センター全国地価マップhttps://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

公示価格から概算

固定資産税評価額は公示価格の約70%の水準であることを利用して、類似性の高い標準地の公示価格から概算する方法があります。

公示価格を参考にして調べたい土地の価格水準を求めたら、当該価格の70%が固定資産税評価額に近い水準ということになります。地価公示価格は毎年年度末に国土交通省が公表していますので、最新の価格を確認して比較を行いましょう。

最後に

固定資産税評価額は固定資産税の算出の基本となることがお分かりいただけましたでしょうか。固定資産税評価額は公表されていませんが、概ねの価格であれば公示価格などから把握することもできます。毎年納める固定資産税ですから、土地購入の検討などの際には、事前に確認することをおすすめします。

監修者:添田裕美(税理士)