リートを始めたばかりの方が手を出しにくい「リート増資の公募」。敬遠されがちなリート増資も、そのメカニズムを知ることで有利な投資を進めるためのステップとなるでしょう。今回は、リート増資の公募が投資のチャンスとなる理由や、マイナス金利との関連性についてご紹介します。

リート増資の公募、その目的とは?

リートへの投資を行っているとたびたび耳にする「公募増資」は、どういったことを指し、何を目的として行われるのでしょうか。

リート増資で一般的な「公募増資」とは

「増資」は資本金を増やすことです。増資にはいくつか方法がありますが、リートで一般的なものは公募増資です。
「公募増資」は、証券(株式)の募集数を増やして、より多くの投資家たちから資金を集めることを指しています。例えば、今まで100口だった投資口が公募増資によって200口に増えるといった具合です。この場合のリートの資金力は2倍に増すことになります。

公募増資の目的は?

では、公募増資は何を目的として行うのでしょうか。これにはさまざまな理由が考えられますが、多くの場合、新規物件の獲得やリニューアル工事に充てる費用として資金を集めます。
現在リートが保有している物件だけでは、年数の経過とともに価値の目減りが起きてしまうため、これを防ぐための手段として、新規物件の獲得やリニューアルを行っているのです。

公募増資が行われるとリート市場では何が起きる?

それでは、上で紹介したように増資、つまり投資口の募集数を増やした場合にはリート市場ではどのようなことが起こるのでしょうか。

1口あたりの価値が下落!?

これは株式投資でもいえることですが、一般的に証券の募集数が増えた場合、既存の証券の価値は減少します。例えば、上で取り上げた100口を200口にしたという例の場合、増資後の証券の価値は半分ほどまで目減りしてしまうということです。

ここで注目したいのが分配額です。分配額は証券を保有する目的の1つですが、上がった利益を分配する際に人数が増えてしまえば、1口あたりの分配額は増えた人数分だけ減少してしまいます。
これを「証券の希薄化」などと呼んだりしますが、この希薄化が起こることを懸念して、市場全体の動きとしては売りの傾向、つまり価格が下落する傾向にあります。

公募増資は『買い』のタイミングともいえる?

「ディスカウント増資」で証券の価値は下落する

公募増資の発表があった際、その理由が「現在の資産価値の維持」を目的としたものであったとします。何かしらのトラブルにより、増資をしなければ資産価値を維持できなくなってしまったという状況です。
この場合は、もともとの1口あたり純資産よりも低い価格で増資を行うこと(ディスカウント増資)になるため、原理原則通り証券の希薄化が起こり、1口あたりの利益も減るため価格は下落していきます。

「プレミアム増資」では証券の価値が上昇する

では、増資の理由が「新たな利益の獲得」であった場合はどうでしょうか。増資によって利回りが高い物件を購入するなど、ポジティブな理由に基づく増資を行うケースです。
この場合は、もともとの1口あたり純資産よりも高い価格で増資を行うこと(プレミアム増資)ができます。投資口を2倍に増やしたとしても、増資後の利益が2倍以上になれば1口あたりの分配額は当然増えることになります。
新たな利益の獲得を目的とした公募増資は、買いのタイミングともいえるでしょう。

リートの公募増資は「理由」が最重要ポイント

市場全体の基本的な考え方からすると、増資で価格は下落するとご紹介しましたが、一概にそうともいえないのがリートの面白いところです。
確かに、証券というものの原理原則から考えると、増資を行えば証券は希薄化します。しかし、実際に分配される利益が減るかどうかということは、増資の理由がはっきりしなければ判断することができないのです。

マイナス金利だからこそリートがおすすめ!

マイナス金利が実行されてから、住宅ローンに代表されるローン関係の金利は、軒並み低下傾向にあります。これによって恩恵を受けている方も多いですが、恩恵を受けているのは何も私たち個人だけとは限りません。マイナス金利によってローンの金利が低下したことで大きな追い風を感じているのは、リートも同じです。

マイナス金利はリート増資に追い風

リートは、個人が不動産投資を行う際と同様に、資金調達の一部は金融機関からの借り入れに頼っています。こうなると当然低金利のほうが有利になるため、リート市場全体としてもマイナス金利時代は非常に追い風といえるのです。
マイナス金利がさらに加速すれば、リートの価格はどんどん上がっていくことが予想されます。このような時代だからこそ、リートはおすすめの投資といえるでしょう。

おわりに

今回は、リート増資の公募が投資のチャンスとなる理由や、マイナス金利との関連性についてご紹介しました。
リートの公募増資はネガティブな理由であれば価値が下がり、ポジティブな理由であれば価値が上がる傾向があります。
またリートは、マイナス金利によって利益を確保できれば、より前向きな増資を進められるため、証券の価格はさらに上昇が見込めるでしょう。