アパート経営を行う上で、最大のネックとなるのが、建設費などの初期投資の問題です。

しかし、ローンを完済してその問題をクリアさえすれば、後は、毎月の家賃収入がそっくりそのまま利益になるなどと思ってはいませんか?そこには、大きな落とし穴があります。

アパートの寿命は50年などと言いますが、その間、ただ放置しているわけではありません。アパートの老朽化に応じて、適切な処置を講じながら建物の寿命を延ばしているのです。それに要するコストを頭に入れていなければ、アパート経営はたちまち破綻してしまいます。

そこで、アパートにかかる修繕費をいかにコントロールしていくかについて、解説をしていきます。

修繕費の種類と予算計画の重要性

1 建物を維持するのに必要な大規模修繕費

屋上の防水補修外壁補修シロアリ退治などといった事柄です。

これらを行わないと、アパートは維持していけません。また、老朽化が進むと、給排水管や電気設備の修繕なども必要になり、それだけで数百万円のお金を必要とする場合があります。
2 老朽化を防ぐための予防的修繕費

外壁チェックシロアリ検査各部屋の個別検査などがこれに当てはまります。一般的に、建物は、問題が表面化してから修繕を行うよりも、定期的に予防措置を行った方が費用は少なく済みます。

いかに早く、内に潜んでいる問題を見つけ出すかが、コスト削減の鍵となるのです。
3 空室対策のための修繕費

アパートは、ただ建物を維持さえしていればそれで良いというものではありません。周辺に真新しい賃貸住宅が建設されていく中で、建物や設備の老朽化を放置していては、次第に入居者も減少していくでしょう。

それを防ぐには、住人の不満を汲み取りながらさまざまな改善を行っていく必要があります

例えば、新型のエアコンとの交換壁の貼り替え共用部分のリノベーションなどです。

以上の3点は、アパート経営を行っていく上での必須事項ですが、問題が出てから対処していたのでは、それに対応するお金自体がなくて経営が立ち行かなくなる可能性があります。

そうならないためにも、最初から修繕費用を想定した予算計画を立てておくのが、何よりも重要です。

必要な費用を前もって貯めておき、早めに手を打っていけば、結果的に大幅なコスト削減にもつながります。

☆修繕費を抑えるための管理会社選定ポイント

アパートの修繕に関しては、不具合を早期に発見して問題が大きくならない内に対策を講じるのが最善の道ですが、オーナーだけで、すべてを行うのは無理があります。

そこでポイントになるのが管理会社の選定です。

管理会社は、オーナーに代わって物件の修繕業務を受け持ってくれますが、サービスの質は会社によってさまざまです。質が低ければその時々で適切な処理が行われず、建物の老朽化が進んでいくほどコストがかさんでいくことになります。それを回避するためにも、管理会社の修繕業務のレベルはあらかじめ探っておきましょう。
まず、中小の会社の場合、大規模修繕には一切関わらないというところがあります。また、修繕工事は自分たちに一任してくれない限り、協力はしないという姿勢の会社もあります。このようなところは、柔軟な対処ができないので避けた方が無難です。

次に、修繕の提案をするスタッフが、会社でどのような立場にいる人間か確認するのも重要です。

例えば、それが、知識の浅いフロントマンだったりするとかなり不安です。修繕に関する質問をしてみて、深い知識に裏付けされた回答が返ってくるか確かめてみましょう。

「一度会社に持ち帰って…」など言い出すようでは、信頼して任せることはできません。

後は、長期修繕計画書の作成をいくらで引き受けてくれるのかもチェックをしておいた方がよいでしょう。

もちろん、安い方がありがたいですが、安すぎると建物診断を行わない簡易計画書の可能性があるので、計画書の中身がどのようなものかも必ず確認しましょう。

☆LCCの考え方と予備費の重要性

最近は、LCCという用語が世間にも広まっています。

これは、ライフサイクルコストの略で、
アパートで言えば建築から解体までの数十年の間、建物を維持するのに必要なトータルコストのことです。

うっかりすると、アパートを手に入れる費用だけで頭がいっぱいで、つい格安の物件に手を出したりするものですが、それでLCCが高くなればかえって損をすることになります。

LCCは最初の建築費の数倍にもなります。

仮に、建築費が1億であれば、LCCは3億~4億という数字になる可能性があるのです。

したがって、多少建築費を上乗せしてでも、LCCの削減を目指したほうが、最終的にはお得になります。

それでは、LCCの低いアパートとはどのようなものかというと、

「地震や台風に備えて耐久度の高い部材や構造を採用している」

「メンテナンスをしやすい構造になっている」

「将来のリフォームを前提とした設計になっている」などが挙げられます。

また、アパート経営を行う際には、管理会社に依頼して長期修繕計画を作成してもらい、LCCの内訳がどのようになっているかを調べておくのも大切です。それに基づいて、費用を準備しておかなくてはならないからです。

ただ、それはあくまでも予測に過ぎず、

実際に修繕作業を行ってみると、予算をオーバーしたなどというのは決して珍しくありません。

その時に、ギリギリしか用意してなくてお金が払えないというのでは、アパート経営そのものが立ち行かなくなってします。そうならないように、予備費として予定の3割程度は余分にお金を用意しておきたいものです。常に予備費を一定額確保しておけば、それだけ安定した経営を営めます。

アパート経営を検討する段階から、予備費を念頭に置いた資金繰りを考えていきましょう。

LCCの低いアパートなら、それも比較的楽に行えるはずです。