住宅ローンの「諸費用」は、見ただけで納得の行くわかりやすい項目は少ないかもしれません。保証料もそのひとつと言って良いでしょう。保証料は金融機関が貸付を行う際、保証会社に支払う費用のことで、住宅ローンを成立させるための大事な仕組みです。ここでは、保証料とは何か?について解説していきます。

住宅ローンの保証料とは

住宅ローンの保証料についての認識は、中途半端な理解で終わっていることが多いのではないでしょうか。ここではあらためて、保証料がどういう役割を持っているのか考えてみます。

住宅ローンの保証料ってなに?

住宅ローンの保証料の説明でよく言れるのは、保証料があるから第三者の保証人を立てずに、住宅ローンのような多額で長期の融資が可能だということです。私達は住宅ローンを検討するにあたって、まず保証人探しから始めることはないからです。しかしながら保証料は私達の債務を保全している訳ではありません。金融機関(銀行)の貸付を保全しているのです。

ローン支払いが出来なくなった時に残債は無くなる?

つまり、保証料は銀行などに「諸費用」として払いますが、実は保証会社が保証料を受け取り、住宅ローンという制度を成立させているに過ぎません。
少なくともネット銀行を除く民間の金融機関は、この仕組によって住宅ローンを成立させています。そのため債務者が住宅ローンの返済に窮した場合は、保証会社が残債務を金融機関に代わって引き受けることになります。言い換えれば、住宅ローンの債権者が銀行と入れ替わっただけなのです。そのためローン支払いが出来なくなった際も、残債は消えるわけではありません。

実は借り手にメリットのない住宅ローン保証料

そう考えると住宅ローンの保証料は、実は借り手に何のメリットももたらしていないように思えてきます。この場合のメリットとは、保証会社が借金を肩代わりしてくれるのではという期待感です。実際には、保証会社が借金を肩代わりしてくれることはなく、銀行への返済を一時的に立て替えてくれただけに過ぎません。そこで私達にとってメリットの少ない保証料を少しでも効率的に活用するため、支払方法を検討することが大切なのです。

連帯保証人がいれば保証料は不要?

なお、連帯保証人がいれば保証料は不要かというとそれは違います。住宅ローンは、収入合算者や土地などの担保提供者や共有者には連帯保証人なってもらいます。しかしこの場合も、保証料不要とはなりません。

住宅ローン保証料の金額はどうやって決まるのか?

保証料は誰にとっても一律というわけではなく、銀行によっても、審査結果によっても微妙に違います。ここでは、保証料の金額はどのように決まるのか見ていきます。

銀行毎に違う住宅ローンの保証料

保証料は銀行によっても異なります。保証料は借入額の0.2%~0.4%の範囲ですが、0.1%違うことにより保証料の金額は大きくかわりるため注意が必要です。

審査結果によって変わる保証料額

また保証料額は審査結果によっても変わります。

上の例を見ても同じ条件下で、下限と上限で保証料に4倍近い開きがあることがわかります。もちろん保証料の上限値で住宅融資を受ける方は限られるでしょうが、この後で解説する内枠方式では外枠方式の2倍近い保証料を負担することになります。

この違いは住宅ローンの審査によって、保証料に差を付けているからです。

本人の属性(仕事)によっても違う住宅ローン保証料

またこの審査結果には、本人の属性(仕事)によっても保証料に差がつくとされています。保証料が低くなる可能性が高い職業は公務員をはじめ、上場企業のサラリーマンなどです。理由は毎月の収入が継続して安定しているからです。

逆に比較的給料が高いと思われている歩合制の営業職の方や長距離トラックのドライバーの方は、保証料が高くなる可能性が高い職業です。理由は毎月の収入が継続して安定しているとは言えないからです。こうした要件によって私達が負担する保証料(外枠方式)は、借入額の0.2%から0.4%ほど(場合によってはそれ以上)の間で振り分けされています。

住宅ローン保証料の支払い方法について

住宅ローンの保証料の支払い方法は2つあります。
「一括前払い方式(外枠方式)」と「分割支払い方式(内枠方式」です。ここでは2つの違いと、どちらの方法を選べば良いかをまとめていきます。

一括前払い方式(外枠方式)とは?

「一括前払い方式(外枠方式)」とは、住宅ローンの保証料を文字どおり一括で納める方式です。

保証料は本来、住宅ローン借入時にまとめて一括払いとなるのが通常ですが、このあとで解説する「分割支払い方式(内枠方式)」も選べるように変わっていきました。

「一括前払い方式(外枠方式)」のメリット・デメリット

「一括前払い方式」のメリットは、総返済期間で見ると「分割支払い方式」より金額が安くすむことです。
どのぐらい安くなるかというと、30年返済でみた場合、「分割支払い方式」は「一括前払い方式」のおおよそ1.6倍程度の保証料となります。これについては、次項で詳しくシミュレーションしています。

一方、「一括前払い方式」のデメリットは最初に現金一括で支払うことです。しかも、仮に住宅ローンが予定より早く返せた場合でも「一括前払い方式」の保証料は十分な払い戻しが得られません。

分割支払い方式(内枠方式)とは?

「分割支払い方式(内枠方式)」とは、保証料を分割で支払うために、金利に保証料を上乗せして支払う方式です。上乗せ率はおおよそ0.2%です。
(なお「分割支払い方式」は「金利上乗せ方式」とも呼ばれています)

「分割支払い方式(内枠方式)」のメリット・デメリット

「分割支払い方式」のメリットは、はじめに50万円や60万円といったまとまった額を用意しなくても良いことです。その分「分割支払い方式」は、手元に余裕資金が残り、手元資金の流動性が高くなります。

デメリットは外枠方式より総支払額が多くなることです。
そのため「分割支払い方式」は、住宅ローンの返済期間短縮を予定しない方にはあまりおすすめできません。

繰り上げ返済による保証料の返戻(へんれい)

「一括前払い方式」と「分割支払い方式」のどちらを選ぶかは、「一括前払い方式」の場合の繰り上げ返済による「保証料の返戻(へんれい)」がひとつのポイントになってきます。

保証料の返戻とは

保証料の返戻とは、一括で納めた保証料を、繰り上げ返済などにより住宅ローン返済の期間短縮に成功した際に割り戻すことです。保証料の返戻があるのは「一括前払い方式」だけです。しかし、35年返済の住宅ローンを20年で完済しても、残る15年分の保証料が全額戻るわけではありません。返戻率と時間経過率のバランスが取れているのは、良く見ても10年までであり、それ以降は次第に返戻率は悪化します。

内枠方式で出来た余裕資金を支払元本を減らすことに活用する

ここから言えるのは、ローンの返済期間の短縮を計画的に考えている方や借り換えや買い替え予定のある方には「分割支払い方式」がおすすめできるということです。一方、ローンの返済期間の短縮を考えていない方、あるいは当初の予定で行くという方は「一括前払い方式」がおすすめです。

さらに「分割支払い方式」を選ぶ方にお伝えしたいことは、余裕資金を活かして返済額をできるだけ少なくすることです。「一括前払い方式」をやめることで、60万円近い資金が浮きます。その一番の活用方法が、なるべく償還期間の早い時期に支払元本を減らすことです。住宅ローンの元本を少なくすれば、その分ローンの早期完済にも繋がります。

一括支払いと分割支払いのどちらが安いのか?

「一括支払い方式」と「分割支払い方式」のどちらが安いのか比較するため、借入額2,700万円で、りそな銀行の保証料の数値を用いてシミュレーションしてみました。
なお、支払条件は30年返済(元利均等返済)とし、下記3パターン用いることとします。

①一括前払い方式

②分割支払い方式
(ただし2018年7月現在、りそな銀行住宅ローン<超長期固定金利型住宅ローン>1.4%で借りた場合を想定しています)

③分割支払い方式
(ただし一括払い方式の保証料分の現金を、物件価格の頭金に充当します)

【出典】:ローン手数料情報│金利・手数料│りそな銀行 https://www.resonabank.co.jp/kojin/kinri_kawase/loan/

①借入額2,700万円の一括前払い方式(外枠方式)の保証料は?

①の保証料は516,699円となりました。

なお保証料は、19,137円(100万円当りの「一括前払い方式」の保証料)×27で試算しています。

②借入額2,700万円の分割支払い方式(内枠方式)の保証料は?

②の保証料は932,829円となりました。

なお内枠方式を使ったことで、金利は1.4%(月々の返済額は91,892円)から1.6%(月々の返済額は94,483円)に上昇しています。
保証料の試算は総返済額を差し引いて導き出しました。

34,013,898円-33,081,069円=932,829円

①と②を毎月の支払額で比較すると、それほど大きな差はありません。しかし保証料の金額は、外枠方式と内枠方式で大きく違います。
内枠方式を選ぶ場合は、返済期間をある程度短縮できるように想定しておきたいものです。

③一括払い保証料を物件価格に充当、借入額を減らして分割支払いを選択

③の保証料は655,054円となりました。

2700万円から①を差し引くと26,483,301円。この金額が新たに住宅ローンで返済する金額です。
26,483,301円を内枠方式(30年返済、金利1.6%)で返済すると月々の返済額は約92,663円、総返済額は約33,358,844円です。
34,013,898円(②の総返済額)-33,358,844円(③の総返済額)=655,054円
③は保証料(総返済額)を655,054円減らせることになります。

次に①の総返済額と比較した場合、33,358,844円(③の総返済額)ー33,081,069円(①の総返済額)=277,775円
総返済額は①が一番低いことが分かりました。

しかし「一括前払い方式」で借り換えや繰り上げ返済を行うと、ローン残債に応じて保証料が日割されて返還されるわけではなく、しかも解約時には結構な手数料(借入額に関係なく一律)を取られて返戻分は目減りします。
「一括前払い方式」で借り換えや繰り上げ返済を行うと、そのメリットが薄れることに配慮する必要があります。

保証料の支払い方をどう考えるべきなのか?

シミュレーションの結果から、保証料を「一括前払い方式」で支払うと30年間での総支払額は明らかにお得ですが、50万円から60万円もかかる保証料を一気に支払うことに気が引ける方もいるでしょう。

現金を手元に置いておくことは大切

「分割支払い方式」は「一括前払い方式」より保証料が割高です。その差を知ると簡単に内枠方式を選べなくなる方もいるでしょう。ただ前述のとおり、内枠方式には手持ち資金の流動性が生まれるといったメリットがあります。このメリットは活用の仕方によって、更に大きなリターンとなって戻る可能性があります。それは住宅ローンの早期完済につながります。

これは前のシミュレーション③でもわかることですが、本来一括で納める予定の資金を返済元本に充当することで、住宅ローンの早期完済を少しでも前進できます。マイホームの購入後も様々なシーンでお金は出ていきます。こういったケースにも内枠方式で得た手持ち資金を使えます。これは内枠方式で得られるメリットの一面でもあり、同時に現金を手元に置くことの大切さに気づきます。

ただ高額な家具や備品だけに散財してしまうのはもったいない話で、もっと賢明な資金の使い方をしたいものです。そういった意味でも、内枠方式で得られた資金を返済元本に充当することは意味のある使い方になるでしょう。

タイプ別に適した保証料の支払い方法

タイプ別に適した保証料の支払い方法を3つあげてみました。
すでに前述している部分もありますが、ここでは確認の意味で、3つのタイプをあげておきます。

繰り上げ返済して早めに完済する

住宅ローンを繰り上げ返済して早めに完済してしまおうと思う方は「分割支払い方式」がおすすめです。

「一括前払い方式」を選び、繰り上げ返済した場合は、ローン残債に応じて保証料が日割されて、返還されるわけではありません。
保証料の一括前払型でメリットが活きるのは、返済期間が10年以内など、返戻分がある程度残っている場合です。

正確には個別にシミュレーションしてみることが大事ですが、住宅ローンを完済するのに10年以上、20年前後で完済しようと考えている方は、保証料の初期負担が軽減される「分割支払い方式」のほうがメリットがあると言えます。

住宅ローンの借り換えの可能性あり

住宅ローンの借り換えの可能性がある方も、旧住宅ローンの保証料を途中で解約しますので、「分割支払い方式」がおすすめです。「分割支払い方式」は保証料が割高ですが、「一括前払い方式」では返戻分が読めません。借り換えの可能性あるというだけでは具体的にシミュレーションもできませんが、「分割支払い方式」は本来一括で保証料に支払う資金分を返済元本に充当できます。この記事で行ったシミュレーション③のように、余裕資金で返済元本を圧縮できれば、「分割支払い方式」のほうが間違いなくお得です。

繰り上げ返済も借り換えの予定もない

繰り上げ返済や借り換えの予定のない方は「一括前払い方式」がおすすめです。「一括前払い方式」は契約通りの期間で住宅ローンを返す場合、保証料の一番かからないのがメリットです。期間短縮を予定されていなければこのメリットを活かすべきです。

住宅ローン保証料が必要な銀行と不要な銀行

保証料の取り扱いについて銀行は2種類に大別できます。
最後に、その違いと保証料の取り扱いについての注意点をまとめておきます。

住宅ローン保証料が必要な銀行

住宅ローンは保証料で成り立っている制度です。銀行の多くは保証料が必要です。このタイプの銀行の多くは従来型の店頭窓口を持つ、店舗型といわれる銀行です。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行といったメガバンクをはじめ、地方都市に所在する数多の地方銀行も店舗型の銀行の仲間です。

住宅ローン保証料が不要な銀行

逆に同じ銀行でも、保証会社を持たない形態の銀行も現れてきました。それがネット系の銀行です。ネット銀行は保証会社がありませんので、保証料が不要ですなお代表的なネット銀行にはソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、じぶん銀行などがあげられます。

保証料が不要の代わりにかかる事務手数料の甘い罠

またネット銀行のなかには、事務手数料に保証料相当額(借入額×2.16%)を求める銀行もあります(いわゆる定率型の事務手数料です)。ただしこれでは、ネット銀行のほうで手数料として保証料相当額を徴収しているようなもので、結局は名目が違うだけとなっています。

返戻のある保証料と返戻のない事務手数料

この例で行くと、繰上げ返済や借り換えを予定している場合は、保証料なら返戻分が見込めます。しかし事務手数料では返戻がありません。ユーザーにとっては保証料として費用を負担した方が得です。

保証料の安さだけで比較しないことが大切

保証料は、その安さだけで比較しないことが大切です。とくにネット銀行の保証料0円には、安易に踊らされないことが賢明でしょう。そして言うまでもなく、銀行選びはトータルコスト(総返済額)の安さを重視するべきです。

まとめ

保証料の仕組みや外枠方式と内枠方式の違いは、ある程度理解できましたでしょうか。ただしどの銀行を選んだらいいかについては、ご自身のおかれている環境も違い、一概には言えません。記事本文にもありますが、銀行を保証料の安さだけで判断しないように注意するべきです。保証料については、それが理解出来ただけでも大きな前進です。