住宅ローンの審査には、仮審査(事前審査)と本審査の2つがあります。審査によって目的が異なり、必要な書類も異なります。仮審査と本審査の流れとチェックされる事柄、そして、審査が通らないのはどのようなケースなのかについて解説していきます。

住宅ローン審査のポイントを徹底解説

仮審査と本審査の2つの審査に通らないと、住宅ローンを利用することができません。住宅ローンの融資までの流れとそれぞれの審査のポイント、チェックされる内容について探っていきましょう。

住宅ローンの融資までの流れ

住宅ローンの申し込みから融資実行までの流れは次の通りです。

  1. 金融機関所定のフォームを使って、住宅ローンの申し込みをします。
  2. 申し込みフォームの内容を元に、事前審査が始まります。事前審査の結果は、最短当日~1週間ほどで分かります。
  3. 事前審査に通過したら、住宅購入の契約に進みます。契約に進んでから、住宅ローン本審査に進みます。
  4. 住宅ローン本審査の結果は、約1~2週間後に分かります。本審査に通過したら融資が実行され、住宅メーカーや不動産会社等に住宅費用を支払います。
  5. 本審査が通らなかった場合は、住宅購入契約を解消します。通常は、手付金は戻ってきますが、契約内容によっては手付金が返還されないこともあります。

住宅ローンの事前審査とは

住宅費用全額を現金一括で支払える場合は別ですが、住宅ローンを利用する場合は、希望する住宅を購入できるかどうかは住宅ローン審査に通るかどうかにかかっています。特に事前審査に通らないことには、住宅購入の契約段階にも進めませんし、住宅ローンの本審査にも進めません。

事前審査に必要な書類

事前審査を行う目的は、契約者に返済能力があるのかどうかを確かめることです。とはいえ、本審査のように詳細に調べるのではありませんので、基本的には各金融機関所定の“住宅ローン申込書”と“本人確認書類”(運転免許証や健康保険証など)、そして、給与所得者は源泉徴収票や課税証明書などの“収入証明書類”、物件の間取りや価格が分かる“見積書”を提出すればOKです。

なお、近年、書類不要のスピーディーな事前審査を実施する金融機関も増えています。インターネット経由でローン申し込みフォームさえ提出すれば、そのフォームに記載された内容を元に事前審査を実施してくれます。最短当日に仮審査の結果が分かりますので、「住宅を購入できるのかどうかだけ知りたい」という方を中心に人気を集めています。

事前審査でチェックされる内容とは

事前審査でチェックされる内容は、次の通りです。

本人の属性

申込者本人の年齢や完済時の年齢、現在の職場の勤続年数、年収、雇用形態(正社員かどうか)などの本人の属性についてチェックされます。勤続年数が3年以上あると審査に有利になりますが、フラット35のように勤続年数の規定が決まってない住宅ローンも少なくありません。

また、完済時の年齢はできれば定年までであることが望ましいです。そのため、40歳を過ぎてから住宅ローンを組む場合は、返済期間が長くなればなるほど審査を通過する可能性が低くなってしまいます。

返済負担率について

収入に対する返済額の割合を“返済負担率”と言います。例えば、年収600万円の方が毎月10万円返済する予定の住宅ローンを組む場合、返済負担率は10万円×12÷600万円×100=20%です。一般的に、返済負担率が30%を超えると、審査を通過する可能性は低くなってしまいます。

住宅ローン以外にもカードローンやマイカーローンなどの返済を抱えている場合は、年間の返済総額が増えますので、返済負担率はもっと高くなってしまいます。他のローンを抱えているときは、月々の返済額を減らして返済期間を長くするか、頭金を増やして返済額そのものを減らすか、いずれかの対策が必要になるでしょう。

個人信用情報のチェック

金融機関やクレジット会社への返済が滞ったことはないのか、返済しないまま放置していることはないのかといった“個人信用情報”のチェックも、事前審査には欠かせません。

個人信用情報を管理する機関にはCICとJICC、JBA(全国銀行協会、全銀協)の3つがあり、割賦販売や消費者金融関連の利用状況はCICが、クレジットカード関連の利用状況はJICCが、銀行ローンなどの利用状況はJBAがそれぞれ管轄しています。住宅ローンの申し込みを受けた金融機関は、各個人信用情報機関に問い合わせて個人信用情報をチェックします。

事前審査に落ちてしまった!という方はこちらの記事をcheck!!
住宅ローンの事前審査で通らない場合にチェックしたいこと

住宅ローンの本審査とは

本審査の目的は仮審査で確認しきれなかった細かい部分を見るとともに、仮審査の提出書類や申告内容に間違いはないかを見ることです。契約者の属性や個人信用情報に問題がなくても、契約者が申告した内容に“嘘”があると審査結果に悪い影響を及ぼしますので、不利と思える事柄でも必ず正直に申告するようにしましょう。

本審査に必要な書類

本審査に必要な書類は以下の通りです。ただし、金融機関によって事前審査で求められる書類の種類が異なります。また、事前審査で既に提出した書類に関しては、本審査で重ねて提出する必要はありません。

  • 金融機関で定める本審査申込書
  • 本人確認書類
  • 収入証明書類
  • 住民票
  • 印鑑証明書と実印
  • 物件を証明する書類。売買契約書や登記簿謄本、間取り図、測量図など

本審査でチェックされる内容とは

本審査では、次の3つの項目がチェックされます。

事前審査で調べた内容の再チェック

事前審査でチェックした内容を再度チェックします。年収や返済負担率なども、仮審査の段階よりも厳しい目で確認します。

物件の担保評価

申込者本人に問題がなくても、物件に問題がある可能性もあります。住宅ローンは物件を担保として融資を実行しますので、物件に問題があると担保価値が低くなります。その場合は融資をして良いと判断することができません。

健康状態の確認

ほとんどの住宅ローンでは、契約者は“団体信用生命保険(団信)”に加入することが求められます。団信とは、万が一、契約者がローン返済中に死亡したり高度障害状態になったりしたときに、ローンの残金が金融機関により免除され、ローンが清算できる保険商品です。

住宅ローンの返済期間は長いですので、いつ何時、返済が出来ない状態に陥ってしまうか分かりません。もしものときに備える団信は、契約者にとっても金融機関にとっても必要な保険と言えるでしょう。

団信に加入するためには、所定の申込書と告知書に記入する必要があります。現在、重大な疾病に罹患している方は団信の審査に通りませんので、本審査に通過するためにも、団信の審査に通る健康状態であることが必要となります。

これで納得!!住宅ローン審査に通らないケース14パターンまとめ

具体的にどのようなケースで住宅ローン審査が通らないのかについてまとめました。該当する点がある場合は、住宅ローンの審査を見合わせる方が良いでしょう。

個人信用情報が原因で審査に落ちる3つのパターン

個人信用情報機関に登録されている内容が原因で、住宅ローン審査に通らないことがあります。CICとJICC、JBAのいずれにおいても個人信用情報の照会を受け付けていますので、気になる点がある場合は事前に問い合わせて確認しておきましょう。

「異動」と記載されている

5~10年以内に債務整理を行ったり、やクレジットカード会社やローン会社から強制的に解約を言い渡されたりしたときは、個人信用情報に「異動」という文字が記載されます。「異動」の文字があるということは、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態を指し、間違いなく住宅ローン審査に通りません。ただし、「異動」の記録は5~10年ほどで消えますので、記録が残っているかどうか不安な人は、CICやJICCなどの個人信用情報機関に情報照会を依頼しましょう。

消費者金融での借入れが現在ある

現在、消費者金融で借入がある場合も、審査に通りにくくなります。少額のローンが残っている場合は、住宅ローンに申し込む前に完済しておきましょう。

過去に借入れした際に返済がたびたび遅れたことがある

今までに消費者金融や銀行のローン返済を度々遅れたことがある場合も、住宅ローンの審査通過が難しくなります。

借入れ希望額が原因で落ちる2つのパターン

借り入れ希望額が原因で、住宅ローンの本審査に通らないこともあります。

他の借り入れがあり、融資枠オーバー

マイカーローンなどの高額融資を受けている場合、年収や返済負担率から算出した融資枠をオーバーしてしまうことがあります。大型ローンを完済してから、住宅ローンに申し込む方が良いでしょう。

返済負担率の上限ギリギリでの申込み

返済負担率が30~35%の場合は、融資を受けられない可能性があります。返済期間を延長して返済負担率を下げるなどの工夫が必要になることもあるでしょう。

銀行の融資基準をクリア出来ない5つのパターン

銀行ではそれぞれ融資基準を定めています。銀行によっては、次の5つの状況のいずれかに当てはまると、融資を受けられないこともあります。

正社員でない

正社員以外には融資を実施していない銀行も少なくありません。正社員以外の方は、仮審査を受ける前に、「正社員でなくても融資をした実績はありますか?」などと融資担当者に確認しておきましょう。

勤続年数が短すぎる

一般的に勤続年数が3年未満のときは、融資を受けられないことがあります。勤続年数が少ない方は、フラット35などの勤続年数の条件が厳しくないローンを検討してみましょう。

年収が最低年収基準未満

年収が最低年収基準未満のときは、銀行の住宅ローンを利用できないことがあります。年齢における平均的な年収を得ているのかどうかもチェックしてから審査に臨みましょう。

給与が歩合給

固定報酬制ではなく歩合制で給与を受けている場合は、「収入が安定していない」とみなされ、住宅ローンを受けられないこともあります。

中古物件の購入で建物が融資基準をクリア出来ない

中古物件の場合、購入したい建物が銀行の定める融資基準を満たしていない可能性があります。物件を検討する際に、耐震構造かどうか、防火基準を満たしているかなどについて不動産会社に確認しておきましょう。

銀行から融資先としてリスクが高いとみなされる4つのパターン

銀行から「リスクの高い申込者」と判断されてしまうと、住宅ローンを受けることができなくなってしまいます。主に次の4つのパターンに当てはまると、「リスクの高い申込者」と判断されてしまいます。

所得税や住民税を払っていない無申告者

所得税や住民税を払っていない方は、住宅ローンを利用できない可能性が高いです。

離婚してすぐに再婚したケース

離婚してすぐに再婚した方も、慰謝料や養育費が原因でローンの支払いに支障が出る可能性があると銀行側から判断され、融資が下りないことが多いです。

夫ではなく妻単独でローンを申し込む

夫が事業に失敗した、または、個人事業主で収入を低く申告しているなどの理由で、妻単独でローンを申し込む場合も、返済が滞るリスクが高いため、住宅ローンを利用できない可能性があります。

両親が経営している会社へ勤めている

両親や親族が経営している会社に勤めている場合は、ローン審査に通りやすくするため、給与所得を好き勝手に調整されるリスクがありますので、住宅ローン審査に通らない可能性があります。

住宅ローンのよくあるQ&A

住宅ローン審査に関してよくある質問とその答えを3つ紹介します。

事前審査に通ったのに本審査で通らないことはありますか?

事前審査に通ったからといって、本審査も必ず通るとは限りません。本審査は住宅購入契約後に実施しますので、契約内容によっては手付金が戻ってこないこともあります。

妻の年収も合算してローン審査を受けられますか?

夫婦の収入を合算してローン審査を受けることは可能です。“ペアローン”と呼び、収入が高くなるため、一人で審査を受けるよりも通過しやすくなります。

サラリーマンより自営業者は不利ですか?

給与が比較的安定しているサラリーマンに比べると、自営業者は収入が安定しないと考えられますのでローン審査には不利になります。

まとめ

住宅購入は、人生を左右することもある大きなイベントです。住宅ローンの審査に不利な状況はなるべく早めに改善し、万全の態勢で住宅ローン審査に臨みましょう。

監修:小林 弘司(住宅ローンアドバイザー)