物件を借りる際、気をつけなければいけないことは何でしょうか? 賃貸借契約書をよく読まないで契約してしまうと思わぬトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。また賃貸借契約に必要な書類はどのような種類なのか?についても気になるところです。今回は賃貸借契約書で注意すべきポイントについてまとめていきます。

チェックを怠るとトラブルに発展する可能性大!6つの確認事項

賃貸借契約書はチェックを怠るとトラブルに発展する恐れがあります。ここでは6つの重要な確認事項を解説していきます。


(1)賃貸借の契約期間と更新・借主からの解約について

賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」とがあり、契約期間などに違いがあります。普通借家契約では契約期間は1年以上で設定することとされていますが、2年で設定する場合が一般的です。次に、借主からの解約については、解約予告の通知の設定があるか?、直ちに解約する場合に契約の残期間の家賃を一括請求されてしまう契約になっていないか?を確認したほうが良いでしょう。

また、貸主側からの解約については、貸主側に正当な理由がない限りはできません。このことからも普通借家契約では借主側が優遇されていると言えます。一方、定期借家契約は、契約の更新がないため契約期間が終了した時点で建物の明け渡しを受けることができます。また契約については、公正証書などの書面で行い、更新がなく期間の満了により終了することを契約書とは別に書面により交付され説明を受けている必要があります。

定期借家契約では期間については1年未満の契約期間でも契約が可能です。条件を満たすことによって借主側から中途解約することが可能です。

(2)退去時の敷金の精算について

敷金は、大家さんに預けているお金なので、退去時には、部屋の修繕費などを差し引いて残った金額が返還されます。しかし「敷金は◯ヶ月分償却」と書いてある場合がありますが、この文言が契約書に記載されている場合は文言の通り、敷金の◯ヶ月分の金額は戻ってこないことになるため注意が必要です。

(3)禁止事項の範囲

禁止事項の範囲についても、物件によって事細かに決められている場合がありますので注意が必要です。ペット禁止や楽器演奏が禁止されている物件のみならず、中には石油ストーブが禁止されているような物件もあります。知らず知らずに使っているうちにトラブルに発展してしまう恐れもあります。もちろん知らなかったでは済まされません!契約書をよく読んで確認し、禁止されている行為をしてしまうことがないようにしましょう。

(4)原状回復の範囲、工事内容について

通常賃貸を退去する場合には、契約時に取り決められた状態まで原状回復をする必要があります。原状回復がどの程度の範囲まで及ぶのかは契約内容によって異なりますが、貸主負担分の費用を支払う必要があります。範囲の取り決めが不十分だと、負担費用についてもめたり、追加工事が必要になったりとトラブルが発生する可能性もあります。

なお原状回復の範囲の詳細については、下記の国土交通省のHPをご参照ください。

【出典】国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

(5)特約事項の有無と内容

契約書に記載されている特約事項の有無と内容についても確認する必要があります。例えば契約書の中に、原状回復費用はすべて借主負担、室内リフォーム・修繕費用はすべて借主負担などと書かれていたとします。このように理不尽で一方的な内容にも関わらず、契約書をよく読まずにサインしてしまうとあとで大きなトラブルに発展してしまいますので注意が必要です。

(6)賃貸借する設備について

賃貸借する設備についても確認が必要です。例えばファミリー向け物件の場合、エアコンの無い部屋もあります。このような部屋がある場合、エアコンを追加してもらえるのかどうか?、自費での取付けであれば可能なのかどうか?、また取付け可能なら退去時の取扱いはどうなるのか?などをしっかり確認しておく必要があります。次に契約書の設備の内容ですが、契約書の設備についての項目で「有」となっているものは、その設備も含めて借りているということになります。

なお「有」となっている設備が故障した場合は、貸主が修理代を負担することになります。このことからも何が「有」となっているのかを今一度しっかり確認するようにしましょう。

6つの最重要チェック項目以外に確認すべき項目のまとめ

6つの最重要チェック項目以外にも確認すべき項目がいくつかあります。ここではその項目について解説していきます。

【賃料、共益費、管理費の金額と支払い時期・方法】

賃料、共益費、管理費は別々に表示されている場合が多いです。なぜかというと賃料に共益費などが含まれていないほうが、共益費などが含まれている賃料よりも安く見えるからです。また、更新料などは賃料をもとに計算されるためこれらの費用を抑えて入居者の負担を軽減する意味もあります。

しかし、毎月の支払いについてはこれらの総額となるため、賃料が安いからといってすぐに契約することのないように注意が必要です。支払時期や支払方法については、一般的には賃料は前払いで、振込みや口座引き落とし等の方法がとられる場合が多いのですが、やはり事前に確認が必要な項目になります。

【家賃滞納時のルール】

家賃滞納時のルールについても確認が必要です。滞納した場合、賃貸人から即退去を言い渡すことができるなどといった厳しいルールが記載されている可能性もあります。賃料の支払をうっかり忘れてしまったら退去を言い渡されてしまったなどといったことにならないよう注意しましょう。

【修繕について】

一般的に賃貸物件の修繕にかかる修繕費は賃貸人の義務となります。しかし賃貸人の修繕の範囲だと思っていたら、賃借人が直すようにと言われる場合もあります。そのようなトラブルを防ぐためにも、修繕についての項目はよく確認するようにしましょう。

【契約の解除について】

賃貸借契約は当事者一方からの契約の解除の意思表示によって賃貸借契約を解除できる場合があります。解除となる要件はどのような場合なのか契約書をしっかりと確認しておくようにしましょう。

賃貸借契約の具体的な流れ・必要書類・初期費用について

ここでは賃貸借契約を結ぶ際の具体的な流れ・必要書類・初期費用について解説していきます。

賃貸借契約の具体的な流れ

重要事項の説明を受けて書類に署名・押印したあとは、賃貸借契約書を確認して署名・押印という流れになります。

契約時に提出を求められる書類とは

契約時には様々な書類の提出を求められます。ここでは賃貸借契約時に提出を求められる書類について解説していきます。

*印鑑証明書

市区町村で入手する、実印が印字されている書類のことです。印鑑証明書を入手するには、まず実印用の印鑑を市区町村で印鑑登録している必要があります。印鑑登録を済ませると印鑑登録カードを取得することができます。印鑑登録が完了していれば市区町村で印鑑証明書を取得することができます。

*住民票

住民の居住関係を記録した書類のことです。住民登録をしている市区町村などで取得することができます。賃貸借契約では一般的には本籍や続柄は必要とされません。なお発行日が記載されるため、なるべく直近に取得した書類を提出するのがいいでしょう。家族で入居するような場合は、契約者本人のものだけでなく入居者全員分の提出を求められる場合があるため確認が必要です。

*収入を証明する書類

会社員の方は勤務先で発行される源泉徴収票が主に必要です。源泉徴収票とは、源泉徴収された所得税額を証明する書類です。一般的には年末調整後に勤務先から発行されます。個人事業主の方は、市区町村で取得できる納税証明書が必要です。納税証明書は課税や納税を証明したい年の1月1日時点に住んでいた市区町村で取得することができます。

これらの書類がない場合は確定申告書の写しを提出する場合もあります。なお確定申告の写しを提出する場合は、税務署などの収受印が押されたものを提出しなければいけない点に注意が必要です。

*連帯保証人承諾書

連帯保証人をつける場合、必要となる書類に連帯保証人承諾書があります。その他必要な書類は不動産会社によって様々であるため、個別に確認が必要です。

契約時に必要な初期費用まとめ

ここでは契約時に必要な初期費用について解説していきます。

【礼金について】

貸主に支払う費用で、貸主に対する謝礼のような意味合いを持ちます。一般的に賃料の1ヶ月分や2ヶ月分という場合が多いです。

【敷金と礼金の違い】

敷金と礼金の違いについて解説します。敷金も礼金と同じく賃料の1ヶ月分から2ヶ月分が一般的です。敷金は貸主に預けるお金で、償却分を除いて、退去後、原状回復にかかった費用を差し引いた残額が返還されます。一方、礼金は先述したとおり貸主に謝礼として支払う費用なので返還されません。この点が敷金と礼金の大きく違う点になります。

【前家賃】

前家賃とは貸主に支払う翌月分の家賃のことです。一般的に家賃は翌月分を支払うため次月の家賃支払日までを日割り計算して支払います。この分の家賃を前家賃といいます。

【仲介手数料】

物件探しの際に不動産会社に仲介を依頼した場合、不動産会社に支払う費用のことです。賃貸借契約を仲介した不動産会社は、契約成立の成功報酬のような形で仲介手数料を受け取ります。金額としては月額家賃の1ヶ月分プラス消費税の金額が上限として定められています。

【損害保険料】

入居中に借主の責任による火災や水漏れで貸主や他の入居者に損害を与えてしまった場合の損害を補償するために加入する損害保険の費用のことです。一般的には借主の損害保険加入が賃貸借契約の条件となっている場合が多いです。なお保険の種類によって、補償される範囲、補償額、補償内容などは異なりますが契約条件に見合う保険であれば、どの保険会社の損害保険を選んでも良い、とする賃貸借契約が多いです。

家賃保証料】

連帯保証人がいない場合、家賃保証会社に家賃保証料を支払うことによって連帯保証の代行を依頼します。もし仮に家賃の滞納があった場合は家賃保証会社が一定の金額を補償します。

【その他に必要な初期費用】

上記で解説した費用以外にも引っ越し費用など、様々な費用がかかります。引っ越しの際は余裕を持って資金の準備をしておくことが大切です。

なぜ契約書が必要なのか?口約束の賃貸借契約でも有効なのか?

なぜ契約書が必要となるのでしょうか?また口約束の賃貸借契約書でも有効なのでしょうか? ここではこの2点について解説していきます。

口約束だけで賃貸借契約は成立するのか?

口約束だけでも賃貸借契約自体は有効です。わざわざ手間がかかる契約書を用意する理由としては、契約を口約束で交わしてしまうと様々なトラブルに巻き込まれる可能性があるからです。

口約束の契約は有効だがトラブルのもと!!

仮に、口約束で契約を交わし書面にしていない場合、何かトラブルが発生した時に「口約束で了解は取っている」「いやいや、そんなこと言った覚えはない」といった具合に、言った言わないのような紛争になる恐れがあります。

契約書の重要性

口約束での言った言わないを防ぐためにも、賃貸借契約を取り交わす際は、必ず契約書類を作成しておく必要があります。つまり、どんな契約をしたのか文書として残す必要があるというわけです。そのようにして双方で賃貸借契約書を取り交わしておけば、無用な争いを避けることができます。

最後に

ここまで賃貸借契約書について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

  • チェックを怠るとトラブルに発展する可能性が高い6つの確認事項について
  • 賃貸借契約の具体的な流れ・必要書類・初期費用について
  • なぜ契約書が必要なのか?契約書の重要性について 

 

以上のことを説明しました。

賃貸借契約の際は、契約書をよく確認して契約を交わさないと様々なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。この記事を参考にしていただき、賃貸借契約の際、少しでもお役に立てれば幸いです。