不動産を取得したときに発生する「不動産取得税」は都道府県に支払う地方税の1種です。計算方法や納める時期、軽減措置についてまとめました。

不動産取得税とは

不動産取得税とは、不動産を取得したときに支払う税金です。取得したその場で支払うのではなく、後日、都道府県から「納税通知書」が郵送されてきますので、「納税通知書」に記載されている税額を記載されている納期限までに支払います。

課税対象

不動産取得税の課税対象となる不動産は、売買により購入した不動産だけでなく新築や増改築、贈与、交換等により入手した不動産も含まれます。尚、相続によって入手した不動産には、不動産取得税は課税されません。

不動産取得税の課税標準額とは

不動産取得税の課税標準額は固定資産税評価額によって決められます。尚、固定資産税評価額は市区町村役場の固定資産課税台帳で閲覧することができますが、新築物件の場合は購入時にはまだ固定資産税評価額も決まっていませんので、納税通知書が届くまでは詳細な金額は分かりません。しかし、土地の場合は公示価格の70%が固定資産税評価額となりますので、おおよその金額を見積もることは可能です。

税率について

不動産取得税の税率は、本来は4%と定められています。しかし、2021年3月31日までに取得した場合、土地や住宅に関しては税率3%が適用され、住宅以外の家屋に関してのみ4%が適用されます。

参考:東京都主税局「不動産取得税」

不動産取得税の計算方法

不動産取得税は、課税標準額に税率をかけることで計算することができます。例えば固定資産税評価額が2,000万円の住宅の場合、課税標準額は1,000万円と計算できますので、特例や軽減措置が適用されなかったと仮定すると、税率3%が適用されて不動産取得税額は30万円となります。

不動産取得税を納める人

不動産取得税は、不動産を取得した人が納めます。不動産取得税は登記したかどうかに関わらず発生しますので、所有権移転登記を省略した場合や建物の登記を実施しない場合でも、不動産取得税を支払わなくてはなりません。ただし、相続によって不動産を取得した場合は、不動産取得税を支払う必要はありません。

海外在住の人が不動産を取得した場合

海外に在住している人が不動産を取得した場合でも、不動産取得税は課税されます。日本国内に納税管理人を1人指定し、不動産取得税の支払いを遂行します。

不動産を取得したときの申告方法

不動産がある都道府県の税事務所に、不動産取得税の申請を行います。以下の書類が必要となりますので、管轄の税事務所に問い合わせの上、書類を準備してから出向きましょう。都道府県によって申告締切日が異なりますが、基本的には不動産を取得して60日以内に申請すれば、軽減措置なども適用されます。

  • 売買契約書の写し(売買契約の場合)
  • 建物全部事項証明書(建物を含む場合)
  • 住宅家屋証明書(中古住宅の場合)
  • 土地や建物の不動産取得税減額適用申請書
  • 不動産取得税申告書

不動産取得税の納付の仕方

不動産取得税は、都道府県から送付される納税通知書を使って納めます。税事務所の窓口以外でも、金融機関やコンビニの窓口でも納付が可能です。

不動産取得税の軽減措置・特例

不動産取得税は、特定の条件を満たすときは軽減措置や特例が適用されることがあります。軽減措置や特例の申請期間を過ぎると適用できないこともありますので、条件と期限をかならず確認しておきましょう。

軽減制度を受けるには

軽減措置を受けるには、軽減措置の条件に該当しているかを確認する必要があります。その上で、申請期間内に必要書類を税事務所に提出しましょう。

必要書類

軽減措置実施のための必要書類は、状況によって異なります。かならず管轄の税事務所に問い合わせ、過不足なく書類を準備するようにしましょう。

新築住宅(建物)の軽減措置

新築住宅の不動産取得税は以下の条件を満たすときは、1戸当たり1,200万円の控除を受けることができます。

軽減措置適用の条件

  1. 床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
  2. 一戸建て以外の貸家用共同住宅の場合は、床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
  3. 賃貸借契約を結んだサービス付き高齢者向けの住宅の場合は、床面積が30㎡以上210㎡以下であること。

中古住宅(建物)の軽減措置

中古住宅の場合は、新築時の年度によって控除額が異なります。1997年4月1日以降に建てられた住宅に関しては、最高控除額である1,200万円が適用されます。

軽減措置適用の条件

  1. 床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
  2. 一戸建て以外の貸家用共同住宅の場合は、床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
  3. 賃貸借契約を結んだサービス付き高齢者向けの住宅の場合は、床面積が30㎡以上21㎡以下であること。

新築住宅(土地)の軽減措置

以下で示す軽減措置適用の条件のいずれかを満たすときは、次のいずれか高い方の金額が、不動産取得税から控除されます。尚、土地1㎡当たりの価格は、宅地用の土地の場合は課税評価額の半分で計算します。また、(住宅の床面積×2)の上限は200㎡ですので、床面積が100㎡以上の住宅に関しては、一律200㎡で計算します。

  • 45,000円
  • 土地1㎡当たりの価格×(住宅の床面積×2)×3%

軽減措置適用の条件

  1. 土地を取得してから3年以内に特例適用住宅が新築されること。
  2. 特例適用住宅が新築されてから1年以内にその敷地を取得すること。
  3. 新築かつ未使用の特例適用住宅と敷地を、新築日から1年以内に取得すること。
  4. 取得者自身が居住するために、新築の特例適用住宅と敷地を取得すること。

中古住宅(土地)の軽減措置

以下の軽減措置適用の条件のいずれかを満たすときは、新築住宅用の土地と同じく、次のいずれか高い方の金額が不動産取得税から控除されます。尚、土地1㎡当たりの価格は、宅地用の土地の場合は課税評価額を半分に調整して計算します。また、(住宅の床面積×2)の上限は200㎡ですので、床面積が100㎡以上のときは、一律200㎡で計算します。

  • 45,000円
  • 土地1㎡当たりの価格×(住宅の床面積×2)×3%

軽減措置適用の条件

  1. 土地を取得してから1年以内に特例適用の中古住宅を取得すること。
  2. 特例適用の中古住宅を取得してから1年以内にその住宅が建っている土地を取得すること。

認定長期優良住宅の軽減措置

以下の条件を満たし、なおかつ長期優良住宅に認定された住宅の場合は、2020年3月31日までに取得したときは1戸当たり1,300万円の控除を受けることができます。

軽減措置適用の条件

  1. 床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
  2. 一戸建て以外の貸家用共同住宅の場合は、床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
  3. 賃貸借契約を結んだサービス付き高齢者向けの住宅の場合は、床面積が30㎡以上210㎡以下であること。

不動産取得税のシミュレーション

不動産取得税がいくらになるのか、実際に計算してみましょう。2018年5月に床面積が150㎡、課税評価額2,000万円の住宅と、敷地面積が250㎡、課税標準額5,000万円の土地を購入したとします。

軽減措置ありのケースの不動産取得税計算

軽減措置が適用となる条件をすべて満たした場合は、住宅と土地に関して以下のように不動産取得税を計算することができます。

  • 住宅の不動産取得税:(2,000万円-1,200万円)×3%=24万円
  • 土地の不動産取得税:(5,000万円×1/2×3%)-60万円=15万円

尚、土地の不動産取得税控除額は10万円×200㎡×3%=60万円(>45,000円)と計算できます。

不動産取得税として、住宅分24万円と土地15万円の合計39万円を支払います。

軽減措置なしのケースの不動産取得税計算

軽減措置適用の条件を満たさなかった場合は、住宅と土地に関して以下のように不動産取得税を計算できます。

  • 住宅:2,000万円×3%=60万円
  • 土地:5,000万円×1/2×3%=75万円

不動産取得税として住宅分60万円と土地分75万円の合計135万円を支払うことになりますので、軽減措置が適用された場合と比べると96万円も高くなってしまいます。

不動産取得税の非課税について

Increasing Tax concepts

課税評価額が一定額未満のときと特定の条件を満たすときは、不動産取得税が非課税になります。

不動産取得税の免税点とは

課税評価額が一定額を満たさないときは、不動産取得税は免除されます。このような課税評価額の基準を「免税点」と呼びますが、具体的には以下の課税評価額が免税点となります。

  • 土地:10万円
  • 新築家屋や増改築:1戸につき23万円
  • 中古家屋や贈与、交換:1戸につき12万円

不動産取得税が非課税になるケース

以下の場合のいずれかに該当すると、不動産取得税が非課税になります。ただし、地域によって条件が異なることもありますので、かならず管轄の税事務所や自治体の役場に問い合わせましょう。

  • 相続によって不動産を取得した場合。ただし、相続時精算課税制度が適用されている場合は除く。
  • 法人の合併によって不動産を取得した場合。
  • 政令によって定められた分割によって不動産を取得した場合。
  • 土地区画整理事業などによって不動産を取得(換地)した場合。
  • 公共に使用される道路を取得した場合。
  • 宗教法人が本来の宗教目的のために土地を取得した場合。
  • 学校法人が教育や保育のために土地を取得した場合。
  • 取り壊すことを条件として家屋を取得し、家屋を使用しないまま取り壊した場合。

徴収猶予について

先に土地だけ取得して、後日家屋を建築しようとする場合は、3年に限り不動産取得税の支払いが猶予されます。ただし、不動産取得税全額が猶予されるのではなく、住宅が新築されたときに減額される分の不動産取得税だけが猶予されます。

*徴収猶予の例

例えば、課税評価額5,000万円の土地250㎡を購入し、3年以内に床面積100㎡の家屋を建てる場合は、不動産取得税の減額分は以下のように計算できます。

  • (5,000万円×1/2÷250㎡)×(100㎡×2×3%)=60万円

本来の不動産取得税は、5,000万円×1/2×3%=75万円と計算されますが、60万円は3年間支払いが猶予されることになりますので、取得時点では15万円のみ支払うことになります。

*徴収猶予の手続き

3年以内に建築計画がある場合でも、税事務所や自治体の役場に徴収猶予の手続きをしていないときは、猶予は適用されません。管轄の税事務所に連絡し、必要な書類を揃えて猶予手続きを行いましょう。尚、一般的には次の書類が必要となります。

  • 徴収猶予申請書
  • 土地の売買契約書と領収書
  • 工事請負契約書もしくは建築確認済みを示す証書
  • 新築住宅の図面

よくある質問

不動産取得税の支払いにおいて、よくある質問とその答えを集めました。ぜひ参考にしてください。

床面積は49㎡のマンションを購入しましたが不動産取得税の軽減の特例は受けられませんか?

分譲型マンションの場合は、床面積が50㎡以上240㎡以下のときのみ不動産取得税の軽減措置が適用されます。そのため、売買用のマンションを購入した場合は、床面積が49㎡であれば軽減措置適用外になります。

尚、床面積が50㎡を超えていても、不動産取得税の軽減措置が適用されない事もあります。マンションのパンフレットでは床面積は壁芯(壁の中心部分からの面積)で表示されますので、内法(壁の内側だけの実面積。不動産取得税の軽減措置は内法で決定します)よりも広く記載されています。そのため、パンフレットでは51㎡でも、内法は50㎡未満となり、軽減措置の適用外になってしまうこともあるのです。

タワーマンションの高層階の不動産取得税が高くなるって本当ですか?

2017年4月1日以降に新築されたタワーマンションを2018年4月1日以降取得する場合は、不動産取得税において、階によって決められた補正率が適用されることになりました。そのため、上層階は通常の不動産取得税より高めの不動産取得税、下層階は低めの不動産取得税になります。

最後に

不動産取得税の軽減措置が適用されるような不動産を購入することで、大きな節税を実現することもできます。購入時には不動産会社の担当者ともよく話し合い、なるべく軽減措置が適用されるように工夫し、該当する場合には忘れずに申告しましょう。

監修者:添田 裕美(税理士)