固定資産税とは、土地、家屋、償却資産を所有している場合にかかる税金のことです。償却資産とは、土地や家屋以外で、消耗される資産のことで、具体的には、構築物、機器類、船舶・航空機、備品などを指します。

総務大臣により「固定資産評価基準」が定められており、固定資産の価格は、毎年3月末までに各市町村長によって決定されています。
固定資産の評価額に基づいて固定資産税額も決まりますが、固定資産税額の決定方法とシミュレーションの活用について説明します。

 

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固定資産税と不動産との関係と「なぜ高い」のか?

固定資産税は対象となる不動産の態様により税額が異なっていますが、どのような場合に固定資産税が高くなるのか見ていきましょう。

固定資産税は家の造りによって細かく設定されている

固定資産の家屋は造りによって税額が細かく設定されています。
「固定資産評価基準」によると、例えば、木造家屋の場合は、「木造家屋評点基準表の部分別区分」の(1)屋根(2)基礎(3)外壁(4)柱・壁体(5)内壁(6)天井(7)床(8)建具(9)建築設備(10)仮設工事(11)その他工事、の11項目に分け、それぞれに標準評点数がついています。

【出典】総務省:固定資産評価基準(第2章 家屋)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran13/ichiran13_00.html

木造よりも鉄骨の方が固定資産税は高くなる

一般的には木造の建物よりも鉄骨の建物のほうが固定資産税は高くなります。
固定資産税(建物)は、経年減点補正率×減額措置×評点一点当たりの価額×単位当たり再建築費評点×床面積×1.4%(標準税率: 都市では+0.1~0.3%)、で算出されますが、鉄骨と木造の差は、経年減点補正率と評点一点当たりの価額です。

経年減点補正率は減税率とも言えるものですが、鉄骨は木造ほど経年減点補正率が低くならず、固定資産税が減らないのです。
また、評点一点当たりの価額も、自治体によって異なりますが、一般的には鉄骨の方が高く、固定資産税も鉄骨の方が高くなります。

クローゼットの床がフローリングだと高くなる

クローゼットの床をフローリングにした場合、固定資産税は高くなると思われます。
一般的にはお金をかけた建物ほど固定資産税は高くなると思ってよいでしょう。
クローゼットの床材を安い板材でなく、居間などに使用されるフローリング材を使った場合には、その分再建築費評点も高くなるからです。

四角い窓より丸い窓の方が固定資産税は高い

建物の窓を四角ではなく、丸にすると固定資産税は高くなります。
一般的な四角い窓に比べると丸窓は特殊で、固定資産評価額が高いため、固定資産税も高くなるのです。
原則として、特殊な構造、形態、造作、などの場合は、固定資産税は高くなると考えられます。

 

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固定資産税のシミュレーション『一戸建て』の場合

一戸建ての場合に固定資産税がいくらかかるのかシミュレーションしてみましょう。

固定資産税の税額は土地と建物では別に計算する

毎年1月1日の固定資産の所有者に対して、課税評価額を基にした固定資産額が賦課されます。
固定資産税は、土地と建物は別々で評価、算出されることになります。
土地の場合は、「課税標準額×税率(1.4%)」で固定資産税が算出されます。

宅地の課税標準額は、固定資産税路線価によって決まります。
路線価とは国土交通省が道路に付けた価格です。
原則として、土地の課税標準額は3年に1回ごとに見直され、このことを評価替えと言います。

課税標準額が5,000万円の土地であれば、その土地の固定資産税は5,000万円×1.4%=70万円となります。
ただし、土地の課税標準額が30万円以下であった場合には課税対象外となります。
この金額(基準)のことを免税点といいます。

評価額は再建築価格と経年減点補正率で算出する

一方、建物の場合は、前述したように、経年減点補正率×減額措置×評点一点当たりの価額×単位当たり再建築費評点×床面積×1.4%(標準税率)で、算出されます。
ポイントは建物の経年劣化と同じ建物を再度建築する場合の費用です。

土地の場合は経年劣化という概念はありませんが、家屋の場合は、時間が経てば新築の物件でもところどころ古くなってくる箇所が出てきます。
また新しい工法や技術によって建築された建物が多くなってくると、古い施工で造られた家屋は比較上劣化の程度が大きくなる可能性もあります。

再建築価格とはどんなものなのか?

再建築価格とは、現在建っている家屋と同じものを居間建てたらいくらかかるのか、というものです。
高級な材料を使用していたり、特殊な技術を用いていたりする場合には、再建築価格は高くなるでしょう。
具体的には、固定資産税評価基準に定められている、建物の構造部分別(屋根、外壁、天井など)に使われている材料などに対する点数を積算して算出します。

ただし、家屋を造った工務店や大工さんの手数料などは含まれていませんので、一般的には再建築価格よりも家屋の購入代金(建築代金)の方が高くなるでしょう。
また、同じ材料を使った建物を再度建てる場合に、物価が上昇していて建材などの価格が上昇している場合にはどのように考えればよいのでしょうか。
当然、その場合は再建築価格は上昇することになりますので、建物の評価額が下がらない可能性があります。

後述する経年劣化による減額以上に、材料費などが高騰している場合には、税金が上がる場合があるのです。
つまり、古い建物であっても、建築資材の高騰などにより再建築価格が跳ね上がってしまうことにより、新築物件よりも課税標準額が高くなってしまうことがあり得ます。

経年減点補正率について

経年減点補正率とは、建物を建築した後の時間の経過によって生じる減価分を補正する割合のことです。
建物の構造や種類などによって補正率は異なっていますが、2割の価値を残存価格として残すように決められています。
これはどんな古い建物であっても、上下水道などの行政サービスの提供を受けているので、その行政サービスの対価として残存価格を残すようにしている=建物の価値がゼロにはならない、と言われています。

木造建築の場合の経年減点補正率は以下の通りです。
経過年数             経年減点補正率
1年                 0.80
5年                 0.65
10年               0.54
15年               0.43
20年               0.31
25年               0.20
木造建築の場合は、25年以上は一定で0.20のままとなります。

一方、鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物は60年まで経年減点補正率が設定されており、建物の減価が緩やかになっています。
経過年数             経年減点補正率
10年               0.6386
20年               0.5509
30年               0.4632
40年               0.3754
50年               0.2877
60年               0.20
鉄骨鉄筋コンクリート造りの場合は、60年以上で一定の0.20となります。

実際に建ててから30~40年経過した建物の市場価値はほぼありませんが、上記のように固定資産の課税標準額はゼロになることはありません。
したがって、実勢の市場価格と課税標準額の乖離が大きくなってしまうことはよくあります。

これは、固定資産滞納物件を競売にかけても誰も購入する人がいない、という問題の一因になっていると考えられます。
しかし固定資産税の評価額を下げると税収が減ってしまうので、自治体は簡単には課税標準額を下げようとはしません。

評価額が3,000万円で、建築後10年経っている木造の建物の固定資産税額は、3,000万円×0.54(経年原点補正率)×1.4%=226,800円となります。

マンションの場合はこちら
【固定資産税】マンション所有者の課税額の計算法と基礎を徹底解説

固定資産税のシミュレーション『減税措置』について

固定資産税は、減税のための特例措置があります。
減税措置の内容について説明します。

住宅用地の特例措置について

住宅用の土地(宅地)については、固定資産税を軽減する特例制度があります。

小規模住宅用地

小規模の住宅用地については固定資産税を軽減します。
この住宅用地は1月1日時点で住宅が建っている土地のことです。
200㎡までを小規模住宅用地と言いますが、小規模住宅用地の場合は、課税評価額を課税標準額の1/6と設定しています。

一般住宅用地

また、200㎡以上の宅地を一般住宅用地と言いますが、一般住宅用地の場合は、課税評価額を課税標準額の1/3と設定しています。
ただし、この軽減制度の対象となる住宅用地の面積は、家屋の総床面積の10倍までを限度としています。
さらに、「空き家対策特別措置法」(2015年5月から施行)では、土地上に存在している建物が「空き家」であると認定された場合には、固定資産税減免の対象外となります。

【出典】国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

都市計画税について

都市計画税とは、都市計画事業、あるいは土地区画整理事業の費用を負担するために課税されるものです。
都市計画法による都市計画区域の中で、原則として、市街化区域内にある土地と家屋を課税対象資産としています。
都市計画税では、固定資産税と異なり、償却資産は課税対象とはしていません。

都市計画税における200㎡までの小規模住宅用地の場合は、課税評価額を課税標準額の1/3と設定しています。
また、都市計画税における200㎡以上の一般住宅用地の場合は、課税評価額を課税標準額の2/3と設定しています。

新築住宅の特例措置について

新築住宅における固定資産の減額特例措置(120㎡まで)は以下の通りです。
一般住宅の場合は税額を1/2減額とし、期間は3年間(認定長期優良住宅は5年間)とします。

また、マンション(3階建以上の耐火・準耐火構造住宅)の場合は税額を1/2減額とし、期間は5年間(認定長期優良住宅は7年間)とします。
ただし、減額措置の要件は、居住用部分の床面積が家屋全体の1/2以上、居住用部分の床面積が一戸あたり50㎡以上280㎡以下(共同貸家住宅は40㎡以上)としています。

※2018年5月末時点

固定資産税の軽減額をシミュレーションで計算してみよう!

それでは実際に固定資産税の軽減額についてシミュレーションしてみます。
150㎡の住宅用地と新築の一般住宅を購入した場合の固定資産税を計算してみます。
軽減前の固定資産評価額(課税標準額)が土地5,000万円、住宅が3,000万円とします。

本来であれば、土地は5,000万円×1.4%=70万円、建物は3,000万円×1.4%=42万円で、あわせて112万円となります。
軽減措置を適用すると、土地は5,000万円×1/6×1.4%=116,666円、建物は3,000万円×1/2×1.4%で21万円でとなり、合わせて326,666円となります。
このように特例措置を利用すると減税効果が高いことがわかります。

不動産を所有するなら定資産税の仕組みをしっかりと学ぶべき!

不動産を所有する場合には、どのような場合に固定資産税が発生するのか、どのくらいの金額が発生するのか、軽減措置は利用できるのか、といったことを理解していくことが重要です。
固定資産税の仕組みをしっかりと学習しておきましょう。

最後に

固定資産を保有していると、原則として、固定資産税が必ずかかります。
固定資産税はどのような場合に高くなるのか、などの理解をしておくことで、どういった固定資産が高く評価されているのかという点への理解も深まり、役立つのではないでしょう。

監修:添田裕美(税理士)

 

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