住宅ローンを組むと、最長10年間「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」を受けることができます。しかし、何の手続きもしないなら、住宅ローン控除は受けられません。どのような手続きが必要なのか、また、手続きに必要な書類や手続きの流れについて解説します。

※情報は全て2018年3月末現在のものとなります。

住宅ローン控除には確定申告をしなければいけない

「住宅ローン控除」とは、住宅ローンの残高の1%が所得税から10年間にわたって控除される制度です。最大400万円(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合は最大500万円)の控除を受けることが可能ですので、賢く活用してお得に住宅ローンを支払いましょう。ただし、住宅ローンを受けるためには、少なくとも住宅購入の翌年は「確定申告」をしなくてはなりません。確定申告ができる期間は決まっていますので、忘れずに手続きするようにしましょう。

確定申告とは

確定申告とは、源泉徴収などで払いすぎた税金があるときや給与以外に収入を得たとき、医療費控除や住宅ローン控除などの各種控除制度を利用して、税金や収入を正確に申告することです。基本的には管轄の税務署で行いますが、郵便やインターネット経由(e-Ttax)で確定申告することも可能です。

初年度は確定申告必須

住宅ローン控除を受ける最初の年は、必ず確定申告を行わなくてはなりません。2年目以降は、給与所得者なら年末調整で住宅ローン控除の適用を受けることが可能ですので、確定申告を行う必要はありません。ただし、給与以外の収入がある方や自営業者等、毎年確定申告を行っている人は、2年目以降も確定申告で住宅ローン控除を申請しましょう。

確定申告はいつまでに行うのか

確定申告の手続きは、住宅を購入もしくは入居した年の翌年1月1日~3月15日の期間中に実施します。自営業者などの毎年確定申告を行っている人は、住宅を購入もしくは入居した年の翌年の2月16日~3月15日の確定申告期間中に、手続きを実施しましょう。

確定申告に必要な書類は

確定申告で住宅ローン控除の手続きをするときは、次に紹介する書類がすべて必要になります。3月15日までに、過不足なく揃えておきましょう。

国税庁のサイトから確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書をダウンロードする

確定申告の時期が近付くと、国税庁から当該年度用の確定申告専用サイトが開設されます。確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書をダウンロードし、必要事項を記入しましょう。尚、ウェブ上で開いて記入してから印刷して提出することも可能ですが、事前にe-Taxに登録してオンラインで提出することも可能です。

【出典】国税庁:明細書・計算明細書(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/01.htm

住民票を取得

住宅ローン控除の手続きには、住民票が必要になります。お住まいの地域の行政窓口か証明書発行サービスセンターで住民票を取得しておきましょう。

会社員は勤務先から源泉徴収票をもらう

確定申告書を提出するときは、源泉徴収票を添付しなくてはなりません。会社員の場合は、勤務先で源泉徴収票を発行してもらいましょう。

融資を受けた金融機関から年末時点での残高証明書をもらう

住宅ローン控除では、ローン残高から控除金額を計算します。融資を受けた金融機関から、年末(確定申告を行う年の前年末)時点での残高証明書をもらっておきましょう。

建物と土地の登記事項証明書を法務局でもらう

建物と土地の登記事項証明書も必要になります。法務局で発行可能ですので、管轄の法務局に行きましょう。

新築時は「土地の売買契約書」と「建物の工事請負契約書」も必要

住宅ローン控除は新築物件を購入したときだけでなく中古物件を購入したときにも利用できる制度ですが、新築で購入したときは、「土地の売買契約書」と「建物の工事請負契約書」の2つを提出しなくてはいけません。(※建売住宅の場合には売買契約書のみ)購入時に受け取った契約書を準備しておきましょう。

長期優良住宅・認定低炭素住宅を購入した時は、建物の性能を証明する書類も必要

長期優良住宅や認定低炭素住宅のために住宅ローンを受けた場合は、通常の物件と比較して控除額が総額最大100万円も多くなります。ただし、建物が長期優良住宅の基準を満たしていることを証明する書類を提出しなくてはなりませんので、住宅メーカーや工務店から建物の性能を証明する書類を受け取っておきましょう。

確定申告書に記入する内容

「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「確定申告書」以外の書類は、住宅ローン控除申請者が作成する必要はありません。いずれも、証明書発行センターや勤務先、法務局、住宅メーカーなどで受け取ることができますので、すべての書類を集めてまとめておきましょう。しかし、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「確定申告書」は、申請者自らが作成しなくてはなりません。次の項目を正しい箇所に記入していきましょう。

住宅借入金等特別控除額の計算明細書に記入する内容

住宅借入金等特別控除額の計算明細書には、入居日と住宅の価格、居住用部分の床面積、年末時点(確定申告書作成時点の前年末)の住宅ローン残高を記入します。

確定申告書に記入

会社員の人は、源泉徴収票から給与や所得金額を確定申告書に転記します。自営業の人は、収入明細を記入し、所得金額を算出します。

減税額を確認

住宅借入金等特別控除額の計算明細書と確定申告書を記入すると、自動的に減税額が算出されます。どの程度の控除を受けられるのか確認しておきましょう。

手続きの流れ

書類をすべて作成したら、いよいよ提出です。過不足なく書類が揃っているかを再確認し、以下に紹介する方法のいずれかで、3月15日までに提出しましょう。

確定申告の期間中に税務署に持参する

すべての書類をまとめて、管轄の税務署に持参します。3月15日が近付くと税務署も混み合いますので、できれば2月末までに提出するように準備することをおすすめします。

確定申告の期間中に郵送する

2月16日~3月15日の確定申告期間中に、書類をまとめて封筒に入れ、税務署に郵送することでも提出できます。税務署に書類を持参すると、確定申告書などの書き方が分からないときや書類の不備などを教えてもらえるというメリットがありますが、手続きに時間がかかる(混み合うときはほぼ半日かかることもあります)というデメリットがあります。その点、書類を郵送するなら待ち時間はゼロになりますので、忙しくて税務署に行けない人や税務署が遠い人にもおすすめの方法と言えます。

返信用封筒と書類送付期限

なお、確定申告書を受理したことを示す控えが必要なときは、返信用封筒に82円切手を貼り、申告者の名前と住所を表に書いて同封しておきましょう。また、書類の郵送は3月15日必着ではなく、3月15日の消印有効です。どうしても確定申告書の作成が提出期間の締切間際になってしまったときは、夜間も開いている中央郵便局などに出向いて書類を発送してもらいましょう。

インターネットでもe-Taxを利用して確定申告ができる

e-Taxを利用すれば、瞬時に確定申告書を送信できます。ただし、いきなりe-Taxを利用できるわけではありません。事前にe-Taxの「電子証明書」を取得しておく必要がありますので、確定申告書を提出する数週間前に「電子証明書」の申請をしておきましょう。なお、一度電子証明書を申請しておけば、翌年以降も同じ電子証明書で確定申告書を提出することができます。
また、電子証明書をパソコンに読み込むための「ICカードリーダライタ」が必要になります。スマートフォンに「リーダライタモード」がある場合は「ICカードリーダライタ」を購入する必要はありませんが、スマートフォンに「リーダライタモード」がない場合は家電量販店やインターネット通販などで購入しておきましょう。

2年目以降の確定申告はどうする?

住宅ローン控除を受けるための手続きは、初年度は提出書類も多く、特に確定申告の手続きをしたことがない人にとっては手間がかかる面倒なものです。しかし、2年目以降は、手続きが一気に楽になります。

会社員は年末調整で対応可能

会社員の場合は、年末調整で住宅ローン控除の手続きも実施できます。わざわざ税務署に出向く必要もありませんし、提出書類を申告者自身が集める必要もありません。

初回確定申告後に送られてくる書類を勤務先に提出する

初回の確定申告をした年の10月ごろに、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が最大9年分まとめて送付されます。該当年度の申告書を勤務先に提出して下さい。なお、残りの「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、住宅ローン控除を受ける限り翌年以降も1枚ずつ勤務先に提出しなくてはなりませんので、大切に保管しておきましょう。

万が一、紛失した場合は、税務署に再発行を依頼することもできます。しかし、再発行には時間もかかりますので、紛失には注意してください。

残高証明書も準備して提出する

同じく10月ごろに、住宅ローンを借り入れている金融機関から「融資額残高証明書」が送付されます。「融資額残高証明書」に記載されている住宅ローン残高を、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」に記入しておきましょう。

この「融資額残高証明書」も年末調整時に勤務先に提出します。なお「融資額残高証明書」は1年に1枚ずつ送付されますので、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申請書」のように数年間分を保管しておく必要はありません。

最後に

住宅ローン控除の手続きを行うことで、最大400万円~500万円の税控除を受けることができます。初回の手続きは確かに手間がかかりますが、非常にお得な制度ですので、必ず該当する人は手続きをするようにしましょう。また、給与所得者以外は、2年目以降も確定申告を行わなくてはなりません。e-Taxに登録し、書類作成と提出の手間を少しでも軽減するようにしましょう。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)