どんな投資にもリスクがあり、誰しも怖いと感じるものです。しかし、不動産投資のリスクに関しては、ある程度予測ができるというメリットもあります。想定内のリスクであれば、比較的簡単に対応する事もできるのです。経営していく中で様々なリスクが生じることはありますが、不動産自体は資産として自身の手元に残るという強みもあります。

ここでは、不動産経営に必要な情報とリスクヘッジの方法などを紹介していきます。

不動産経営とは

不動産経営とは、自身の所有する物件を賃貸物件として提供して家賃収入を得ることを言います。自身も同じ物件(アパートやマンションの一室)に住み、清掃や集金などすべての業務を行う、昔ながらの大家さんスタイルもあれば、住んだ事もない遠方の街に購入した物件を、地域の不動産会社に管理をお願いして経営するスタイルもあります。物件といっても様々な種類があり、各々特徴が異なるので、それらをしっかりと理解して経営を行う必要があります。

不動産の種類

不動産投資を行う際の物件にはいくつかの種類があります。ここでは、商業用ビル、木造一棟アパート、ファミリー向け区分マンション、シングル向け区分マンションの4タイプにわけて説明していきます。

商業用ビル

商業用ビルとは、オフィスやテナントを対象とした事業用物件の事を言います。商業用ビルの賃貸経営を行う場合に知っておきたいメリットとリスクを見ていきます。

<メリット>

居住用の物件に比べて、高い家賃収入を得られる事が一般的です。(居住用に比べて1.5〜2倍程度)景気が良くなると賃料を上げやすいことも特徴です。

・商業用ビルは建築基準法の要件が緩いため、居住用の建物が建てられない場合の土地活用に最適です。

・初期費用を安く抑える事ができるのも、商業用ビルの特徴です。完全な状態で引き渡さなければならない居住用に比べて、テナントとして貸す際は、内装などに手を加えず現状のまま引き渡すことができるため、初期費用を抑える事ができるのです。

出典:内閣府「建築基準法
http://www.bousai.go.jp/shiryou/houritsu/023.html

<リスク>

・比較的広い面積で少ないテナント数の商業ビルにおいて、空室は大きなリスクとなります。アパートは複数の部屋で空室のリスクヘッジが行えますが、商業ビルの場合はそうはいきません。そのため、定期建物賃貸借契約などで退去時期を設定したり、退去時の取り決めを細かく行い、次の入居テナント募集期間を確保するようにしましょう。

・更地や駐車場に比べると20%程度の軽減措置があり、相続税・所得税対策としては優遇がありますが、固定資産税や都市計画税の軽減はありません。

・メリットで、改装費用などの初期費用を抑えられると言いましたが、ビルの建築という面から考えるとデメリットになる事があります。例えば入居テナントをオフィスと想定すればOA環境の整備や十分な電気容量を備えるなどの充実した設備環境が求められる事になり、建築費用が高くなってしまいます。

アパート

ここでいうアパートとは、木造や軽量鉄骨造の一棟物件をさします。規模的にはエレベータのない4〜10程度の部屋を持つものが多いです。

<メリット>

・木造や軽量鉄骨造は建築にかかるコストが安く、建築期間も短いため投資費用回収が早くできます。

・減価償却期間が22年と短いので、経費計上できる額が大きくなります。

・固定資産税の軽減と、損失を他の黒字の所得と通算して課税所得を計算する損益通算が認められている赤字相殺による所得税の負担軽減ができます。

・土地・建物の評価額が減額されるため、相続税の負担が軽減できます。

<リスク>

・10〜15年という短いスパンで大規模な修繕が必要になります。入退居の際の原状回復費用はさほどかかりませんが、足場を組んで屋根や外壁の修繕を行う場合はまとまった費用が必要となります。

・人口減少と人気エリアにおけるアパートの飽和状態によって、同じような物件同士の競争が激化しています。空室にならないために差別化を図る努力が必要です。

・減価償却期間が短く、それを超えると税金の支払いで赤字になる事があります。木造の場合、22年を超えることをデッドクロスといいます。

年間家賃収入500万 - 年間経費(減価償却含む)400万 = 所得100万

この場合、100万に対して所得税がかかります。
所得税率30%とすると所得税が30万となります。
デッドクロスを超えると・・・

年間家賃収入500万 - 年間経費200万 = 所得300万

この場合、300万に対して所得税がかかります。
所得税率30%で所得税は90万になってしまいます。

ファミリータイプのマンション

ファミリータイプとは、主に2LDK以上の広めのRC造のことをいいます。比較的規模の大きい分譲マンションの一室をイメージするといいでしょう。

<メリット>

・単身向けに比べ、入居期間が長いため、安定した家賃収入が見込めます。

・家賃設定を高めにできるので資金回収が早くなります。

<リスク>

・部屋が広く、比較的入居期間が長いことが多いため原状回復費用がかかってしまいます。

広さがある分、転勤による異動時期や子供の新学期などのタイミングを逃すと次の入居が決まりにくくなる事があります。

・規模が大きいためメンテナンス費用も大きく、修繕積立金の負担が増加していくこともあります。

ワンルームのマンション

ワンルームマンションとは、主に単身者向けのRC造のことを言います。ファミリー向けマンションに比べて規模が小さく、価格もお手頃なので投資物件として検討する人が多くいます。

<メリット>

・企業や学校を中心に人口が多いエリアにおいて人気が高く、立地がよければ入居率があがります。

・建物の構造がしっかりしているので長期間保有することができます。

・現金での購入が可能な金額なので、返済リスクに追われることがありません。(現金購入の場合)

<リスク>

・入退去が激しいため、メンテナンスや入居募集などのコストがかかります。

・家賃収入があまり高くないのに対して、管理費・修繕積立金といったランニングコストの割合が高くなる傾向にあります。

リスクヘッジの方法

リスクと言っても、現金で不動産を購入している人にとっては、固定資産税と月々のランニングコスト分の収入(築年数が浅ければ、これらを下回る事は通常ではほぼ考えられない)があれば、赤字になることはないため、たいしたリスクにはなりません。

しかし、ローンで購入している人にとっては返済額が収入を上回ることがあれば毎月収入を得られるどころか赤字になってしまうため大問題です。最初にできるリスクヘッジとして、返済比率を下げるということも念頭に入れておきましょう。それでは主なリスクヘッジの方法をみていきましょう。

空室対策

どのような種類の不動産でも、最も危惧されるのが空室リスクです。入居が見込めそうなエリア(主要駅徒歩10分圏内など)や、他の物件と差別化が図れるような個性的な間取り、充実した住宅設備、地域に根ざした客付け力のある管理会社を選ぶなど、空室にならないために購入前から対策をしておきましょう。

家賃滞納対策

家賃の回収作業は基本的には管理会社が行ってくれるる場合が多いのですが、滞納対策として入居条件に保証人または保証会社への加入を義務付けるといいでしょう。また、面倒な振込ではなく、口座引き落としにしてもらうことも有効です。

入居者と直接契約しないサブリース(不動産管理会社との契約)という方法もありますが、この方法にはメリットだけでなくデメリットもあるので、確認が必要です。サブリースに関する詳細は以下の記事をご参照ください。

全てがわかる!サブリースとは?メリットやデメリット、注意するポイントとは

家賃下落対策

建物の劣化とともに家賃も下落していくことは、ある意味当然のことです。極端に立地の良い場合やかなりの人気物件でない限り、家賃は下落していきます。対策としては事業計画を立てる段階でその下落をしっかりと考慮して計算できるかです。計画段階で下落率はあらかじめ予測できるので、それを含めた計算で収支に合理性があれば問題ないでしょう。

また、建物の価値を落とさないようにすることも大切です。設備を入れ替えるのは簡単ですが、コストがかかってしまいます。低コストで最大パフォーマンスを引き出せるような工夫が必要です。(例えば、玄関入ってすぐの第一印象だけは良くするとか、部屋のクロスを一面だけアクセントクロスにするなど)

天災対策

日本各地で起こっている災害。地震や水害、火災などが主に挙げられます。物件には必ず火災保険を付けますが、建築費用を全額取り戻すことは基本的には難しいと考えたほうがいいでしょう。特に、地震保険は火災保険の半額までしか加入できず、その補償内容も限られたものです。

対策としては、災害の起きる可能性の低いエリアで物件を探すことです。地盤の強弱や崖崩れの有無、河川氾濫履歴など、事前に調べられることは沢山あります。天災なので予測には限界がありますが、自治体のハザードマップなどでエリア情報を確認して、できるだけ被害にあう確率の低い場所を選びましょう。

実際に誰が買えるの?初心者はどれがいいの?

まず、知っておいていただきたいのは、自己資金が必要であるという事です。低金利の続く昨今、フルローンやオーバーローンで不動産を購入する人が増えました。確かに購入は可能ですが、返済比率が高くキャッシュフローが出ないため、リスクに遭遇した際の舵取りが困難になってしまいます。

融資上限は属性により随分と異なりますが、年収の7〜10倍と言われています。

不動産投資は安易に始めるのではなく、自己資金を貯めながら計画的に行いましょう。

区分マンション

ローンを組むことに抵抗のある人やリスクが極端に気になる人は、最初は区分マンションで経営内容を勉強していくのがいいでしょう。区分マンションであれば、数百万から購入可能です。現金で購入できればリスクはかなり軽減されます。

アパート

初心者は出来るだけ中古より新築の一棟アパートがいいと言われます。理由としては、2回転目までは比較的入居が付きやすいことや、しばらくは修繕・修復が必要ないことなどがあげられます。

土地勘があり、そのエリアにどのようなニーズがあるかなどの分析ができるならば、中古の一棟アパートは利益率がいいでしょう。また、DIYやリフォーム、リノベーションが得意な人にも中古アパートはオススメです。

今の時代情勢に強い!リスク分散

時代情勢の煽りを受けることが比較的少ない不動産投資。不動産を所有することはそれ自体がリスク分散になっているとも言えるのです。

インフレに効く

市場経済がインフレに傾くと、物の値段が上がり、今まで100円で買えていたものが200円になるといった現象が起こります。これはつまり、貨幣価値が下がっていることを示します。しかし、不動産価値は経済状況に大きく左右されることはなく、比較的狭い振り幅の中で価値を保ちます。

低金利の恩恵

不動産投資が他の投資と全く違うのは、融資を受けられることです。少ない軍資金で大きな不動産を入手することができるのです。

しかし、ネックになるのが融資を受ける際の金利です。不動産バブルと言われて、利回りが軒並み低くなっている昨今ですが、利回り10%でも、金利が4%であれば単純利回りは6%、利回り8%でも金利が1%であれば単純利回りは7%となります。低金利の恩恵がどれほど大きいかお分かりいただけると思います。

実物資産を所有するということ

株式等の金融資産は、倒産等により価値がなくなってしまうというリスクがあります。しかし、不動産や金のような実物資産を所有している場合、価値が下がることはあっても、なくなってしまうことはありません。さらに、自身や家族などの住む家として利用する事も可能です。

最後に

不動産経営といっても様々なタイプがある事がお分かりいただけたでしょうか。そして、それら各々にメリットとリスクが潜んでいます。リスクとメリットの両方を知った上で、予測や事業計画を立て、不動産経営を始めることをおすすめします。不動産は生涯にいくつも購入するものではないので、わからないことが多いのは当たり前です。色々な不動産会社とコンタクトを取り、親身になってくれる営業マンを探し、相談しながら進めていけると安心です。