不動産鑑定士ってなんとなく名前は知っているけど、どのような仕事なのかわからない方も多いのではないでしょうか?
また資格試験が難しそうなイメージではありますが、どのような試験概要なのか、どのような企業に就職するのかについても気になるところです。
今回は不動産鑑定士の試験情報や業務内容について、また、就職先のことまで詳しく解説していきます。
読み終わったあとは、きっと不動産鑑定士への理解が深まっているはずです。
是非最後までお読みください。

不動産鑑定士について

一般的には不動産鑑定士という職業はあまりなじみがないかもしれません。
しかし不動産鑑定士は不動産についてのエキスパートであり、特に不動産鑑定評価業務は独占業務となっており、不動産鑑定士しか行えない業務となっています。
以下、不動産鑑定士について詳しく解説していきます。

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士とは弁護士、公認会計士と並ぶ日本の三大資格の1つと謳われることもあり、不動産のエキスパートといえるでしょう。
不動産系の資格はいくつかありますが、その中でも不動産鑑定士は不動産系資格の最高峰と一般的にいわれています。

不動産鑑定士は、その専門知識をいかして土地の有効活用を判定し、適正な地価を判断します。
後述しますが、不動産鑑定士の業務内容で中心になるのは、不動産鑑定業務です。
他にも、お客様から預かった不動産の運用を行ったり、不動産の投資判断材料となる資料作成も行います。

つまり不動産の鑑定評価だけでなく、不動産の適正な利用についてのコンサルティングも行う専門家でもあるわけです。

不動産鑑定評価業務

不動産の鑑定評価業務が不動産鑑定士の独占業務となっていますが、具体的には何をする業務なのでしょうか?
不動産の鑑定評価とは、ある不動産のもつ利用価値を前提としてそれを貨幣価値に表すといくらになるのかというのを金額で算出する仕事です。
依頼者がこの鑑定評価を依頼する目的は、所有する不動産の適正価格を把握すること、相続などで遺産を分割すること、または担保として不動産を利用する際に価値を知っておくことなど様々です。

不動産鑑定士によるコンサルティング業務

不動産鑑定士は、不動産のエキスパートとして広く個人や法人などを対象に不動産の有効活用、開発計画の策定をはじめとする総合的なアドバイスも行います。
つまり専門的な知識をいかし、不動産に関する事案を中心にコンサルティング業務を行っているのです。

不動産鑑定士になるには

不動産鑑定士になるためにはどうしたらいいのでしょうか?
具体的には年1回行われる不動産鑑定士試験に合格後、実務修習を日本不動産鑑定士協会連合会で受ける形になります。
この実務修習が終了して国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に登録されることにより晴れて不動産鑑定士となることができるのです。

これから注目度が上がる?不動産鑑定士試験

不動産鑑定士試験の受験者は2016年には2006年時の約1/3と減少しておりますが、2017年ころから有識者たちの間で会議などが開かれ、不動産鑑定士を増やしていこうという動きがあります。
ここでは不動産鑑定士試験について詳しく解説します。

試験内容と難易度

不動産鑑定士試験は、司法試験、公認会計士試験と並んで日本の三大国家資格と一般的にいわれています。
そのため難易度はとても高く、日本の資格の中でも難関資格の1つとして位置づけられています。
どのくらい難易度が高いかでしょうか?次の資料をご参照ください。

不動産鑑定士合格率

2017年不動産鑑定士試験
論文式受験者数  合格者数  合格率
合 計 733名  106名  14.5%
出典:国土交通省 合格者の属性等について(http://www.mlit.go.jp/common/001206508.pdf)

上記は論文式の試験の合格率の資料になります。
この数字だけみると14.5%の合格率と割と高いイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかしそもそも不動産鑑定士を受ける受験者のレベルが高いといわれていますので、その中での14.5%となるとやはり難易度は高いといえるでしょう。
次に不動産鑑定士試験の内容について2018年の受験案内を参考に試験概要を解説していきます。

不動産鑑定士試験概要

不動産鑑定士試験の受験資格は年齢、学歴、国籍、実務経験等に関係なく誰でも受験することができます。
不動産鑑定士試験はまず大きく分類すると短答式試験と論文式試験に分けることができます。
短答式試験は5月中旬の1日で行われ、択一式(マークシート方式)です。
試験概要は不動産に関する行政法規、不動産の鑑定評価に関する理論となっています。
合格基準は2つの試験科目の総合点のおよそ7割を基準に土地鑑定委員会が相当と認めた得点となっています。

また科目ごとに足切り点が存在しています。
どちらかの科目が良くても、もう一方の科目が悪ければ合格できません。

短答式試験に合格すると、次に論文式試験に進むことができます。
なお一度短答式試験に合格すると、翌年、翌々年の短答式試験は免除申請をすることで試験免除となります。

論文式試験はその名の通り、論文を記述していく試験で7月下旬~8月上旬の3日間にかけて行われます。
試験科目は民法、経済学、会計学、不動産の鑑定評価に関する理論となっています。
合格基準は4つの試験科目の3日間の総合点のおよそ6割を基準に土地鑑定委員会が相当と認めた得点となっています。

また論文式試験にも科目ごとに足切り点が存在しているため、どれか1つでも科目の点数が満たないと合格できません。

不動産鑑定士試験の受験者が少ない理由

2008年に起こったリーマンショックで深刻な不動産不況に陥りました。
資格を取っても就職できないという状況もあり、難しい試験にも関わらずやっと合格しても、地方では公共事業の減少等で努力が報われないという悪循環に陥った結果、受験者数が減少していき2016年の受験者数は2006年と比較して約3分の1に落ち込んでいます。

深刻な不動産鑑定士の人材不足

受験者数の減少は業界への新規就業者数の減少という状況を招いています。
また不動産鑑定士の高齢化も進んでいくため、このままの状況が続くと、将来的に更なる人材不足が予想されます。
そこで、認定団体である国土交通省が試験制度の改革に向けて試験制度の見直しをはじめました。

試験制度の改革に向けての動き

先述したとおり不動産鑑定士試験の試験制度の見直しが2017年頃から有識者たちの間で議論されてきました。
具体案としては、科目別合格制度を設けることで単年の負担を減らして社会人が受けやすい試験にしていくことや試験の難易度を下げて不動産鑑定士を増やしていき、その代わり合格後に定期的な研修の受講を義務付けることで不動産鑑定士としての一定の質を保持するという動きがあります。

試験合格後は実務修習

試験合格後、すぐに不動産鑑定士になれるわけではなく実務修習が必要となります。
流れとしては次のように進んでいきます。

1. 不動産の鑑定評価に関する講義

不動産鑑定評価に関する講義はeラーニングで行われます。
講義は合計16科目あり、確認テストに合格しないと次の課程に進めない形式となっています。
期間として1年コースと2年コースがあります。

2. 基本演習

次に基本演習に進みます。
基本演習では鑑定評価報告書を通常採用される手順に従って、実務修習生自ら作成することによって修得していきます。
集合形式で、会場は東京会場です。
第1段階~第4段階まで、全10日間で演習を行っていきます。
4名ずつのグループに分かれ、評価対象不動産に関する資料に基づいて現地調査から鑑定評価書の作成までを行います。
鑑定評価書はかなりのボリュームになり、また、すべて手書きで作成するため作業としては大変なものとなります。

3. 実地演習

実地演習では不動産の鑑定評価に関する実務について、実地において鑑定評価報告書を作成しながら評価方法を修得していきます。
こちらも選択制により1年コース、2年コースがあります。
また実地演習には物件調査実地演習と一般実地演習があります。
物件調査実地演習では、物件調査の手法を1ヵ月間かけて修得するもので、一般実地演習の受講前に必ず受講しなければなりません。
土地及び建物の各1件について調査を行います。
そして物件調査報告書を作成し、指導鑑定士の確認を得て、日本不動産鑑定士協会連合会に報告書を提出して審査を受ける形になります。

一方、一般実地演習は不動産鑑定評価の類型別実地演習になります。
まず指導鑑定士が現実に存在する不動産を題材として、不動産鑑定評価基準に定める基本的事項を記載して鑑定評価依頼書を作成します。

依頼書を提示された実務修習生は、鑑定評価依頼書をもとに指導鑑定士の指導を受けつつ13件の鑑定評価報告書等を作成します。
1年を3期に分け、各期末に協会に鑑定評価報告書などを提出します。
この実地演習を終えるといよいよ最後の終了考査になります。

4. 修了考査

実務修習が終了した後は修了考査となります。
修了考査では実務修習が終了した人はほとんど合格しますが、中には不合格になる人もいます。

修了考査は記述式とよばれる論文式の試験と口述式とよばれる口頭で実地演習の内容について問われる試験が行われます。
論文式は、日本不動産鑑定士協会連合会のホームページにテーマが公表されます。
受験者は約8日間で解答論文を作成し、協会に郵送します。
ちなみに試験では理論的でかつ対象不動産についての実務的な表現力が問われることになります。

口述式試験は3人の審査員を前にして3対1の形式で行われます。
提出した内訳報告書のうち、任意の内訳報告書が渡され、この内訳報告書の評価の詳細について質問を受けます。
口述式試験は標準で20分~30分の間で行われます。

上記のように進み、修了考査に合格すると不動産鑑定士として登録できる流れになります。

不動産鑑定士の主な就職先

不動産鑑定士として登録すると、働き方にも様々な選択肢が出てきます。
企業内鑑定士として勤務する他、独立して自分の事務所を構えるなど、活躍の場は多岐に渡ります。
ここでは不動産鑑定士の主な就職先をご紹介していきます。

活躍の場が広がる企業内鑑定士

不動産鑑定士というと不動産鑑定士事務所に勤めているイメージがありますが専門的に不動産を評価できる人材は、近年、特に大手企業での需要が増えています。
不動産に関する専門的な知識を生かして活躍の場が広がっているのです。

不動産鑑定士事務所

不動産鑑定士事務所では不動産鑑定業務を専門に行います。
不動産鑑定業務のノウハウを学び将来独立を目指す不動産鑑定士が多いためか、不動産鑑定士がはじめに選ぶ就職先としては多い傾向にあります。

コンサルティング会社

コンサルティング会社に就職すると不動産に関する事案相談に対して的確な指導やアドバイスを行うことが主な業務となります。
またその他の業務として土地の有効活用の提案、マンション建て替えコンサルティング、市街地開発事業の権利調整、街づくり戦略立案など多岐にわたります。

不動産会社

主に不動産会社の鑑定部門などに配属されます。
理論的な根拠と実証的なデータを駆使して不動産の適正な価格を導き出すことが業務の中心となります。
その他不動産に関連する企画の立案や開発、管理といった部門で活躍することができます。

金融機関

銀行などに就職した場合は、不動産に関する高度な専門性を生かして、融資業務の際の担保物件の鑑定評価、不動産の運用や有効活用に関する相談業務など、専門知識を生かして活躍することができます。

最後に

ここまで不動産鑑定士について解説してきましたがいかがでしょうか?
以下の内容がお分かりになったと思います。

  • ・不動産鑑定士は三大難関国家資格の1つであり不動産に関する専門性がとても高い

・不動産鑑定士試験の難易度を下げて、不動産鑑定士を増やしていこうという動きがある
・不動産鑑定士の就職先は不動産鑑定士事務所だけでなく、様々な選択肢がある

今後は、さらに注目される資格となり活躍の場が広がっていくのではないでしょうか?
この記事をきっかけに少しでも不動産鑑定士という職業に興味を持ってもらえれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。