不動産投資は将来的な資産を形成できるだけではなく、所得税や住民税などの節税にもなる、メリットが大きい資産運用法です。しかし、不動産について十分な知識がないままに投資を始めると、大きな損をしてしまうかもしれません。特に、減価償却費に関してはよく分かっていないという方も多いでしょう。そこで今回は、不動産投資における減価償却費の計算方法についてご紹介します。
減価償却、減価償却費とは
不動産投資を考えていると「減価償却」という言葉をよく耳にします。減価償却とは会計上で使われる用語で、マンションなど長期間使用できる固定資産の取得に使った金額を、使用年数に分けて費用として計上する会計上の手続きです。そして、減価償却費とは減価償却により計上される費用を指します。
ただし、減価償却の対象となるのは「長期間使用できる=いつかは使用できなくなる」固定資産のみで、土地は半永久的に使用可能なため対象外です。
減価償却のメリット
減価償却を行うことによって、会計上明らかに大きな損益が計上されないようになり、客観的に信頼性のある会計報告を行えます。また、法人の場合はその年の利益を毎年減価償却費の分だけ減額計上できるため、法人税を節税できることもメリットです。
例)利益2000万円・減価償却費400万円の場合、会計上の利益は1600万円になり400万円分の節税ができます。
建物の構造によって異なる法定耐用年数
減価償却を考える際に重要なことが、建物の法定耐用年数です。同じ金額で取得しても、耐用年数が異なれば毎年計上される金額も異なります。法定耐用年数は、建物の構造によって決められているため、以下の違いがあることを知っておきましょう。
新築の場合
・RC(鉄筋コンクリート)‥‥47年
・重量鉄骨‥‥34年
・軽量鉄骨‥‥27年
・木造‥‥22年
※設備の法定耐用年数は15年
中古物件の耐用年数
中古物件の場合には、耐用年数の経過前か経過後で計算の仕方が変わります。
【1】耐用年数の経過前
この場合、法定耐用年数-築年数(端数切り上げ)×0.8=償却期間(端数切り捨て)で計算されます。
RC建物…法定耐用年数47年-築年数(端数切り上げ)×0.8=償却期間(端数切り捨て)
設備…法定耐用年数15年-築年数(端数切り上げ)×0.8=償却期間(端数切り捨て)
【2】耐用年数の経過後
この場合、耐用年数×20%=残存耐用年数で計算されます。
RC建物…耐用年数×20%=残存耐用年数
設備…耐用年数×20%=残存耐用年数
減価償却費を考える際のポイント
具体的に減価償却費を計算する際には、注意すべき以下のポイントがあります。
1.いくらでその不動産を購入したか
2.その不動産の土地と建物に価格を分ける
3.その不動産の耐用年数は何年か
以上の3つを調べることで、減価償却費を計算することができます。
減価償却費を計算する
では実際に、減価償却費を計算してみましょう。減価償却費=不動産取得にかかった金額×耐用年数に応じた償却率で計算できます。
<築10年8カ月のRC造中古マンション 価格3000万円の場合>
今回は便宜上、価格の内訳は土地1500万円 建物1200万円 設備300万円とします。減価償却の対象となるのは、土地以外の建物1200万円と設備300万円です。※築年数は端数切り上げ、耐用年数は端数切り上げ
まず、耐用年数は先日の計算式に当てはめると
建物本体 47年-(11×0.8)=38年建物設備 15年-(11×0.8)=6年
になります。
耐用年数が分かれば、国税庁発表の「減価償却資産の償却率表※」を参照し、年数に応じた償却率を調べます。
この例の場合は、
建物本体の減価償却費 1200万円×0.027(耐用年数38年の償却率)=324,000円
建物設備の減価償却費 300万円×0.167(耐用年数6年の償却率)=501,000円
以上が減価償却費になります。
おわりに
今回は、不動産投資における減価償却費の計算方法についてご紹介しました。
不動産について正しい知識を身につけ、自分の資産には不動産としてどれだけの価値があり、どれだけの償却費を減額計上できるかを計算できれば、効率の良い資産運用につながるでしょう。
【参照URL】国税庁、減価償却資産の償却率表https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf