道路(路線)に面する宅地の1平方メートル当たりの価格を路線価といい、よく耳にする機会の多い路線価として固定資産税路線価と相続税路線価があります。固定資産税路線価も相続税路線価もそれぞれ課税を目的として設定されているものですが、税金の種類や課税主体の違いなどから、同じ路線価でも相違するところがあります。2つの路線価の違いを徹底的に解説していきます。

固定資産税路線価と相続税路線価の違いとは?

路線価には固定資産税路線価と相続税路線価がありますが、この2つの路線価にはどのような違いがあるのでしょうか。

固定資産税路線価と相続税路線価 2つの路線価の利用目的

固定資産税路線価は固定資産税の課税を目的とし、相続税路線価は相続税・贈与税の課税を目的として設定されています。双方ともに課税を目的としていますが、固定資産税路線価は総務省が定める固定資産評価基準に基づき路線価が設定され、相続税路線価は国税庁による財産評価通達に従って路線価が設定されています。

固定資産税は地方税で、市町村(東京都23区については東京都)が土地や建物などの固定資産の所有者に対し、所有する固定資産の額に応じた課税を行います。相続税や贈与税は国税で、国が相続人や受遺者に対し、相続した財産の額や贈与をうけた財産の額に応じて課税を行います。相続財産や受贈財産となる土地について、税額算出の基礎となる評価額を求める際に相続税路線価を利用することになります。

2つの路線価と公示地価との関係性

固定資産税路線価も相続税路線価も道路(路線)に面する土地の1平方メートル当たりの評価額を表すものですが、課する税金の種類の違いから同じ道路に設定された路線価であっても評価額が異なります。

しかし、評価額が異なるといっても、それぞれの路線価に関係性が全く無いかというと、そういう訳でもありません。固定資産税路線価も相続税路線価もそれぞれの税金を課するための路線価であることから、課税の公平性が求められるため、根拠のない路線価を設定することは許されないのです。

国土交通省に設置される土地鑑定委員会は、適正な地価の形成を目的として、毎年1月1日時点の標準的な土地の正常な価格を「公示価格」として公表しています。この公示価格に対して、固定資産税路線価は7割程度、相続税路線価は8割程度を目安とした価格水準となるように路線価が定められているため、相互に関係性を有するといえます。

3年に1度見直される固定資産税路線価

固定資産税の課税の基準となる土地や建物の評価額は、3年に1度見直しが行われます。これは固定資産税を適正な固定資産の時価に即して課税を行うことを目的としています。この見直しのことを評価替えといい、固定資産税路線価も評価替えに伴い見直されることになります。

2018年度の固定資産税は、2018年の基準年度価格調査基準日の評価額によって課税が行われ、原則として3年間評価額が据え置かれた後に、2021年度に改めて評価替えが行われます。ただし、土地については地価の下落が認められた場合には、基準年度以外であっても、時点修正によって基準年度の価格修正が行われるのが一般的です。

固定資産税路線価の調べ方は?

相続税路線価は国税庁のホームページなどで調べることができますが、固定資産税路線価を調べるためにはどうしたら良いのでしょうか。

全国地価マップ

全国の固定資産税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供している全国地価マップ(http://www.chikamap.jp/chikamap/Portal)のサイトに掲載されています。

全国地価マップのサイトでは、固定資産税路線価のほかに、相続税路線価、地価公示価格、都道府県地価調査価格を地図上で閲覧することもできます。

なお、相続税路線価などは公表時点から地価マップで閲覧可能となるまでにタイムラグが生じるため、相続税路線価は国税庁のホームページで、地価公示価格、都道府県地価調査価格は国土交通省のホームページで確認した情報が最新の価格となることがあります。

役所で閲覧

固定資産税路線価は、確認したい固定資産が所在する市町村役所の資産税課などの窓口で閲覧することができます。なお、役所によって窓口の名称が異なることもありますので、受付などで窓口を確認されると良いでしょう。

また、東京都23区など一部の地方公共団体では、役所のホームページでも固定資産税路線価を公表していますので確認してみてください。

固定資産税路線価と相続税路線価を使った土地の税額計算方法

固定資産税路線価と相続税路線価を使った土地の税額計算方法について簡単に解説していきます。

全国地価マップを使った路線価の調べ方流れ

上記の全国地価マップを使った路線価の調べ方について説明します。

全国地価マップのページで、調べたい路線価の地図検索をクリックすると検索ページが開きます。「郵便番号・住所またはその一部から」、「住所一覧から」、「地図から」の3つの検索方法のほかに、調べたい土地の近くに役所や学校などの目標物があれば、それを地図上に表示させてから調べるという方法もあります。

様々なアプローチの方法が用意されていますので、比較的容易に調べたい土地の記載がある地図を開くことができると思います。

固定資産税路線価、相続税路線価ともに、調べたい土地に面している道路上の矢印の線上に記載されている数字が路線価となります。1平方メートル当たりの価格を固定資産税路線価は円単位で、相続税路線価は千円単位で表示しています。ページの上部に固定、相続、公示等の記載があり、こちらをクリックすることで調べたい価格の種類と年度の切り替えが可能です。

なお、固定資産税路線価において、調べたい土地に面する道路上の矢印の線をクリックした際に、左側に表示される詳細情報欄の時点修正率が1よりも小さい場合には、当該時点修正率を乗じて路線価を修正する必要があります。

土地の固定資産税の計算方法

土地の固定資産税は「課税標準額×税率」で求められ、課税標準額は原則として固定資産評価額です。

固定資産税評価額は「固定資産税路線価×土地面積×評点数」で求められます。土地面積は登記簿に記載されている面積で、評点数とは土地の間口、奥行、形状など土地の現状に応じて算定された補正率のことをいいます。

固定資産税路線価は路線に面する標準的な土地の価格であり、個別性が認められる土地については、補正を行って当該土地の評価額とする必要があります。

土地の固定資産税評価額と課税標準額は異なることがある

土地の課税標準額は固定資産税評価額であることが原則ですが、住宅用地については、税負担軽減のための特例や急激な税額の上昇を抑えるための措置の適用によって、固定資産税評価額と課税標準額が異なることがあります。

小規模住宅用地の課税標準額の特例

住宅用地に対する固定資産税を軽減させる特例に、小規模住宅用地の課税標準額の特例があります。

住宅用地として利用されている土地の住戸一戸当たり200平方メートル以下の部分について、課税標準額を6分の1に減額することが認められています。

一般住宅用地の課税標準額の特例

また、住宅用地として利用されている土地の住戸一戸当たりの土地で200平方メートルを超える部分については、課税標準額を3分の1に減額することができ、これを一般住宅用地の課税標準額の特例といいます。

土地の負担調整措置とは

固定資産税路線価は3年に1度見直しが行われ、地価が上昇しても3年間は据え置かれることになります。このため、急激に土地の価格が上昇すると評価替えによって固定資産税額も急激に上昇することになってしまいます。そこで税額の激変緩和を目的とした負担調整措置が適用されます。

負担調整措置とは、算出した負担水準の数値に応じて当該年度の課税標準額が決まるというもので、負担水準は「前年度課税標準額÷今年度本則課税標準額×100」で求められます。本則課税標準額とは、負担調整措置が考慮されない本来の課税標準額のことをいいます。

住宅用地の場合、負担水準が100未満の場合には、本則課税標準額の範囲内で、前年度の課税標準額に本則課税標準額の5%を加えた額が課税標準額となります。なお、本則課税標準額の20%を下回る場合には20%相当額を課税標準額とします。

具体的に数字を使って説明します。今年度の本則課税標準額が1,000万円、前年度の課税標準額が500万円だとします。前年度の固定資産税額は500万円×1.4%=70,000円ですが、もし、負担調整措置が無ければ今年度の固定資産税額は1,000万円×1.4%で140,000円と2倍になってしまいます。

しかし、負担調整措置が適用され、負担水準が500万円÷1,000万円×100=50ですから、今年度の課税標準額と固定資産税額は500万円+1,000万円×5%=550万円で550万円×1.4%=77,000円となります。

負担調整措置については稲城市のホームページでも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

稲城市ホームページhttps://www.city.inagi.tokyo.jp/kurashi/zeikin/koteisisanzeitosikeikakuzei/koteisisanzeitoha.files/tochinokazeihyoujunnnomotomekata2014.pdf

土地の相続税の計算方法

相続税を計算するための土地の評価額は、「相続税路線価×土地面積×補正率」で求められます。相続税路線価も固定資産税路線価と同様に路線に面する標準的な画地を前提とした価格であるために、土地の個別性が認められる場合には補正率を乗じることになります。

利用者を悩ませる?いくつもある土地の評価方法まとめ

公表されている土地の価格は、固定資産税路線価、相続税路線価の他にもあります。これらは価格水準や時点が異なるなどで、1つの土地に4つ、または5つの違った価格があることから、一物四価とも一物五価とも言われることがあり、利用者を悩ませることもあります。

以下に固定資産税路線価、相続税路線価以外の3つの価格について説明していきます。

公示地価とは?

公示地価とは、地価公示法によって公表される地価のことを意味します。

土地は個別性が強く、売買市場も閉鎖的で情報も少ないことから、適正な価格を把握することが困難であるという特徴があります。そこで、国土交通省に設置された土地鑑定委員会が適正な地価の形成を目的として、毎年1月1日時点の個別の地点における適正な地価を同年の3月に公表しています。適正な地価とは正常価格のことであり、正常価格とは買い進みや売り急ぎなどの取引当事者間の売買における事情を含まない価格です。

公示地価は、公共事業用地の取得価格算定の規準としなければならない価格であり、一般の土地取引価格においても指標とすべき価格であると位置付けられています。

都道府県地価調査(基準地価)とは?

都道府県地価調査とは、毎年7月1日時点の土地の標準価格を都道府県知事が判定するもので、国土利用計画法施行令第9条に基づき行われています。

都道府県地価調査による土地の標準価格は通常9月頃に公表され、公示地価に対して「基準地価」と呼ばれます。標準価格は正常価格と同じ概念の価格で、公示地価と同様に適正な地価の形成を図ることを目的とし、地方公共団体等による買収価格算定などの規準となる価格として利用されます。

公示地価と基準地価で異なる点はいくつかありますが、大きな違いは価格時点が公示地価は1月1日で基準地価は7月1日であることです。

土地の実勢価格とは?

土地の実勢価格とは、実際の売買市場で成立する土地の取引価格のことをいいます。

公示地価や基準地価とは異なり、土地の実勢価格には、高くても買いたい、安くても売りたいなどといった取引当事者の事情が含まれることがあります。このため実勢価格の概念とは曖昧な場合が多くあります。

最後に

固定資産税路線価と相続税路線価の相違についてご理解いただけましたでしょうか。両方とも税額計算の基礎となる価格であり、土地価格の上昇局面では税負担も大きくなることが気になるところです。税額計算の仕組みを理解して将来への備えとしていただければと思います。

監修:添田裕美(税理士)