大切な資産を形成するためにも、老後資金を準備するためにも、「投資を始めようかな」と検討している方も多いのではないでしょうか。しかしながら、「今投資をしよう!」と思い立っても、一体何に投資して良いのかさえも分かりませんよね。そこで、今回は初心者にオススメの投資商品を14種類と、投資をするなら知っておきたい3つの投資スタイルについてまとめてみました。

投資における2つの収益とは?

どのような投資をしたとしても、基本的には「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」この2つの収益が投資利益として期待できるわけです。よって投資商品を選ぶときには、インカムゲインとキャピタルゲインがどの程度期待できるのか、また減額となる、もしくは受け取れない可能性などがどの程度あるのかについても考えていきましょう。

インカムゲインとは

投資商品を運用して得る利益をいわゆる「インカムゲイン」と呼びます。例えば株式を100株購入したとして、年間に1~2回程度、持ち株数に応じて“配当”を受け取れることがあります。この配当が発生した場合の利益こそ、株式投資においてのインカムゲインです。会社の業績が良いときはインカムゲイン(配当=利益)が大きくなります。しかし、会社の業績が良くないときには無配当(0円)にもなり、インカムゲインを受け取れないことがあります。

キャピタルゲイン

投資商品を売ったときに得られる売却利益を“キャピタルゲイン”と呼びます。100万円で株式を購入して、1年後に105万円で手放すケースであれば、キャピタルゲインは5万円(税額を考慮しない場合)と計算できます。ただし、投資商品の価格は常に右肩上がりとは限りません。価値を下げた場合は、キャピタルロス(売却損)となります。つまり、キャピタルゲインはマイナス(損失)になることもあり得るのです。

オススメの14種類の投資対象と特徴

初心者であっても手軽に始めることができるオススメの14種類の投資商品を紹介します。「リターンとリスク」の大きさも各々5段階で表示していますので、投資商品を選択する上でご参考にしてください。

1.株式投資

リターン★★★ リスク★★★

どのような種類あるいはテーマ性のある株式を選択するかによって変わりますが、人気のITなどの注目業種を選んだ場合にはリターンが大きく望める代わりに株価暴落のリスクも抱えることにもなります。また、老舗の安定した企業を選ぶ場合では、短期で大きなリターンの獲得はさほど見込めませんが、投資リスクがその分軽減されていると言えます。

株式投資にはファンダメンタル(企業業績・為替・経済情勢)の分析やトレンド(上昇・下降・横ばい=ボックス相場など)を読む力を養わなければなりません。しかしながら、この道のプロでもありませんので長短の移動平均線などチャート(テクニカル分析)を見て分析ができて将来の売り(デッドクロス)と買い(ゴールデンクロス)のタイミングが掴めれば良しというわけでもありません。そして、株式投資がこうじてギャンブルとならないようにも注意しましょう。

2.個人向け国債

リターン★ リスク★

日本の個人向け国債に投資する場合、日本のデフオルトリスク(日本国の破たん)は限りなく小さく最初からリターンが保証されているようなものなので、リスクが少ない金融商品と言えます。

しかし今流行りのNISA口座も使えません。どちらかと言うとリターンは少ないですが、手堅く少額の利益を得たい人にはオススメしたい投資商品の一つです。ただし、今の日本の国債ではなく経済的な変動が激しい外国の国債に投資するときには、リターンもリスクも大きくなる可能性があるでしょう。

3.個人向け社債

リターン★★ リスク★

国債ほどではありませんが、社債も定期預金などよりは高いリターンがある程度保証されている投資商品と言えます。種類も多く、普通社債(SB、利息に差あり)や転換社債(CB、利息は低め、株式転換可能)・ワラント債(利息はSB並、株式購入には追加資金が必要)・電力債(安全度は高め)・劣後債(安全度は低め、利息は高め)などがあります。

有名企業の社債であれば人気も高く、注文開始と同時に完売してしまうことすら珍しくありません。ただし、個人向け国債のように1万円からの購入は不可で、50万円や100万円などの資金が必要です。高い金利だからと購入すると発行企業の破たん(信用リスク=デフォルトリスク)も懸念されますので注意しましょう

4.外貨MMF

リターン★★ リスク★★

外貨MMF(マネーマネジメントファンド)とは、外国の比較的短期の債券(社債やCP=コマーシャルペーパー・CD=譲渡性預金)に投資する投資信託の一種です。元本の保証はありませんが、株式投資と比べるとリスクは低いことが特徴と言えます。ただし、円貨で受取の際には対象通貨の為替相場の影響も受けますので、国内債券と比べるとリスクは多少高まるでしょう。

5.外貨(定期)預金

リターン★★★ リスク★★★

外貨定期預金には、先の外貨MMFと比べるとすぐに換金できない(原則;中途解約不可)という点と、金融機関にもよりますが手数料が高いという点にデメリットがあります。しかしながら、預金自体の利益(利息は「利子所得」)と為替による利益(為替差益は「雑所得」)を同時に得られるときには、思わぬ高利益が生じることもあります。

6.投資信託(ファンド)

例えば、100銘柄など複数の銘柄にまとめて投資するのが“投資信託”です。これは、1銘柄の株式や債券に投資をすることと比べ、リスクを多岐に分散できるというメリットがあります。また、運用のプロ(ファンドマネージャー)が銘柄や投資割合を決定してくれますので、投資初心者でも気軽に始められることもメリットの一つです。

しかしながら、販売会社(銀行・証券会社)によって異なる販売手数料がかかることや運用によって生み出された利益が全て投資家に還元されるのではなく、決算時に一定部分は信託報酬(運営管理費用)として委託会社(運用会社)・受託会社(信託銀行)・販売会社(銀行・証券会社)に支払われますので、投資家が受け取る利益がその分減額されるというデメリットがあります。

分配金には普通分配金(利益として課税)と特別分配金(利益ではなく元本取崩のため課税されない)があり、どちらも再投資型の選択が可能なファンドがあり、選択すると販売手数料無しで再投資が可能となるメリットがあります。

投資信託には、日経平均など市場の平均的な株価変動を指標(インデックス)に投資をする“インデックスファンド”と、これらの市場の平均的な株価(ベンチマーク)変動以上の利益を追求する“アクティブファンド”の2種類があります。ローリスクローリターン型の投資を目指す人はインデックスファンドを、ハイリスクハイリターン型の投資を目指す人はアクティブファンドを選ぶ方が良いでしょう。また、投資家によりリスク許容度の違いはありますので組み合わせて保有することも考えましょう。下記の組み合わせや投資資金の配分に至ってはなおさらです。

投資対象:国内株式

リターン★★★ リスク★★★

国内企業だけに運用する投資信託は海外ものと違い、リターンもリスクもそれほど大きくないという特徴があります。日経平均株価などの影響は受けますが、為替相場にはそこまで強い影響を受けませんので、比較的安定した利益を見込めます。

投資対象:国内債券

リターン★ リスク★

株式よりもさらにローリスクローリターンな投資と言えば、国内債券の投資信託です。こちらは、急激に価格が上昇することは少ないですが、元本割れは防ぐことができます。保有資産を総合的にみる時には「国債など日本の債権を既に保有されている方」はあえて組み入れる必要性はないと言えます。

投資対象:外国株式

リターン★★★★ リスク★★★★

海外の株式は、日本の株式と比べると株価の値動きの幅が大きいことが多いです。そのため、リターンも大きく期待できるもののリスクも大きくなってしまうという特徴があります。また、為替の影響を受けますので、株価自体は上昇していても、購入時よりも円高が進んでいると利益が少なくなる(場合によってはマイナスになる)可能性があります。

投資対象:外国債券

リターン★★★ リスク★★★

株式よりもさらにローリスクローリターンな投資と言えば、国内債券の投資信託です。こちらは、急激に価格が上昇することは少ないですが、元本割れは防ぐことができます。保有資産を総合的にみる時には「国債など日本の債権を既に保有されている方」はあえて組み入れる必要性はないと言えます。

7.iDeCo(個人型確定拠出年金)

リターン★★★ リスク★★

人気の確定拠出年金の個人版です。老後資金を積み立てて投資するiDeCo(イデコ)。元本が保証されているわけではないのでリスクは高いものの、iDeCoで積み立てた分が所得から控除されるというメリットや、運用中に得た利息や利益に課税がされないため利益等が全額受け取れるというメリットがあります。iDeCoに投資した掛金は所得とはならない為に所得税や住民税がその分お得です。

8.ETF(上場投資信託)

リターン★★★ リスク★★★

指数に連動した動きを目指すのはインデックスファンドと同じですが、外国の投信会社でさえも力を入れているETFは株式市場にファンド自体が上場しているため、通常の投資信託と比べると売買をスピーディに実施できるというメリットがあります。

投資に流動性を求める場合には、投資信託より適した商品と言えるかも知れません。また、ETFのようにあまりその運用面で大差がないものについては投資信託と違い販売手数料が少しでも安い販売会社を選び、信託報酬も安いETFで運用するのも良いでしょう。

9.J-REIT(不動産投資信託)

リターン★★★ リスク★★★

不特定多数の投資家を募って商業施設やオフィスビルなどの運営を行い、賃料収入や売却益などを投資家に還元する上場不動産投資信託をJ-REITと呼びます。J-REITは証券取引所に上場しているため現物投資と違い、流動性(換金性)にはすぐれていますが、株式同様に価格の変動リスクにさらされます。

しかし、多くの投資家から資金を集めて運用しますので、個人ではなかなか手が届かないような大型物件の運営ができるというメリットがあり人気を集めています。現物での不動産投資は苦手という方は、分散投資でのラインナップの一つに加えるのも良いかもしれません。

10.不動産投資

リターン★★★ リスク★★★

収益物件によって利益(家賃収入-諸経費=インカムゲイン)を得たり、値上がりしそうな不動産を購入してタイミングを見計らって売却益(キャピタルゲイン)を得たりするのが不動産投資です。運営するときに手間や費用がかかってしまうというデメリットはありますが、投資する金額が大きい分、多大な利益を得られることもあるというメリットもあります。

また、災害や賃料収入の減少・空室率の増加など、不徳の事態でもある程度の想定が可能であるので、ミドルリスクミドルリターンの投資方法と言えます。

よく賃貸アパートなどに特化するケースがありますが、事業的規模で行うのであれば、場所や不動産を活用する用途を集中せずに行うことによってリスクを分散できます。

11.日経225先物取引

リターン★★★★★ リスク★★★★★

日経平均株価指数の先物取引(予約して決めた期日に予約時の価格で購入する取引)のこと。レバレッジを効かせることができるため、少額でも多大な利益を得られるというメリットはありますが、反対に少額であっても多大な損失を被ることもありますので、初心者はレバレッジを低く設定するようにしましょう。

12.FX

リターン★★★★★ リスク★★★★★

為替の売買で利益を得るFXは一時ブームとなりました。日経225先物取引と同じくレバレッジを効かせることができましたので、当初は許されていた大きなレバレッジで話題になりました。FXは少額で多大な利益を生むこともあれば、あっという間に多大な損失を生むこともあります。株式投資はどんなに悪い結果になったとしても投資した株式が無価値になるだけです。しかし、FXは一定額の証拠金(保証金)を担保に元手の数十倍、数百倍もの外国通貨の売買取引を行うことからその損失額も肥大して、元手の数倍~数百倍もの損失を抱えてしまうことにもなります。チャレンジされる方は慣れないうちはレバレッジを下げて投資するようにしましょう。

取引単位は1ロットで、1万通貨単位が一般的です。米ドルだと1万米ドル(日本円で1$=100円の場合は100万円と大きい)となります。取引できる1ロットが100通貨単位であれば少額ですが、10万通貨単位のFX会社もありますので事前に確認をしましょう。

FXでは通貨を保有している間は「ポジションを持つ」と言いますが、初心者がつまずく点で言えばこのポジションと決済の認識の違いが挙げられます。投資信託など他の投資と同じく決済をしない限り損益は確定しません。例えば、ポジションが買い注文の場合は売る事で決済され、逆に売り注文の場合は買い戻す事で決済となります。

13.仮想通貨

リターン★★★★★ リスク★★★★★

新しい投資商品の1つに、仮想通貨が挙げられます。仮想通貨はFXに代わって一世風靡しましたが市場がまだ安定していないこともあり、莫大な利益が出ることもあれば、運営元が突然破産して大きな損失を被ることもありました。こうした流行りの投資にはすぐに手を出せないものです。分かりにくい運営元の信用度も考慮しつつ、慎重に投資していきましょう。こんなにも人気が上がった理由は、FXとの違いから見えてきます。FXは外国為替が2%程度と低めに動くのに比べて、仮想通貨は20%を超える高めの動きがあるため、この激しいボラティリティ(価格変動率)の差でFXよりも人気が高くなったのです。

このボラティリティなどを理由に米国の証券取引委員会(SEC)も仮想通貨のETF化を認めていません。ただし、今後の仮想通貨の世界の流れには注意しておくと良いでしょう。

14.金

リターン★★★ リスク★★★

第二次世界大戦前から有事の金と言われて高齢の方も保有している金。実在する“金(ゴールド)”への投資は、投資の中では比較的古典的な運用方法と言えます。金の供給量は急激に増減するものではありませんので、乱高下を繰り返す仮想通貨のような不安定さがないことはメリットと言えます。しかし、元金が保証されていないことやインカムゲインがないことなどのデメリットも併せ持っています。

それでは自分に最適な投資商品はどれ?

投資スタイルは十人十色ですので人によって異なります。3つの基本スタイルを紹介しますので、どのスタイルが自分に合っているのか吟味してください。また、今回ご紹介した投資商品の選択や下記の投資スタイルA,B,Cなども投資者の自己責任で行うものとご理解ください。

短期間で積極的に利益を狙う

期間1年以内の短期で利益を狙うスタイルには、株式投資やFX、J-REITなどがあります。いずれも短期で利益を目指すわけですからリターンも大きく期待できるものの、リスクもその分、大きくなってしまいます。

中期間でとにかく資産を増やしたい

1年を超えて利益を目指すスタイルには、個人向け国債や個人向け社債などがあります。いずれもリスクが少ないというメリットがありますが、その分、リターンも少ないです。

中期間で積極的に利益を狙いたい

10年以内に積極的に利益を目指したいという方には、投資信託やETF、J-REITなどが適しています。いずれもリターンはミドル(中程度)ですが、リスクもミドルになります。

長期間でしっかりと資産形成をしたい

20年以上をかけてじっくりと確実に資産形成を実現したいという人には、不動産投資やiDeCoがオススメです。短期的な利益を追求しないため、リスクを抑えることができ、時間をかけて投資するため、リターンもミドル以上が見込めます。

初心者が普段より意識するべき『投資の心得3カ条』とは?

これからも新しい投資商品が出てくるでしょうが、投資初心者は次の『投資の心得3カ条』を意識して投資を実施してみてください。

A.焦らずに具体的な目標設定を持つこと

「とにかく投資すれば良い」という漠然とした考え方では、手数料や手間ばかりがかかって、きちんとした利益はなかなか得られなくなります。「10年で資産を1.2倍に2割増やしたい」「不動産収益を年間で最低300万円は得たい」といった具体的、かつ実現可能な目標を設定するようにしましょう。

B.びくともしないリスク管理が大切

リスクを最小限に抑えるために、リスク管理をめてから投資を実施しましょう。例えば、株式投資や投資信託などの元本が保証されていない商品に投資するときは、損切りする価格(これ以上値が下がったら売却するという基準価格)を最初に決めておくことが大切です。また、益切りする価格(これ以上値が上がったら売却するという基準価格)もあらかじめ決められればベストです。

C.勝ちにこだわらないこと

常に利益を上げ続けることは、投資の専門家でも実は不可能です。1つ1つの投資で目先の利益を挙げることにこだわるのではなく、資産運用は長期的な期間で見て資産が増えているかに注目して行いましょう。

投資のまとめ

今回は14種類の投資商品と3つの投資スタイルをご紹介して来ました。投資スタイルや投資家自身の性格によっても、適する投資商品は異なります。ご自身にもっとも適した投資商品を選び、賢く資産を増やしていきましょう。中でも、NISA口座(少額投資非課税制度)枠を利用すれば、株式の売買益やその配当金(受け取り方法が株式数比例配分方式に限定)・投資信託などの分配金や売却益への課税がされないところから人気があります。

大人(年間120万円)だけでなく、こどもNISA(同80万円)も含め家族で利用することも可能。もちろん、NISA口座(枠)は上場J-REITやETFにも利用できますが、折角ですので自分にとって一番利益の出やすい投資商品(金融商品)に利用してはいかがでしょうか。

選択した投資商品を上手く運用することで、個々人の夢の実現への近道となると良いですね。

監修:木村 正人(ファイナンシャルプランナー)