個人向け国債の基礎知識

個人向け国債の基礎知識についてご紹介します。

個人向け国債とは?

個人向け国債とは、国が発行する債券である国債のうち、個人が運用しやすいように工夫されたものです。

債券とは、国、地方公共団体、企業などが必要な資金を借り入れるために発行する有価証券です。債券を所有することで、定期的に利子を得ることができます。また、満期を迎えれば、元本の返済を受けることもできます。

国債を購入するということは、国に対して一定期間資本を投資することになります。それによって他の債券と同様に定期的に利子を得ることができ、満期になれば元本も戻ってきます。

【出典】財務省:個人向け国債https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/guide/

普通の国債とどう違うの?

個人向け国債の発行開始は2003年3月からです。

個人向け国債と普通の国債の違いは、個人向け国債は元本割れしないことです。普通の国債は債券市場で売買されており、市場の状況によっては値下がりして元本割れする場合もあります。

元本割れによる損失を防ぐために複雑な利回りを計算して債券の取引を行うことは、個人の投資家にとっては難易度の高い行為になります。

一方、個人向け国債は実質元本割れしないことを国が保証しているため、個人投資家が運用しやすくなっています。

また、普通の国債は購入単位が5万円ですが、個人向け国債は購入単位が1万円に設定されているため、個人が投資しやすくなっています。

【出典】財務省:国債とはhttps://www.mof.go.jp/jgbs/summary/kokusai.html

固定3年満期型

個人向け国債の種類は、固定3年満期型、固定5年満期型、変動10年満期型があります。

固定3年満期型は、満期までの期間が3年で、その間に金利が変動しない固定型の国債です。発行時の利率が3年後の満期まで変化しないため、最終的な投資結果を発行された時点で簡単に把握することができます。

投資期間が3年という比較的短い期間になっているので、気軽に資産運用を始めるのに適しています。

【出典】財務省:「固定3年」商品概要https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/kotei3/

固定5年満期型

固定5年満期型は、満期までの期間が5年で、その間に金利が変動しない固定型の国債です。

満期までの5年の間に金利が変動しないので、国債が発行された時点で投資による利益を把握することができます。

満期までの期間が5年と長くなっているので、経済環境の変化による金利の変動を気にすることなく、比較的長期に渡って計画的に資産運用をしたい場合に有効な選択肢になります。

【出典】財務省:「固定5年」商品概要https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/kotei5/

変動10年満期型

変動10年満期型は、満期までの期間が10年で、半年毎に金利が見直される変動型の国債です。

経済環境の変化によって半年毎に適用利率が変化するので、期間毎に受け取れる利子の金額が変動します。

経済情勢によって金利の水準が上昇した場合は受け取れる金額が増加しますが、逆に金利が低下した場合は受け取れる金額が減少するリスクがあります。

金利は際限なく低下するわけではなく、最低金利保証(0.05%)があります。

【出典】財務省:「変動10年」商品概要https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/hendou/

個人向け国債のメリットとは

個人向け国債のメリットをご紹介します。

定期預金に比べ高い金利(利回り)が期待できる

個人向け国債は、金融機関などの定期預金に比べて高い金利が期待できます。

日銀によるマイナス金利政策などの影響で低金利が続いている状況においては、金融機関の定期預金を利用しても、高い金利を望むことは難しくなっています。

変動10年型の国債を運用すると、金利が低下するリスクはあるものの、最低金利保証を受けつつ経済情勢の変動による高金利を期待することもできます。

少額から投資できる

通常の国債は最低価格が5万円で、5万円単位で購入する必要があります。一方、個人向け国債は最低価格が1万円で、1万円単位で購入することが可能です。

少額から投資することが可能なので、初心者が投資を始める場合にも適しています。

元本を国が保証

個人向け国債は、満期時の元本の払い戻しについて、国が責任を持って実施するのが特徴です。景気の動向によって他の金融商品の金利が変動しても、個人向け国債の元本部分の価格は変化しません。国の保証に基づく安定感が、個人向け国債の特徴です。

個人向け国債のデメリット

個人向け国債のデメリットを見ていきます。

株や投資信託などに比べると利回り(期待リターン)が低い

個人国債は元本保証などによって安定している反面、株や投資信託に比べると利回りは低くなっています。低いリスクで安定を重視する場合には適していますが、ハイリターンを望む場合には不向きです。

満期を迎える前では「価格変動リスク」がある

個人向け国債は満期が到来すると、購入時の価格で国が買い取ってくれます。

注意点としては、満期を迎える前に万が一国が破綻した場合は、購入時の価格での買い取りに国が対応できない可能性があることです。

可能性としてはあまり高くはありませんが、満期を迎える前に価格変動のようなリスクがあるということです。

国が破綻した場合には元本割れ・利息が支払われない可能性がある

個人向け国債の大きな特徴は、国が責任を持って元本の保証と利息の支払いを行なっていることです。国が保証をしていることから、万が一国が破綻した場合には、元本割れや利息が支払われない可能性もあります。

個人向け国債はどこで購入できるのか

個人向け国債はどこで購入できるのかをご紹介します。

購入できる場所

個人向け国債は、ゆうちょ銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、信用金庫、信用組合、証券会社、農業協同組合などの窓口で購入することができます。

いくらからはじめれるのか

個人向け国債は1万円以上から1万円単位で購入することができます。

個人向け国債購入のシミュレーション

財務省の個人向け国債のホームページでは、個人向け国債の購入のシミュレーションを行うことができます。

変動金利型10年などの商品の種類、国債の回号、購入金額を入力するだけで、利子の支払い時期、適用金利、最終的に受け取れる利子の総額を簡単に把握することができます。

【出典】財務省:受取利子シミュレーションhttp://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/simu/purchase/simup10.php

中途解約の方法

個人向け国債の中途解約の方法についてご紹介します。

中途解約も可能だが、ペナルティがある

満期が到来する前に途中で個人向け国債を中途解約(中途換金)した場合、中途換金調整額が発生します。

中途換金調整額とは、個人向け国債を満期の前に解約した場合、「解約直前の2回分の利子(税引前) × 0.79685」が元本と経過利子相当額から差し引かれるものです。

方法1:個人向け国債を国に買い取ってもらう

個人向け国債を中途換金するためのオーソドックスな金融商品のリスクを判断する基方法は、国に買い取ってもらうことです。

インターネットや金融機関で買い取りの手続きをすると、中途換金調整額を差し引いた残額が、4営業日程度で指定の口座に入金されます。

個人向け国債は1万円単位で中途解約できるので、自分の好きな分だけ調整して解約することが可能です。

方法2:個人向け国債を他人に譲渡(売却)する

中途換金調整額の負担なしで個人向け国債を換金する方法は、他人に譲渡(売却)することです。個人向け国債は、個人間であれば他人に譲渡することが可能なので、買い手を見つけることができれば換金することが可能です。

よくある質問

個人向け国債についてのよくある質問をご紹介します。

銀行預金と比べて金利はどうちがうの?

個人向け国債と同様に、基本的に元本割れしないものとして、金融機関の定期預金があります。

日銀主導による低金利状態が続いている現状(2018年10月現在)においては、大手のメガバンクの定期預金の金利は軒並み0.01%程度です。

個人向け国債は、変動型であっても年率0.05%の金利が保証されています。

変額保険と比べてどちらがいいの?

変額保険とは、保険会社が顧客から預かったお金を運用し、その運用実績によって顧客が将来受け取る保険金の額が増減する保険です。

変額保険は運用がうまくいけば将来受け取れる額が増大しますが、最低限の基本金しか保証されないというリスクがあります。

個人向け国債は国が元本を保証してくれるので、安定感があります。

本当に低リスクなのですか?

金融商品のリスクを判断する基準の1つは、元本割れの可能性があるかどうかです。

株式や投資信託など、多くの金融商品は元本割れのリスクがあります。一方、個人向け国債は元本を国が保証するため、元本割れの可能性は非常に低くなっています。

上記の観点からは、個人向け国債は低リスクの金融商品と言えます。

国が破綻した場合はどうなるのでしょうか

個人向け国債は国が元本を保証してくれるのが特徴ですが、その国が破綻した場合はどのような影響があるのでしょうか。

財務省による国債についての回答によれば、日本が財政危機に陥った場合、政府によるさまざまな支払いに支障が生じる恐れがあるとのことです。

国が破綻した場合、金融商品だけでなく様々なものが影響を受けることになるため、個人向け国債もその影響を受けると考えておいたほうが良いでしょう。

【出典】財務省:日本が財政危機に陥った場合、国債はどうなりますかhttps://www.mof.go.jp/faq/jgbs/04be.htm

最後に

個人向け国債は、国が発行する債券である国債を個人が運用しやすくしたものです。購入すると定期的に利子を得ることができ、満期になれば元本の返済を受けることができます。

個人向け国債は3種類ありますが、国による最低金利の保証と、満期時の元本返済の保証という安定感が共通のメリットです。

デメリットとしては、利回りが高くないことや、万が一の国の破綻によるリスクなどがあります。抜群の安定感のもとで資産運用ができることが、個人向け国債の大きな魅力です。

監修者:有田 宏(ファイナンシャルプランナー)