継続している不動産投資の規模が大きくなってくると、個人としてではなく法人を設立して運営した方が節税になるのではないかと考えられる方も多いのではないでしょうか。家賃年収が一定金額を超えた時、経費が多くかかってきた時など、法人化を考えるタイミングは人によっても異なります。今回は法人化のメリットや、法人化を考えるべきタイミングについてまとめてみました。不動産投資をすでにされている方、これから始めようと思っている方も、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資で法人化をするメリット

不動産投資において法人化する事によって得られるメリットをまとめていきます。

経費を多く計上できる

法人化することによるメリットの1つに節税があります。不動産投資において個人で認められる経費と、法人で認められる経費では範囲が大きく異なります。法人の場合、業務として使った費用は全て経費として認められるというメリットがあります。

個人の場合は、収益を得る為の必要経費のみ経費として認められるのに対して、法人の場合、法人として行った業務活動がほぼ経費化されます。交際費などで一部制限があるものの、個人に比べて経費の範囲が広くなりますので、節税効果が大きくなると言えるでしょう。

身内に給料を与えて節税できる

法人化をする事で、自分への報酬だけでなく、身内に給料という形で報酬を支払う事もできます。この身内への報酬は法人にとっては経費になりますので、不動産投資によって得られた所得が減ることになります。

報酬を受け取った身内にとっては個人所得のアップとなりますので、その分の所得税と住民税を支払わなくてはなりません。ですが、個人の所得税に対しては給与所得控除がありますので、控除後の個人所得の税率が法人より低ければ、その分節税できる事になります。

所得のコントロールが可能になる

個人として不動産投資を続けると、不動産所得と給与所得とが合算される為、どうしても所得金額が多くなり税率も比例して上がっていってしまいます。所得を法人と個人とで分散する事により、所得のコントロールができる事も法人化のメリットになります。

信用が高まり、融資を受けやすくなる

個人で受けられる融資には限界があります。ですが、法人として事業活動を進めていく事によって信用が高まり、大きな金額の融資や資金調達がしやすくなるといったメリットもあります。不動産投資を長く続けていくのであれば、やはり個人では限界があるので法人化をしていく必要があるでしょう。

法人として2期、3期と継続していく事によって、金融機関から良い評価をもらえるようになれば、高額物件や複数の融資を受ける事も可能になっていくでしょう。

物件を法人所有にすることで、相続税対策になる

個人で相続が発生した場合、不動産投資によって所有していた不動産の評価額に対して、相続税が発生します。そして、不動産が1つの場合や、複数所有していても評価額が大きく異なる場合など、相続の分割で揉める可能性も出てきます。

一方、法人で所有している不動産に対しては、移転登記の必要もなく相続税がかかりません。また相続が発生する前から、身内に役員報酬という形で資産を移転する事も可能になる為、生存中から相続対策ができるのもメリットの1つです。

不動産投資で法人化をするデメリット

不動産投資において法人化をする事は、タイミングによってはデメリットもあります。法人化の前にきちんと確認しておきましょう。

所得が少ないうちは節税効果がない

投資規模が小さいまま法人化してしまうと、かえって収益を圧迫する可能性もありますので、利益とコストをよく計算してから検討するようにしましょう。

法人を維持しているだけでも費用はかかっていきます。不動産投資の規模が小さい時は利益がほとんど残らない、もしくは赤字になってしまう事もありますので、節税効果が少ない場合もあります。

赤字でも税金がかかる

法人の場合、個人と異なり赤字であっても法人住民税が課税されます。年間約7万円の法人住民税が課税されてしまうので、赤字であっても支出が増える事になるので注意が必要です。

利益を増やす為の法人設立が、逆に利益を縮小させる原因になってしまっては元も子もありません。

帳簿の付け方が個人事業主のときよりも複雑化する

個人事業主に比べると、法人の方が帳簿の付け方が複雑になります。今までなかった業務が増えるので活動に支障がでないように、外注先や会計ソフトの利用法を学ぶなど対策をしておいた方が良いでしょう。

法人を設立してから準備を始めるのは大変なので、早めに対策をしておく方が良いでしょう。

法人化の手間と費用がかかる

法人化には登記費用などで20~30万円程度が必要になります。また、法人化する為に書類を作成する必要もありますし、役所に出向く時間の確保も必要になります。

また個人で不動産投資をスタートしている場合、個人から法人へ所有権を移転する必要も出てきます。そうなると所有権移転登記の費用、不動産取得税なども費用として考える必要があります。このような手間と費用もデメリットの1つと言えるでしょう。

法人化を考えるタイミングとは

法人化を考える上で、どのようなタイミングがあるかをまとめていきます。

所得が900万円を超えてきた時

個人での所得の総額が900万円を超えてきたら法人化のタイミングと言えるでしょう。この場合、不動産投資だけでなく給与所得などの合算の金額になります。

個人の所得税率を確認すると、所得900万円以下だと税率23%なのですが、所得900万を超えると33%になってしまいますので、法人化する上での目安にして検討するのが良いでしょう。

今後も不動産投資を拡大したいと考えた時

不動産投資の規模が小さい間は個人名義でもさほど支障はありませんが、規模を拡大していくのであれば法人の方がメリットが大きいでしょう。先にも述べましたが、法人化すると設立費用やランニングコストがかかりますので、小規模であれば個人で所有していた方が有利な事もあります。

しかし、規模を拡大していく場合、個人所有だとお勤めの方は給与所得と合算された上で累進課税の税率が決まってくるので、せっかく不動産投資で利益を増やしていっても、高い税率が待っています。

規模の拡大を検討しているのであれば、法人化をした上で進めていくのが良いでしょう。

家族を役員にして報酬を支払える場合

不動産投資で法人化をするメリットでも記載をした通り、役員報酬を身内に支払う場合、給与控除などを活用する事ができます。その為、家族を役員にして報酬を支払える状況になった際も法人化のタイミングと言えるでしょう。

脱サラをして不動産投資業に専念したいのであれば法人化は必須

不動産投資をメインの事業にして、将来的に脱サラを考えているのであれば、最初から法人化していくのが良いでしょう。少なくとも、脱サラをできるくらいの収益が上がっているのであれば、法人化は必須と言えます。

当然、開始直後は設立費用やランニングコストが重く感じますが、不動産投資を拡大していけば、その負担割合は少なくなっていきます。

ある程度の規模になってから個人から法人へ移行するとなると、所有権移転の際に不動産取得税や登記費用がかかる為、所有戸数が多ければ多いほど費用が膨らんでしまいます。

前述した通り、法人として不動産投資の規模を拡大していく事は、金融機関からの評価上昇にも繋がりますので、 不動産投資で脱サラを目指すのであれば、法人化は早い方がお勧めになります。

最後に

いかがでしたでしょうか。今回は、不動産投資において法人化すべきタイミングとメリット、デメリットについてまとめてきました。不動産投資を拡大していくならば法人化はメリットが大きいです。どのタイミングで法人化をするかをきちんと検討し、さらなる規模拡大を目指していきましょう。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)