不動産投資を考えている人ならば一度は耳にしたことがあるであろう「サブリース」という言葉。物件購入後はどのように管理するかをオーナーが決めなければなりません。その管理方法のひとつとしてサブリースがあげられます。それにはもちろんメリット・デメリットがあるのでそれらを踏まえた上で自分に合った管理方法を選んでいきましょう。

サブリースとは


不動産投資は物件を購入したら終わりではありません。その後、その物件をどのように管理維持していくかの方が重要です。管理といっても大家さんとしてどのように運営していけばいいのかわからないという人にぜひ知っておいてもらいたいサブリース。これは、自分の所有物件をサブリース会社に一括して借り上げてもらうシステムのことで、比較的安定的に運営が行えます。しかし、その契約内容は様々なので、注意点も踏まえて考えていきましょう。

サブリースはどうやって頼めばいいの?

管理会社の中にはサブリースという形態を行なっていない場合もあります。そのため、管理条件のついた物件などは、管理会社に事前に相談しておく必要があるでしょう。
新築の場合は、施工業者がそのまま管理運営をする場合がほとんどです。中古の場合は仲介業者にそのまま管理をお願いすることになる場合が多いので、そちらも購入前に相談しておく必要があります。

サブリースの契約期間は?

管理会社によって様々ですが、2年更新などが主流です。まめに更新しなければならないのは、家賃下落などがあるからです。月日が経ち入退去が繰り返されていく中で、建物の価値は当然下がっていきます。それに応じて家賃も変えていく必要があります。家賃が変わればサブリースとしての契約内容も変わってくるため、毎年更新や2年更新といった手続きが必要になるのです。

サブリースの費用はどのくらい?

管理会社に賃貸管理を委託する場合、相場は家賃収入の5%で大体統一されています。清掃費用が大体2〜3%程度なので、一般的な一部委託管理の場合であれば、管理会社への支払いは1割未満となります。しかし、サブリースの場合は家賃保証や空室保証などの付加価値が多数付いているため、その費用は家賃収入の1割から3割となります。

サブリースはどういった内容?

サブリースとは、物件の所有者であるオーナーと、その物件を一括借り上げする管理会社が契約し、その管理会社が入居者と賃貸契約を結ぶ形態のことをいいます。不動産投資をしているオーナーの大半はサブリースではなく、一部を管理会社に委託して運営を行っています。サブリースの場合は、一部ではなく完全委託という形態になります。その管理内容を見ていきましょう。

  • 管理委託をしてくれる

不動産会社の行う管理には大きく分けて2つあります。建物管理と賃貸管理です。建物管理とは物件の掃除や修繕工事の提案などで、賃貸管理とは入居付けや家賃回収などです。それら2つに加え、入居者からのクレーム対応など様々な管理を全て委託することができます。

  • 家賃滞納保証してくれる

入居者からの家賃が回収できなかった場合、管理会社が入居者にかわって家賃を立て替えてくれます。毎月ローンの支払いのあるオーナーにとって、家賃収入が滞ることは命取りになりかねません。さらに、オーナー自らが滞納者と交渉する必要がないのも大変助かります、

  • 空室を保証してくれる

不動産投資は株取引などに比べると、ある程度先の見える投資なのですが、空室リスクに対しては全く予測できません。常に満室で稼働してくれれば、ローン返済しながら安定的な運用ができるのですが、空室が出てしまうと家賃収入がなくなるだけでなく、次の入居付けのための手数料や室内メンテナンス費用などが発生します。そんなダブルパンチを軽減してくれるのが空室保証です。次の入居付けの準備はオーナー負担ですが、その間も家賃分は保証してくれます。

サブリースのメリット


不動産投資の一番のリスクとされる空室や滞納により、一次的にでも収入がストップすることはローン支払いを抱えるオーナーにとっては大問題です。また、オーナーとはいえ不動産の管理や運営など全く分からないという人も多いことでしょう。そのような不安を抱えるオーナーにとってサブリースはどのようなメリットがあるのでしょうか。

空室リスクと滞納リスクは管理会社が責任を持ってくれる

不動産投資における最大のリスクである空室と滞納。どちらも収入に直結するため、オーナーにとっては大変気になる部分です。この2つをしっかりと保証してくれるので、不動産投資初心者や自分の管理手法に自信がない方、本業が忙しい方や遠方に住まわれている方などには、大きなメリットとなるでしょう。

管理業務の知識がなくても安心

不動産投資をしている人の中に管理業務の内容をしっかりと理解している人はどれくらいいるでしょうか。おそらくそんなに多くはないはずです。なぜなら、ほとんどのオーナーが不動産会社に管理を委託しているからです。やはり、その道のプロに勝るものはありません。そのため、オーナーが管理業務の内容に詳しい必要はありませんが、オーナー自身で信頼できる管理会社を選ぶことが大切になってきます

トラブル対応は全て管理会社持ち

衣食住の住を担う不動産投資。入居者にとって住環境はとても大切です。そのため、騒音などの近隣トラブルから、水漏れや設備の不具合といった様々なクレームの声があがります。その対応を迅速かつ的確に行うことで、入居者の安心と信頼を得ることができます。そのような面倒で大切な役割も管理会社が担ってくれるのです。

確定申告がしやすくなる

通常、オーナーは入居者と直接契約をするため、入退去の度に新たな契約を結びなおさなければいけません。その度に金額が変わったり、費用における勘定項目が増えたりします。しかし、サブリースの場合は、管理会社への委託料の中に全ての費用が含まれており、その分を差し引いた金額が毎月オーナーに入ります。つまり、オーナーは管理会社からもらう金額が全てのため、細かい勘定項目を必要としないのです。そうなると、税理士を入れなくても、オーナー自らが簡単に確定申告することかできます。

サブリースのデメリット


サブリースの契約内容は所有する物件の内容やサブリース会社によって様々です。契約の内容によってはオーナーに不利になる場合もあります。空室や滞納、入居者からのクレームなどの保証として家賃収入の何割かが天引きされてしまいます。収入の部分だけでなく、契約を更新しながら長く付き合っていくには様々な壁があります。オーナーにとって不利になりかねないサブリースのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

保証料で家賃分が引かれてしまう

サブリースは言ってみれば不動産投資のリスクの部分に保険をかけるようなものです。そのため、掛け金にあたる管理会社への支払いが大きくなります。キャッシュフローといわれる手取りの収入額が大幅に減少してしまうのです。

入居者は様々

通常、オーナーは入居者と直接契約を結ぶのですが、サブリースの場合、入居者は管理会社と契約を結びます。そのためオーナーは自分の所有物件に住んでいる入居者情報がわからないことになります。オーナーには入居者との契約に対して口を挟む権利はないため、様々な属性の入居者が集まることになります。そうなると、住民トラブルなどのリスクが上がってしまう可能性がでてきます。

管理会社が潰れてしまう場合も

賃貸管理のみを管理会社にお任せしている場合、クレーム対応が遅かったり、入居付けが弱かったりすると、オーナーさんはすぐに管理会社を変えたりします。しかし、サブリースの場合は入居者との契約が管理会社になっているため、簡単に契約を解除することができません。また、契約の途中で解約を申し出ると違約金を請求されたりもします。さらに、全面的にお願いしていた管理会社が倒産という事になれば、安定的に入っていた収入が一気に滞ってしまうリスクもあります。

サブリースを更新するたびに入るお金も減る

建物は減価償却していくため、家賃相場もそれに合わせて下落していきます。かなりの好立地や不動産バブル期などには上がることもありますが、ほとんどの場合、少しずつですが下落していきます。そのため、サブリース契約を更新するたびにもらえるお金も減っていくのです。

サブリースの注意すべきポイントは?


サブリースのメリットとデメリットを踏まえたうえで、更に契約する際に注意しておきたい点をいくつか挙げてみます。契約書には細かく注意書きがされていたり、さらりと説明をされていたりするかもしれない内容ですが、それが実際にどういった状況で効力を成し、オーナーにとってどのように不利になるのかを見ていきましょう。

全額家賃保証がつくわけではない

全額家賃保証といっても契約期間を更新すれば、その時の経済状況や周辺の家賃相場などに応じて家賃が変わっていくのは当たり前の話です。当初契約した家賃分が生涯保証されると勘違いしないようにしましょう。

新築の勧誘がある

新築物件は人気が高く、当初数年間は入居付けに困ることがありません。立地や建物に大きな問題がない限り、家賃も2.3年は新築時と同額で募集が可能です。つまり、空室リスクが低い物件といえるので、サブリースを行う管理会社からの勧誘が増えるのです。
更に、土地を所有している人に対しては、新築物件の建築からその後のサブリースによるアパート経営の提案を行い、建築費用と合わせてサブリース契約料を確保しようとするため勧誘も強くなります。

解約のトラブルには気をつけよう

サブリース会社との契約は双方にリスクがあります。空室が多ければサブリース会社の負担は大きくなりますし、入退去が全くなければオーナーはただ高い保証料を払っていることになります。そのため、契約の解除には違約金が発生するケースが多々あります。また、入居者との契約はサブリース会社が行なっているため、入居者との関係上もあり、解約はややこしくなります。

家賃が保証されない期間もある

サブリース会社によって期間はまちまちですが、新築時と退去後の数ヶ月は家賃が保証されない期間というの場合があります。その期間に空室があった場合、実質の収入が減ることになります。退去後の空室時に家賃が保証されないのは、家賃保証をつけている意味を疑ってしまいます。半年も一年も空室が続くのなら、免責期間を超えればと保証してくれるのでしょうが、そこそこの優良物件であれば半年も空室が出ることは少ないでしょう。

修繕費用はオーナー持ちということも

契約内容にもよりますが、入退去に伴うメンテナンス費用や外壁や屋根の防水といった大規模な修繕費用は、オーナー負担になることが多々あります。もちろんこれは物件を維持していくために必要不可欠なものです。通常であればオーナーが知り合いの施工業者に依頼して費用を抑えたりするのですが、サブリースの場合はサブリース会社が施行業者を特定したり、高い見積もりを強制することがあります。提案を受けるか受けないかで解約に追い込まれるケースなどもあります。

オーナーが賃料減額に応じない場合に契約解除を迫られる場合がある

基本的に家賃はオーナーが独断で決めることができます。同じマンションの同じ間取りでも家賃が違ったりするのはそのせいです。入居が決まらなければ家賃を下げるのも致し方ありませんが、簡単に家賃を下げてしまうと物件価値がどんどん下がっていきます。不動産の実勢価値はよく利回りで語られます。利回りは家賃収入に対する物件価格で弾きだすため、ベースとなる家賃収入が高ければ自ずと物件価格も高くなるのです。

そのため、オーナーは簡単に家賃を下げたくないと考えるのですが、サブリース会社は空室保証分が赤字になるので家賃を下げてでも入居者を募りたいと思うのです。そのため、オーナーが賃料減額に応じない場合に契約の解除を迫られることもあるのです。

家賃が下がっても保証料は払わなければならない

新築で空室リスクもなく、高い賃料が取れる間も保証料を払わなければいけないし、賃料か下がったとしてもそれに準じたパーセンテージの保証料を支払わなければいけないサブリース。契約書をよく見ると、賃料や修繕など至る所にサブリース会社の提案を受けなければ解約するといった趣旨のことが書かれていたりします。更に解約には数ヶ月分の家賃が違約金となっている場合もあるようです。

不動産投資における一番のリスクともいえる空室。そのリスクを回避する方法としてのサブリースですが、賃貸経営の全てを任せてしまうことになるため、一般的なリスクやメリットだけでなく、自分にとってのメリットとデメリットをよく考える必要がありそうです。
本業が忙しいからお任せしたいと思えばサブリースもいいかもしれません。ただし、契約内容をしっかりと確認し、空室保証の免責期間を短くしてもらったり、サブリース料を家賃収入の2割以下に抑えてもらうなどの交渉が必要です。