数年前、NISAが大いに話題となって、新たにNISA口座を開設した方も多いと思います。今回登場した「iDeCo」とは、いったいどんな制度なのでしょうか。すでに多くの人がiDeCoに興味を持ち、スタートしています。iDeCoは公的年金制度とも大きく関わっています。詳しく知って、大切な資産を上手に運用しましょう。

iDeCoとは?まずは基礎知識を知ろう!

iDeCoとは何なのかを知ることが、iDeCoを最大限に活用する最初のポイントです。iDeCoの基礎知識をわかりやすく解説します。

iDeCoとは個人型確定拠出年金の事

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」といいます。といっても、漢字が並んでいるだけでちょっと分かりづらいですよね。ひとつずつ解体してご説明しましょう。個人型とは、自分で作るという意味です。確定拠出とは、掛け金を決めて納めることを指します。つまり、自分で掛け金を決め、納めてゆく個人的な年金という意味です。

掛け金は銀行などの運営管理機関に預けることになります。その間、運営管理機関に指示を出し、さまざまな運用を行って掛け金を増やします。お金はいつでも引き出せるわけではなく、60歳以上になるまで受け取れません。

現在はさまざまな資産運用を行うことが一般的になっているため、株取引やFXなどで資産を運用している人も多くなっています。しかしiDeCoがそれらの資産運用と決定的に違うのは、税金がかからなくなるという点です。銀行の利子をはじめ、投資などで利益が出た場合、実は約20%もの税金がかかっているのです。

しかしiDeCoは運用で出た利益に20%の税金がかかりません。そのため、一般的な運用よりもお得にお金を増やして貯めることができるのです。

iDeCoとNISAの違いをわかりやすく解説

すでにNISAを利用している方にとっては、「iDeCoってNISAと同じじゃないの?」と感じる点が多いかもしれません。でも、iDeCoとNISAは似ているようで違う点がいろいろあります。今の自分のライフスタイルや将来設計を考えて、現在自由になる資金をどちらにどう振り分けるか、しっかり考えて利用する必要があります。

○iDeCo…iDeCoは老後資金を自分で貯める、個人年金の一種です。原則として60歳まで引き出すことができないため、「コツコツ貯金が苦手」「貯まるとすぐに使ってしまう」という方が強制的に貯蓄したいという場合には向いています。年金制度が崩壊しつつあると危惧される今、安定した老後の生活のために若いうちからコツコツ貯められる安心の制度です。元本保証の定期預金や投資信託も選べますが、個別の株式投資は選べません。

○NISA…NISAは年間120万円まで投資できます。一度に上限額いっぱいまで投資することも可能ですが、一度上限に達すればその年の投資枠は終了です。投資期間は5年間と定められています。個別の株式投資も自由にできますが、逆に元本保証商品には投資ができないという特徴があります。NISAはいつでも現金化することができ、急にお金が必要になった場合は中止することも可能です。

○積み立てNISA…積み立てNISAは20年間投資期間を設けられたNISAです。積み立て利用しかできませんし、年間に利用できるのは40万円と投資枠も小型ですが、20年間続けられるため総額は800万まで可能です。投資できるのは長期型の投資信託などになります。NISAと同じように、いつでも現金化することができます。

一般的なNISAと積み立て型の積み立てNISAは同時に利用することはできず、どちらかを選ぶ必要があります。

iDeCoを続けるためには無理のない掛金で!

iDeCoは、月額5,000円からスタートできます。しかも20歳からスタートできるので、少額から始めたとしても40年ならかなりの金額になります。積立ての掛金を増やしたい場合は1,000円刻みでアップさせられますが、職業によって月の上限金額が決められています。

・公務員…月額12,000円

・会社員(企業年金あり)…月額12,000円(場合によって20,000円まで可)

・会社員(企業年金なし)…月額23,000円

・専業主婦・専業主夫…月額23,000円

・自営業…月額68,000円(国民年金基金や付加保険料との合計金額)

この枠の中で、月々無理のない掛金にすることが大切です。自分で毎月1万円ずつ貯蓄することはけっこう難しいものです。また結婚や出産・子どもの進学や転職など、入るお金・出るお金が大きく変動する時期は人生に何度も訪れます。その時々に合わせて、無理のない掛金にすることが積立を長く続けられるポイントです。

【出典】iDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ):http://www.dcnenkin.jp/about/

iDeCoのメリットについて

iDeCoにはさまざまなメリットがあります。先ほどはiDeCoの特徴についてご紹介しましたが、ここではメリットについてひとつずつ解説していきます。

老後資金を自分で増やす事ができる

iDeCoを利用することで、老後の資金を自分で増やすことができます。現状では、国民年金も厚生年金も、老齢基礎年金と老齢厚生年金として満65歳から支給されます。年金支給を繰上げ60歳から受け取ることもできますが、その場合は受給予定額よりも30%も減ってしまいます。

また老齢基礎年金は年金を納めた月数によって金額が異なり、納めた月数が480ヶ月未満の場合は、満額を受け取ることができません。老齢厚生年金は、給与所得額によって保険料が変化するため、人によって受け取ることができる金額が変化します。

しかしiDeCoは20歳になったら5,000円から、自分のペースでこつこつ増やし、こつこつ貯めることができます。さらに60歳までは引き出せませんが、60歳になれば自由にお金に替えることができます。公的な年金を受け取れる65歳までの5年間を安心して過ごせる大きなサポートになります。

み立てた掛け金の全額が所得控除され税金が安くなる

NISAと同じように、iDeCoも税金面で非常にお得な制度です。積み立てた掛け金は、全額が所得控除されるため、税金も安くなります。利息の低い銀行の普通預金などにお金を預けておくよりは、税金が安くなる資産運用方法として活用した方がお得になりますよね。

運用中に得た利益も非課税である事

通常は資産運用中に得た利益には、通常約20%もの税金がかかります。せっかく投資信託でお金を増やしても、これではなかなか貯まりません。でもiDeCoなら、資産運用で得られた利益にも税金がかかりません。資産運用の税金対策に悩んでいる方は、一度iDeCoを利用してみてはいかがでしょうか。

運用資産の受け取りも控除が受けられる

iDeCoは、運用資産を受け取る際も控除を受けることができます。老齢年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。一時金払いにする場合は、退職所得控除の対象になります。またiDeCoは障害給付金もあり、その場合は所得税と住民税が非課税になります。さまざまな受け取り方法に対して控除が受けられます。

誰でも簡単に始める事ができる

20歳になった国民なら、誰でも月5,000円からスタートできます。金額を増やしたいという場合でも、気軽に1,000円ずつ増やすことができます。また上限金額が決められているので、生活資金をつぎ込むほど投資をしすぎることなく安心して利用できるという点も嬉しいですね。学生さんや主婦・主夫の方の初めての投資にもおすすめできます。

iDeCoを始める時の金融機関を選ぶ基準

iDeCoをはじめるときは、運営管理機関となる金融機関を選ぶ必要があります。どの金融機関を利用するかによって、お得度は違ってきます。長い期間だからこそ、小さな差が大きな違いに育ってしまうのです。

コストが安い事は注意する点

iDeCoの運営管理機関を選ぶときには、コストが安く済む金融機関を選ぶということが一番のポイントになってきます。また金融機関によって、利用できる金融商品も変わ異なってきます。長期運用に合った商品を選ぶため、いろいろなポイントをしっかり確認して選びたいですね。

iDeCoの金融機関にかかるコスト「口座管理料」

iDeCoでは、金融機関に口座管理料を支払い続ける必要があります。積立を行う場合と行わない場合で違いますが、数十円から数百円になります。この金額は銀行や証券会社によって違いますし、毎月かかる費用なので無駄にできません。この点もよく考えて金融機関を決めましょう。

iDeCoの金融機関にかかるコスト「信託報酬」

iDeCoでは投資信託を選択することもできます。その場合、投資信託の運用費として信託報酬という手数料がかかります。信託報酬は金融機関や選ぶ投資商品にもよりますし、投資のスタイルにもよりますが、残高が大きくなるほど大きくなります。また運用期間中はずっとかかるコストなので、口座管理費よりも重視するべきでしょう。

運用商品によって大きく異なるため一概には言えませんが、運用管理費用(信託報酬)は、だいたい0.1%台から2%台までさまざまです。さらに運用商品は国内株式や国内債券から、先進国株式や先進国債券まで多種多様に選べます。じっくりと比較してから選びましょう。

キャンペーンの有無にも注目すべき!

金融機関では、ボーナスの時期や春先など、いろいろな時期にキャンペーンを実施しています。キャンペーンを利用すると、さまざまなコストが安くなったり、金利がお得になる、ポイントがもらえるなどいろいろな特典があります。いつか利用しようと考えているならば、せっかくならキャンペーンを上手に活用したいですね。

サポート体制がしっかりしているところを選ぶ

20歳からスタートできるとなると、生まれて初めての投資信託がiDeCoという方もいますよね。そんな時は、「本当にお金を預けて大丈夫なの?」「損をしちゃうときもあるの?」など不安や疑問もたくさんあると思います。そんな時は、サポートが手厚いところを選ぶという方法もあります。サポート体制はカバーする都道府県やコールセンターの対応時間など、使いやすさや安心度で選ぶと良いですね。

iDeCoを始める人におすすめの金融機関

それでは、iDeCoを始めたい人におすすめしたい金融機関を少しご紹介しましょう。たくさんの金融機関の中から決めることは難しいですが、チェックポイントを比較して決めていきましょう。

iDeCoを扱っている金融機関は全国で76社

iDeCoを扱っている金融機関は全国に76社(NPO法人確定拠出年金教育協会調べ)もあります。中には地方銀行もありますし、保険会社もあります。また投資信託を請け負う証券会社など、さまざまな会社で扱っています。普段利用している銀行で相談してみたり、ネットですべての手続きが完了するところを比較検討しましょう。

1位.SBI証券

まずはSBI証券です。SBI証券は運営管理手数料が無料なので、とってもお得です。さらに運用商品の維持にかかるコストも低いため、無駄がありません。さらに10年以上の運営実績があり、安心です。運用商品も豊富に取り揃えているので、自分のライフスタイルや所持金に見合った商品を選ぶことができます。

【出典】SBI証券:https://site0.sbisec.co.jp/marble/dc/top.do?

2位.イオン銀行

イオン銀行のiDeCoも、運営管理手数料が無料です。また初心者向けにiDeCoについての詳しい説明もあり、簡単にスタートしたい方にはぴったりです。パート主婦がどう利用すればいいかなどのコラムも役立ちますよ。さらにフリーダイヤルのコールセンターがあるので安心です。

【出典】イオン銀行:https://www.aeonbank.co.jp/ideco/

3位.楽天証券

楽天証券もまた、運営管理手数料が無料です。ファンド商品も厳選された32本の中から選ぶようになっています。複数の投資信託を組み合わせることでリスクとリターンのバランスを摂ることも可能です。またすでに楽天証券のIDをお持ちなら、年金口座もまとめて管理することが可能です。

【出典】楽天証券:https://dc.rakuten-sec.co.jp/

iDeCoの人気商品ランキング2018

では、iDeCoをスタートさせた人に人気のファンド商品には、どんなものがあるあのでしょうか。2018年の人気商品ランキングをチェックしてみましょう。

1位.ひふみ年金

ひふみ年金は、レオス・キャピタルワークスの商品です。テレビ番組でも紹介され、非常に人気が高く投資家からも評価されています。ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金とありますが、iDeCoで購入できるのはひふみ年金になります。カリスマファンドマネージャーが運用している、預ければお金が増えると評判の年金です。

2位.DCニッセイ外国株式会社インデックス

日本を除く先進国の株式に投資する商品です。MSCIコクサイ・インデックスという指標に連動して推移します。国際的な株価指数のひとつで、日本以外の先進国22カ所の上場企業の株式指数です。アメリカをはじめ、さまざまな国のさまざまな企業に少しずつ投資できます。

3位.iFree8資産バランス

おもに国内外の株式をはじめ、債券や不動産投資信託など8つの資産投資からなる商品です。8つに分散し、各投資の成果を特定の指数に連動させて運用していきます。上記2銘柄と並んで人気の高い投資信託です。

iDeCoはしっかりと比較をして納得してから始める事

iDeCoについて解説してきましたが、やはり自分自身でさまざまな金融機関を調べ、商品を調べることが重要です。iDeCoに関しては比較検討ができるサイトもたくさんありますし、各々の金融機関や商品の詳細が調べられるサイトもいろいろあります。各金融機関でも今売れている商品の紹介も行っています。iDeCoをスタートする際は、しっかりと比較検討し、後悔と無理のない年金積立を行いましょう。

監修者:杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)