皆さん「空き家」というとどのような家を想像するでしょうか。
人口が減っていくなか、住宅が増え続けている為に年々増え続けている「空き家」ですが、具体的な原因と問題点、解決策について説明いたします。

そもそも空き家とはどんな状態のことをいうの?

空き家とは?〜国が定める空き家の定義〜

「空き家」とは、建築物またはこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。(2条1項)

「特定空家等」とは、
①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にある空家等をいう。(2条2項)

と、2014年(平成26年)11月27日に交付された法律第127号「空家等対策の推進に関する特別措置法」の中に空き家の定義があります。

つまり、敷地に人が住んでいないなど使用されていない家や建物、木などがあることを「空き家」と定め、特に危険度の高い空き家は「特定空家等」と定められています。

出典:国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=427M60000808001

空き家問題の現状は・・・

国土交通省が調査した統計データによると、居住者のいない住宅は2013年(平成25年)に全国で853万戸、そのうち空き家とされるのが820万戸(空き家率13.5%)にもなります。
その内訳は、賃貸用429万戸、売却用31万戸、二次的住宅(別荘など)41万戸、その他の住宅(長期不在など)318万戸で、この中で最も問題とされているのがその他の住宅(長期不在など)とされています。
住宅ストック数が総世帯数に対して16%も多く、量的に充足しています。

世の中には古い家=空き家というイメージがついています。
首都圏の空き家問題として持ち上げられている集合住宅(アパートやマンション)の一室でも空き家には変わりありません。

出典:国土交通省 空き家の現状と課題( http://www.mlit.go.jp/common/001125948.pdf

空き家問題の原因は?

この「空き家問題」の原因はどこにあるのでしょうか。

少子高齢化による人口の減少・・・これからの日本!

皆さんは、どれくらい少子高齢化を感じているでしょうか。
出生率が低下する一方で、平均寿命が延びたことにより、人口全体に占める子どもの割合が低下し、高齢者の割合が高くなることを少子高齢化といいます。
現在、「4人に1人は高齢者」と言われており、超高齢化が進む中、少子高齢化は日本で最も深刻な問題であるとされています。

総務省「国勢調査」及び「人口推計」国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)):出生中位・死亡中位推計」」によると、生産年齢人口=労働できる能力あるいは資格を持ちうる年齢層である15~64歳は、2010年(平成22年)の63.8%から減少を続けています。2017年(平成29年)には60%台を割り、2060年には生産年齢人口は50.9%まで減少しています。

一方、高齢人口(65歳以上)は2010年(平成22年)の2,948万人から、団塊の世代といわれる第一次ベビーブーム世代および団塊ジュニアといわれる第二次ベビーブーム世代が高齢人口に入った後の2042年に3,878万人とピークを迎えます

また、高齢化率は(総人口に対する高齢人口の割合)は2010年(平成22年)の23.0%から、2013年(平成25年)には25.1%で4人に1人を上回ってしまいます。そして50年後の2060年には39.9%、すなわち2.5人に1人が高齢者(65歳以上)となることが推測されています。
このように、日本はこれから人口減少と少子高齢化の急速な進展が現実となってしまいます。

<日本の人口推移>

(出典)総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc112120.html

世帯数の増加以上に住宅が増加し続けている!

1910年(昭和43年)の総世帯数は2,532万世帯で、一世帯あたりの住宅戸数は1.01戸となっています。
この一世帯あたりの住宅戸数は年々増加をし続けており、平成25年の総世帯数は約5,245万世帯で、一世帯あたりの住宅戸数は1.16戸と増加しています。

日本は少子高齢化が問題となっていますが、核家族や単身世帯の増加から世帯数は増加しています。
そして、それに伴い中古住宅よりも人気がある、新しくて綺麗な新築住宅が増え続けています。
賃貸物件においても、中古だからと家賃が新築時の半分になることが考えられないため、借りる側にとっては割安感は感じられず、賃貸でも新築の物件に流れて、中古物件を増やしていっています。

<世帯数及び住宅数の推移(全国)>

出典:国土交通省(世帯数及び住宅戸数の推移)(http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/data/html/ns008010.html

住宅需要の減少はまぬがれない!

核家族や単身世帯の増加により世帯数が増加傾向でも、既に日本の人口は減少し始めています。
日本の人口が減少している原因の1つに、晩婚化と出生率の低下が挙げられます。晩婚化の傾向は、第1子の出産が遅れればそれだけ子どもが減るということに繋がっていきます。
このまま日本の人口が減少し続ければ、やがて世帯数も減少に転じることは目に見えています。

世帯数が減少するということは、それだけ住宅の需要も減少するということで、新築物件が増加し続けていることを考えれば、住宅の過剰な供給が、近い将来問題となることでしょう。

空き家が増え続けた理由とは?

空き家問題の原因はわかりましたが、さらに増え続けた理由についてもみていきましょう。

小規模住宅用地・一般住宅地の特例を利用するために更地にできない!

土地にかかる税金の代表が、皆さんも耳にしたことがある「固定資産税」です。

「固定資産税は」、土地や建物などを所有している限り、毎年かかる税金です。
所有している土地に、何も建物がない場合は、評価額がそのまま課税標準額となります。この課税標準額に標準税率1.4%をかけた金額が「固定資産税」です。

そして、その土地に住宅を建てると・・・
・小規模用地
住宅1戸あたり200㎡までの部分を小規模用地とし、固定資産税が6分の1に減額
・一般住宅地
住宅地の200㎡を超える部分を一般住宅地とし、固定資産税が3分の1に減額

つまり、更地にしてしまうと、その土地にかかる「固定資産税」が課税標準額に引き上がってしまうため、更地にできないという方が、多くいらっしゃいます。
そもそも、中古物件は価値が下がり、その建物にかかる「固定資産税」が少ないため、土地を更地にして増えた分の税額より安いということもあるのでしょう。

空き家が引き起こす問題とは?

空き家が増え続けるとどのような問題が起きるのでしょうか。

犯罪リスクの上昇

空き家が関連する犯罪で、最近よくニュースで取り上げられているのが「放火」です。
放火犯は、連続して放火をする傾向が強く、空き家は格好のターゲットとなってしまいます。
火災が起きると、もらい火など近隣への被害は免れません。
また、空き家は死角になり、不法侵入して犯罪の拠点にしやすいため、空き家内部での犯罪が起きる可能性もあります。

災害リスクの上昇

古い空き家は、その多くが耐震性能も失われています。
地震で倒壊する可能性が大きく、避難や救出の際に重要な道路を塞いでしまうかもしれません。

資産価値が低下してしまう・・・

人気のない空き家は市場に溢れかえります。その結果供給過剰となり、市場価値下落として、そ空き家ではない住宅にも影響が波及する可能性があります。

土地の有効活用が出来ない

空き家とはいえ、土地に建物がある以上その土地は他の用途では使用できません。
駐車場や自動販売機、商業施設など、その土地に足りないものを、その空き家の土地活用により補うことで、地域にもメリットが生まれます。
地域へ及ぼす悪影響とは?
古くなって傷んだ空き家は、次第に崩れていき倒壊や飛散など、地域周辺へ影響を及ぼす可能性があります。

また、空き家は害獣(ハクビシン、ネズミ、野良猫等々)・害虫(スズメバチ、シロアリ・ゴキブリ等々)の温床になりやすく、地域周辺の敷地に入るなど、悪影響を及ぼします。

固定資産税が高い

2014年(平成26年)11月27日に交付された法律第127号「空家等対策の推進に関する特別措置法」で特に危険度の高い空き家は「特定空家等」と定義され、行政の介入による対策に法的根拠を持たせています。

空き家が「特定空家等」と指定されてしまうと・・・
所有者は、自己負担で早急に改善しなければならず、行政からの強制対処(除去など)を求められることになり、土地の固定資産税に対する特例措置も外されて税負担が最大で4.2倍も増えてしまいます

出典:家等対策の推進に関する特別措置法 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=427M60000808001

なぜ所有者はすぐにでも手放さないのか?

問題山済みの「空き家」ですが、所有者の方はなぜすぐに手放さないのでしょうか。

手間がかかるから・・・

相続した空き家が遠方にある場合、なかなか出向くことができず、掃除や空気の入れ替えといった管理ができません。また、管理する方がご高齢の場合、近くでも出向くことが難しい場合があります。

空き家に思い出がたくさん詰まっていて・・・

高齢者の方が施設へ移った後でも、最後は自分の家で迎えたいという理由で手放せない方も少なくありません。
親と過ごした思い出の場所・・・夫婦で苦労して建てた家だから・・・ここで子どもが育った大切な場所だから・・・というケースも珍しくありません。

値上がりを期待して・・・

土地の値上がりを期待し、高値で売りに出したい!という空き家の所有者も少なくありません。

解決策・対処法を教えます!

1人で悩まずに、先ずは査定をしてもらおう!

査定をしてもらったら、「思ったより状態が良好であった」、「建物は古いけれど立地条件は良い」となれば、不動産仲介業者を利用した売却が可能です。
悩む前に、早い段階で一度査定をしてもらうことをおすすめいたします。

不動産会社を通してリノベーションをする

「リノベーション」とは、既存の建物(空き家など)に大規模な工事を行うことで、その性能を新築の状態の時よりも向上したり、価値を高めたりすることをいいます。
「リノベーション」して住むだけではなく、民泊として利用したり、賃貸住宅にしたり、その後の活用できる幅が広がります。

再生会社・不動産会社に売却する

「周辺地域のニーズ」を把握して、不動産を別の必要な施設へ有効活用させてくれる不動産会社へ売却することも1つの手段です。
駐車場、自動販売機の設置や飲食店、コンビニストアなど不足しているものを増やすこといよって、その地域にとってもメリットとなります。

みんなの疑問Q&A

Q.なぜ所有者不明の空き家が増えていくの?

A.現状では、その空き家が本当に誰も所有する人がいないのか判断することは、非常に難しいです。
例えば、空き家を相続する人がいても、その相続する人が海外に住んでいたり、住民票に書かれていない場所に住んでいるケースもあります。
また、空き家の所有者が認知症になっていたために、連絡がうまく取れない、話が進められない場合もあるようです。

相続する人がいない場合、また相続人がいたとしても、その相続人が相続放棄した場合は、その空き家と土地は国のものになります。
しかし、確認が取れない限りは、あくまで人の所有物扱いになるので、自治体でも強行して手を出すことができません。

Q.空き家を改善して再活用する場合は、国から助成金がもらえるの?

A.自治体では、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の施行以前から、条例を定めて空き家対策を推進してきました。従来から、住環境の整備事業として、自治体から所有者への補助があります。

自治体が行う整備事業は、空き家である空き家でないに関係なく、損傷・老朽化が激しい住宅については、除去(解体)の費用を補助し、もし住居に困る住民が存在すれば、自治体が住宅を用意してまで転居させて整備が行われるほど、力が入っている事業です。

Q.空き家をリフォームしたいのですがどうすればいいですか?

A.「リフォーム」とは、老朽化した建物(空き家など)を新築の状態に戻すことを言い、マイナスからゼロに戻すための機能回復という意味合いで使われることが多いです。

リフォームももちろん良いですが、おすすめしたいのは、 最近よく耳にする「リノベーション」です。新たに家を買わなくても、もともとある空き家を有効活用して安く素敵な家に住むことができます。

最後にまとめ・・・

空き家問題は、今後日本の人口が減少していくことを考えると、長期的に考えていかなければならない問題です。助成や相談窓口があるということを、空き家所有者に知っていただき、活用してもらうことが大切です。
所有者の方に有益な空き家の活用法が見出してもらうことが、問題の解決に少しずつ近付いていくのではないでしょうか。