住宅購入を検討する際、「住まい給付金」という言葉を目にするようになりました。これはどういった制度なのでしょうか?マイホームを手に入れる前に、「住まい給付金」の基礎知識を身につけておきましょう。

まずは住まい給付金とは何か?

2014年4月から消費税が5%から8%に引き上げられました。さらに2019年10月には10%に引き上げられる予定です。

住宅購入を考える人にとって、微増といえども「5%→8%→10%」の消費税引き上げは痛いものです。こうした消費税引き上げによる負担増を軽減し、住宅購入をサポートするために「現金」を給付する制度を「住まい給付金」といいます。

「一戸建て」でも「マンション」でも適用されます。

実施期間は、平成26年4月から平成33年12月までとなっています。
住居の引き渡し・入居の完了が平成33年12月末までのものが対象となります。

【出典】国土交通省 すまい給付金「すまい給付金とは」
http://sumai-kyufu.jp/outline/sumaikyufu/index.html

収入に応じて最大30万円の給付が受けられる制度

「住宅ローン減税」という制度もありますが、これは「高額所得者」の方がお得な制度になっています。

それに引き換え「住まい給付金」は、年収の目安が510万円以下で、最大30万円の給付が受けられるものです。これにより、住宅ローン減税の恩恵を受けない所得者の方にも負担軽減の効果が及ぶようになりました。

ただし、収入は「都道府県民税の所得割額」で判断されます。
この「都道府県民税の所得割額」はどうしたら分かるのでしょうか?

お住まいの地域の役所で「課税証明書」を取れば分かります。源泉徴収票でも計算はできますが、複雑な計算になるため、正確な金額を課税証明書で確かめましょう。この課税証明書は、毎年5~6月に発行されます。住宅の引き渡しの時期に応じて必要な課税証明書の発行年度が決められているので、確認して取り寄せるようにしましょう。

消費税増税後に住宅を購入する場合の負担軽減をする制度

なお、「年収の目安510万円以下で最大30万円の給付」というのは消費税8%の場合です。消費税が10%に上がると「年収の目安775万円以下で最大50万円の給付」となりますので考慮に入れてください。

消費税アップが2%といっても金額にすれば大きな額になります。年収の対象範囲も広がり最大給付額も大幅増となる負担軽減に繋がる制度となっています。

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/outline/sumaikyufu/kyufu.html

住まい給付金の申請の方法

具体的に申請方法をみていきましょう。

申請書はホームページでダウンロードする

国土交通省の「すまい給付金」のサイトから申請書類のダウンロードをおこなえます。
給付申請書は、「新築か中古か」「本人受領か代理受領か」「住宅ローンか現金か」で記載内容や確認書類が異なるので、それぞれ用意されています。

申請書のほかに、「申請書記入見本」「記入の仕方」「申請の手引」もダウンロードできるので準備を進めやすいですね。
もし記入方法や入手方法が分からない場合は、事務局にも問い合わせが可能です。

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/download/

必要事項を書き込んで窓口又は郵送で申請する

申請書への書き込みは、書類をダウンロードして手書きするか、パソコン上で作成することもできます。実際の申請はインターネットではできません。必ず、窓口または郵送で申請しなければいけないので注意が必要です。

住宅事業者が代理受領する事もできる

本来、住宅購入者が「住まい給付金」を受け取りますが、直接住宅代金に充てるために住宅事業者が代理で受け取ることもできます。この場合は、請負・売買契約の特約として「住まい給付金事務局指定の代理受領特約」を締結する必要があります。

代理受領をおこなう場合は、申請は窓口のみとなっています。

 申請に必要な書類一覧

必要書類はローンの有無や物件で異なります。
必要書類は以下の通りです。

〇新築住宅(ローンがある場合)
 ・給付申請書
 ・住民票の写し(マイナンバーがないもの)
 ・不動産登記における建物の登記事項証明書・謄本(所有権保存登記されているもの)
 ・個人住民税の課税証明書(非課税証明書)
 ・工事請負契約書または不動産売買契約書
 ・住宅ローンの金銭消費貸借契約書
 ・給付金受取口座が確認できる書類(申請者の本人名義の通帳コピーなど)
 ・検査実施が確認できる書類(1~3のどれか1つ)
  1.住宅瑕疵担保責任保険に加入している場合→「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」
  2.建設住宅性能表示制度を利用している場合→「建設住宅性能評価書」
  3.住宅瑕疵担保責任保険と同等の検査を受けている場合→「住宅瑕疵担保責任保険法人検査実施確認書」

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/application/about/new.html

〇新築住宅(ローンがない場合)
 ・給付申請書
 ・住民票の写し(マイナンバーがないもの)
 ・不動産登記における建物の登記事項証明書・謄本(所有権保存登記されているもの)
 ・個人住民税の課税証明書(非課税証明書)
 ・工事請負契約書または不動産売買契約書
 ・給付金受取口座が確認できる書類(申請者の本人名義の通帳コピーなど)
 ・検査実施が確認できる書類(1~3のどれか1つ)
  1.住宅瑕疵担保責任保険に加入している場合→「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」
  2.建設住宅性能表示制度を利用している場合→「建設住宅性能評価書」
  3.住宅瑕疵担保責任保険と同等の検査を受けている場合→「住宅瑕疵担保責任保険法人

検査実施確認書」
 ・フラット35S基準への適合が確認できる書類(1~3のどれか1つ)
  1.フラット35S適合証明書
  2.現金取得者向け新築対象住宅証明書
  3.長期優良住宅建築等計画認定通知書

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/application/about/new.html

〇中古物件(ローンがある場合)
 ・給付申請書
 ・住民票の写し(マイナンバーがないもの)
 ・不動産登記における建物の登記事項証明書・謄本(所有権保存登記されているもの)
 ・個人住民税の課税証明書(非課税証明書)
 ・中古住宅販売証明書
 ・不動産売買契約書
 ・住宅ローンの金銭消費貸借契約書
 ・給付金受取口座が確認できる書類(申請者の本人名義の通帳コピーなど)
 ・売買時等の検査実施が確認できる書類(1~4のどれか1つ)
  1.既存住宅売買瑕疵保険に加入している場合→「既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書」
  2.既存住宅性能表示制度を利用している場合→「既存住宅性能評価書」
  3.建築後10年以内で住宅瑕疵担保責任保険に加入している場合→「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」(転得者証明書を含む)
  4.建築後10年以内で建設住宅性能表示制度を利用している場合→「建設住宅性能評価書」 

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/application/about/used.html

〇中古物件(ローンがない場合)
 ・給付申請書
 ・住民票の写し(マイナンバーがないもの)
 ・不動産登記における建物の登記事項証明書・謄本(所有権保存登記されているもの)
 ・中古住宅販売証明書
 ・個人住民税の課税証明書(非課税証明書)
 ・不動産売買契約書
 ・給付金受取口座が確認できる書類(申請者の本人名義の通帳コピーなど)
 ・売買時等の検査実施が確認できる書類(1~4のどれか1つ)
  1.既存住宅売買瑕疵保険に加入している場合→「既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書」
  2.既存住宅性能表示制度を利用している場合→「既存住宅性能評価書」
  3.建築後10年以内で住宅瑕疵担保責任保険に加入している場合→「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」(転得者証明書を含む)
  4.建築後10年以内で建設住宅性能表示制度を利用している場合→「建設住宅性能評価書」 

【出典】国土交通省 すまい給付金
http://sumai-kyufu.jp/application/about/used.html

住まい給付金を受給できる対象となる条件

では、どんな人が住まい給付金を受給できるのでしょうか?

マイホームに入居後から1年3カ月以内である事

マイホームの引き渡しを受けてから「1年3ヶ月以内」であれば申請できます。

申請された日とは・・・〇窓口申請の場合:受付証が発行された日となります。
           〇郵送申請の場合:消印日となります。

新築でマイホームを購入した人

誰も居住したことがなく、工事完了から1年以内の住宅を新築とみなします。

また、以下の3項目が必要になります。
  〇床面積(不動産登記上の床面積)が50㎡以上であること。
  〇消費税8%・10%が適用されていること。
  〇建築完了前に第三者機関の検査をうけていること。

中古でマイホームを購入した人

宅地建物取引業者が売主になっていることが条件となります。
個人からの購入は消費税が発生しません。この場合、消費税の負担軽減を目的とした住まい給付金は必要ないと考えられるからです。
消費税10%で購入した場合、年収の目安が650万円以下も条件に追加されますので注意が必要です。

また、以下の4項目が必要になります。
  〇床面積(不動産登記上の床面積)が50㎡以上であること。
  〇宅地建物取引業者が取り扱っている住宅であること。
  〇消費税8%・10%が適用されていること。
  〇売買時に第三者機関の検査をうけていること。

住宅ローンを利用している人

「住まい給付金」はもともと住宅ローンを組む人のための制度です。自分が住むために購入した住宅の借入金であり、返済期間が5年以上のもの。また、金融機関からの借入が対象になります。個人から借りたものは適用されません。

50歳以上の人で現金で購入した人

50歳以上の人が現金で新築住宅を購入する場合は、フラット35Sの基準を満たす必要があります。ただし、中古住宅はその限りではありません。

持ち分を共有している人(配偶者も可)

夫婦または親子で資金を出し合って住宅を購入する際、それぞれが負担した金額と同じ割合で持ち分を決め、共有登記します。そうすることで、住まい給付金もその持ち分の割合に応じて適用されます。例えば、若い夫婦が住宅を取得するとき、一緒に住まれない親御さんが持ち分を共有することがあります。この場合、同居にならないので親御さんの持ち分は対象外となります。

住まい給付金はいくら受け取る事ができる?

住まい給付金は収入によって給付額が変わってきます。

 収入に応じて最大30万円もらう事ができる

消費税8%の場合、収入額の目安として 〇425万円以下  ・・・・・給付基礎額30万円
                    〇425万円~475万円・・・給付基礎額20万円
                    〇475万円~510万円・・・給付基礎額10万円
支給されます。

「消費税が10%になった場合は・・・」
         収入額の目安として 〇450万円以下・・・・・給付基礎額50万円
                   〇450万円~525万円・・給付基礎額40万円
                   〇525万円~600万円・・給付基礎額30万円
                   〇600万円~675万円・・給付基礎額20万円
                   〇675万円~775万円・・給付基礎額10万円

支給されることになっています。

この収入額はあくまで目安なので、「都道府県民税の所得割額」で確認しましょう。

また、国土交通省の「すまい給付金」のサイトにある「すまい給付金かんたんシミュレーション」を利用するのもよいでしょう。
「住宅の情報(適用消費税率・所有権・住宅ローンの有無)と年収・扶養家族の人数」を入力するだけで、おおよその給付額が分かります。

この場合も正しくは、「都道府県民税の所得割額」で確認する必要があります。

【出典】国土交通省 すまい給付金「すまい給付金かんたんシミュレーション」
http://sumai-kyufu.jp/simulation/kantan/index.html

住まい給付金額の計算式は給付基礎額×持分割合

持ち分が変わると給付金額も変わります。住宅購入の際には持分比率もよく考えましょう。

単身の場合の計算式

(例)
夫:30歳(会社員) ※年収490万円
妻:27歳(専業主婦)

物件価格:3,300万円
建物:1,300万円
土地:2,000万円
借入額:3,000万円
消費税率:8%

住宅は、夫の持分100%となるので、
給付基礎額10万円×持分100%=給付額 10万円

夫婦の場合の計算式

(例)
夫:33歳(会社員) ※年収500万円
妻:30歳(会社員) ※年収430万円
物件価格:4,000万円
建物:1,500万円
土地:2,500万円
借入額:3,000万円
持分割合:夫70% 妻30%
消費税率:8%

夫・・・給付基礎額10万円×持分70%=給付額 7万円
妻・・・給付基礎額20万円×持分30%=給付額 6万円

住まい給付金は申請してから1カ月半~2カ月程度で入金される

申請書類を提出してから給付金が実際に振り込まれるまで約1ヶ月半~2ヶ月かかります。書類に不備があった場合には、もっと時間がかかりますので間違いのないようよく確認してスムーズに手続きを進めましょう。

以上、住まい給付金についてみてきましたが、条件等細かい規定があるようです。所得割額など役所に確認しなければならないものもあり、書類準備にも時間がかかりそうですが、もし適用されるなら是非とも利用したい制度ですね。マイホーム取得に向けて一つ一つ進めていきましょう。

監修:小川 和哉(ファイナンシャルプランナー)