不動産業者とは、不動産に関する業務を行う業者です。しかし、どの不動産業者も、不動産に関するすべての業務を行っているわけではありません。不動産業者にはどのような種類があるのか、また、良い業者の見分け方や依頼するときのポイントについて探っていきましょう。

不動産業者の業務内容

不動産業者では、主に次の5つの業務を行っています。ただし、不動産業者によっては1つあるいは2つの業務に特化していることもありますので、ご自身が利用したい業務を行っているか確認してから、不動産業者に出かけるようにしましょう。

不動産売買業(売主)

不動産業者が自社物の売買を行います。不動産業者自らが売主となって、不動産業者自身が保有する物件を売却したり、個人が保有している物件を買い取ったりします。

売買仲介・賃貸仲介業

不動産業者が売主と買主の間に立ち、売買の仲介を行います。また、不動産業者が貸主と借主の間に立ち、契約の仲介を行います。不動産業者が仲介を行うときは、貸主や借主から仲介手数料を受け取ることができます。

賃貸業(貸主)

不動産業者自らが貸主として、直接、借主に貸すこともあります。この場合は契約した不動産業者が大家さんになりますので、借主は不動産会社と長期的に付き合うことも念頭に入れておかなくてはなりません。

不動産管理業

不動産会社が保有する不動産の管理をしたり、貸主の依頼により借主に対応したりといった不動産管理業も行います。賃貸住宅の場合は備品や設備についての苦情・相談に対応することや家賃の回収、保険請求業務なども含まれます。尚、不動産を保有している不動産業者でも、不動産管理業は外部の管理業者に委託していることもあります。

ウィークリー・マンスリーマンション業

不動産業者が、ウィークリーマンションやマンスリーマンションなどの短期賃貸物件を経営していることもあります。ウィークリーマンションやマンスリーマンションの専門業者として運営していることもありますが、通常の賃貸マンションと並んで短期賃貸物件の運営を実施していることもあります。

不動産業と宅地建物取引業

不動産業と類似する言葉として「宅地建物取引業」があります。両者の違いと関係する資格について探っていきましょう。

不動産業と宅地建物取引業は何が違う?

宅地建物取引業は、宅地建物取引業法の規制を受けます。一方、不動産業は宅地建物取引業法と関わる範囲だけでなく、宅地建物取引業法の規制を受けないその他の不動産関連の業務も含みます。つまり、不動産に関する業務全体を「不動産業」、不動産業の中で宅地建物取引業法の規制を受ける業務だけを「宅地建物取引業」と呼ぶのです。

宅地建物取引業について

宅地建物取引業とは、主に次の3つの業務を指しています。いずれも国土交通大臣あるいは都道府県知事から免許を受けなければ業務を行うことはできませんので、無免許で勝手に業務を行うことはできません。

  • 宅地又は建物の自ら売買。自ら交換。
  • 宅地又は建物の売買・交換・貸借の代理。
  • 宅地又は建物の売買の媒介(仲介)・交換の媒介(仲介)・貸借の媒介(仲介)。

宅地建物取引士はどういう専門家?

宅地建物取引業を行うためには、宅地建物取引士が必要です。宅地建物取引士とは、宅地建物取引士資格試験に合格して都道府県知事の登録を受け、都道府県知事から宅地建物取引士証の交付を受けた人のことを指しますが、宅地建物取引業を行う事業所では、従業員5人に1人以上の宅地建物取引士を設置しなくてはならないという決まりがあります。また、以下の3つの職務は、宅地建物取引士以外の人は行うことができません。

  • 重要事項説明。
  • 重要事項説明書への記名押印すること。
  • 契約成立後交付する宅地建物取引業法第37条に基づく契約書面への押印。

絶対に確認すべき不動産業者のチェックポイントとは?

不動産業を営む不動産業者は非常に多くあります。しかし、不動産関係の取引を行うとき、どの不動産業者に依頼しても良いというわけではありません。不動産業者に依頼する前に、かならずチェックすべき3つのポイントを紹介します。

その不動産業者が得意な業務内容は?

不動産関連の業務を手広く実行っている不動産業者でも、得意分野は異なります。例えば、賃貸と売買を行っていても、実はあまり力を入れていないというケース。そのような業者に仲介を依頼すると、スムーズに契約が進まないだけでなく、後日、トラブルに対応もスムーズに進まない可能性があります。かならず得意分野をチェックしてから、不動産業者を選ぶようにしてください。

免許番号と宅地建物取引業者名簿を必ずチェックする

正規の届出を行っていない不動産業者もあります。店舗や担当者の名刺に国土交通大臣もしくは都道府県知事の免許番号が表示されているか、チェックしてみるようにしましょう。なお、不動産業者が2つ以上の都道府県にまたがって業務を行っている場合には、国土交通大臣の免許を受けています。1つの都道府県内で業務を行っている場合は、管轄の都道府県知事の免許を受けています。

また、国土交通大臣又は都道府県知事は、宅地建物取引業を行っている不動産業者の一定事項を登載した業者名簿一般の閲覧に供するため、宅地建物取引業者名簿閲覧所を設けています。心配なときは、免許番号を調べたうえで業者名簿を閲覧してみましょう。また、国土交通省の検索システムでも、正規の宅地建物取引業者なのか調べることができます。商号を検索窓に入力してチェックしてみましょう。

出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」http://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/takkenInit.do

国土交通省が禁止した不動産業者の悪質な勧誘手口

正規の業者であっても、悪質な勧誘を行う不動産業者もあります。国土交通省で禁止している次のような手口を実施する業者には、関わらないように注意しましょう。

  • 不動産業者の名前を告げずに、不動産の勧誘を行う。
  • 氏名や勧誘の目的を明らかにせずに、不動産の勧誘を行う。
  • 勧誘を受けた側が「契約したくない」という意思を示した後も、不動産の勧誘を継続する。
  • 勧誘を受けた側が「勧誘を止めてほしい」と伝えた後も、不動産の勧誘を継続する。
  • 早朝や夜間など、迷惑な時間帯に電話や訪問により不動産の勧誘を行う。

不動産業者に仲介を依頼する際のポイントとは?

売買や賃貸を仲介してもらうためには、不動産業者を利用することが一般的です。売買・賃貸の仲介を依頼するときは、次のポイントをかならず確認して下さい。

仲介業務の内容・サービスの範囲を確認する

不動産業者の仲介業務にはどの範囲までの業務が含まれているのか、また、業務の具体的な内容についても確認しておきましょう。後日、不備に気付いた場合でも、最初に業務内容と範囲を把握しておけば、不動産業者がどの程度の責任を負うのかはっきりさせることができます。

不動産取引の仲介手数料はなぜ高いのか?

不動産取引の仲介手数料(報酬)は、上限が決められています。例えば、400万円を超える売買物件の場合は、仲介手数料の上限額は「物件価格の3%+6万円」と宅地建物取引業法で決められています。また、賃貸の場合は、貸主借主双方から受領する仲介手数料の上限額は「賃料の1ヶ月分」です。

なお、依頼者の同意がある場合は、依頼者の一方から賃料の1ヶ月分を上限として受け取ることができます。仲介手数料は不動産業者が勝手に決めるのではなく、本来、利用者と話し合って決めるべき金額です。しかし、当然のこととして法的上限額を請求する不動産業者がほとんど。納得がいく取引ができそうにない場合や、予算に限りがある場合は、しっかりと金額交渉すべきでしょう。

希望の物件を上手に探すコツ

希望の物件を探すには、取引内容に応じた不動産業者を選ぶことが最低条件となります。家族用の賃貸物件を探すなら、広めの物件や住環境にこだわる物件、学区にこだわる物件を数多く取り扱う賃貸物件メインの不動産業者を尋ねてみることができるでしょう。

また、複数の不動産業者を比較することも、希望の物件に出会うために必要なことです。1つの不動産業者だけで探そうとすると、いい物件に巡り合えないこいとや、より有利な契約条件を引き出せないだけでなく、物件を多方面から客観的に判断することもできなくなってしまいます。納得できる物件を納得できる条件で契約するために、面倒でも複数の不動産業者に何度か足を運んで探すことがおすすめです。

仲介を依頼した不動産業者が買取り転売していいのか?

売買契の仲介を依頼した不動産業者が、仲介ではなくとし自ら買主として物件を購入し、第三者に転売することは、当初の業務(仲介業務)とは異なる業務を行うことになります。しかし、双方の合意により、不動産業者による買取り・転売は不可能です。媒介と買取では売買価格に大きな違いがありますので、行おうとする取引が媒介なのか、買取なのかしっかりと確認しましょう。

不動産業者と媒介契約(仲介)を締結する時のポイント

不動産業者と媒介契約(仲介)を締結するときに、押さえておきたいポイントをまとめました。

媒介契約とは?

不動産を直接売主から購入することも、直接貸主から借りることも、合法的には可能です。しかし、依頼者が不動産契約に精通していない場合は、不利な契約を結んでしまい、大きな損害を被る可能性もあります。

不動産契約において不利な契約を締結しないための方法として、宅地建物取引業を行う不動産業者に仲介を依頼することが一般的です。このような仲介による契約を「媒介契約」と呼び、宅地建物取引士が、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努め、公正かつ誠実に事務を行い取引を進めていくのです。

媒介契約にはどのような種類があるのか?

不動産の媒介契約には、依頼者に対する拘束力の強さによって「一般媒介契約」と「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3つの種類があります。それぞれの特徴は次の通りです。

一般媒介契約

特定の不動産業者ではなく複数の不動産業者に仲介を依頼できるのが、「一般媒介契約」。依頼者は、不動産業者を通さずに自分で取引相手を見つけて契約を締結することもできます。有効期間は任意で、自由度の高い契約形態です。

専任媒介契約

「専任媒介契約」は、特定の不動産業者1社に仲介を依頼する契約形態ですが、依頼者は不動産業者を通さずに自分で取引相手を見つけて契約を締結することもできます。契約の有効期限は3ヶ月以内で、契約を更新するときも3ヶ月以内で期限を定めます。<専属専任媒介契約

「専属専任媒介契約」は、特定の不動産業者1社に仲介を依頼する契約形態で、契約中は、依頼者は不動産業者を通さずに自分で取引相手を見つけて直接契約することもできません。専任媒介契約同様、有効期限は3ヶ月以内で、契約を更新するときも3ヶ月以内で期限を定めます。

締結前に不動産業者に必ず確認すべきポイントとは?

媒介契約の種類がどのようなものであっても、一度、不動産業者と媒介契約を結んでしまうと一定期間の拘束を受けることになります。「別の不動産業者と契約すれば良かった」と後悔する前に、次のポイントをかならず確認してから契約を結ぶようにしましょう。

  • 国土交通省の定める標準約款に基づく契約か。標準約款に基づかない場合はその理由を確認する。
  • 媒介契約の種類(一般・専任・専属専任)
  • 不動産業者が負うべき責任と義務
  • 契約の有効期間
  • 物件の売り出し価格
  • 仲介手数料の額と支払い時期

不動産業者が生き残りに必死な理由

現在、不動産業者は生き残りをかけて必死に営業活動を行っています。不動産業者を取り巻く状況が厳しいのはなぜなのか、また、数ある不動産業者の中で、良い不動産業者を見分けるにはどうしたら良いのか探っていきましょう。

業界が抱える3つの不安要素

人間がこの世に存在する限り、住環境へのニーズがなくなることはありません。しかし、次の3つの理由によって、不動産へのニーズそのものが減っているのです。

(1)日本の総人口の減少

日本の総人口は減少しつつあります。単身世帯も増えてはいますが、人口減による世帯数減少も著しく、不動産へのニーズが減少しています。

(2)若者の減少、高齢化の進行

進学や通勤・世帯構成の変化などの折に、不動産へのニーズが生まれます。しかし、通学や通勤・世帯構成の変化などが起こるのは、通常、若者世代においてです。若者世代が減少し、高齢化が進行する現在において、不動産へのニーズそのものが生まれにくくなっていると言えるでしょう。

(3)物件価格の下落、家の買い替えの減少による売上げ減

デフレ経済が進む中、不動産も例外ではありません。バブル景気に踊らされて際限なく不動産価格が上昇した時代とは異なり、一部のエリアを除き不動産の価格も流通も落ち着いた状態になっています。また、価格の安い中古住宅流通の活発化や、シェアハウスといった新たな住まいが現れたこともあり、バブル景気の時代と比べると頻繁に買い替える人も減ってきています。

良い不動産業者を見分ける3つのポイント

どの不動産業者に依頼をすれば、満足できる取引ができるのでしょうか。良い不動産業者を見分けるための3つのポイントを紹介します。

ネットでの集客に積極的

不動産の情報は、新鮮さが大切です。新しい情報をできるだけスピーディに伝えてくれる不動産業者なら、希望を叶える取引ができるのではないでしょうか。情報をスピーディに伝える手段である「インターネット」をフル活用している不動産業者を検討してみましょう。

様々なサービスの取り組みに積極的

常に新しいサービスに取り組んでいる不動産業者なら、情報や変化にも敏感に対応してくれるはずです。不動産業者の公式サイトをチェックして、どのようなサービスに取り組んでいるか確認して下さい。

顧客ニーズの対応に柔軟

旧式の体質にこだわる業者よりも、率先して新しいスタイルを取り入れようとする業者の方が、依頼者のニーズにも臨機応変に対応してくれることが期待できます。業者自体の体質にも注意してみましょう。

不動産業者の営業マンと上手に付き合うコツ

誰にとっても最悪な営業マンというのは滅多にいません。つまり、営業マンの能力を充分に引き出せるかどうかは依頼者次第だと言えるのです。不動産業者の営業マンと上手に付き合うコツをいくつか紹介します。

  • 分からない事はすぐに相談しよう。
  • 営業マンの話をしっかりと聞こう。
  • 「言った」「言わない」にならないように、メモを取って確認しながら話を進めよう。
  • 感謝の言葉を定期的に伝えよう。

最後に

良い不動産と巡り合えるかどうかは、良い不動産業者が見つかるか、良い営業マンと知り合えるかどうかにもかかっています。トラブルを回避するためにも、しっかりと書類や言動を確認し、納得した上で取引を進めていきましょう。

監修:三上 隆太郎 (宅地建物取引士)