不動産投資物件には、マンションやアパート・ワンルームマンション・一戸建てなどがあります。その中で一戸建て住宅の投資は、一般的ではないため、どのようなものなのかご存じない方も多いのではないでしょうか。一戸建て住宅の需要は一定数ありますが、果たして投資対象としてなりたつのでしょうか?今回は一戸建て賃貸住宅の経営をしてみたいと思う方に、投資するメリットやデメリットなどについて解説をいたします。
一戸建て賃貸経営6つのメリット
一戸建て賃貸はマンションなどと比べると、さまざまなメリットがあります。まずは一戸建て賃貸住宅に投資するメリットから解説をいたします。
①高利回り
まず一戸建て賃貸住宅の大きなメリットに挙げられるのは、利回りのよさです。表面利回りとは物件価格に対する利益の比率を言い、表面利回り=年間収入÷物件価格の式で表されます。
例えば6部屋ある物件価格4,000万円のアパートを、各部屋7万円の家賃で貸したとします。
この場合の利回りは
7万円×6室×12ヶ月÷4000万円=12.6%となります。
一方物件価格800万円の一戸建て住宅を、10万円で貸したとします。
この場合の利回りは
10万円×12ヶ月÷800万円=15.0%となります。
アパート経営の利回り12.6%と言うのは全室が埋まっての話ですで、必ずその利回りを確保できるというわけではありません。一戸建て賃貸の場合に長期間住む人が多いので、よい借主を確保できれば約7年で投資額を回収できる計算となります。
相場より高い家賃がとれる
マンションより多少家賃が高くとも一戸建てに住みたいと思う人の需要は一定数あり、年収が高い人や勤め先から家賃補助が出る方など多くいます。それゆえ一戸建て住宅の家賃は、マンションと同規模の部屋と比べると1割以上高い家賃となる傾向にあります。
初期投資額が少なくて済む
アパートを一棟建てる場合の初期投資額は、建物の規模が大きいため一戸建て住宅と比べると大幅に高くなります。土地を所有していれば建物の建築費だけですみ、土地がない場合でも中古の一戸建てを購入しうまくリフォームすれば高利回りを実現できます。初期投資額を少なくすることで、効率のよい投資が可能になります。
②マンションより一戸建てが良いという層がいる
近年はライフスタイルの多様化により、下記のようにマンションではできない暮らしをしてみたいと思う人が多くなっています。
・子供が大きくなったので広い家に住みたい。
・アパートだと子供の遊ぶ音が響き階下の人に迷惑がかかるので一戸建てで自由に遊ばせたい
・庭で植物を育て潤いのある生活を楽しみたい
・子供に個室を、夫には書斎を持たせたい
・集合住宅では犬が飼えないので一戸建てに住みたい
・趣味のピアノを周りに気を使うことなく楽しみたい
・マンションの敷地内に駐車場がなく不便である
以上のように一戸建て賃貸住宅への需要は一定数あるため、一戸建て住宅の供給が少ない地域等はすぐ借り手が現れます。
③立地の影響を受けにくい
単身者の場合には、会社への距離・通勤時間が住まいを決める大きな決め手となり、遠い距離の住宅は敬遠されます。しかし家族世帯では会社への距離よりも周辺の住環境が重要視される傾向にあり、不便な場所でも静かで家族を守れる環境であれば、一戸建て賃貸住宅の需要が見込めます。
またマンションやアパートを建築する場合には広めの土地が必要ですが、一戸建て住宅であれば20・30坪もあれば建築が可能です。またマンションやアパートだと変形した土地や狭小地ですと無駄なスペースができ、建築が難しい場合もありますが、一戸建て賃貸住宅であれば効率よく住宅を建築できます。
④流動性が高いのでいざという時は売却も可
住宅の賃貸と言うものは比較的リスクの少ない投資と言われていますが、時には賃貸住宅の経営が不可能になる場合も想定しておかなければなりません。1棟アパートを売却する場合に、主な売却相手は投資家がになりますので買い手がなかなか見つからず、低い金額で売却せざるを得ないことが往々にしてあります。しかし戸建て住宅の場合には、投資用ではなく実際にご自身で住みたい方も顧客になりますので買い手の幅が広がり、高い価格で売却できる可能性があります。
⑤入居者の質が高い
一戸建て賃貸住宅に住む方は家賃が高いですので、入居者のクオリティが高いのが特徴です。それゆえ家賃を滞納することも少なく、きれいに使用し管理をほとんど必要としません。また庭木の手入れなども業者をいれなくても個人でしてくれる場合が多くあります。
⑥入居者の入居期間が長い
ワンルームマンションやアパートを借りる方は主に単身者ですが、一戸建て賃貸住宅はファミリー層が多く子供の学校などの関係から入居期間が長くなる傾向があります。それゆえ貸主は長期間にわたって空室やリフォーム・クリーニングの心配もなく、安定した利益を得ることが可能となります。
一戸建て賃貸経営の3つデメリットと失敗パターン
ここまで一戸建て賃貸住宅のメリットについて解説をしてきましたが、賃貸住宅経営のリスクは少ないといっても投資であり、十分気を付けることが必要になります。
①始めるのが難しい
ワンルームマンションの投資は比較的容易に始めることができますが、一戸建て賃貸住宅の場合には、初期費用が必要になってきます。既に土地を所有している方あるいは住宅を持っている方はさほど心配入りませんが、土地も住宅もない方はよほど資金に余裕のある場合は別として始めるのが難しいと言えます。土地を購入し建物をたてるとなると多額の費用が必要なだけでなく、建築期間中は収入がゼロであり貯蓄や給料を返済に当てていかなければなりません。それでも建ててすぐに入居者が見つかればよいですが、空室が発生するリスクもあり資金に余裕のある人以外はやめた方が無難でしょう。
②退去時の原状回復費用が高い
マンションやアパートと比べると、一戸建て住宅は居住空間が広くなりますので、原状回復のための費用が多くかかります。特に水回りや給湯設備などについては、劣化しやすくすべてがオーナーの負担となります。また入居者がエアコンや光ケーブルなどを取り付けたり、庭に物置や犬小屋を設置するような場合もあります。これらの費用はすべて入居者の費用となるわけですが、入居者が負担できないような場合も往々にしてあります。それゆえ一戸建て賃貸住宅はマンションやアパートと比べると原状回復の費用が多くかかるといえます。
③トレンドの変化に対応しづらい
住まいには流行があり、建築当初は新しくとも年月を経るごとに住宅のスタイルは古くなります。かつては子供部屋をつくることがトレンドでしたが、現代ではむしろ広い空間に家族が集う形が好まれています。また設備等も日々進化し、借主は新しい便利な設備を要望します。借主の要望に応えるためには一戸建て住宅でもそのようなトレンドに対応したいところですが、改築するには多額の費用を必要とし、リノベーション中は家賃収入がゼロとなってしまいます。しかしあるていど要望に答えていかないと、入居者がいなくなってしまう恐れもあります。
一戸建て賃貸経営で失敗するパターン
一戸建て賃貸住宅でよく失敗する例は、土地を購入し家を建てる場合におこります。新たに土地を購入して家をたてるとなると、莫大な費用がかかります。賃宅住宅を建ててすぐに借り手が見つかればよいですが、そう簡単にはいきません。住宅ローンは返さなくてはならないし、税金は支払わなければなりません。原資となる家賃収入がゼロとなると、最悪の場合は苦労して手に入れた一戸建て賃貸住宅を、手放さなければならない羽目になるでしょう。
一戸建て賃貸とワンルーム・分譲マンション・一棟物件との比較
不動産経営の対象としては、一戸建て賃貸ワンルーム・分譲マンション・一棟物件などがありますが、どの物件が投資しやすいのでしょうか。今まで述べてきた点を中心に一覧表に退避いたします。
ワンルームマンションと一戸建て賃貸
一戸建て賃貸は供給が少ないため、多少高い家賃でも借り手がつき利益を出しやすい投資です。入居期間が長く、空き家になることも少ないのも大きなメリットです。
ワンルームマンション | 一戸建て賃貸 | |
需給 | 比較的容易に始められるため、供給が過剰気味 | 供給数が少なく、需要が多く客付けがしやすい |
資金 | 物件が安く、少額資金から始められる | 土地がない場合には、資金が多く掛かる |
入居期間 | 入居期間が短く、空室率が高い | 入居期間が長く、空室率は低い |
間取り | 一部屋なので、変更できない | 間取りは比較的容易に変更ができる |
立地 | 立地が良くないと入居者は期待不可 | 立地は悪くとも、住環境が良ければよい |
出口戦略 | 区分所有の為土地比率が低く、建物が老朽化する前に売却する必要がある | 土地の価値が下がらない限り売却は可能である |
リスク分散 | 異なる場所に物件を持つことでリスク分散できる | 何戸も所有しなければ、リスク分散はできない |
分譲中古マンションと一戸建て賃貸
一戸建て賃貸住宅に居住を希望する人は、それぞれライフスタイルがあり住みたい理由があります。それ故一般的に入居者の質は良く入居期間が長いのが特徴です。
分譲中古マンション | 一戸建て賃貸 | |
資金 | 比較的少ない投資金額で購入できる | 土地がない場合には資金が多く掛かる |
原状回復 | 原状回復の費用はさほど掛からない | 原状回復のための費用が多く掛かる |
利回り | 高い利回りは得にくい | 高利回りが期待できる |
入居者 | 入居期間は比較的短い | 入居期間は比較的長い |
生活様式 | ライフスタイルにこだわりがない | 一戸建てに住みたい理由がある |
トレンド | 住宅の流行に対応しやすい | 費用面と収入面から対応が難しい |
一棟アパート・マンションと一戸建て賃貸
一棟アパートやマンションは莫大な費用が掛かりますが、一戸建て賃貸は土地があればさほど資金面での心配はありません。売却する場合には、個人が買い手になりますので比較的用意に売ることができます。
一棟アパート&マンション | 一戸建て賃貸 | |
売上・収益 | 高い売り上げが期待できる | 表面利回りが高い |
初期投資額 | 建設費がかかるので多大な資金が必要 | 土地があれば、多額な資金必要なし |
受託の管理 | 部屋数が多いと管理が大変 | 居住者対応もあり、差ほど大変でない |
共用部分 | 電気代など共用部分の費用がかかる | 共用部分の費用は必要としない |
流動性 | 売り先は投資家であり売却先が限られる | 個人が買い手で売却は比較的容易 |
【一戸建て賃貸経営はこんな人におすすめ!!】
次のような条件の人は、一戸建て賃貸住宅の経営がおすすめです。
・すでに土地を持っていること
・郊外の土地であるが通勤・通学は可能なこと
・必ずしもきれいな形の土地でなくとも構わない
土地を所有していないと、建築には莫大なお金がかかりますのでリスクは高いと言えます。また変形の土地でも住宅の建築が可能であれば、一戸建て住宅を経営する上での問題点となりません。
転勤などで自宅を空けてしまう人
転勤などの為しばらく自宅に居住できなくなった方は、賃貸に出すことがよいでしょう。空き家にしておくと家は痛みやすく、将来転勤先から戻ってきたときに大幅なリフォームをしなければならないことになります。賃貸に出せば借主が掃除もしてくれますし、家賃の収入を見込め一挙両得と言えます。
土地をすでに所有している人
土地を所有している人は、その上に建物をたてれば良いので費用は建物代のみですみます。また土地を更地にしておくと高い税金がかりますが、賃貸住宅とすれ土地の固定資産税は評価額の1/6に都市計画税は1/3に軽減することができます。更に相続時には、借入金を相続財産から引くことができますので大きなメリットとなります。
土地を持っていないなら中古一戸建ての購入
土地を持っていないならば、土地を新たに購入し家を建てるのではなく、一戸建ての中古住宅を購入することをおすすめします。中古住宅であれば新築よりも安く手に入れることができますので、リスクを低減できます。また中古住宅は家そのものや設備が古いと言うデメリットがありますが、リフォームして自分の考えていた通りの住宅に変えられると言うメリットがあります。
戸建て賃貸経営を成功させる3つのポイント
それでは次に戸建て賃貸住宅を成功させる上の欠くことのできない条件をあげてみます。
①賃貸需要があるエリアかよく吟味する
まず一戸建て賃貸住宅を経営しようとしているエリアが、需要があるかどうか検討することが大事です。いくら立派な住宅を作っても借り手がなくては経営が成り立ちません。ファミリー層がターゲットになりますので、都心部あるいは通勤通学が可能でなければなりません。
②中古一戸建ては老朽化のチェックを慎重に
中古の一戸建てを購入し経営しようと思う場合には、白アリ被害・防水・配管などチェックする必要があります。住宅のチェックをきちんとしておかないと、後々に思わぬ費用がかかることがあります。リフォーム代に費用がかかって利益がでないようでは、なんのために購入したのかわからないことになります。
③出口戦略を描けるエリアか見定める
不動産の投資は利回りだけでなく、出口戦略も考えておく必要で将来の売却を考えて投資しなければなりません。そのためには住宅が老朽化したときに、土地だけでも価値があるのか買い手が見つかるエリアであるのか検討しておくことも必要なことです。
最後に
いかがでしたか?
一戸建て賃貸は需要のわりには供給は少ないですので、競争も少なく利益をとることが可能です。また売りたいと思うときには、流動性が高く比較的容易に売却することも可能です。しかし土地を持っていない人が、一戸建て賃貸住宅の市場に参入するには大きなリスクがあります。他の形態の投資も検討にいれ、そのメリット・デメリットを十分に把握し自分にはどの投資方法が向いているか考える必要があるでしょう。