不動産にITを活用した“不動産テック”産業に注目が集まっています。不動産テックとは何か、具体的にはどのようなサービスを指しているのかなど、今後の不動産業界を知る上で欠かせない不動産テックに関する情報を集めました。不動産業界の新しい流れ“不動産テック”に乗り遅れないためにも、ぜひご覧になって下さい。

不動産テックとは

不動産テックとは、現在どのような意味で使われている言葉なのでしょうか。また、不動産テックで可能になるもの、そして、不動産テックが進むことで予想される未来についても探っていきましょう。

不動産とテクノロジーを融合させた造語

不動産テックとは、不動産とテクノロジーを融合させた造語です。アメリカでは「Real estate technology」と呼び、日本ではそのまま翻訳して「不動産テクノロジー」、省略して「不動産テック」と呼ばれるようになりました。

ITの発達などで、不動産の現場支援を行う

不動産テックのテクノロジーは、主にITを指します。ITを活用することで不動産関連業務に従事する人々の現場支援を行います。例えば、かつては不動産業者のスタッフが顧客に物件を紹介するときは、手書きの物件資料が必須でしたが、現在では、物件情報をオンラインで紹介したり、顧客の好みに合う物件をタブレットで検索して瞬時に紹介したりすることが可能です。

顧客に対する情報提供サービスも充実しつつある

不動産テックで恩恵を受けているのは不動産業界の人々だけではありません。ITを活用した不動産情報提供サービスにより、顧客も不動産会社に行かずに物件情報や価格に関する情報を得られるようになっています。家に居ながら自宅やその他の不動産の売却価格を査定したり、賃貸物件を探したり、実際に内覧する約束を取り付けたりできますので、不動産テック発達する前と比較して、不動産を身近に感じる環境が整ってきていると言えるでしょう。

投資商品にも不動産テックの波が及んでいる

自宅で検索できるのは、居住用の不動産だけではありません。投資用物件も不動産テックを活用して簡単に検索することができますし、金融機関のオンラインサービス(金融とITを組み合わせることをfinance technology(fintech、フィンテック)と呼びます)も活用すれば、家に居ながらにして融資から投資までをトータルで検討することも可能なのです。

不動産市場の透明化と利便性の向上に貢献している

新築住宅などの一部の物件を除けば、不動産の価格は基本的には“言い値”です。査定を担当したスタッフの価値観や業者と顧客との関係によって、価格が大きく上下することもあります。しかし、不動産テックによって誰でも不動産の相場を知ることができるようになると、不動産市場は透明化していくことが期待できます。

また、実際に不動産業者まで足を運ばなくても物件の査定や検索ができることも、不動産テックのメリットです。不動産テックによって、誰でも気軽に不動産を売買できる世の中が実現しているのです。

将来的には仲介会社が不要になるとの予測もある

現在、すでに、不動産の検索だけでなく内覧予約や契約までのすべての工程をインターネットで実施できるサイトやアプリが誕生しています。将来的には、不動産仲介業者すら不要になると予測されています。

不動産テックの実例

実際に利用されている不動産テックの実例を紹介します。自宅における不動産売買が、もうすでに現実のものとなっているのです。

VRを使い遠隔地でマンション内覧が可能

VR(ヴァーチャルリアリティ、仮想現実)の技術を用いて、遠隔地でマンションの内覧が可能です。忙しい人も気軽にマンションの内覧ができますし、気になる部分を何度も映像で確かめることができますので、現地で内覧するよりも良いと考える人も少なくありません。

VR空間で家具の配置や眺望などもチェックできる

VRを使うと、建物の階数によって異なる眺望の違いを確認することができます。モデルルームに実際に行ったとしても、マンション自体がまだ建設されていないなら眺望は確認できませんよね?しかし、例えば三菱地所で実施しているによるサービス活用すれば、階数による眺望の違いや時間・天気による部屋の明るさなどをチェックすることができるのです。

また、家具の配置もシミュレーションできます。モデルルームの間取りではなく購入を予定している間取りに家具を配置することができますので、実際に住んだらどのようになるのかイメージしやすくなります。

出典:三菱地所「バーチャルリアリティ技術を活用した没入体験型営業ツールを住宅仲介売買の営業現場にも拡大」
https://www.mec-r.com/news/2017/2017_0601.pdf

ネット上での重要事項説明も不動産テックの発展で可能になった

不動産の契約を行うときは、重要事項説明をかならず受けなくてはいけません。そのため、今までは、不動産業者の人と実際に会わずに不動産契約を取り交わすことは不可能でした。しかし、不動産テックの発展で、ネット上で重要事項説明を受けることが可能になりました。賃貸契約だけでなく売買契約も、オンライン上で実施できる時代になったのです。

不動産情報サイトも不動産テックの一環

さまざまな不動産テックがありますが、一般顧客にとってもっとも身近な不動産テックが“不動産情報サイト”なのではないでしょうか。少し前までは不動産業者に行かないと最新の物件情報を入手することはできませんでしたが、不動産情報サイトを活用することで、家にいたまま最新の物件情報を調べることができるようになっています。また、不動産情報をただ単に入手するだけでなく、お持ちの不動産の査定を行ったり、複数の業者で査定価格を比較したりすることも可能になっています。

不動産テックで価格査定サービスが登場

不動産を売却しようかどうか悩んでいるときは、まずは不動産を査定してもらい、おおよその価格を知る必要があります。不動産の価格査定サービスも、不動産テックによって大きく変化しているのです。

ビッグデータの収集と分析によって、売買価格の予測をしてくれるサービスが登場

売却したい物件の近くの物件情報や路線価格、売買の相場などの大量のデータを収集し、人工知能(AI)を活用して瞬時に分析して査定価格を割り出すHAYAGAIなどのサービスも出てきています。ビッグデータから査定価格を導き出しますので、実際に売却する価格の近似値が出ることが、従来の人工知能を活用しない査定サービスとは異なるところです。

【参考】HAYAGAIhttps://www.hayagai.com/

賃貸価格や利回りの予測もAIが算出

人工知能で予測するのは物件の査定価格だけではありません。賃貸物件として市場に出したときの家賃や利回りなども瞬時に予測してくれるのです。つまり、不動産売買だけでなく不動産投資も不動産テックの出現でハードルが低くなったと言えるのです。

売却、賃貸の両面で活用されている

不動産テックは、売却だけでなく賃貸の面でも活用されています。賃貸物件を不動産検索サイトで探し、気に入った物件があればそのまま契約することも可能になっています。不動産と言えば「手間や時間がかかる」面倒なものでしたが、不動産テックの出現によって誰でも利用できる気軽な存在へと変化してきているのです。

価格の精度はビッグデータの収集で徐々に上がっていく

不動産に関する情報量が増えることで、ビッグデータを活用する不動産査定の精度はますます上昇していきます。今後、さらに実際の買取価格とAIによる査定価格の差がなくなっていくでしょう。

その他の不動産テックによる新サービスとは

物件検索と査定サービス、賃貸契約・売買契約サービス以外にも、不動産テックによって提供されるサービスはたくさんあります。その中でも特に注目を集めている「クラウドファンディング型不動産投資サイト」「シェアリングサービス」について探っていきましょう。

クラウドファンディング型不動産投資サイトの登場

ロードスターキャピタルやインベスターズクラウドなどのクラウドファンディング型の不動産投資サイトを活用すれば、1万円ほどの少額からでも不動産投資に参加することができます。不動産投資に小口で参加する投資信託型商品(REIT)をさらに利用しやすく、さらに多くの情報を共有できるようにしたものが、クラウドファンディング型の不動産投資と言えるでしょう。

【参考】ロードスターキャピタルhttps://loadstarcapital.com/ja/index.html
TATERUファンディングhttps://www.tateru-funding.jp/

クラウドファンディング型不動産投資では小口からの投資が可能

不動産投資というと多額の資金が必要なイメージがありますが、クラウドファンディング型の不動産投資なら、1万円ほどの少額から実施することができます。つまり、手元に余剰資金がない人でも、金融機関から融資を得ずに不動産投資を始めることができるのです。

人と物を結びつけるシェアリングサービス

使っていない土地や物件を活用したいと考えている人もいるでしょう。売却してしまえば売却価格しか手に入れられませんが、売らずに活用すれば土地の価値以上のお金を生み出すこともできるのです。スペースマーケットやスペイシーなどのサイトでは、撮影やテレビ番組、会議、イベントなどに土地や物件を貸し出すことができ、気軽に空いている不動産を使って収益活動を実施することが可能です。

【参考】スペースマーケットhttps://spacemarket.com/
スペイシーhttps://www.spacee.jp/

空いている土地や物件を掲載し、必要とする人にネット経由で紹介

登録は簡単です。空いている土地や物件の情報をサイトに提供すると、必要とする人をネット経由で紹介してもらえます。サイトを活用することで、物件を紹介する手間と利用者を探す手間、利用代金を回収する手間を省くことができるのです。

まとめ

今後もますますITとビッグデータを活用した不動産テックサービスが誕生していくと予想されています。不動産テックサービスを賢く活用することで、手間と時間をかけずに不動産とつきあい、不動産を利用し、不動産によって利益を得ていくことができるでしょう。