一口に「不動産」といっても、戸建にマンション、事務所ビル、土地、新築か中古なのか、マイホームなどの自己利用か不動産投資用なのかといったように種類も目的も様々ですが、共通して注意すべき点として「立地選び」があります。

前編では、これから不動産購入を考える方が必ず押さえておきたい注意するべき点を3つ解説します。

Point1. 街の将来は?

これから予測される急速な人口減少と高齢化を受けて、あなたが購入しようとする不動産の場所が今後どのように変化していくのかを見据えた上で選定することはとても重要です。不動産の価格は需要と供給によって決まりますので、人口動態の変化は街を変化させ、将来の資産価値に影響を与えます。

自治体の人口統計や最寄駅の乗降客数の推移は、インターネットで簡単に調べることができます。該当エリアにおいて、現在人口が増加傾向にあるのか、ゆるやかに減少しているのかなどは、客観的な数値から確認しておきたいポイントです。

2050年、人口が半分以下になる地域と増加する地域

平成26年7月、国土交通省は、急速に進む人口減少や巨大災害の切迫等に対する危機意識を共有しつつ、2050年を見据えた国土づくりの理念・考えを示した「国土のグランドデザイン2050」を公表しました。

時代の潮流と課題として、急激な人口減少に少子化、異次元の高齢化の発展などを示した上で、2050年には、人口が半分以下になる地点が現在の居住地域の6割以上、2割の地点では人が住まなくなることを予測しています。人口が増加する地点の割合は約2%で、主に大都市圏に分布されています。

※1)国土交通省「国土のグランドデザイン2050」パンフレットより
http://www.mlit.go.jp/common/001069201.pdf

コンパクトなまちづくり、立地適正化計画

そこで都市機能を持続可能にするために考えられたのが、コンパクトなまちづくりを目指す「立地適正化計画」です。都市再生特別措置法に基づき、医療・福祉施設や商業施設、住居がまとまって立地し、高齢者をはじめする住民が公共交通機関によって生活に必要な施設にアクセスできる様に、まちづくりと地域交通の再編を行う計画です。

既に全国468都市で具体的な取り組みが行われており、首都圏も決して無関係ではありません。東京都では、八王子市、府中市、日野市、福生市、狛江市の5つの市で具体的な取り組みが進められています。(平成31年3月31日時点)

取り組みを進めている市町村では、住民の意見を汲み入れながら計画策定し、都市機能誘導区域や居住誘導区域を定め緩やかに誘導します。購入予定の不動産のある自治体で、立地適正化計画の取り組みが進んでいるのか、既に策定されている場合には、どういったエリアとなるのか確認しましょう。

※2)国土交通省「立地適正化計画」パンフレットより http://www.mlit.go.jp/common/001195049.pdf
※3)国土交通省「立地適正化計画策定状況」より http://www.mlit.go.jp/common/001287978.pdf

Point2. どんな災害リスクがあるのか?

自然災害の多い日本では、100%安全だと言い切れるような場所は存在しないかもしれません。しかし、地盤が弱い土地や浸水の恐れが高い土地であるとあらかじめわかっていれば、避けることができます。

不動産購入に際しては「重要事項説明」として宅地建物取引士が買主へ必ず説明しなくてはならない項目が定められています。災害については、過去に浸水や土砂崩れがあった場合は重要事項として記載説明しなければなりませんが、これから起こるかもしれない災害リスクは、現状では重要事項説明の項目に含まれていません。

そのため、あらかじめ自分で確認しなければ、知らずに購入してしまう可能性があるのです。ここからは、災害リスクを自分で調べる方法について解説します。

ハザードマップ ~様々な災害リスクを知る~

国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、洪水、内水、土砂災害、高潮、津波、火山、ため池、震度被害(揺れやすさ)、地盤被害(液状化)などの様々なリスク情報や全国の市町村が作成したハザードマップを確認することができます。

身のまわりにどんな災害が起きる危険性があるのか、どこへ避難すればよいのかなど防災に役立つ情報が集まっていますので、必ずチェックしておきましょう。

※4)国土交通省ハザードマップポータルサイト:https://disaportal.gsi.go.jp/

古地図 ~昔、どんな土地だったのかを知る~

今は宅地でも、昔は池や沼、田んぼ、海や川だった土地かもしれません。古地図から、昔の土地の利用形態を調べることができます。大きな図書館や役所の情報コーナーで閲覧できることが多いほか、大きな書店で売っている場合もあります。

インターネット上でも歴史的農業環境閲覧システム(関東地方のみ)」やグーグルアースの「ラムゼイ歴史地図」などで、昔の土地と現在の土地の利用状態を見ることができます。

水に関することだけでなく、昔は墓地や監獄だったということがわかる場合もあります。こうしたことも、購入後に知るよりも、あらかじめ知っておきたい情報です。

※5)歴史的農業環境閲覧システム(昔と現在の土地利用状況が閲覧できる/関東地方のみ)https://habs.dc.affrc.go.jp/

周辺地域の地盤調査の結果 ~地盤を知る~

地盤については、周辺地域の地盤調査の結果を調べることができます。民間の地盤調査会社が、実際に地盤調査を行った場所と結果をマップにおとしこんだものを地形で見る軟弱地盤マップGEODASとして公開しています。

調査の結果、良好な地盤と判断された場所や、地盤改良を行った場所などを見ることができます。しかしマップを見てもわかる様に、わずか数十メートル離れた場所同士でも調査結果が異なることがあります。実際には調査してみなければわからないということも、念頭においておきましょう。

※6)地形で見る軟弱地盤マップGEODAS:http://www.jiban.co.jp/geodas/guest/index.asp

Point3. 資産価値の変化は?

人生100年時代などと言われる今日では、マイホームであっても、投資物件であっても、購入した不動産を今はまだ想定することができない理由で売却するかもしれません。そう考え、備えておくことが大切です。

資産価値とは、不動産を財産として評価した価格で、主に市場での取引価格を表します。将来、資産価値はどのように変化するのか、あらかじめ押さえておきたいポイントです。

土地の価格も変化している

毎年3月に公表される「公示地価」をご覧になったことがありますでしょうか。「公示地価」とは、国土交通省が1年に1回標準値として定められた地点の調査を行い、正常な価格として公示した価格のことをいいます。

不動産の価格はなかなかとらえにくいものですが、この公示地価が土地取引の目安となっています。人口の変化や取引状況から土地の価格も毎年変化しており、公示地価の推移をみることによって、どのように地価が変化しているかがわかります。

不動産購入に際しては、現在上昇傾向にある場所なのか、下落傾向にある場所なのか、あらかじめチェックしておきたいポイントです。公示地価は全国地価マップで調べることができます。

※7)全国地価マップ https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

木造の建物は築22年で資産価値はゼロ!?

建物には構造別に法定耐用年数が定められており、建物の評価に大きな影響を与えています。法定耐用年数とは、税法上の減価償却費の算定に使用される建物の耐用年数のことですが、実際の建物の寿命はこの限りではありません。

木造住宅であれば築22年、鉄筋コンクリ―ト造であれば築47年などと定められており、法定耐用年数を超えた建物の評価は、ほぼなくなってしまいます。つまり、建物部分は実質ゼロ円で手に入れられる場合も多く、状態のよい建物をみつけることができればお得な買い物だともいえます。

建物の構造別法定耐用年数(住居用のもの)※8)国税庁

もし賃貸したら、いくらで貸せるのか?

土地や建物は、自己利用する以外に住居や事務所、駐車場などとして賃貸することができます。マイホームなど自己利用が購入の目的であっても、既に入居者がある投資物件であっても、今現在、新たに賃貸した場合にどれくらいの賃料で貸すことができるかはチェックしておきたいポイントです。

急なライフスタイルの変化でしばらく使用しなくなったとき、売却せずに一時的に賃貸した方が望ましい場合もあります。投資物件では、10年以上前から入居している賃借人については、契約当時の高い賃料となっている場合があります。そうした部屋で今後退去となり新たに募集をする場合に、同じ賃料で入居者がみつかるとは限りません。

いずれにしても現在の賃料相場を把握しておくことが大切になります。賃料相場は、各種不動産のポータルサイトで調べることができます。見える賃貸経営では、エリア毎の掲載物件数、賃料や入居条件の動向などを見ることができます。

※9月)ライフルホームズ 見える賃貸経営:https://toushi.homes.co.jp/owner/

もし新しく建物をたてるなら、規模や用途は?

既に建物が建っている不動産を購入する場合であっても、いつ自然災害や火災などによって建替えが必要になるかわかりません。もし、数年後売却した場合、その土地に新築できる建物の規模や用途によって不動産価格は変わります。

そのため、既に建物のある不動産を購入する場合であっても、敷地にどういった制限あるのか、どういった活用の可能性があるのかは、把握しておかなくてはなりません。

(これらの情報の読み解き方や注意点は、後編で解説致します。)

まとめ

いかがでしたでしょうか。前編では不動産購入で注意するべき点として「立地選び」について解説しました。建物は、仮に瑕疵がみつかったとしても、修繕や建替えで解決ができる場合があります。

しかし立地はそうはいきません。「不動産は立地がすべて」などといわれる所以はここにあります。最近では多くの情報をインターネットで調べることができますから、どのようなリスクがあるのか、きちんと把握した上で購入したいものです。

後編では、販売図面や重要事項説明の項目の中などから、注意すべき点を解説します。

【記事筆者】

あらい かずみ
あらい かずみ
ファイナンシャルプランナー・AFP、一級建築士、宅地建物取引士で不動産投資家。建築・不動産業界で10年勤務の後、フリーランスとして活動する2児の母。東京都在住。築40年になる小さな戸建に耐震補強含むリノベーションを行って住まう。“いい物件を選び、丁寧に手入れして、長く大切に住まう“ 家選びや暮らし方を提唱している。