アパート経営をする場合は、原則として毎年所得税の確定申告をする必要があります。青色申告をすることによって、節税につながる各種恩典の活用が可能になりますが、青色申告をするためには、事前の承認申請や一定の帳簿の作成などの条件があります。そこで、青色申告に必要な条件などについてご紹介します。

☆無条件で青色申告できるわけではない!?申告に必要な準備とは

青色申告は無条件でできるわけではなく、一定の手続きが求められます。具体的には、「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。申請書は、国税庁のホームページからダウンロードすることができますので、まずはこの書類に必要事項を記入し、税務署に持参または郵送で提出します。

自分用の控えが必要な場合は、2部作成して1部に受付印を押印の上、返してもらうとよいでしょう。

郵送の場合は、料金分の切手を貼った返信用封筒を同封しておけば返送してもらえます。その後、税務署長が承認すれば青色申告制度を使うことができます。承認の連絡はないのが一般的ですが、申請した年末までに連絡が来なければ承認されたものとされますので心配はいりません。

青色申告承認申請書の提出期限は、適用を受けたい年の3月15日までとされています。ただし、年の途中で開業した場合は、開業から2カ月以内に申請書を提出すれば問題ありません。新たにアパート経営を始める場合は、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出することをおすすめします。

☆青色申告の義務!毎年作成する必要書類って?

青色申告をすると数多くの節税につながる処理が認められるようになりますが、一方でやらなければならないこともあります。

やるべきことの1つ目は、帳簿の備え付け、記録、そして保存です。複式簿記と呼ばれる帳簿作成ルールに則って仕訳帳や総勘定元帳などを作成するとともに、各取引の証拠となる領収書などの証憑を保存する必要があります。やるべきことの2つ目は、貸借対照表の作成です。青色申告をする場合、申告書一式の中に、決算書である損益計算書と貸借対照表を記載するページがあります。そのため、損益計算書だけでなく貸借対照表作成し確定申告書に添付する必要があるのです。帳簿や決算書を簿記のルールに則って作成する必要があると知ると、青色申告することを尻込みしたくなる人もいるようです。

しかし、作業自体はそれほど難しいものでもありませんし、貸借対照表を含む決算書を作成することで、賃貸アパート経営の実態がより把握しやすくなるメリットもあります。市販の会計ソフトやクラウド会計などを利用すれば、簿記のルールを知らなくても帳簿の作成や保存、決算書の作成も簡単に対処できるでしょう。

☆65万円の特別控除も条件付き!?受けるためには…

青色申告に必要とされる帳簿や決算書は、大きく分けると2種類の作成方法、細かく分けると3種類の作成方法が認められています。これまでご紹介してきた複式簿記による帳簿や決算書の作成が原則的な作成方法ですが、もう1つ簡易簿記による記帳も認められています。簡易簿記は、さらに2つのタイプに分けられます。

1つは、家計簿の作成とイメージが似ている現金主義による作成方法、もう1つは簡易簿記と呼ばれる方法です。ただし、2つの理由から、原則的な複式簿記の方法で帳簿を作成する方が有利だといわれています。

1つは、市販されている会計ソフトやクラウド会計のほとんどは、原則的な方法による帳簿作成を前提としているからです。現金主義などにも対応してはいますが、機能が限られるなど会計システムの能力を活かしきれず、かえって非効率になる可能性があります。

もう1つの理由は、簡易簿記を選択した場合、青色申告特別控除が最大でも10万円止まりになってしまうことです。複式簿記により作成している場合は、不動産所得のみ発生している場合でも、5棟10室と呼ばれる事業規模を満たせば65万円の特別控除が受けられますので、節税面で有利になります。