アパートを経営していくと、家賃収入などの不動産所得が入ってきます。不動産所得には、一定の税金がかかってしまい、課税対象額は、総収入金額から必要経費を差し引くことで求めることが可能です。実は、必要経費のなかに「支出を伴わない必要経費」というものがあります。今回は、そんな支出を伴わない減価償却費についてご紹介します。

☆そもそも減価償却費とは?アパート経営との関係性

そもそも減価償却費とはどのようなものなのでしょうか。建物には経年劣化があり、新築当初の価値は高くても、しばらく年が経ってしまうと建物の価値は下がっていってしまいます。アパートなどを経営する場合、耐用年数を基準として、減価償却費を計上しなければなりません。

減価償却費というのは、その価値の減少分を見積もって費用計上する費用の事を指しています。アパート経営の場合、どのような造りかによって法定耐用年数が異なっており、償却率も異なります。

例えば、木造モルタル住宅の場合、法定耐用年数が20年、償却率は0.050(定額法)となっています。

アパート経営をする上で、減価償却費は必ず計上しなければならず、その費用は必要経費として算入できるため、税金の額を安く抑えることができます。法定耐用年数や償却率は、国税庁のホームーページから参照することができますので、必要に応じて活用してください。

☆知らなきゃ損!?定額法と定率法って?

減価償却費の算定には、定額法と定率法の2種類があります。まずは定額法からみていきましょう。

定額法は、「毎年同じ額を費用として計上していく方法」です。

計算式は、「取得原価 × 定額法の償却率 × 使用月数/12カ月」

で求めることができます。減価償却費は、毎年計上するため、使用月数は、1年間の中でどれくらい使っているかを当てはめてください。例えば、1年中住んでいるという場合は、12カ月と当てはめれば問題ありません。

次に定率法です。定率法とは、「最初の減価償却費が多く、年々費用計上額が減少していく方法」です。

計算式は、「(取得原価-減価償却累計額)× 定率法の償却率 × 使用月数/12カ月」

で求められます。ただし、注意しておきたい点があります。アパート経営で減価償却費を行う場合、

平成10年4月1日以降に取得した建物であれば、定額法しか使うことができません。

既存の建物や、平成10年3月31日までに取得してあり、税務署に定率法で減価償却を行うと届出をしている場合はこの限りではありません。つまり、今から新しくアパート経営をしたいと考える場合、減価償却費の算出には、定額法しか使えないということです。

先ほど、「取得」という言葉を使いましたが、国税庁の見解では、建物の購入だけではなく、相続や遺贈、贈与によって得た場合でも取得の対象になると定めています。そのため、親から譲ってもらったアパートを経営しようとした場合、元々は定率法によって減価償却されていたアパートでも、新たに取得したことになるため、定額法にて減価償却をしなければなりません。

☆減価償却費を増やすことで得られるメリットとは?

減価償却費を増やすことで得られるメリットは、税金の減額です。減価償却費は経費として認められているため、所得税を減額することができます。アパート経営をしていると、所得税のほかに住民税や事業税がかかります。これら税金の額は、「総所得金額-必要経費」で求められる課税対象額にそれぞれの税率をかけて求めることができます。先ほどご紹介したように減価償却費は必要経費として認められていますので、減価償却費を増やすことで税金の減額という大きなメリットを得ることができます。