こんにちは。元3メガ系証券会社でFXのスポットディーラーをしていたスイーツ大好きの中島 翔です。

2018年仮想通貨のマーケットは、2017年とは一転し大きく取引量は低下、価格は大幅下落する動きをしました。そのような動きの中、各国の規制や法令整備、ICOやSTO等の規制に対するフレームワークの策定が行われ、ある意味、新技術が進化する過程における当たり前の動きだと捉えることもできます。

日本は仮想通貨の先進国と呼ばれ、規制に関しても、他国のモデルになると言われ参考にする国々も出ましたが、厳格な規制になりつつあることから、日本の個人投資家は2018年の大幅な下落によりマーケットからは撤退しています。

ここでは現在の仮想通貨のマーケット環境と、日本と海外の理解の違いについてご説明したいと思います。

2018年後半からのポジティブな方向が継続

仮想通貨の値動きをみても、2018年は大幅に下落したという印象が大きく頭に焼き付いている方も多いと思います。ビットコインでみても、対円で220万円超から一時36万円前後まで下落する等、ボラティリティを見る限りバブル崩壊と言われても仕方がない動きとなっています。

しかし、2018年の一年間を全て一つの枠組みで捉える方がいるとしたら少し注意した方がいいかもしれません。

2018年前半は、時期的に1月辺りから相場が反転、下落ムードが続きました。2018年の秋口辺りまでは確かに仮想通貨マーケットに対して、各国かなり急激に厳しい規制をかけてきました。世界で起きたことは、例えばAML(アンチマネーロンダリング)やKYC(Know-Your-Customer)の厳格化、ETFの承認不可等です。日本でも金融庁が仮想通貨交換業者は登録制として業務改善命令を各取引所に通達、秋口にはzaifのハッキング等、値動きにはマイナスなことが様々起きました。

一方で、世界では仮想通貨やブロックチェーンの産業に対してポジティブな内容もあることを忘れてはいけません。

ステーブルコイン(価格変動(ボラティリティ)が小さい通貨)の普及、仮想通貨の法整備の進展、デリバティブ商品の開発開始、各大手金融機関がカストディアンサービス事業を計画等、法整備やDappsのような非中央集権的なものではなく、オープンソースで基盤の開発が進む中、仮想通貨の値動きというよりは、その技術を利用した新しいビジネスアイデアの模索や進展等が出ています。

つまり、ボラティリティが低下していること = 仮想通貨の衰退ではなく、過度なボラティリティを抑制することは新技術を発展させるためには重要なことであり、当たり前の動きとも言えるでしょう。

仮想通貨の取引量はどうなっているのか

2018年は世界的に仮想通貨全体の取引量は一体どうなっているのかご説明します。

結論からお伝えすると、

「2017年の大幅に上昇した取引量あたりまで戻ってきている」

となっています。

でも、価格は上がっていないし、個人投資家が仮想通貨の売買に対して関心を失っている中、どうして取引量は維持されているのかということがポイントであり、このポイントを知っておくことで、なぜ、2018年に「各国法整備が進み」、「新たなビジネスモデルが出てきているのか」が理解できると思います。

世界の取引量の詳細を見てみると、個人投資家の取引量が急激に減少する中、実は法人取引や大口投資家(ヘッジファンドやアセットマネジメント等)の取引量が大きく増加しているというデータがあります。特に2018年は、トレンドフォローすることを基本的な戦略としているファンドや大口投資家が多かったことから、ポジション動向を見ても、一年通じてBTCをショート(空売り)している投資家が多かったことが如実に現れています。

つまり個人投資家が一旦撤退する中、2017年の動きを見て仮想通貨トレーディングデスクや投資を計画していた法人が、計画を無くすこともできないところも多く、2018年立ち上がったためにこのような動きになっていると想像ができます。

日本と海外の動きの違いについて

日本では2018年コインチェックのハッキング事件を受けて、海外と同様にAMLやKYC、取引所に対しての業務改善命令等、基本的に厳格化の方向だけ進めていたことがわかります。

また秋には、JVCEAと呼ばれる日本版仮想通貨の自主規制団体を発足させ、金融庁と各仮想通貨交換業者の間で規制を策定するようになりました。

海外ではスピード感を持った法整備が進んでいる中、日本はJVCEAのメンバーがFX業界出身中心であることから、十分な仮想通貨や流動性が大事なマーケットに対しての金融知識を備えているスタッフが不足していて、金融庁の過度な規制や、政治絡みからJVCEAに対して様々な依頼を行う等、自主規制団体が仮想通貨の発展に寄与するというよりは、金融庁の御用聞き状態になってしまっています。

そして日本国内では法整備がなかなか進まないことから、日本国内でのビジネスチャンスを模索するため、海外の業者と提携し、別のプロダクトで新商品を開発し生きる道を探し始めている取引所も出てきている状態です。

仮想通貨の取引高を見ても、2017年までは日本は世界2位のマーケットでしたが、昨年は4位まで後退し、明らかに世界から遅れを取っています。

そして2019年からは、値動きが激しい仮想通貨でも取引高は増えず、各取引所の手数料収入も実は上がっていないことを考えると、個人投資家の仮想通貨に対しての興味は薄れていると言えるでしょう。

しかし、海外では取引量が増加しており、法人やヘッジファンド等大口取引が増加しているということは頭に入れておくべきです。

今後の動き方を判断する材料

現在BTCは対円で45万円程度まで持ち直してきており、一旦底堅さが出てきています。

また秋口から仮想通貨のマーケットに対してのポジティブな内容が出てきていることは、マーケットの中長期的なトレンドを考える上で重要なことでしょう。

日本でも現在禁止となっているICOやSTOに対しての法整備(海外ではかなり法整備が進んでいる状態)が進んできており、ICOやSTOが許可される日も遠くはない状況です。

またETFに対して、米国が緩和方向に向かっている等、各国は昨年の過度な規制を行なっている動きから、少しずつスタイルを緩和させ、技術発展をさせるための方向に傾いている状況です。

そのため仮想通貨に対しての世界のセンチメントはいい方向に向かっていることを頭に入れておくことは重要と言えるでしょう。

特に海外では、個人でも再度仮想通貨取引を資産運用のポートフォリオとして入れておくことは重要との認識が広がりつつあり、日本とは印象のギャップがかなり広がっています。

日本国内での印象やニュース、金融庁等の動き方に捉われず、ボーダレスなプロダクトであるからこそ、世界がどのように動いているかに目を向けて、そちらに日本がついていく形になると考えた方がいいでしょう。

今年、日本のマーケットの動きで頭に入れておくべきは、参議院選挙があることから、麻生大臣はじめ金融庁は法整備が進んているとはいえ、ペースをあげてチャレンジングにリスクを取っていくような動き方はできないため、政治的要因を考えると、日本は今年も他国より後塵を拝する動きにならざる得ないという環境です。しかし、ここから大きな下落を見込むよりは、世界に追随する形で底堅く推移し、ある程度緩やかな動きをしながら上昇方向にいくこともそろそろ考えておいてもいいかもしれません。

今まで仮想通貨を敬遠していた方も、この記事を読んで頂き、資産運用手段としての仮想通貨の利用価値を再考するきっかけになると嬉しいです。

【記事筆者】

中島翔
中島翔
学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行に入行し、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。
【保有資格】証券アナリスト